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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1180317
審判番号 不服2006-28970  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-28 
確定日 2008-06-25 
事件の表示 特願2003- 62964「合成樹脂シート製食品包装用容器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月30日出願公開、特開2004-268987〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成15年3月10日に出願され、平成18年10月23日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成18年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年1月29日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年1月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年1月29日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2は、
「【請求項1】 合成樹脂製のシート素材を膨出成型させ、卵の下半部を収容できる収容凹部(11)が複数個並列形成されている容器本体(1)と卵の上半部を覆う凹部(21)を備えた蓋体(2)とが、一側の折り曲げ部(7)を介して折り曲げ自在に一連に形成されている食品包装用容器であって、前記容器本体(1)は、遊端側の周縁部に上方に向かって突出するように設けられた遊端側凸部(3)と、該周縁部から折り曲げ自在に外周方向に向かって連結されたベロ(4)とを備え、前記蓋体(2)における遊端側側壁(23)と前記ベロ(4)とに互いに嵌合する突起(5)または嵌合凹部(6)のいずれかを備え、閉蓋姿勢において、上方に折り曲げられた前記ベロ(4)が前記遊端側凸部(3)との当接によって所定の傾斜角以上には容器本体(1)の中央側に倒伏することが阻止され、且つ前記突起(5)と前記嵌合凹部(6)が係合する構造とされている合成樹脂シート製食品包装用容器。
【請求項2】 合成樹脂製のシート素材を膨出成型させ、食品を収容できる収容凹部(11)が形成されている容器本体(1)と食品を覆う凹部(21)を備えた蓋体(2)とが、一側の折り曲げ部(7)を介して折り曲げ自在に一連に形成されている食品包装用容器であって、前記容器本体(1)は、遊端側の周縁部に上方に向かって突出するように設けられた遊端側凸部(3)と、該周縁部から折り曲げ自在に外周方向に向かって連結されたベロ(4)とを備え、前記蓋体(2)における遊端側側壁(23)と前記ベロ(4)とに互いに嵌合する突起(5)または嵌合凹部(6)のいずれかを備え、閉蓋姿勢において、上方に折り曲げられた前記ベロ(4)が前記遊端側凸部(3)との当接によって所定の傾斜角以上には容器本体(1)の中央側に倒伏することが阻止され、且つ前記突起(5)と前記嵌合凹部(6)が係合する構造とされている合成樹脂シート製食品包装用容器。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1及び2に記載された発明を特定する事項であるベロ(4)が倒伏することが阻止される構成について、「ベロ(4)が遊端側凸部(3)によって」としていたのを、「ベロ(4)が遊端側凸部(3)との当接によって」との限定事項を付加するものである。
これらの限定した事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されており、補正後の請求項1及び2に記載された発明は、補正前の請求項1及び2に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物の記載
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭50-054484号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(a)「添付図面に示される包装カートンは、容器部材1とふた部材2とを以て構成される。これら2部材は関節折目3によつて互いに接続されている。前記カートンは卵を包装するように構成されている。
容器部材1は2列の互いに平行した卵ポケット4を有し、図示実施例においては各列に5個の卵ポケット4が配列されている。これら列において互いに相隣して位置される卵ポケット4相互間には、中空ピン5の形式にされた突出した支持突起が配置されている。これら中空ピン5は前記ポケットを面成するとともに、前記ふた部材2が前記容器部材1上に閉じられるとき、該ふた部材2のための支持体として機能する。
前記ふた部材2は2個の互いに平行して突出する山形部材6を有し、これら山形部材6は前記卵ポケット4の2列に平行して廷在し、容器が閉鎖されるとき前記列の上方に位置するように構成されている。これら山形部材6の間にはふた凹部分7が廷在している。該ふた凹部分7は前記山形部材6の対面側部6aの下端縁を互いに接続している。番号10は卵を調べるための複数個の点検用の穴を示している。これら穴10はその一部分を山形部材6の対面側部6aによつて面成され、他の一部分を前記ふた凹部分7によつて面成されている。前記穴10の個数は前記卵ポケット4の個数に一致し、それらは容器が閉鎖されたとき前記卵ポケット4に対向して位置するように配列されている。図示実施例においては、したがつて、各山形部材6に5個の穴10が形成されている。」(第2頁左下欄第3行?右下欄第12行)
(b)「閉鎖フラップ15が関節折目14によって容器部材1に回動自在に結合されている。前記閉鎖フラップ15はその外側部に2個の突起16を有する。カートンが閉じられたとき、閉鎖フラップ16は前記ふた部材2内へ導入されてその前内壁17に沿つて配置される。前記2個の突起16に対応する2個の留め穴18が前記前内壁17に形成されており、包装カートンが閉じられるとき前記突起16は前記留め穴18を通じて突出し、これによつて前記ふた部材2は容器1に対してしつかりと確保される。」(第3頁左上欄第13行?右上欄第3行)
(c)「本発明に従えば、関節折目から突出する突起19が関節折目3と14に設けられる。第2図には容器部材1と閉鎖フラップ15との間の関節折目14に配された前記の如き突起が図示されている。該突起は関節折目14の方向に長だ円形に形成され、U字形の横断面を有し、U字形部分の自由端20は関節折目14に結合されている。その結果として、折目接合部の中絶部分が前記自由端20によつて面成されている。第1図には、関節折目3と14に沿つて均一の間隔を以て分散配置された一連の突起19が図示されている。この実施例においては、関節折目の各端に1個の突起19が配置されている。これら突起19は、関節折目に隣接する部分に比べより薄い壁厚さを少くとそれらの中央部分において有し、もし望まれるならば、その開きをより大きくまたはより小さくされうる。
閉鎖フラップ15を第3図に示される如く容器部材1に対して回動させるとき、関節折目14に設けられた突起19は隣接部分間に押し込まれ、したがって、それ以上の回動を防ぐ阻止部材として機能する。これと同じ態様で、関節折目3に配される突起19も機能する。」(第3頁右上欄第4行?左下欄第6行)

