• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1180412
審判番号 不服2005-22824  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-25 
確定日 2008-06-30 
事件の表示 平成 6年特許願第 36674号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月26日出願公開、特開平 7-246266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願は、平成6年3月8日の出願であって、平成15年12月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成16年3月8日付けで手続補正がされ、平成17年10月25日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成17年11月25日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年11月25日付けで手続補正がされたものである。

第2.平成17年11月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「フロントパネルに設けた画像表示部に、複数の図柄列にそれぞれ配設された複数の図柄を順次高速で移動表示した後、予め行われた図柄の抽選結果にもとづいて、該図柄列における図柄の移動表示を停止制御させ、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様であった場合に、遊技者に特別遊技を行わせるとともに、確率抽選の結果が予め定めた特別の条件と一致する場合には、特別賞態様が発生する確率を通常時よりも高確率に変動させるスロットマシンであって、
図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率となるように当たり図柄を配設した通常確率図柄列群を記憶している通常確率図柄列群記憶手段と、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率と比較して高確率となるように当たり図柄を配設した高確率図柄列群を記憶している高確率図柄列群記憶手段と、
図柄の抽選上における特別賞態様の発生確率を、通常確率又は高確率のいずれかに決定する発生確率決定手段と、
発生確率決定手段において決定された発生確率にもとづいて、上記通常確率図柄列群記憶手段に記憶している通常確率図柄列群と、上記高確率図柄列群記憶手段に記憶している高確率図柄列群とを、選択的に切り替えて画像表示部に表示させることにより、確率変動を行う図柄列群表示切替手段と、
予め行われた図柄の抽選結果にもとづいて、図柄の移動表示を停止させるためのストップスイッチの遊技者による操作時から所定数の図柄の移動範囲内で図柄の移動表示を停止させることで、図柄の停止表示態様が、特別賞態様となるように、該図柄列における図柄の移動表示を停止させる制御手段と、を有し、
前記高確率図柄列群は、前記特別賞態様となる当たり図柄の数を前記通常確率図柄列群よりも多く配置することにより、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率よりも高確率となるようにしたことを特徴とするスロットマシン。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「高確率図柄列群」について「前記特別賞態様となる当たり図柄の数を前記通常確率図柄列群よりも多く配置することにより、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率よりも高確率となるようにした」との限定を付加するものであり、平成6年改正前特許法17条の2第3項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前特許法17条の2第4項において準用する同法126条3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献について
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-85978号公報(公開日:昭和61年5月1日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1-1
「(1)シンボル列をそれぞれ持つた複数のリールを表示するCRTを備え、移動中の各リールが停止した後に、各リールと入賞ラインとの交点にある複数のシンボルの組合せが複数の入賞シンボル配列のいずれか1つと一致した場合に、その入賞シンボル配列に応じた枚数のコインが排出されるビデオタイプスロットマシンにおいて、
整数Mから整数Nまでの乱数エリアの中から1個の乱数を取り出す手段、
前記複数の入賞シンボル配列を複数のグループに分類し、これらの入賞グループの種類と前記乱数エリアに属する少なくとも1個の乱数値との関係を記憶した入賞確率テーブルメモリ、
前記入賞確率テーブルメモリを参照し、前記取り出した乱数値が属するグループの種類を判定する判定手段、
前記判定手段で判定されたグループに応じたヒットリクエスト信号を発生するヒットリクエスト信号発生手段、及び
前記ヒットリクエスト信号に応じて前記各リールの停止をコントロールする手段、
を備えてなることを特徴とするビデオタイプスロットマシン。」(1頁左下欄5行?右下欄7行)

・記載事項1-2
「(9)前記ストップボタンの操作時点より、n個のシンボル分の範囲内でリールの移動が停止されることを特徴とする特許請求の範囲第8項記載のビデオタイプスロットマシン。
(10)前記数値「n」は「4」であることを特徴とする特許請求の範囲第9項記載のビデオタイプスロットマシン。」(2頁右上欄3?9行)

・記載事項1-3
「前記前面ドア20には、CRT21に合致する部分に窓20aが形成されており、この窓20aを通してCRT21の画面に表示された3個のリール(シミュレートした平面的なリールパターン)R1?R3を観察することができる。」(3頁右上欄16行?左下欄1行)

・記載事項1-4
「前記スタートレバー26は、コインの投入後に、これを下方に押し倒せば、CRT21に表示されたリールR1?R3が同時に移動を開始し、それにより各シンボル列がCRT21の画面で縦方向に動く。」(3頁左下欄17行?右上欄1行)

