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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1180394 |
審判番号 | 不服2003-346 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-06 |
確定日 | 2008-06-11 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第519566号「アイ*ドール」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月29日国際公開、WO97/18871、平成12年 1月18日国内公表、特表2000-500376〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1996年11月20日(パリ条約による優先権主張1995年11月20日、米国)を国際出願日とする出願(特願平9-519566号)であって、平成14年9月30日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成15年1月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?83に係る発明は、平成14年7月8日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?83に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)、及び請求項25に記載された発明(以下、「本願発明2」という。)は、以下のとおりである。 本願発明1; 「無線式コンピュータ制御型玩具システムであって、 第1の無線送信機を介して第1の伝達を送信するように動作するコンピュータシステムと、 第1の無線受信機を有し、前記第1の無線受信機を介して前記第1の伝達を受信し、そして前記第1の伝達に基づく少なくとも1つの動作を実行するように動作する少なくとも1つの玩具と を備え、 前記少なくとも1つの玩具は、第2の無線送信機を介して第2の伝達を送信するように動作し、そして前記コンピュータシステムは、第2の無線受信機を介して前記第2の伝達を受信するように動作し、 前記少なくとも1つの玩具は、音響入力装置を含み、 前記第2の伝達は、前記音響入力装置を介して入力する音響を表す音響信号を含み、 前記音響は、スピーチを含み、 前記コンピュータシステムは、前記スピーチに対するスピーチ認識動作を実行するように動作し、 前記第1の伝達は、少なくとも部分的に前記スピーチ認識動作の出力の機能として、前記コンピュータシステムによって決定されるものであり、 前記コンピュータシステムは、コンピュータゲームを備え、 前記コンピュータゲームの動作は、少なくとも一部が前記第2の伝達によって制御されることを特徴とする無線式コンピュータ制御型玩具システム。」 本願発明2; 「コンピュータゲームを制御するように動作し、また少なくとも1つの表示対象物を表示するように動作するディスプレイを有したコンピュータシステムと、そして 前記コンピュータシステムと無線通信する少なくとも1つの玩具とを備え、 前記コンピュータゲームは、複数のゲーム対象物を有し、そして 前記複数のゲーム対象物は、前記少なくとも1つの表示対象物と前記少なくとも1つの玩具を有することを特徴とするゲームシステム。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-36080号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 ア. 「2.特許請求の範囲 それぞれ自分のアドレスを持つ1つ以上の玩具及びコントロールセンター及び電気的に検出可能な地図とによって構成され、玩具及びコントロールセンターはシリアルに送信・受信することによって相互に交信することができ、コントロールセンターは参加者の操作とゲーム規則と地図上の玩具の位置によって決められるコマンドをそれぞれの玩具に送ることによって機能する玩具システム 3.発明の詳細な説明 それぞれ自分のアドレスを持つ玩具及びコントロールセンター及び電気的に検出可能な地図から成るシステムである。 このシステムは無線通信等の遠隔伝送手段の下で動作し、玩具及びコントロールセンターは送受信及びコマンドを解析、作成する電子手段を持っている。 コマンドは特定の玩具のアドレスを指定したコマンド(以下、アドレスコマンドと言う)又はアドレスを指定しないコマンド(以下、ユニバーサルコマンドと言う)とに分類される。 参加者はジョイスティック等の操縦手段によって自分の担当の玩具を操縦しようとする。コントロールセンターは参加者の操縦とゲーム規則と地図上の玩具の位置によってコマンドを決定し、ユニバーサルコマンド又はアドレスコマンドを送信する。 個々の玩具はユニバーサルコマンド又は自分のアドレスのついたアドレスコマンドをとり入れ解析する。又個々の玩具は自分のアドレスをつけたデータ(以下、アドレスデータと言う)をコントロールセンターに送信する。」