したがって、以上の記載及び第1-3図によれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「卵の下半部を収容できる卵ポケット4が複数個並列形成されている容器部材1と卵の上半部を覆う山形部材6とふた凹部分7を備えたふた部材2とが、一側の関節折目3を介して折り曲げ自在に一連に形成されている食品包装カートンであって、容器部材1は、関節折目14に設けられた突起19と、関節折目14から折り曲げ自在に外周方向に向かって連結された閉鎖フラップ15とを備え、ふた部材2における前内壁17と閉鎖フラップ15とに互いに嵌合する突起16または留め穴18のいずれかを備え、閉蓋姿勢において、上方に折り曲げられた閉鎖フラップ15が突起19によって所定の傾斜角以上には容器部材1の中央側に倒伏することが阻止され、且つ突起16と留め穴18が係合する構造とされている食品用包装カートン。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比、判断
(3-1)本願補正発明1と引用発明との対比、判断
引用発明における「卵ポケット4」,「容器部材1」,「山形部材6とふた凹部分7」,「ふた部材2」,「前内壁17」,「関節折目3」,「閉鎖フラップ15」,「突起16」,「留め穴18」及び「食品用包装カートン」は、それぞれ、本願補正発明1における「収容凹部(11)」,「容器本体(1)」,「凹部(21)」,「蓋体(2)」,「蓋体(2)における遊端側側壁(23)」,「折り曲げ部(7)」,「ベロ(4)」,「 突起(5)」,「嵌合凹部(6)」及び「食品包装用容器」に相当する。
また、引用発明における「突起19」は、本願補正発明1における「遊端側凸部(3)」と「凸部」である点が共通し、上方に折り曲げられたベロが凸部によって所定の傾斜角以上には容器本体の中央側に倒伏することが阻止されるという機能で共通する。

したがって、本願補正発明1と引用発明を対比すると、両者は、
「卵の下半部を収容できる収容凹部が複数個並列形成されている容器本体と卵の上半部を覆う凹部を備えた蓋体とが、一側の折り曲げ部を介して折り曲げ自在に一連に形成されている食品包装用容器であって、前記容器本体は、凸部と、周縁部から折り曲げ自在に外周方向に向かって連結されたベロとを備え、前記蓋体における遊端側側壁と前記ベロとに互いに嵌合する突起または嵌合凹部のいずれかを備え、閉蓋姿勢において、上方に折り曲げられた前記ベロが前記凸部によって所定の傾斜角以上には容器本体の中央側に倒伏することが阻止され、且つ前記突起と前記嵌合凹部が係合する構造とされている食品包装用容器。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願補正発明1では、「合成樹脂製のシート素材を膨出成型させた」卵を収容する食品包装用容器であるのに対し、引用発明では、材質及び成型方法が特定されていない卵を収容する食品包装用容器である点。

相違点2
本願補正発明1では、ベロが遊端側の周縁部に上方に向かって突出するように設けられた凸部の当接によって、所定の傾斜角以上には容器本体の中央側に倒伏することが阻止されているのに対し、 引用発明では、閉鎖フラップが関節折目に設けられた凸部によって、所定の傾斜角以上には容器部材の中央側に倒伏することが阻止されている点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について
卵を収容する食品包装用容器の分野において、合成樹脂製のシート素材を膨出成型させることにより、容器本体及び蓋体を成型することは、当業者にとって、例示するまでもなく周知の技術であるといえる。
したがって、引用発明に記載された卵を収容する食品包装用容器において、その容器部材1、ふた部材2を合成樹脂製のシート素材を膨出成型させることにより形成することは、それを妨げる特段の事情も見当たらず、格別な困難性を要するものとはいえない。