・記載事項1-5
「全てのリールR1?R3が停止したと判断された時には、ゲームエンドとなり、第5図に示すフローチャートが実行される。
第5図は、入賞判定処理、コインのペイアウトを実行するフローチャートである。CRT21の画面に表示された3個のリールR1?R3のシンボルは予め分っているから、有効化された入賞ラインにあるシンボルの配列も知ることができる。このシンボル配列が入賞シンボル配列であるかどうかを後述のROMメモリと照合する。そして入賞している場合にはリクエスト減算処理を行なったうえ、コイン支払いのためのホッパーを駆動してコインを払い出す。」(4頁左上欄20行?右上欄13行)

・記載事項1-6
「破線ブロック40はCPU50、ROM(リードオンリメモリ)51、RAM(ランダムアクセスメモリ)52を含むメインコントロール部である。ROM51には各リール毎のシンボル配列表、入賞シンボル配列及びコイン支払い枚数表の他、実行されたゲームに関して入賞させるか否かを決定し、入賞させる場合にその入賞の高低に応じたヒツトリクエストを発生させる入賞確率テーブルなどがストアされている。」(4頁右上欄18行?左下欄6行)

・記載事項1-7
「破線ブロック41はシミュレートしたリールを表示する表示部であり、周知のように、キャラクタメモリ42、CRTコントローラ43、CRT21とから構成されている。前記キャラクタメモリ42は、シンボル4と、この周囲にあってリールの一部を構成する枠部とからなるパターンがシンボルの種類毎に記憶されている。CRTコントローラ43は、前述したROM51のシンボル配列テーブルから順次読み出したシンボルコードに応じて、キャラクタメモリ42から所望のパターンを読み出して、CRT21に送り、シミュレートしたリールR1?R3をCRT21に表示する。」(4頁右下欄2?14行)

・記載事項1-8
「ゲーム開始後例えばスタートレバー26の操作後の所定のタイミング信号(この時点で各リールR1?R3は定常速度で移動されることが好ましい。)により、その時点で乱数値メモリ84に存在する乱数値をそのゲームの乱数値として決定する。こうして決定された乱数値は第9図のフローチャートに従い、後述する入賞確率テーブルと照合され、大ヒツトに該当する数値であれば大ヒツトリクエスト信号の発生、また中ヒツトに該当する数値であれば中ヒツトリクエスト信号の発生というように小ヒツトまでの判断、処理がなされ、いずれかのヒツトリクエストが発生されるか、あるいはヒツトリクエストなしかがチェックされることになる。」(5頁左下欄19行?右下欄12行)

・記載事項1-9
「これまでに述べてきた大、中、小の各ヒツトの例としては、大ヒツトが15枚のコイン支払いの後ボーナスゲームができるようになるもの、中ヒツトが10?15枚のコイン支払い、小ヒツトが2?5枚程度のコイン支払など適宜設定される。ボーナスゲームとしては、例えばコイン1枚の投入毎に1個のリールを低速で移動させてゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボル「JAC」が出ればそのまゝ15枚のコイン支払いがなされ、このような手順で数回のゲームができるようにする。」(6頁左下欄1?11行)

・記載事項1-10
「次にリールの停止制御について説明する。(中略)ストップボタン25a?25cが押された時には、予め設定したヒツトが成就されるように、リールR1?R3の移動を制御する。(中略)ところで、予め設定したヒツトを確実に成就させるには、ストップボタン25a?25cが押されてから、比較的長い時間リールを移動させなければならない。しかし、あまり長い時間リールR1?R3を移動させると、ゲーム遊戯者に不自然な印象を与えることになる。そこで、経験的にシンボルを4個分の範囲でリールR1?R3の停止位置を制御し、ヒツトリクエストに応じたシンボルの組合せが完成されるようにしている。」(6頁左下欄12行?右下欄12行)

