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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1180409
審判番号 不服2005-20783  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-27 
確定日 2008-07-02 
事件の表示 特願2002- 54440「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月12日出願公開、特開2003-257942〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年2月28日の出願であって、平成17年8月25日付で拒絶査定がなされ、平成17年10月27日付で審判請求がなされ、平成17年11月11日付で手続補正がなされ、当審にて、平成19年11月30日付で拒絶理由が通知され、平成20年2月19日付で手続補正がなされたものである。

2.平成20年2月19日付の手続補正について
結論
平成20年2月19日付の手続補正を却下する。

理由
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。
「 【請求項1】 半導体基板の上方に下地絶縁膜を形成する工程と、
前記下地絶縁膜上に第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の上に強誘電体材料又は高誘電体材料からなる誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜の上に第2導電膜を形成する工程と、
第1雰囲気中において、前記第2導電膜を選択的にエッチングして前記第2導電膜をキャパシタ上部電極にする工程と、
第2雰囲気中において、前記誘電体膜を選択的にエッチングして前記誘電体膜をキャパシタ誘電体膜にする工程と、
第3雰囲気中において、前記第1導電膜を選択的にエッチングして前記第1導電体膜をキャパシタ下部電極にする工程とを有し、
前記第1雰囲気と前記第3雰囲気はHBrとO_(2)を含みO_(2)濃度が80%以上90%以下の混合ガスであり、前記第2雰囲気は塩素とアルゴンからなると共に、前記アルゴンの流量が前記塩素の流量より多い混合ガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である第2雰囲気について、「塩素を含むガス」を、「塩素とアルゴンからなると共に、前記アルゴンの流量が前記塩素の流量より多い混合ガス」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
当審の拒絶理由に引用された特開平11-330050号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a:「【0015】本発明のさらに別の誘電体素子の形成方法は、A.半導体基板上に拡散バリア層と下部電極層と誘電体薄膜と上部電極層とをこの順で形成し、あるいは、半導体基板上に密着層と拡散バリア層と下部電極層と誘電体薄膜と上部電極層とをこの順で形成し、そして該上部電極層上に、マスクとなる耐エッチング膜をパターニングする工程と;B.該耐エッチング膜に覆われていない領域の該上部電極層をドライエッチングする工程とを含み、該ドライエッチング工程Bが、d.エッチング開始時には第6ハロゲンガス単独であり、かつ、エッチング終了時には第6ハロゲンガスと酸化性ガスとが所定の流量比となるように、酸化性ガスを段階的に導入しながら、第6ハロゲンガスと酸化性ガスとの混合ガスでドライエッチングを行う工程を含む。」
b:「【0040】本発明に用いられる基板1は、半導体装置および集積回路などの基板として使用されるものであれば特に限定されず、任意の適切な基板が用いられる。このような基板としては、シリコン等の半導体基板、GaAs等の化合物半導体基板、・・・、半導体基板(特に、シリコン基板)が好ましい。
【0041】基板1上には、下部電極構造30が設けられる。下部電極構造30は、誘電体素子のキャパシタの電極となる。下部電極構造30は、・・・層間絶縁膜(いずれも図示せず)を備えた基板に形成してもよい。好ましくは、図1に示すように、下部電極構造30は、絶縁用酸化膜(NSGとも称する)2が設けられた基板上に設けられる。」
c:「【0057】(実施形態2)本発明の別の実施形態による誘電体素子の形成方法を説明する。下部電極構造30および耐エッチング膜5の形成は実施形態1と同様であるので、説明は省略する。以下、下部電極層4/拡散バリア層3のエッチングについて詳細に説明する。実施形態1と同様に、下部電極層4がIr膜であり拡散バリア層3がTaSiN(Ta_(0.85)Si_(0.15)N_(0.41))膜である場合について説明する。
【0058】本実施形態では、・・・、酸化性ガスを段階的に導入しながら、第6ハロゲンガスと酸化性ガスとの混合ガスでエッチングを行う。
【0059】第6ハロゲンガスとしては、例えば、HCl、・・・、HBr、・・・、またはこれらの混合ガスが挙げられ、・・・る。酸化性ガスとしては、酸素ガス、N_(2)Oガス、またはこれらの混合ガスが挙げられ、好ましくは酸素ガスである。・・・」
d:「【0067】下部電極構造30(下部電極層4)上に、誘電体薄膜13を形成する。誘電体薄膜を形成する材料としては、例えば、酸化物強誘電体PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、およびBi系強誘電体が挙げられる。・・・
【0070】次に、強誘電体薄膜13上に、上部電極層14を形成する。下部電極層4と強誘電体薄膜13と上部電極層14とにより、強誘電体キャパシタが構成される。・・・
【0071】次いで、上部電極層14上に、実施形態1と同様にして耐エッチング膜5を形成する。
【0072】さらに、実施形態1および/または2に記載のエッチング手順を用いて、上部電極層14を加工する。・・・上部電極層14/誘電体薄膜13を高い選択比で、かつ、側壁残渣を発生させずに、上部電極層14を加工することができる。特に、上部電極層14下部の誘電体薄膜13が酸化物である場合には、エッチングガスに酸化性ガスを用いることにより、上部電極層14/誘電体薄膜13のより高い選択比が得られる。
【0073】・・・
【0074】さらに、必要に応じて、誘電体薄膜13を任意の適切な方法(例えば、ECRエッチング装置を用い、ガスとしてArおよびCl_(2)を用いる、圧力1.4mmTorr、RFPOWER=150Wでのドライエッチング)でパターニングする。パターニングされた誘電体薄膜をマスクとして、実施形態1および2に記載の手順で、下部電極層4/拡散バリア層3を加工する。
【0075】さらに、必要に応じて、上部電極層14の上に、目的に応じた所望の配線および絶縁膜を形成することにより、例えば、強誘電体キャパシタが得られる。
【0076】本発明の方法により形成される誘電体素子は、それ自身が誘電体素子(例えば、強誘電体薄膜素子)として用いられる。あるいは、この誘電体素子は、半導体装置の構成要素の一つとして、集積回路ウェハを構成する基板上で、集積回路の回路部に設けられる。本発明の方法はまた、誘電体素子を不揮発性メモリの容量部としてMFMIS-FET、MFS-FET等を形成する際の電極の加工方法として用いることができる。さらに、本発明の方法は、強誘電体素子をFETのゲート部に適用し、ゲート絶縁膜、ソース/ドレイン領域等を組み合わせて形成し、MFMIS-FET、MFS-FET等を形成する際の電極の加工方法として使用することもできる。」