(公報第1頁左下欄4行?右下欄16行) イ. 「第3図Aは玩具A,Bの電子回路の構成で、9はマイクロコンピューター(CPU、ROM、RAM、プログラマブルI/O、タイマーが含まれる)、・・・第3図Bはコントロールセンターの電子回路の構成であって、19はマイクロコンピューター(CPU、ROM、RAM、I/O、タイマーを含む)20は参加者が操縦するためのスイッチ類でI/Oの入力に接続される。」(公報第2頁右上欄9行?左下欄10行) ウ. 「これらのコマンドを用いて次のゲームを構成する。(フローチャートは第6図) 1. デバイススタートコマンドで玩具A,Bが動作を始める。 2. 玩具Aの動作を指定するスイッチを参加者が押す。もし、その移動方向に障害物がなければコントロールセンターはアドレスドコマンドによって玩具Aにその動作を指定する。障害物がある時はそのスイッチを無視して、手順4へ行く。 3. 玩具Aが移動してみてその方向に障害物があった時は玩具Aはコントロールセンターにアドレスドデータによって知らせる。(玩具Bの場合も同様) コントロールセンターはその位置に障害物があることをRAMに記憶する。この記憶のくり返しで、地図に関するデータがRAMに形成されていく。 4. コントロールセンターは玩具A,B間の距離を求める。(距離があるリミット以下の時は手順7へ。)そして最も距離が遠くなり、かつ障害物がない方向へ玩具を動かす。 5. あらかじめ設定したタイムリミットに来ていれば手順6へ、さもなければ手順2へ、 6. 追いつけない。参加者の負け、ゲーム終了 7. 追いついた。参加者の勝、ゲーム終了 以上のように本発明は従来CRT上で実現されてきたコンピューターゲームを走行玩具で実現したものである。」(公報第3頁右上欄末行?右下欄9行) 引用例1記載の玩具システムは、「玩具及びコントロールセンターはシリアルに送信・受信することによって相互に交信することができ、」「このシステムは無線通信等の遠隔伝送手段の下で動作し、玩具及びコントロールセンターは送受信及びコマンドを解析、作成する電子手段を持っている」こと、及び上記記載事項イ.から、無線式コンピュータ制御型玩具システムということができ、玩具及びコントロールセンターは、それぞれ、送信手段及び受信手段の両方を有していることも、当業者にとって自明である。そして、当該無線式コンピュータ制御型玩具システムで行われているのは、コンピューターゲームであり、当該コンピューターゲームは、コントロールセンターが備えることも自明である。 引用例1記載の玩具システムにおいて、「コントロールセンターはアドレスドコマンドによって玩具Aにその動作を指定」し、「玩具Aが移動してみ」るので、アドレスドコマンドに基づく少なくとも1つの動作を実行するように動作する、といえる。玩具は、A,B2つあり、動作は、両者同様なので、そのように動作する、少なくとも1つの玩具、といえる。 引用例1記載の玩具システムにおいて、「玩具Aが移動してみてその方向に障害物があった時は玩具Aはコントロールセンターにアドレスドデータによって知らせる。(玩具Bの場合も同様) コントロールセンターはその位置に障害物があることをRAMに記憶する。この記憶のくり返しで、地図に関するデータがRAMに形成されていく。」ので、コンピューターゲームの動作は、少なくとも一部が、アドレスドデータによって制御されることは、当業者にとって自明である。 したがって、上記記載事項ア.?ウ.から、引用例1には、 「無線式コンピュータ制御型玩具システムであって、 コントロールセンター送信手段を介してユニバーサルコマンド又はアドレスドコマンドを送信するように動作するコントロールセンターと、 玩具受信手段を有し、前記玩具受信手段を介して前記ユニバーサルコマンド又はアドレスドコマンドを受信し、そして前記ユニバーサルコマンド又はアドレスドコマンドに基づく少なくとも1つの動作を実行するように動作する少なくとも1つの玩具と を備え、 前記少なくとも1つの玩具は、玩具送信手段を介してアドレスドデータを送信するように動作し、そして前記コントロールセンターは、コントロールセンター受信手段を介して前記アドレスドデータを受信するように動作し、 前記コントロールセンターは、コンピューターゲームを備え、 前記コンピューターゲームの動作は、少なくとも一部が前記アドレスドデータによって制御される無線式コンピュータ制御型玩具システム。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 また、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第94/08677号(特表平8-503144号公報参照)(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 エ. 「本発明の分野 本発明は、現在使用されていないビデオテープ上の2つのチャンネルに記録され、無線によって装置に出力される制御信号に応答して、演技や動作及び会話などを行うことができるよう制御された装置に関するものである。」(第1頁3?7行) オ. 