以上の記載事項1-1?1-10及び図1?30によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「前面ドア20には、CRT21に合致する部分に窓20aが形成されており、この窓20aを通してCRT21の画面に表示された3個のリール(シミュレートした平面的なリールパターン)R1?R3を観察することができ、
スタートレバー26を下方に押し倒せば、CRT21に表示されたリールR1?R3が同時に移動を開始し、それにより各シンボル列がCRT21の画面で縦方向に動き、
ROM51のシンボル配列テーブルから順次読み出したシンボルコードに応じて、キャラクタメモリ42から所望のシンボル4を含むパターンを読み出して、CRT21に送り、シミュレートしたリールR1?R3をCRT21に表示し、
スタートレバー26の操作後の所定の時点で決定された乱数値は、入賞確率テーブルと照合され、15枚のコイン支払いの後ボーナスゲームができるようになるものである大ヒツトに該当する数値であれば大ヒツトリクエスト信号の発生、また中ヒツトに該当する数値であれば中ヒツトリクエスト信号の発生というように小ヒツトまでの判断、処理がなされ、いずれかのヒツトリクエストが発生されるか、あるいはヒツトリクエストなしかがチェックされ、
ストップボタン25a?25cが押された時には、予め設定したヒツトが成就されるように、シンボルを4個分の範囲でリールR1?R3の停止位置を制御し、ヒツトリクエストに応じたシンボルの組合せが完成されるようにし、
入賞ラインに停止したシンボル配列がROM51にストアされた入賞シンボル配列であるかどうかをROMメモリと照合して入賞している場合には、コインを払い出す、
ビデオタイプスロットマシン。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-300974号公報(公開日:平成5年11月16日)(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
・記載事項2-1
「遊技部内に設けた複数の識別記号を順次変換可能な可変表示装置と、球の入賞に基づいて可変表示装置の表示変換を開始させる可変表示装置始動領域と、可変表示装置の停止表示態様が予め定めた当りの態様であることに基づいて特別遊技を行わせる特別遊技装置と、可変表示装置の停止表示態様が当りの態様となる確率を選択決定して制御する確率制御手段とを設けたパチンコ機において、
可変表示装置に表示する識別記号群を複数組設けるとともに、
確率制御手段により選択決定した確率値に基づき、複数の識別記号群の中から一組の識別記号群を選択する識別記号群選択手段を設けたことを特徴とするパチンコ機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

・記載事項2-2
「請求項1または請求項2に記載のパチンコ機であって、確率制御手段により選択決定した確率値と、実際に可変表示装置に表示する識別記号のうち当りとなる識別記号の割合とが近似することを特徴とするパチンコ機。」(【特許請求の範囲】【請求項3】)

・記載事項2-3
「【発明が解決しようとする課題】(中略)また、遊技状態(確率変動)によっては、遊技の賞態様を決定する確率値と、実際に可変表示装置に表示する識別記号のうち、当りとなる識別記号の割合が相違し、違和感を与えていた。」(段落【0003】)

・記載事項2-4
「電気的制御装置48は中央演算装置(CPU49)及び記憶装置(ROM50、RAM51)を主な構成要素とし、CPU49には電源を供給する電源回路52、クロックを供給する分周回路53、音声発生のためのサウンドジェネレータ54等が連絡している。」(段落【0025】)

・記載事項2-5
「電気的制御装置48のうち、可変表示装置4に表示する普通図柄の制御に関する部分を、図11に示したブロック図により説明する。確率制御手段68により、二組の確率値A,Bの中から可変表示装置4に表示する普通図柄が当りとなる確率を選択する。普通図柄が当りとなる確率値Aは低い確率、例えば1/220とし、確率値Bは高い確率、例えば確率値Aの10倍の確率である1/22となっている。確率制御手段68は、遊技状態により確率値の選択を行う。」(段落【0028】)

・記載事項2-6
「可変表示装置制御手段70には、識別記号群選択手段69からの識別記号群選択信号と、可変表示装置始動スイッチ12からの始動信号が入力され、可変表示装置4に表示する普通図柄が選択決定されるとともに、始動信号に基づき普通図柄の表示変換が開始する。可変表示装置4に表示する普通図柄は、例えば、確率値Aの場合はサイコロの図柄を表示し、確率値Bの場合は麻雀牌の図柄を表示する。」(段落【0029】)

・記載事項2-7
「また、確率値がB、すなわち、普通図柄の停止表示態様が当りとなる確率が高い場合には、表示する普通図柄の数を確率値Aの場合の1/10に減少し、確率制御手段により選択決定した確率値と、実際に可変表示装置4に表示する普通図柄のうち当りとなる普通図柄の割合が近似するようにすれば、遊技者が可変表示装置4の表示変換に違和感を抱くことが防止できる。」(段落【0031】)

・記載事項2-8
「遊技開始時には普通図柄が当りとなる確率は低い確率、例えば1/220となっている。そして、特別遊技の権利が発生して特別遊技が所定回数、例えば16回行われるか、再度特別権利発生領域10に入賞して特別遊技の権利が終了すると、普通図柄が当りとなる確率を高く、例えば1/22とする。この状態で再び特別遊技の権利が発生すると、普通図柄が当りとなる確率は低い確率となる。」(段落【0040】)

