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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1180411
審判番号 不服2005-21499  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-07 
確定日 2008-06-30 
事件の表示 平成 9年特許願第265492号「印画紙用プリントヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月13日出願公開、特開平11- 99703〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年9月30日に出願したものであって、平成17年9月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月6日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年12月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲(請求項数2)についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】透光性の基板と、主走査方向に平行に前記基板の内面に形成された第1帯状陽極導体と第2帯状陽極導体と、前記両帯状陽極導体に形成された複数の透過孔に被覆された蛍光体と、前記蛍光体から離れて設けられた制御電極及び線状陰極と、前記基板の外面に前記蛍光体に対向して配置されたカラーフィルター及びレンズとを備え、前記主走査方向に直角な副走査方向に搬送される印画紙を露光する印画紙用プリントヘッドにおいて、前記第1帯状陽極導体の透過孔と第2帯状陽極導体の透過孔が前記主走査方向において重なることなく隙間0.1?0.3μmだけあけて千鳥状に配置されていることを特徴とする印画紙用プリントヘッド。」
と補正された。(下線は補正箇所を示すために当審で付した。)
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、主走査方向において重なることのない「第1帯状陽極導体の透過孔と第2帯状陽極導体の透過孔」の配置について、「近接するように」と特定していたのを、「隙間0.1?0.3μmだけあけて」と限定したものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物

(a)原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-92622号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.「透光性の基板と、主走査方向に対して平行となるように前記基板の内面に形成された帯状陽極導体をそれぞれ備えて前記基板上で副走査方向に並んだ複数の発光ブロックと、前記各発光ブロック間で互いに対応する位置関係の各帯状陽極導体において主走査方向の同一位置にそれぞれ形成された同一形状の透孔と、前記各透孔内に同一種類の蛍光体を被着して形成された発光ドットと、前記基板の上方に設けられた制御電極及び線状陰極と、前記基板の内面側に封着されて前記制御電極及び線状電極を覆う容器部と、前記基板の外面に前記各発光ブロックごとに設けられた色彩の異なるカラーフィルタとを有するカラープリントヘッド。」(【請求項1】)

イ.「前記各発光ブロックにおいて、斜めに並んだ発光ドットの列が主走査方向に並列するように、複数本の前記帯状陽極導体が副走査方向に同一ピッチで並設され、隣接する帯状陽極導体間で主走査方向の位置が順次ずれるように前記透孔が主走査方向に同一ピッチで形成された請求項1記載のカラープリントヘッド。」(【請求項2】)

ウ.「図1?図6によって一実施例のカラープリントヘッドについて説明する。図1に示すように、ガラスからなる透光性の基板1の内面にはアルミニウム薄膜からなる帯状陽極導体2が形成されている。帯状陽極導体2は、主走査方向に平行であり、副走査方向に沿って所定間隔をおいて4本が並設され、ひとつの発光ブロックを構成している。発光ブロックは、副走査方向に沿ってR,G,Bの3組設けられている。」(段落【0015】)

エ.「図1に示すように、前記各帯状陽極導体2には、同一の正方形状の透孔3が透孔3の4倍の長さをピッチとして主走査方向に沿って複数形成されている。各発光ブロックにおいて、透孔3は隣接する帯状陽極導体2,2間で主走査方向の位置が前記ピッチの1/4づつずれるように形成されている。また隣接する発光ブロックR,G,B間においては、互いに対応する位置関係の帯状陽極導体2には主走査方向について同一の位置に透孔3が形成されている。前述したようなパターンの帯状陽極導体2及び透孔3は、スパッタリング法でアルミニウムの薄膜をベタに形成し、これをフォトリソグラフィ法でパターン形成することによって高精度に得られる。」(段落【0016】)

オ.「図2に示すように、前記各透孔3にはフォトリソグラフィ法により蛍光体4が設けられており、多数の発光ドット5が構成されている。蛍光体4はZnO:Znであり、各発光ブロックR,G,Bで共通である。ZnO:Znは抵抗が小さいので、蛍光体4は透孔3の内周壁に接してさえいれば、特に導電物質を混合しなくても帯状陽極導体2と十分な電気的導通が得られる。また発光ドット5の発光形状は透孔3の位置及び形状に合致し、各発光ドット5ごとに面積が均一なので発光ドット5ごとに同一の光量が得られる。なお、本実施例では帯状陽極導体2の上面にも蛍光体4が被着している。」(段落【0017】)