相違点2について
引用発明においては、閉鎖フラップの倒伏を防止するため、凸部を関節折目に設けているが、こうした凸部は、閉鎖フラップが閉位置にあるとき、所定の傾斜角以上の倒伏に対して、反作用を奏するものであれば、いずれに設けてもよいのは明白であり、凸部をいずれの箇所にどのように形成し、どの程度の反作用を与えるものにするかは、食品包装用容器の形状や構造により当業者が設計上種々のものを試みる程度の事項というべきである。
一方、原査定の拒絶の理由に引用された特表2002-520235号公報(以下「引用例2」という。)には、図5に、蝶番の反対側であって、底部分の上縁の外周側に可撓性フラップが、底部分の上縁の内周側の可撓性フラップに対応する部位に上方に突出する突起が図示されている。
たしかに、引用例2には、上記のように図示された突起について、明確な言及はないが、カバー部分が閉位置にあるときには、上方に折り曲げられた可撓性フラップが、突起と当接し得る位置に配置されたものであることは、当業者からみて明白である。
このことは、拒絶査定時に示された米国特許第2888183号明細書(以下、「周知文献1」という。)の第4欄第63行?第5欄第12行及び第7?10図には、ベロ(locking flap 20)と蓋体(cover 15)とを係合させる卵容器において、閉蓋時にベロを遊端側の周縁部(rim portion 27A)に上方に向かって突出するように設けられた遊端側凸部(post 12A)に接触させ、ベロの係合部(locking button 21)を外方に付勢(urge)する点が記載され、同じく米国特許第3138313号明細書(以下、「周知文献2」という。)の第4欄第15?20行及び第1?3図には、ベロ(lock flap 16)と蓋体(lid section 20)とを係合させる卵容器において、閉蓋時にベロと係合可能な周縁部に上方に向かって突出するように設けられた遊端側凸部(abutment 15)により、ベロの係合部(lock button 44)を蓋体の係合孔方向に付勢(urge)する点が記載されていることからも、十分に推測し得るものである。
したがって、引用例2の図5に示された底部分の側面の上縁に上方に突出するように設けられた突起は、周知文献1の遊端側凸部(post 12A)及び周知文献2の遊端側凸部(abutment 15)と同様の機能を有し得るものであり、引用例2は、カバー部分が閉位置にあるときには、上方に折り曲げられた可撓性フラップが、底部分の側面の上縁に上方に突出するように設けられた突起との当接によって所定の傾斜角以上には底部分の中央側に倒伏することが阻止される点が記載されているものと認め得る。
よって、 引用発明の突起と引用例2の突起は、上方に折り曲げられたベロが凸部によって所定の傾斜角以上には容器本体の中央側に倒伏することが阻止するという共通した課題を解決するものであるから、引用発明に記載の関節折目に設けられた突起に代えて、引用例2に記載の遊端側の周縁部に上方に向かって突出するように設けられた突起を採用することによって、本件補正発明に記載の遊端側凸部となし、上方に折り曲げられたベロが遊端側凸部によって所定の傾斜角以上には容器本体の中央側に倒伏することが阻止されるようにすることに、格別な困難性を要するものとはいえない。

そして、本願補正発明1の効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものであり、格別顕著なものとはいえない。

以上のとおりであるから、本願補正発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成19年1月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成18年7月10日付け手続補正書の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「合成樹脂製のシート素材を膨出成型させ、卵の下半部を収容できる収容凹部(11)が複数個並列形成されている容器本体(1)と卵の上半部を覆う凹部(21)を備えた蓋体(2)とが、一側の折り曲げ部(7)を介して折り曲げ自在に一連に形成されている食品包装用容器であって、前記容器本体(1)は、遊端側の周縁部に上方に向かって突出するように設けられた遊端側凸部(3)と、該周縁部から折り曲げ自在に外周方向に向かって連結されたベロ(4)とを備え、前記蓋体(2)における遊端側側壁(23)と前記ベロ(4)とに互いに嵌合する突起(5)または嵌合凹部(6)のいずれかを備え、閉蓋姿勢において、上方に折り曲げられた前記ベロ(4)が前記遊端側凸部(3)によって所定の傾斜角以上には容器本体(1)の中央側に倒伏することが阻止され、且つ前記突起(5)と前記嵌合凹部(6)が係合する構造とされている合成樹脂シート製食品包装用容器。」

(1)引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2.(2)引用刊行物の記載」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明1は、前記「2.(1)補正後の本願発明」で検討した本願補正発明の「前記ベロ(4)が前記遊端側凸部(3)との当接によって」から、「との当接」を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに一部の構成要件を省いたものに相当する本願補正発明1が、前記「2.(3)対比、判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び周知技術に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 残余の請求項については原査定の理由により拒絶されるべきである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-07 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-15 
出願番号 特願2003-62964(P2003-62964)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 楠永 吉孝  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 田中 玲子
関 信之
発明の名称 合成樹脂シート製食品包装用容器  
代理人 甲斐 寛人  

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