・記載事項2-9
「したがって、一度特別遊技の権利が発生して特別遊技が行われた後、続けて二回目の特別遊技の権利が発生し易くなる。」(段落【0041】)

・記載事項2-10
「ここで、遊技ナンバーが「2」、すなわち一回目の特別遊技が終了して二回目の特別遊技が発生するまでの普通図柄が当りとなる確率が高い遊技状態の場合には、高確率時に選択する普通図柄の変動表示データ、例えば、麻雀牌の図柄を選択してセットし、可変表示装置4における普通図柄の変動開始処理を行って普通図柄を変動させる」(段落【0047】)

・記載事項2-11
「遊技ナンバーが「2」以外の場合には、低確率時に選択する普通図柄の変動表示データ、例えば、サイコロの図柄を選択してセットし、可変表示装置4における普通図柄の変動開始処理を行って普通図柄を変動させる」(段落【0048】)

3.対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「CRT21」、「シンボル」、「ストップボタン25a?25c」は、本願補正発明の「画像表示部」、「図柄」、「ストップスイッチ」に相当する。
そして、引用発明1について、以下の(1)?(4)のことがいえる。
(1)「前面ドア20には、CRT21に合致する部分に窓20aが形成されており、この窓20aを通してCRT21の画面に表示された3個のリール(シミュレートした平面的なリールパターン)R1?R3を観察することができ、スタートレバー26を下方に押し倒せば、CRT21に表示されたリールR1?R3が同時に移動を開始し、それにより各シンボル列がCRT21の画面で縦方向に動き、」について
一般のスロットマシンにおいて前面ドアの遊技者側の面にフロントパネルを設けることは普通に行われていることであるから、引用発明1の前面ドアの窓を通して見ることができるCRT21は、「フロントパネルに設けた画像表示部」ということができる。
また、「各シンボル列がCRT21の画面で縦方向に動」くことにより、当然各シンボル列に含まれるシンボルは縦方向に動くこととなる。更に、一般のスロットマシンにおいて図柄の移動表示を高速で行うことは通常のことである。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明を特定する、「フロントパネルに設けた画像表示部に、複数の図柄列にそれぞれ配設された複数の図柄を順次高速で移動表示する」の事項に相当する構成を実質的に具備している。
(2)「ROM51のシンボル配列テーブルから順次読み出したシンボルコードに応じて、キャラクタメモリ42から所望のシンボル4を含むパターンを読み出して、CRT21に送り、シミュレートしたリールR1?R3をCRT21に表示し、」について
上記記載事項1-6の「ROM51には各リール毎のシンボル配列表(中略)がストアされている」の「シンボル配列表」と引用発明1の「シンボル配列テーブル」は、「表」と「テーブル」でその表記は異なっているものの、「テーブル」が「表。一覧表。」を意味し(広辞苑参照)、引用文献1全体の記載からみて別なものと解すべきとは認められないから、両者は同じものであることは明らかである。そうすると、引用発明1の「シンボル配列テーブル」は各リール毎にシンボル配列をシンボルコードで記憶させたものあり、引用発明1はそのシンボルコードに応じてシンボルを含むパターンを読み出してCRT21への表示するものである。そして、一つのリールのシンボル配列は本願補正発明の「図柄列」に相当し、複数のリールのシンボル配列は本願補正発明の「図柄列群」に相当し、「ROM51」は本願補正発明の「記憶手段」に相当する。更に、そのシンボルの中には各ヒットに対応したシンボルが当然含まれるものである。
そうすると、引用発明1は「当たり図柄を配設した図柄列群を記憶している図柄列群記憶手段」なる構成を実質的に具備しており、この点において引用発明1と本願補正発明は共通している。
