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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1180407
審判番号 不服2005-18137  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-21 
確定日 2008-07-02 
事件の表示 特願2002- 13760「液晶型乳化組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月30日出願公開、特開2003-212716〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成14年1月23日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年6月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 油分、高級アルコール、高級脂肪酸、非イオン界面活性剤、水溶性多価アルコール及び水から成るラメラー構造(層状構造)を有する液晶型乳化組成物において、
(1). 油分量(油分+高級アルコール+高級脂肪酸)の含有割合が0.5?15重量%であり、
(2).前記油分量中の油分の含有割合が3?97重量%であり、
(3).前記油分量と非イオン界面活性剤の配合割合(重量比)が1:1?3:1であり、かつ、
(4).前記水溶性多価アルコールの含有割合が20?42重量%であること、を特徴とするラメラー構造(層状構造)を有する薬剤の安定配合性、薬剤の放出性、水分保持性、温度安定性、使用性に優れた薬剤を配合するための液晶型乳化組成物。」

2.引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開昭63-287718号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。

ア.「高級アルコール、高級アルコールに対し重量で0.1?0.8倍量の脂肪酸、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、多価アルコール及び水からなる液晶型外用基剤」(特許請求の範囲)

イ.「本発明で用いられる高級アルコールは炭素数14?22の飽和高級アルコールが挙げられる。これらは単独または二種以上を組み合わせて使用される配合量は本発明により得られる液晶構造体全量に対し通常1?15重量%(以下、単に%で示す)。好ましくは3?10%の範囲で配合される。1%より少ない場合には当該液晶構造体を形成せず、15%を超える場合には液晶構造体の高温安定性が悪くなり経日による白濁及び結晶の析出がみられる。」(公報2頁右上欄5?14行)

ウ.「本発明で用いられる脂肪酸は炭素数14?22の飽和、不飽和いずれでもよい直鎖又は分岐鎖の脂肪酸が用いられる。これらは単独又は二種以上を組み合わせて使用される配合量は本発明に使用される高級アルコールに対して重量で0.1?0.8倍量である。当倍量未満では液晶構造体は白濁し、当倍量を超えると結晶が析出する。」(公報2頁右上欄15行?同頁左下欄1行)

エ.「本発明で用いられる非イオン界面活性剤は、HLB値7以下の親油性非イオン界面活性剤及びHLB値10以上の親水性非イオン界面活性剤であり親油性非イオン界面活性剤と親水性非イオン界面活性剤を組み合わせて使用する。親油性非イオン界面活性剤としては、グリセリルモノステアレート、グリセリルジステアレート、・・・等のグリセリン脂肪酸エステル・・・等を挙げることができる。これらは単独または二種以上を組み合わせて使用される。配合量は本発明により得られる液晶構造体全量に対し通常0.1?5.0%、好ましくは0.5?2.0%である。・・・。親水性非イオン界面活性剤としては、・・・やPOE10?55モル付加ポリエチレングリコールモノステアレート、POE10モル付加ポリエチレングリコールモノオレエート等のPOE付加ポリエチレングリコール脂肪酸エステルや...POE20?60モル付加硬化ヒマシ油等を挙げることができる。これらは単独又は二種以上を組み合わせて使用される。・・・。配合量は本発明により得られる液晶構造体全量に対し通常1?15%、好ましくは3?10%の範囲で配合される。」(公報2頁左下欄2行?3頁左上欄1行)

オ.「本発明で用いられる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グルコース、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。これらは単独又は二種以上を組み合わせて使用される。配合量は本発明により得られる軟膏全量に対し通常1?30%、好ましくは5?20%の範囲で配合される。1%より少ない場合、液晶構造体の構造安定性が悪くなり経日とともに白濁し、15%を超える場合には当該液晶構造体を形成しない。」(公報3頁左上欄4?17行)

カ.「本発明において液晶構造体とは高級アルコールの均一一層のラメラー構造であり、この均一一層構造を破壊しない限りにおいて油分を配合することができる。本発明で用いられる油分は化粧品、医薬品、食品等の業界で一般に利用されている油分の中で常温において液状を呈するものを挙げることができる。これらは単独又は二種以上を組み合わせて使用される。油分の配合量は本発明により得られる液晶構造体全量に対し通常0.01?20%、好ましくは0.01?10%である。」(公報3頁左上欄下から3行?同頁右上欄9行)

キ.「実施例4 %
(1)セトステアリルアルコール 6
(2)パルミチン酸 0.5
(3)ステアリン酸 0.5
(4)シリコンオイル 2
(5)ジグリセリンジイソステアレート 2
(6)POE60モル付加硬化ヒマシ油 2
(7)POE45モルポリエチレングリコール モノ 2
ステアレート
(8)ソルビトール 5
(9)1,3-ブチレングリコール 10
(10)精製水 残部