「発明の詳細な説明 無線制御システム10は、少くとも1つ以上のリモート装置12を制御するためのディジタルデータを出力するものである。」(第4頁3?6行) カ. 「RF出力手段22はデコード手段14の出力を入力し、リモート装置12内のRF入力手段24へデコードしたデータを出力するようになっている。 少くとも一つ以上のリモート装置12が本システムにより制御される。ここで説明する例では、リモート装置12が8つまでは制御可能となっている。図3に示した最適の各リモート装置12は次のものを含んでいる。 すなわち、まず、RF入力装置24である。これは、また、RF入力・作動手段24と呼ぶこともあり、RF出力手段22の無線出力の一部のみを選択して入力するため同調が行なわれるものである。」(第4頁19?29行) キ. 「制御手段34は、選択された入力ディジタルデータに応じて各電動機32を駆動するよう取付けられている。従来技術において知られているように、ディジタル信号入力回路24、あるいはRF信号入力回路24は、音声信号が変化するディジタルデータを入力するものであり、音声入力/増幅回路36に結合されている。音声入力/増幅回路36は、音声信号が変化するディジタルデータをスピーカ38に出力する。リモート装置出力回路62は、マイクロホンと、音声波を入力しこれらを制御ボックス64内の入力回路68に出力する出力回路とから形成される。入力回路68はコンピュータ52に結合されている。コンピュータ52はIBM製パソコンでも他のタイプのパソコンでもよい。コンピュータ52は、公知の音声認識用ソフトウエアを用いながら音声波を解釈し、予め選択されている応答信号を制御ボックス64内の出力回路22に送出する。」(第5頁5?18行) したがって、上記記載事項エ.?キ.及びFIG1.、3.から、引用例2には、 「リモート装置12(実施例では、「テディベアのようなおもちゃ」。)を制御するための無線制御システム10であって、リモート装置12中のリモート装置出力回路62は、マイクロホンと、音声波を入力しこれらを制御ボックス64内の入力回路68に出力する出力回路とから形成され、入力回路68はコンピュータ52に結合され、コンピュータ52は、公知の音声認識用ソフトウエアを用いながら音声波を解釈し、予め選択されている応答信号を制御ボックス64内の出力回路22に送出する」点、及び「RF出力手段22はデコード手段14の出力を入力し、リモート装置12内のRF入力・作動手段24へデコードしたデータを出力するようになっており、少くとも一つ以上のリモート装置12が本システムにより制御される」点が記載されている。 また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-178250号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 ク.【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、例えばゲームセンタなどに設置されるゲーム装置に関し、特にプレーヤの操作に応じてCRTなどにゲーム進行状況を映像出力するゲーム装置に関する。 【0002】【従来の技術】 近年、ゲームセンタなどの遊戯施設に設置されるゲーム装置としては、プレーヤの操作によってゲーム内容(進行過程や結果)をCRT画面などに映像出力するコンピュータゲーム装置が主流となりつつある。このようなコンピュータゲーム装置は、当然ながら、CRTユニットの外にスピーカなどの音声ユニットも内蔵しており、映像出力とともにゲーム内容に応じてクラッシュ音、爆発音あるいは人間の声などを音声出力することでゲームの臨場感を高めるような配慮がなされている。 ケ.【0007】【実施例】 本発明の一実施例によるゲーム装置を図1乃至図5を用いて説明する。 図1は、本実施例によるゲーム装置の外観を示したものである。図1において、ゲームセンタなどに設置されるゲーム装置10は、ゲーム装置本体20と、ゲーム装置本体20上に設置されたキャラクタ人形30によって構成されている。 【0008】 本実施例のゲーム装置10のゲーム装置本体20には、従来のゲーム装置と同様に、ゲーム自体の進行内容やゲーム結果(得点、インプットされたプレーヤネーム)などを表示するCRT画面21が組み込まれており、更にゲーム装置本体20のフロント部には、プレーヤ(図示せず)によって操作されるジョイスティック22やボタン23などの操作子24が設けられている。 コ.【0013】 ・・・図3に、上述したキャラクタ人形30を含むゲーム装置10全体の概略構成を示す。 ゲーム装置本体20の内部には、ゲームの進行状況などに応じてCRT画面21への映像出力を制御するとともに、上述した人形30の動作を制御する制御回路40が内蔵される。この制御回路40には、全体を制御するためのCPU40cが設けられ、このCPU40cにバス40eを介して、ジョイスティック22やボタン23からの制御信号を入力するための入力インタフェース40aと、ゲーム自体や人形動作パターンなどの各種プログラムが格納されたメモリ40bと、CRT画面21やスピーカ25の駆動回路41、42やスイッチング回路39に駆動信号を出力するための出力インタフェース40dとが接続されている。 ・・・ 【0015】 さらに、本実施例では、映像及び音声出力に応じて、制御回路40からスイッチング回路39に駆動信号が出力され、キャラクタ人形30に対してその時のゲーム進行内容に合わせた動作をさせる。この結果、ゲーム装置本体20上に設置されたキャラクタ人形30は、ゲーム進行に連動して目立つアクションで動き、プレーヤだけでなく、その周囲に対しても注目を引かせることが可能となり、集客効果を上げることになる。 引用例3に記載されたものは、プレーヤの操作に応じてCRTなどにゲーム進行状況を映像出力するので、【図1】も併せてみると、ゲーム対象物である、少なくとも1つの表示対象物を表示するよう動作するCRT画面21を有している。 引用例3に記載されたゲーム装置本体20は、全体を制御するためのCPU40c等が設けられた制御回路40を有しているので、コンピュータシステムということができ、キャラクタ人形30は、制御回路40からスイッチング回路39に駆動信号が出力され、その時のゲーム進行内容に合わせた動作をするので、コンピュータシステムにより駆動される少なくとも1つの玩具、ということができる。そして、ゲーム進行に連動して目立つアクションで動き、プレーヤだけでなく、その周囲に対しても注目を引かせることが可能となるので、一種のゲーム対象物ということができる。 したがって、上記記載事項ク.?コ.及び【図1】、【図3】から、引用例3には、 「コンピュータゲームを制御するように動作し、また少なくとも1つの表示対象物を表示するように動作するCRTを有したコンピュータシステムと、そして 前記コンピュータシステムにより駆動される少なくとも1つの玩具とを備え、 前記コンピュータゲームは、複数のゲーム対象物を有し、そして 前記複数のゲーム対象物は、前記少なくとも1つの表示対象物と前記少なくとも1つの玩具を有するゲームシステム。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 4.本願発明1の容易性 4-1 対比 引用発明1の「コントロールセンター」は、本願発明1の「コンピュータシステム」に相当し、以下、同様に「コントロールセンター送信手段」は「第1の無線送信機」に、「ユニバーサルコマンド又はアドレスドコマンド」は「第1の伝達」に、「玩具受信手段」は「第1の無線受信機」に、「玩具送信手段」は「第2の無線送信機」に、「アドレスドデータ」は「第2の伝達」に、「コントロールセンター受信手段」は「第2の無線受信機」に、「コンピューターゲーム」は「コンピュータゲーム」に、それぞれ、相当する。 また、引用発明1の「前記コントロールセンターは、コンピューターゲームを備え、前記コンピュータゲームの動作は、少なくとも一部が前記アドレスドデータによって制御される」は、本願発明1の「前記コンピュータシステムは、コンピュータゲームを備え、前記コンピュータゲームの動作は、少なくとも一部が前記第2の伝達によって制御される」に相当する。 したがって、両者は、 「無線式コンピュータ制御型玩具システムであって、 第1の無線送信機を介して第1の伝達を送信するように動作するコンピュータシステムと、 第1の無線受信機を有し、前記第1の無線受信機を介して前記第1の伝達を受信し、そして前記第1の伝達に基づく少なくとも1つの動作を実行するように動作する少なくとも1つの玩具と を備え、 前記少なくとも1つの玩具は、第2の無線送信機を介して第2の伝達を送信するように動作し、そして前記コンピュータシステムは、第2の無線受信機を介して前記第2の伝達を受信するように動作し、 前記コンピュータシステムは、コンピュータゲームを備え、 前記コンピュータゲームの動作は、少なくとも一部が前記第2の伝達によって制御されることを特徴とする無線式コンピュータ制御型玩具システム。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明1では、 「前記少なくとも1つの玩具は、音響入力装置を含み、 前記第2の伝達は、前記音響入力装置を介して入力する音響を表す音響信号を含み、 前記音響は、スピーチを含み、 前記コンピュータシステムは、前記スピーチに対するスピーチ認識動作を実行するように動作し、 前記第1の伝達は、少なくとも部分的に前記スピーチ認識動作の出力の機能として、前記コンピュータシステムによって決定されるものであ」るのに対し、引用発明1では、そのような限定がない点。 4-2 当審の判断 以下、相違点について検討する。 [相違点1]について; 本願発明1の音響入力装置は、マイクロフォンを含む(平成19年8月17日付電話審尋に対する回答参照)ので、引用例2に記載のマイクロホンが、本願発明1の音響入力装置に相当する。音響入力装置がマイクロホンなので、音響は、スピーチを含むことも自明である。 本願発明1の第2の伝達は、玩具から、第2の無線送信機を介してコンピュータシステムに送信されるものなので、引用例2に記載の、リモート装置出力回路62が、本願発明1の第2の無線送信機に相当し、リモート装置出力回路62に入力されて制御ボックス64内の入力回路68に出力される音声波が、本願発明1の第2の伝達に相当する。 