(3)「スタートレバー26の操作後の所定の時点で決定された乱数値は、入賞確率テーブルと照合され、15枚のコイン支払いの後ボーナスゲームができるようになるものである大ヒツトに該当する数値であれば大ヒツトリクエスト信号の発生、また中ヒツトに該当する数値であれば中ヒツトリクエスト信号の発生というように小ヒツトまでの判断、処理がなされ、いずれかのヒツトリクエストが発生されるか、あるいはヒツトリクエストなしかがチェックされ、ストップボタン25a?25cが押された時には、予め設定したヒツトが成就されるように、シンボルを4個分の範囲でリールR1?R3の停止位置を制御し、ヒツトリクエストに応じたシンボルの組合せが完成されるようにし、」について
「決定された乱数値」は「入賞確率テーブル」と照合されて、「大ヒット」「中ヒット」「小ヒット」に該当するかチェックされるが、これは抽選を行っているということができ、抽選の結果であるヒットリクエスト信号の種類(大、中、小)に応じてシンボルの組合せが決まっているのであるから、上記「抽選」はシンボルの抽選を行っているということができる。
そして、「予め設定したヒツトが成就されるように、」「リールR1?R3の停止位置を制御し、ヒツトリクエストに応じたシンボルの組合せが完成されるようにしている」ものであるから、引用発明1は、本願補正発明を特定する、「予め行われた図柄の抽選結果にもとづいて、図柄列における図柄の移動表示を停止制御させる」の事項に相当する構成を実質的に具備している。
また、ストップボタン25a?25cはリールR1?R3を停止させる、すなわち、シンボルの移動表示を停止させるためのものであり、ストップボタン25a?25cを操作するのが遊技者であることは自明である。そして、その停止制御は、シンボルを4個分の範囲でリールR1?R3の停止位置を制御し、ヒツトリクエストに応じたシンボルの組合せが完成されるようにするものであるから、当該ヒットリクエストが抽選の結果「大ヒット」である場合には、ストップボタン25a?25cの操作時から4個分の範囲内でシンボルの移動表示を停止させることで、入賞ラインに停止したシンボルが「大ヒット」のシンボルの組み合わせとなるようにシンボル配列のシンボルの移動表示を停止させるように制御するものである。そして、そのような制御をするために、引用発明1が制御手段を有していることは自明である。
更に、入賞ラインに停止したシンボルが本願補正発明の「停止表示態様」に相当することは当業者にとって明らかであり、また、「大ヒット」は「15枚のコイン支払いの後ボーナスゲームができるようになるものである」から、「大ヒット」に応じたシンボルが入賞ライン上に停止した場合、そのシンボル配列は本願補正発明の「特別賞態様」に相当し、コイン支払いの後の「ボーナスゲーム」が本願補正発明の「特別遊技」に相当することは、当業者にとって明らかである。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明を特定する、「予め行われた図柄の抽選結果にもとづいて、図柄の移動表示を停止させるためのストップスイッチの遊技者による操作時から所定数の図柄の移動範囲内で図柄の移動表示を停止させることで、図柄の停止表示態様が、特別賞態様となるように、該図柄列における図柄の移動表示を停止させる制御手段」の事項に相当する構成を実質的に具備している。
(4)「入賞ラインに停止したシンボル配列がROM51にストアされた入賞シンボル配列であるかどうかをROMメモリと照合して入賞している場合には、コインを払い出す」について
入賞ラインに停止したシンボル配列が本願補正発明の「停止表示態様」に相当すること及び「大ヒット」の場合にコイン払い出しの後に行われる「ボーナスゲーム」が本願補正発明の「特別遊技」に相当することは、上記(3)と同様である。そして、入賞シンボル配列はROM51にストアされるものであるから、「大ヒット」に応じた入賞シンボル配列は予め定めた一定のシンボルの組み合わせである。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明を特定する、「停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様であった場合に、遊技者に特別遊技を行わせる」の事項に相当する構成を実質的に具備している。