実施例5 %
(1)セトステアリルアルコール 5
(2)ステアリン酸 1
(3)シリコンオイル 2
(4)アジピン酸ジイソプロピル 2
(5)グリセリンモノステアレート 0.5
(6)POE50モル硬化ヒマシ油 2
(7)POE45モルポリエチレングリコール 2
モノステアレート
(8)エタノール 10
(9)1,3-ブチレングリコール 10
(10)精製水 残部

実施例6
・・・
実施例7 %
(1)セトステアリルアルコール 6
(2)ステアリン酸 1.2
(3)オレイン酸 2
(4)アジピン酸ジイソプロピル 2
(5)グリセリンモノステアレート 0.8
(6)POE50モル硬化ヒマシ油 2
(7)POE45モルポリエチレングリコール 2
モノステアレート
(8)グリセリン 5
(9)1,3-ブチレングリコール 10
(10)精製水 残部」(公報4頁左下欄6行?5頁右上欄1行)

ク.「(実施例4、5、6、7の製法)
(1)?(7)の油層を70℃で加熱溶解し、そこへ70℃で加熱混合下(8)?(10)の水相を加え、これをホモミキサー、超音波乳化器、モントンガウリン乳化器等で処理し、その後室温まで攪拌冷却して本発明品を得た。実施例4?7の発明品は、透明性及び高温安定性良好なものであった。」(公報5頁右上欄2行?同欄9行)

ケ.「[発明の効果]
以上の実施例でわかるように本発明は、経日による結晶転移や硬度の変化がなく、しかもさっぱりした使用感で透明感のある安定な高級アルコールの液晶型外用基剤である。また、本発明品は油溶性薬物を安定に配合することができるため、各種医薬品の基剤として利用することができるものである。」(公報5頁右上欄10行?末行)

3.対比
上記2.の記載事項から、引用例には、「油分、高級アルコール、高級アルコールに対し重量で0.1?0.8倍量の脂肪酸、親油性非イオン界面活性剤、親水性界面活性剤、多価アルコール及び水から成るラメラー構造を有する液晶型乳化組成物であって、油溶性薬剤の配合安定性に優れた、薬剤を配合するための液晶型乳化組成物」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
後者の「脂肪酸」は炭素数14?22の飽和、不飽和いずれでもよい直鎖又は分岐鎖の脂肪酸であり(上記(イ))、前者の「高級脂肪酸」に含まれる。また、前者の「多価アルコール」は、エチレングリコール・・・、グルコース、ソルビトール、マルチトール等であり(上記(オ))、これらはいずれも水溶性であり、後者の「水溶性多価アルコール」に相当する。また、後者における「親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤」は、前者においても非イオン界面活性剤として、親水性非イオン界面活性剤と親油性非イオン界面活性剤のいずれでもよいものとされ([段落番号0026]?[0029])、実施例1?5に示された処方はすべて親油性非イオン界面活性剤と親水性非イオン界面活性剤とをともに配合していること、および具体的に各実施例で使用されているものについても両者間に差がないことからみて、前者における「非イオン界面活性剤」に相当する。
また、前者の「ラメラー構造(層状構造)」は、「ラメラー構造」に同義である「層状構造」を括弧書きで付記したものであり、後者の「ラメラー構造」と同じである。そして、後者の「油溶性薬剤の配合安定性に優れた、薬剤を配合するため」は、前者の「薬剤の安定配合性、・・・に優れた薬剤を配合するため」に含まれる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「油分、高級アルコール、高級脂肪酸、非イオン界面活性剤、水溶性多価アルコール及び水から成るラメラー構造(層状構造)を有する液晶型乳化組成物であって、薬剤の安定配合性に優れた、薬剤を配合するための液晶型乳化組成物」である点で一致し、一方、以下の点で相違する。
(相違点1)
前者においては、(油分+高級アルコール+高級脂肪酸)(以下、本願発明にならって「油分量」という。)の含有割合が0.5?15重量%であるのに対して、後者においてはこの点について記載のない点。
(相違点2)
前者においては、前記油分量中の油分の含有割合が3?97重量%と規定されているのに対して、後者においてはこの点について記載のない点。
(相違点3)
前者においては、前記油分量と非イオン界面活性剤の配合割合(重量比)が1:1?3:1と規定されているのに対して、後者においてはこの点について記載のない点。
(相違点4)
前者においては、前記水溶性多価アルコールの含有割合が20?42重量%と規定されているのに対して、後者においてはこの点について記載のない点。
(相違点5)
前者においては、配合される薬剤の放出性、水分保持性、温度安定性、使用性に優れたものであると記載されているのに対して、後者においてはこの点について記載のない点。