引用例2に記載のコンピュータ52は、公知の音声認識用ソフトウエアを用いながら音声波を解釈し、予め選択されている応答信号を制御ボックス64内の出力回路22に送出するので、本願発明1と同様、「コンピュータシステムは、前記スピーチに対するスピーチ認識動作を実行するように動作し」ているといえる。 本願発明1の「第1の伝達は、少なくとも部分的に前記スピーチ認識動作の出力の機能として、前記コンピュータシステムによって決定されるものであ」る点については、引用例2に明示的には記載されていないが、引用例2の無線制御システム10も、コンピュータ52は、公知の音声認識用ソフトウエアを用いながら音声波を解釈し、予め選択されている応答信号を制御ボックス64内の出力回路22に送出するもので、また、RF出力手段22はデコード手段14の出力を入力し、リモート装置12内のRF入力・作動手段24へデコードしたデータを出力するようになっており、少くとも一つ以上のリモート装置12が本システムにより制御されるものである。また、上記「平成19年8月17日付電話審尋に対する回答」にも、「「スピーチ認識動作の出力の機能」はスピーチ内容を解析し、それを出力する機能を意味し、ごく一般的なボイス認識のことである。」と説明されているように、当業者であれば、コンピュータ52からRF出力手段22に送出される応答信号が、本願発明1の「第1の伝達」と同様、当然、リモート装置12内のRF入力・作動手段24へ出力されると解することができる。 結局、上記相違点1に係る構成は、引用例2に記載されており、引用例2のものも、リモート装置12(実施例では、「テディベアのようなおもちゃ」。)を制御するための無線制御システム10で、引用発明1と同様の技術分野に属するので、引用発明1に引用例2に記載された発明を適用することにより、上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者にとって困難性はない。 そして、本願発明1の作用効果も引用発明1、及び引用例2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。 5.本願発明2の容易性 5-1 対比 引用発明2の「CRT」は、本願発明2の「ディスプレイ」に相当する。 また、引用発明2の「前記コンピュータシステムにより駆動される少なくとも1つの玩具」と本願発明2の「前記コンピュータシステムと無線通信する少なくとも1つの玩具」とは、「前記コンピュータシステムと関係する少なくとも1つの玩具」の点で一致する。 したがって、両者は、 「コンピュータゲームを制御するように動作し、また少なくとも1つの表示対象物を表示するように動作するディスプレイを有したコンピュータシステムと、そして 前記コンピュータシステムと関係する少なくとも1つの玩具とを備え、 前記コンピュータゲームは、複数のゲーム対象物を有し、そして 前記複数のゲーム対象物は、前記少なくとも1つの表示対象物と前記少なくとも1つの玩具を有することを特徴とするゲームシステム。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2] コンピュータシステムと、少なくとも1つの玩具との関係が、本願発明2では、「コンピュータシステムと無線通信する」のに対し、引用発明2では、「コンピュータシステムにより駆動される」点。 5-2 当審の判断 以下、相違点について検討する。 [相違点2]について; ゲーム対象物である玩具と無線通信することは、引用例1、あるいは特開昭58-146379号公報(「このロボット本体2は受信機能を有するので、・・・電子モジュール7bの記録データやプログラムは送受信ユニット7cを介して無線で送信され、ロボットの作動中に随時ロードされ、」(公報第2頁右下欄下から4行?第3頁左上欄2行))に記載されているように、従来周知の技術事項であり、引用発明2に適用して、上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者にとって困難性はない。 そして、本願発明2の作用効果も引用発明2、及び従来周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。 ところで、請求人は、平成15年7月10日受付の手続補正書の請求の理由の中で、補正する意向である請求項に基づいた主張をしているが、審判の請求の日から30日以内に補正していないので、請求人の該主張は考慮できない。 6.むすび したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明2は、引用例3に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-01-10 |
結審通知日 | 2008-01-15 |
審決日 | 2008-01-29 |
出願番号 | 特願平9-519566 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 榎本 吉孝 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
植野 孝郎 森内 正明 |
発明の名称 | アイ*ドール |
代理人 | 秋元 輝雄 |