以上により、両者は、
「フロントパネルに設けた画像表示部に、複数の図柄列にそれぞれ配設された複数の図柄を順次高速で移動表示した後、予め行われた図柄の抽選結果にもとづいて、図柄列における図柄の移動表示を停止制御させ、停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様であった場合に、遊技者に特別遊技を行わせるスロットマシンであって、
当たり図柄を配設した図柄列群を記憶している図柄列群記憶手段と、
予め行われた図柄の抽選結果にもとづいて、図柄の移動表示を停止させるためのストップスイッチの遊技者による操作時から所定数の図柄の移動範囲内で図柄の移動表示を停止させることで、図柄の停止表示態様が、特別賞態様となるように、該図柄列における図柄の移動表示を停止させる制御手段と、
を有するスロットマシン」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明は確率抽選の結果が予め定めた特別の条件と一致する場合には特別賞態様が発生する確率を通常時よりも高確率に変動させるのに対して、引用発明1はそのような構成を有していない点
<相違点2>
当たり図柄を配設した図柄列群を記憶している図柄列群記憶手段が、本願補正発明においては、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率となるように当たり図柄を配設した通常確率図柄列群を記憶している通常確率図柄列群記憶手段と、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率と比較して高確率となるように当たり図柄を配設した高確率図柄列群を記憶している高確率図柄列群記憶手段から構成されるのに対して、引用発明1はそのような構成を有していない点。
<相違点3>
本願補正発明は図柄の抽選上における特別賞態様の発生確率を、通常確率又は高確率のいずれかに決定する発生確率決定手段を有するのに対し、引用発明1はそのような構成を有していない点。
<相違点4>
本願補正発明は、発生確率決定手段において決定された発生確率にもとづいて、通常確率図柄列群記憶手段に記憶している通常確率図柄列群と、高確率図柄列群記憶手段に記憶している高確率図柄列群とを、選択的に切り替えて画像表示部に表示させることにより、確率変動を行う図柄列群表示切替手段を有するのに対し、引用発明1ではそのような構成を有していない点。
<相違点5>
本願補正発明では、高確率図柄列群は、特別賞態様となる当たり図柄の数を通常確率図柄列群よりも多く配置することにより、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率よりも高確率となるようにしたのに対し、引用発明1はそのような構成を有していない点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1、3>について
相違点1と相違点3は関連しているので、あわせて検討する。
上記引用文献2には、1回目の特別遊技が終了すると、普通図柄が当りとなる確率が高くなり、2回目の特別遊技が終了すると普通図柄が当りとなる確率は低くなる旨の記載(上記記載事項2-8、2-9参照)があり、ここで「当り」となる場合には「可変表示装置の停止表示態様が予め定めた当りの態様」(上記記載事項2-1)となることであって、この態様は本願補正発明の「特別賞態様」に相当する。そして、引用文献2の確率制御手段68は、遊技状態により確率値の選択を行うものであって、当りとなる確率が低い確率値Aと当たりとなる確率が高い確率値Bの中から可変表示装置4に表示する普通図柄が当りとなる確率を選択するものである(上記記載事項2-5)から、本願補正発明の「発生確率決定手段」に相当する。また、引用文献2に記載された「高確率」と「低確率」は相対的に表現したものであることは明らかであるから、「高確率」、「低確率」及び「「低確率」の状態の時」が、本願補正発明の「高確率」と「通常確率」、「通常時」に相当する。
そうすると、引用文献2には、「特別賞態様が発生する確率を通常時よりも高確率に変動させる」との技術事項A及び「図柄の抽選上における特別賞態様の発生確率を、通常確率又は高確率のいずれかに決定する発生確率決定手段」との技術事項Bが実質的に記載されている。
一方、本願出願前において、取得された乱数値が特定の値に合致する場合、すなわち確率抽選の結果が予め定めた特別の条件と一致する場合に、特別賞態様が発生する確率を高確率にするパチンコ機は、いわゆる確率変動機能を有するCRパチンコ機に代表されるように周知であり、特開平5-277249号公報、特開平5-337234号公報に示されるように周知である。したがって、確率を変更する契機を確率抽選の結果が予め定めた特別の条件と一致することとすることは設計事項といわなければならない。
以上によれば、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項Aを適用し、その際に確率を変更する契機を確率抽選の結果が予め定めた特別の条件と一致することとすることにより、相違点1に係る本願補正発明の構成すなわち「確率抽選の結果が予め定めた特別の条件と一致する場合には特別賞態様が発生する確率を通常時よりも高確率に変動させる」とすることは当業者が容易に想到することができたことであり、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項Bを適用することにより相違点3に係る本願補正発明の構成すなわち「図柄の抽選上における特別賞態様の発生確率を、通常確率又は高確率のいずれかに決定する発生確率決定手段を有する」とすることは当業者が容易に想到することができたことであるといわざるを得ない。
なお、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術はパチンコ機に関するものであるが、パチンコ機もビデオタイプスロットマシンも遊技機に関するものである点で共通しており、ビデオタイプスロットマシンでは図柄を停止させるという遊技者の操作が介在しているものの、両者は確率抽選の結果に基づいて遊技者にとって有利な特別遊技を行わせる点、画像表示部に図柄を変動表示する点で共通する以上、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術をビデオタイプスロットマシンに適用することに技術的困難性はない。この点については以下の相違点の検討においても同様である。
<相違点2>について