4.相違点についての判断
これらの相違点について、以下に検討する。
(相違点1?3について)
後者の実施例4、5及び7(上記1.キ)では、それぞれ、油分の配合量は2、4、4重量%、高級アルコールの配合量は6、5、6重量%、高級脂肪酸の配合量は1、1、3.2重量%、これらの合計である油分量は9、10、13.2重量%、非イオン界面活性剤の配合量は6、4.5、4.8重量%であり、油分量中の油分の含有割合は、それぞれ22、40、30重量%、油分量と非イオン界面活性剤の配合割合はそれぞれ、1.5:1、2.22:1、2.75:1となり、油分量の含有割合、油分量中の油分の含有割合、油分量と非イオン界面活性剤の配合割合のいずれも前者において規定される範囲に含まれている。
そして、好ましい配合比を検討することは当業者が適宜行うことであり、引用例の実施例4、5及び7に接した当業者が、引用発明の実施例において選択されている油分量の含有割合、油分量中の油分の含有割合、油分量と非イオン界面活性剤の配合割合を含む領域について好ましい範囲を検討し、引用発明の実施例において選択されている油分量の含有割合、油分量中の油分の含有割合、油分量と非イオン界面活性剤の配合割合をそれぞれ含む油分量の含有割合が0.5?15重量%、油分量中の油分の含有割合が3?97重量%、油分量と非イオン界面活性剤の配合割合(重量比)が1:1?3:1という範囲を選択することに格別の困難性は認められない。

(相違点4について)
後者においては、多価アルコールの含有割合について、通常は全量の1?30%、好ましくは5?20%の範囲と記載(上記1.オ)しており、また、実施例での多価アルコールの含有割合が10?15重量%であると記載されており、これらの記載に接した当業者が、液晶構造体の形成を確認しながら水溶性多価アルコールの配合量を20?42重量%と規定することに格別の困難性は認められない。
なお、請求人は、平成17年2月15日付けで提出した意見書の4頁において、多価アルコールの含有割合について、引用例には、上記記載に続けて「15%を超える場合には当該液晶構造体を形成しない。」(上記1.オ)と記載されていることをとらえて、本願発明においては水溶性多価アルコールの使用レベルは、引用例に記載の発明では液晶構造体を形成しないとした領域のものであると主張しているが、通常は1?30%と記載されており、実施例で10?15%のものが記載されている以上、15%を超えてどのあたりが液晶構造体を形成する上での限界なのかを検討すること、そしてその結果20?42重量%という範囲を見出すことに格別の困難性は認められない。

(相違点5について)
薬剤を配合するための液晶型乳化組成物として望まれる性質を記載したものであり、実質的な相違点を構成しない。

そして、後者の液晶型乳化組成物は、安定で、さっぱりした使用感の油溶性薬物を安定に配合することができるものであり(上記1.ケ)、前者が、後者に比べ、配合される薬剤の放出性、水分保持性、温度安定性、使用性において顕著に優れるものとは認められない。
なお、本願明細書においては、実施例4及び比較例4で得られたクリームを用いて酢酸デキサメタゾンの皮膚への浸透性を確認し、さらに実施例6では実施例1と比較例1の組成物を男子パネル5名に塗布してその肌あれ改善効果及び水分保持性(保湿性)を確認しているが、上記のように僅か2例の処方についてのみの効果が確認されるにとどまるので、それらをもって、本願発明で規定する全ての範囲にわたって、本願発明が奏する効果ということはできない。また、広範な組成を有する本願発明の組成物がすべて所望の液晶型乳化組成物を形成するものとは、本願明細書の記載からは認められない。例えば、本願明細書の比較例4は、実施例4と同じ組成を有するが液晶構造を形成していない。
また、請求人の提出した比較実験及びこの比較実験についての当審の審尋に対する請求人の回答を参酌したが上記判断に影響するものではない。

なお、請求人は、本願発明を、攪拌冷却により45℃まで冷却したものに35℃より低い温度で攪拌衝撃を与えて形成した液晶型乳化組成物に減縮する補正をしたいと述べているが、そもそも補正の手続には時期的な制限がありこの主張は時宜を逸したものであり許されないものであるし、さらにこのような補正は、配合成分とその配合量、組成物の構造及び性質で特定された組成物発明を製造方法で限定しようとするものであり平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮にはあたらないものであり、審判請求時には許されないものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-11 
結審通知日 2008-04-22 
審決日 2008-05-08 
出願番号 特願2002-13760(P2002-13760)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼岡 裕美  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 谷口 博
穴吹 智子
発明の名称 液晶型乳化組成物  
代理人 樋口 盛之助  
代理人 水野 喜夫  
代理人 原 慎一郎  
代理人 原 慎一郎  
代理人 樋口 盛之助  
代理人 水野 喜夫  
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