同じく、当審の拒絶理由に引用された特開平8-78396号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
e:「第3実施例:実施例1と同様の膜構造を持つ試料を用い、且つ同様の装置で、酸素ガスに臭化水素ガスを添加したときのRuO_(2)膜2のエッチレートと臭化水素ガス添加率の関係を図7に示す。その際の条件は、ガス総流量を80sccmとし、圧力を5mTorr、マイクロ波パワーを220W、基板に印加した2MHz の高周波パワーを50W、基板温度を20℃とした。図7より、臭化水素ガスの添加率が15%から50%の範囲内でRuO_(2)膜2のエッチレートは100nm/分以上となる。そして添加率25%付近で最大のエッチレート147nm/分が得られた。また、そのエッチング形状は異方的なものとなった。」(第20段落)

(3)対比
引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
「絶縁用酸化膜が設けられた半導体基板上に、キャパシタの電極となる下部電極層が設けられ、下部電極層上に、酸化物強誘電体である誘電体薄膜を形成し、誘電体薄膜上に、上部電極層を形成し、下部電極層と誘電体薄膜と上部電極層とにより、強誘電体キャパシタを構成した、半導体装置の製造方法において、
上部電極層上に、耐エッチング膜を形成し、HBrと酸素ガスとの混合ガスでエッチングを行い、
誘電体薄膜を、ガスとしてArおよびCl_(2)を用いるドライエッチングでパターニングし、パターニングされた誘電体薄膜をマスクとして、下部電極層を加工する半導体装置の製造方法。」

本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「絶縁用酸化膜」、「下部電極層」、「誘電体薄膜」、「上部電極層」、「HBr、酸素ガスとの混合ガス」、「ArおよびCl_(2)を用いたガス」が、本願補正発明の「下地絶縁膜」、「第1導電膜」、「強誘電体材料からなる誘電体膜」、「第2導電膜」、「第1雰囲気」および「第3雰囲気」、「第2雰囲気」に相当する。
また、キャパシタを構成する電極及び誘電体層は、それぞれの工程を経て形成されるものである。