引用文献2における「実際に可変表示装置に表示する識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」(上記記載事項2-2)及び本願補正発明の「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」は、制御手段が行う乱数抽選の抽選確率とは別なものであって、可変表示装置上で表示される図柄から遊技者が感じる見かけ上の「確率」と解すべきものであるから、「表示において遊技者が感じる特別賞態様が発生する確率」という点で共通しており、引用文献2の上記「割合」は本願補正発明の上記「確率」に相当する。
上記引用文献2には、記憶装置(ROM50、RAM51)を構成要素とする電気的制御装置48の識別記号群選択手段69が複数の識別記号群の中から一組の識別記号群を選択する旨記載(上記記載事項2-1、2-4、2-6)があり、識別記号群が記憶手段に記憶されるとの明示的記載はないが、図柄を表示する装置において図柄に関するデータを記憶手段に記憶させることは慣用手段であるから上記引用文献2に記載された電気的制御装置48においても識別記号群を記憶手段に記憶させていることは自明である。そして、上記引用文献2には、確率値A(低確率時)の場合はサイコロの図柄を表示し確率値B(高確率時)の場合は麻雀牌の図柄を表示する旨の記載(上記記載事項2-6)及び高確率時に選択する普通図柄の変動表示データ(例えば麻雀牌の図柄)及び低確率時に選択する普通図柄の変動表示データ(例えばサイコロの図柄)がある旨の記載(上記記載事項2-10、2-11)があるから、上記記憶手段は「高確率時の識別記号群の記憶手段」と「低確率時の識別記号群の記憶手段」を含むことは明らかである。
また、「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」を確率値A又は確率値Bに近似させるに際しては他の識別記号との関係を考慮しつつ当りとなる識別記号の配設を行うことは当然行うことである。
そして、「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」は、低確率時には確率制御手段68が決定した確率値A(低確率)と、高確率時には確率制御手段68が決定した確率値B(高確率)と近似されるものである(上記記載事項2-2、2-7)から、上記「低確率時の識別記号群」は「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」が確率値A(低確率)に近似するように当りとなる識別記号を配設したものであり、また、上記「高確率時の識別記号群」は「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」が低確率時と比較して高確率である確率値Bに近似するように当りとなる識別記号を配設したものということができる。ここで、「高確率」と「低確率」は相対的な表現であって「高確率」と「通常確率」といいかえることができるから、確率制御手段68が決定した確率値A(低確率)に近似させた上記「低確率時の識別記号群の記憶手段」における「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」は通常確率ということができ、低確率時と比較して高確率である確率値Bに近似させた「高確率時の識別記号群の記憶手段」における「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」は高確率ということができる。
また、引用文献2に記載された「識別記号」、「識別記号群」は、本願補正発明の「図柄」、「図柄列群」に相当する。また、パチンコ機においては異なる種類の図柄を一定順序で循環変動させて表示装置に表示するが、この循環される一連の図柄を「図柄列」等の「・・・列」ということが多いから、上記「識別記号」は「識別記号列における識別記号」ということができ、これは本願補正発明の「図柄列における図柄」に相当する。
そうすると、引用文献2には、「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合が通常確率となるように当たり図柄を配設した通常確率図柄列群を記憶している通常確率図柄列群記憶手段と、識別記号のうち当りとなる識別記号の割合が通常確率と比較して高確率となるように当たり図柄を配設した高確率図柄列群を記憶している高確率図柄列群記憶手段」との技術事項Cが実質的に記載されている。
そして、上記引用文献2の「確率制御手段68により選択決定した確率値と、実際に可変表示装置に表示する識別記号のうち当りとなる識別記号の割合とを近似」させるとの記載(上記記載事項2-2)の「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」は、具体的にどのような割合か不明である。そこで、この点について検討すると、スロットマシン又はパチンコ機の可変表示装置において、仮に各図柄列を偶然(あるいは乱数)のみによって停止させた場合、特定の図柄が停止ライン1つに停止する確率が「特定の図柄の組合せ数」÷「全図柄の組合せ数」となることは技術常識あるいは数学的常識であって、図柄の組合せ数の基礎となる図柄の配設をみて遊技者は「表示において遊技者が感じる特別賞態様が発生する確率」を感じるのであるから、可変表示装置の表示において「識別記号のすべての組合せ数に対する当りとなる識別記号の組合せ数から算出される当りとなる割合」と「確率制御手段68により選択決定した確率値」とを近似させるように識別記号を配設すれば遊技者が受ける違和感がなくなるということは自明である。したがって、上記技術常識を考慮すれば、確率制御手段68が決定した確率値と「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」を近似させて遊技者に違和感を与えなくするのに際して、「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」を「識別記号のすべての組合せ数に対する当りとなる識別記号の組合せ数から算出される当りとなる割合」すなわち「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」とすることは設計事項に過ぎない。
以上によれば、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項Cを適用し、その際に「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」を「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」とすることにより、相違点2に係る本願補正発明の構成すなわち「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率となるように当たり図柄を配設した通常確率図柄列群を記憶している通常確率図柄列群記憶手段と、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率と比較して高確率となるように当たり図柄を配設した高確率図柄列群を記憶している高確率図柄列群記憶手段」を有するものとすることは当業者が容易に想到することができたことといわざるを得ない。