カ.「前記第1制御電極10の上方には、各発光ブロックR,G,Bごとに主走査方向に沿って線状陰極14が設けられる。そして、基板1の上面には、側面板と背面板からなる箱形の容器部15が封着され、前記各種電極等を収納する外囲器16が構成されている。外囲器16内は高真空状態に排気されている。また、背面板と側面板には、外光の侵入を遮るための遮蔽膜が設けられ、フレアを防止している。」(段落【0021】)

キ.「図6に示すように、各発光ブロックR,G,Bの各発光ドット5からの光は、R,G,Bフィルタr,g,bを通り、レンズ17によってフィルム18上の所定位置に集められる。発光駆動に合せてプリントヘッドを矢印で示す副走査方向に移動させれば、分解された各色の発光ドットからの同一形状の光が同一位置に集められ、所望のカラー画像がフィルム18上に形成される。」(段落【0024】)

ク.図1から「副走査方向」は「主走査方向」に直角な方向であることが看取できる。

ケ.図1から「透孔3」は千鳥状に配置されていることが看取できる。

コ.図6から「制御電極7,10」及び「線状陰極14」が、「蛍光体4」から離れて設けられていることが看取できる。

上記エ.記載の「透孔3」は、「同一の正方形状の透孔3が透孔3の4倍の長さをピッチとして主走査方向に沿って複数形成され」、かつ、「隣接する帯状陽極導体の間2,2間で主走査方向の位置が前記ピッチの1/4づつずれる」ものであるから、即ち、隣接する帯状陽極導体間で、「透孔3」は、「透孔3」の長さ分づつずれて形成されている。つまり、「透孔3」は、主走査方向に重ならず、かつ隙間無く配置されるものである。

上記オ.の「帯状陽極導体2の上面にも蛍光体4が被着している。」との記載から、蛍光体4は透孔3に被覆されているものと認められる。

上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。

「透光性の基板1と、主走査方向に平行に前記基板1の内面に形成された4本の帯状陽極導体2と、各帯状陽極導体2に複数形成された同一の正方形状の透孔3に被覆された蛍光体4と、蛍光体4から離れて設けられた制御電極7,10及び線状陰極14と、基板の外面に設けられたカラーフィルター及びレンズ17とを備え、主走査方向に直角な副走査方向に移動して、前記透孔3と前記蛍光体4から形成されて発光形状が前記透孔3の位置及び形状に合致する発光ドット5からの光を集め、所望のカラー画像をフィルム18上に形成するカラープリントヘッドにおいて、
4本の帯状陽極導体2間で、各帯状陽極導体2の透孔3が主走査方向に重ならず、かつ、隙間無く千鳥状に配置されているカラープリントヘッド」

(b)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-136449号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

サ.「本発明はさらに、記録素子の配列方向の記録ピッチに対する1記録素子の配列方向の照射サイズの比率を0.7以上1.2以下としたことを特徴とする請求項12の構成によって、画像のざらつき感の抑制や鮮鋭性の向上を達成できるようにするとともに、特に低濃度付近及び高濃度付近での階調の連続性を向上させることができ、より高画質の画像を形成することを可能にする。なお、本発明における照射サイズは、記録後の感光材料上の形成画像サイズではなく、1記録素子から照射された光像の感光材料面上でのサイズを意味している。」(段落【0024】)

シ.「なお、各記録ヘッド30a?30cには一列または複数列のアレイ状光源が使用され、赤色記録ヘッド30aには従来から一般的に採用されているLED光源が、また緑色記録ヘッド30b及び青色記録ヘッド30cには、比較的高輝度、高速応答でカラーフィルタにより容易に色分解できる真空蛍光プリントヘッド(Vacuum Fluorescent Print Head以後VFPHと略称する)が採用される。印画紙2はロール状に限らず、カット紙であっても差し支えない。印画紙2の移動手段はベルトにのせて搬送する手段など、他の手段であってもよい。」(段落【0030】)

ス.「記録素子アレイ34の各記録素子から照射された光はセルフォックレンズアレイ35を介して印画紙2上に結像する。ここで、記録素子アレイ34の配列方向で1画素の照射サイズをa、記録ピッチをbとし、該配列方向とは直角方向に(走査方向)で1画素の照射サイズをA、記録ピッチをBとした場合に、照射サイズ及び記録ピッチの画質に対する影響について実験を行った。各記録素子の露光量の補正は、前記実験例と同様な方法で行う。」(段落【0130】)

セ.「まず、各色の記録素子アレイ34のサイズと記録ピッチを以下のようにし、図5で説明した方式で各色階調が0?4095のウェッジパターンを露光出力した。その条件を表4に示す。」 (段落【0131】)

ソ.【表4】(段落【0132】)