よって、両者は、以下の点で一致し、下記の点で相違する。
一致点
「半導体基板の上方に下地絶縁膜を形成する工程と、
前記下地絶縁膜上に第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の上に強誘電体材料からなる誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜の上に第2導電膜を形成する工程と、
第1雰囲気中において、前記第2導電膜を選択的にエッチングして前記第2導電膜をキャパシタ上部電極にする工程と、
第2雰囲気中において、前記誘電体膜を選択的にエッチングして前記誘電体膜をキャパシタ誘電体膜にする工程と、
第3雰囲気中において、前記第1導電膜を選択的にエッチングして前記第1導電体膜をキャパシタ下部電極にする工程とを有し、
前記第1雰囲気と前記第3雰囲気はHBrとO_(2)を含む混合ガスであり、前記第2雰囲気は塩素とアルゴンからなる混合ガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法。」

相違点1
本願補正発明では、「第1雰囲気と前記第3雰囲気はO_(2)濃度が80%以上90%以下の混合ガス」であるのに対し、引用発明では、濃度について限定のない点。

相違点2
第2雰囲気について、本願補正発明では、「塩素とアルゴンからなると共に、前記アルゴンの流量が前記塩素の流量より多い混合ガス」であるのに対し、引用発明では、流量についての限定のない点。

(4)判断
相違点1について
引用文献2において、キャパシタ電極であるRuO_(2)膜のエッチング工程について、「酸素ガスに臭化水素ガスを添加したときのRuO_(2)膜2のエッチレートと臭化水素ガス添加率の関係を図7に示す。・・・図7より、臭化水素ガスの添加率が15%から50%の範囲内でRuO2膜2のエッチレートは100nm/分以上となる。」と記載されている。臭化水素ガスの添加率が15%から50%の範囲内ということは、酸素ガスが、50%から85%含まれるということであり、O_(2)濃度を80%以上とすることが記載されている。そして、引用文献2記載の発明は、強誘電体キャパシタの電極の製造方法に関するものであるので、引用発明に適用することは、当業者が容易になしうるものである。

相違点2について
強誘電体のエッチングにおいて、塩素とアルゴンからなると共に、前記アルゴンの流量が前記塩素の流量より多い混合ガスでエッチングすることは、下記文献1、2、3に記載されているように周知であり、当業者が適宜なしうるものである。
1.特開平8-181126号公報(第37段落参照)
2.特開平10-340893号公報(第43段落参照)
3.特開2001-267302号公報(第18段落参照)

よって、本願補正発明は、引用文献1、引用文献2に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について。
平成20年2月19日付手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年11月11日手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 半導体基板の上方に下地絶縁膜を形成する工程と、
前記下地絶縁膜上に第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の上に強誘電体材料又は高誘電体材料からなる誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜の上に第2導電膜を形成する工程と、
第1雰囲気中において、前記第2導電膜を選択的にエッチングして前記第2導電膜をキャパシタ上部電極にする工程と、
第2雰囲気中において、前記誘電体膜を選択的にエッチングして前記誘電体膜をキャパシタ誘電体膜にする工程と、
第3雰囲気中において、前記第1導電膜を選択的にエッチングして前記第1導電体膜をキャパシタ下部電極にする工程とを有し、
前記第1雰囲気と前記第3雰囲気はHBrとO_(2)を含みO_(2)濃度が80%以上90%以下の混合ガスであり、前記第2雰囲気は塩素を含むガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法。」

(1)引用例
当審の拒絶の理由に引用された引用文献1、2の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の第2雰囲気において、「塩素とアルゴンからなると共に、前記アルゴンの流量が前記塩素の流量より多い混合ガスで」との構成を省いて、「塩素を含むガス」であるとしたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用文献1、2、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用文献1、2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-13 
結審通知日 2008-04-08 
審決日 2008-04-21 
出願番号 特願2002-54440(P2002-54440)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 淳一今井 拓也  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 小川 武
正山 旭
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 岡本 啓三  

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