タ.「上記条件にて、各色ウェッジパターン及び前述の実験例における形成画像2のごとき自然画像をそれぞれ出力し、これを目視にて評価した。その結果No.2、3、6は、No.1、5に比較して画像のざらつき感の点で、No.4、7に比較して画像の鮮鋭性の点で、それぞれ優れた良好な高画質の画像を得ることができた。さらにNo.2、3、6は、図8に示すように、階調変化に対して濃度変化が滑らかな連続階調表現を可能にした。」(段落【0133】)

チ.「図16の記録ヘッド30は、記録素子が千鳥の2列に交互配列された記録素子アレイ34aと、その各記録素子の発光をハロゲン化銀感光材料面に結像するセルフォックレンズアレイ35aとからなり、図17の記録ヘッド30は、記録素子が4列に並んでパネル状に配列された記録素子アレイ34bと、その各記録素子の発光をハロゲン化銀感光材料面に結像するセルフォックレンズアレイ35bとからなる。これらの記録ヘッド30を用いることによって、図6の記録ヘッド30を用いるよりも画像形成速度を上げることができる。」(段落【0146】)

(3)対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「透孔3」は、本願補正発明の「透過孔」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「4本の帯状陽極導体」は、本願補正発明の「第1帯状陽極導体と第2帯状陽極導体」と、複数本の帯状陽極導体である点で共通し、
刊行物1記載の発明の「4本の帯状陽極導体間で、各帯状陽極導体の透孔が主走査方向に重ならず」は、本願補正発明における「第1帯状陽極導体の透過孔と第2帯状陽極導体の透過孔が前記主走査方向において重なることなく」と、複数本の帯状陽極導体の間で、各帯状陽極導体の透過孔が主走査方向に重ならない点で共通する。
そして、刊行物1記載の発明の「フィルム18」と、本願補正発明の「印画紙」とは、光に感応する媒体である点で共通し、
刊行物1記載の発明の「発光ドット5からの光を集め、所望のカラー画像をフィルム18上に形成する」ことと、本願補正発明における「印画紙を露光する」こととは、光に感応する媒体を光照射する点で共通し、
刊行物1記載の発明の「カラープリントヘッド」と、本願補正発明の「印画紙用プリントヘッド」とは、「プリントヘッド」である点で共通している。
よって両者は、「透光性の基板と、主走査方向に平行に前記基板の内面に形成された複数本の帯状陽極導体と、各帯状陽極導体に形成された複数の透過孔に被覆された蛍光体と、蛍光体から離れて設けられた制御電極及び線状陰極と、前記基板の外面に前記蛍光体に対向して配置されたカラーフィルター及びレンズとを備え、光に感応する媒体を光照射するプリントヘッドにおいて、
複数本の帯状陽極導体の間で、各帯状陽極導体の透過孔が主走査方向において重なることなく千鳥状に配置されているプリントヘッド」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
複数本の帯状陽極導体に関して、本願補正発明では「第1帯状陽極導体と第2帯状陽極導体」からなり、両者の透過孔が千鳥状に配置されているのに対して、刊行物1記載の発明においては、4本の帯状陽極導体からなり、帯状陽極導体の透孔(本願補正発明の「透過孔」)が千鳥状に配置されている点。

[相違点2]
複数本の帯状陽極導体の間で、主走査方向において重なることなく配置されている各帯状陽極導体の透過孔に関して、本願補正発明では「隙間0.1?0.3μmだけあけて」と特定しているのに対して、刊行物1記載の発明では「隙間無く配置されている」点。

[相違点3]
「光に感応する媒体を光照射するプリントヘッド」に関して、本願補正発明では「主走査方向に直角な副走査方向に搬送される印画紙を露光する印画紙用プリントヘッド」と特定されるのに対して、刊行物1記載の発明においては、「所望のカラー画像をフィルム18上に形成する」ものの、本願補正発明のような特定を有さない点。


(4)判断
上記相違点1について検討する。
透過孔を所望の千鳥状に配置するに際して、帯状陽極導体の本数を設定することは、解像度、画像形成速度、装置自体の規模等に応じて当業者が適宜選択し得る事項である点を鑑みれば、刊行物1記載の発明において、複数本の帯状陽極導体として、4本の帯状陽極導体にかえて「第1の帯状陽極導体と第2の帯状陽極導体」を採用し、両者の透過孔が千鳥状に配置される構成とすることは、刊行物1記載の発明の趣旨を何ら変えるものではなく、当業者にとっては設計的変更の範囲を超えるものではない。

上記相違点2について検討する。
刊行物2は、刊行物1記載の発明と同様、記録素子アレイから照射された光が、レンズを介して印画紙上に結像して画素のアレイを形成する技術に関し(なお「記録素子」の配置は、刊行物1記載の発明及び本願補正発明では、「透過孔」の配置に対応する)、記録ピッチに対する1画素の照射サイズの比率を0.7以上1.2以下の範囲で変化させ、高画質な画像を得ることが記載されている。該比率の変化に伴い、印画紙上の主走査方向の画素間の隙間が変化するが、例えば表4を参照すれば、該隙間の具体例として、17.5μm(No.2における「b-a」、ここで「比率a/b」は0.72)、-0.75μm(No.3における「b-a」、ここで「比率a/b」は1.12)が実施されており、主走査方向における印画紙上の画素の配置は、互いに重なる状態から重ならない状態まで、適宜変化させることが示されている。さらに、レンズとしてセルフォックレンズアレイを採用し、記録素子アレイとして、記録素子が千鳥の2列に交互配列された記録素子アレイを採用することが記載されており、セルフォックレンズが等倍結像素子であるという周知事項を考慮すれば、画素間の隙間は、千鳥の2列に交互配列される記録素子の主走査方向の隙間によって規定される。よって千鳥状に配置される記録素子の主走査方向の隙間についても、前述した具体例に相当する範囲にわたって開示されていると認められる。
一方、本願補正発明における透過孔の主走査方向の隙間に関する「0.1?0.3μm」との数値限定については、本願明細書中では、解像度に関連させて記載されているにも拘わらず(例えば、段落【0004】「・・この構成では、例えば、隣接する光ビームドットを、約200dpiの解像度、つまり1ドットの幅が約0.12mmの場合で、0.1?0.3μm程度の隙間が生じる程度に近接させることで、二重露光の発生が抑えられ、濃淡縞が目立たないプリントが得られる。これは、印画紙画像における白色は黒色よりはるかに目立たないという視覚的特徴に鑑み、露光の弱い部分は白色として現れるという印画紙露光の特性を利用したものである。」、段落【0007】「・・この実施の形態では、蛍光プリントヘッド60の解像度が約200dpiであり、透過孔62a、63aの幅:Lが約0.12mmで、配設ピッチは0.24mmに0.2?0.6μm程度加えた値となっている。つまり、図2に示すように、第1帯状陽極導体62の透過孔62aと第2帯状陽極導体63の透過孔63aが主走査方向に直角な副走査方向において重なることなく、わずかな隙間:ΔL=0.1?0.3μmだけあけて近接するように千鳥状に配置されている。」等参照)、本願補正発明においては解像度の規定を伴うものでない。さらに、仮に、本願補正発明にて解像度が規定されたとしても、最終的に形成されるカラー画像における視覚的効果は、露光量、印画紙の材料等、現像処理過程に至る具体的構成を伴って初めて発現されるものである。よって本願補正発明における、透過孔の主走査方向の隙間に関する数値限定に、格別の技術的意義は認められない。
本願補正発明の数値限定が格別の技術的意義を備えるものでなく、かつ、千鳥状に配置される記録素子の主走査方向の隙間については、「0.1?0.3μm」を含むより広い範囲にわたって刊行物2に開示されているから、刊行物1記載の発明において上記相違点2のような構成を採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことである。

上記相違点3について検討する。
光に感応する媒体を光照射するプリントヘッドにおいて、主走査方向に直角な副走査方向に搬送される印画紙を露光することは従来周知であり(例えば特開平6-266019号公報等)、上記相違点3に係る構成を採用することは、当業者にとって容易である。そしてその際、プリントヘッドを「印画紙用プリントヘッド」と称することは、単なる名称の変更程度である。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1、2記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、
同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年12月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年8月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「透光性の基板と、主走査方向に平行に前記基板の内面に形成された第1帯状陽極導体と第2帯状陽極導体と、前記両帯状陽極導体に形成された複数の透過孔に被覆された蛍光体と、前記蛍光体から離れて設けられた制御電極及び線状陰極と、前記基板の外面に前記蛍光体に対向して配置されたカラーフィルター及びレンズとを備え、前記主走査方向に直角な副走査方向に搬送される印画紙を露光する印画紙用プリントヘッドにおいて、前記第1帯状陽極導体の透過孔と第2帯状陽極導体の透過孔が前記主走査方向において重なることなく近接するように千鳥状に配置されていることを特徴とする印画紙用プリントヘッド。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「第1帯状陽極導体の透過孔と第2帯状陽極導体の透過孔」が主走査方向において重なることなく近接して配置される点について、「隙間0.1?0.3μmだけあけて」と限定していたのを省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-30 
結審通知日 2008-05-01 
審決日 2008-05-16 
出願番号 特願平9-265492
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 佐藤 宙子
番場 得造
発明の名称 印画紙用プリントヘッド  
代理人 北村 修一郎  

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