<相違点4>について
引用文献2には、識別記号群選択手段69が確率制御手段68により選択決定した確率値に基づき複数の識別記号群の中から一組の識別記号群を選択し、可変表示装置4に表示される図柄が決定される旨の記載(上記記載事項2-1、2-6参照)があり、複数の識別記号群が通常確率図柄列群記憶手段に記憶している通常確率図柄列群と上記高確率図柄列群記憶手段に記憶している高確率図柄列群からなることは上記「<相違点2>について」で検討したとおりである。また、引用文献2の確率制御手段68が本願補正発明の「発生確率決定手段」に相当することは、上記「<相違点1、3>について」で検討したとおりである。
そうすると、引用文献2には、「発生確率決定手段において決定された発生確率にもとづいて、通常確率図柄列群記憶手段に記憶している通常確率図柄列群と、高確率図柄列群記憶手段に記憶している高確率図柄列群とを、選択的に切り替えて画像表示部に表示させることにより、確率変動を行う図柄列群表示切替手段」との技術事項Dが実質的に記載されている。
以上によれば、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項Dを適用し、相違点2に係る本願補正発明の構成すなわち「発生確率決定手段において決定された発生確率にもとづいて、通常確率図柄列群記憶手段に記憶している通常確率図柄列群と、高確率図柄列群記憶手段に記憶している高確率図柄列群とを、選択的に切り替えて画像表示部に表示させることにより、確率変動を行う図柄列群表示切替手段を有する」とすることは当業者が容易に想到することができたことといわざるを得ない。
<相違点5>について
引用発明1に引用文献2に記載された技術事項Cを適用し、その際に「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」を「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」とすることにより、「高確率図柄列群」を「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率と比較して高確率となるように当たり図柄を配設した」ものとすることが当業者にとって容易に想到することができたことであることは、上記「<相違点2>について」で検討したとおりである。
そして、引用文献2には「確率値がB、すなわち、普通図柄の停止表示態様が当りとなる確率が高い場合には、表示する普通図柄の数を確率値Aの場合の1/10に減少し、」と記載(上位記載事項2-7参照)されているが、これは確率値がBすなわち高確率時には、低確率時に比較して表示図柄の数を減少させて、「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」すなわち「表示において遊技者が感じる特別賞態様が発生する確率」を確率値B(高確率)に近似するようにしているものである。
ここで、「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」について検討すると、そして、「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」=「特別賞態様となる図柄の組合せ数」÷「図柄列における図柄上のすべての組合せ数」であり、「確率制御手段68により選択決定した確率値」が高確率となった時に「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」を「高確率」とするためには、(1)特別賞態様となる図柄の数を増やして「特別賞態様となる図柄の組合せ数」を増加させる、(2)図柄の数を減らして「図柄列における図柄上の組合せ数」を減少させる、または(3)前記(1)と(2)をあわせて行う、等をすればよいということは当業者にとって自明であり、例えば特開昭64-62180号公報(第14図参照)では「7」の図柄の数を増加させて当りとなる図柄の組合せ数を増加させて前記(1)により「表示において遊技者が感じる特別賞態様が発生する確率」を高確率としている。
そうすると、「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」を高確率とするために、特別賞態様となる図柄を増加させることは、設計上の事項といわざるを得ない。
以上により、「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」を採用することが設計上の事項(上記「<相違点2>について」参照)であり、当該確率を高確率にするために特別賞態様となる図柄を増加させることが設計上の事項に過ぎない以上、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項Cを適用し、その際に「識別記号のうち当りとなる識別記号の割合」を「図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率」とするとともに、特別賞態様となる当り図柄の数を通常確率図柄列群より多く配置することにより、相違点5に係る本願補正発明の構成すなわち「高確率図柄列群は、特別賞態様となる当たり図柄の数を通常確率図柄列群よりも多く配置することにより、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率よりも高確率となるようにした」とすることは当業者が容易に想到することができたことといわざるを得ない。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前特許法17条の2第3項で準用する同法126条第3項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成17年11月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年3月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「フロントパネルに設けた画像表示部に、複数の図柄列にそれぞれ配設された複数の図柄を順次高速で移動表示した後、予め行われた図柄の抽選結果にもとづいて、該図柄列における図柄の移動表示を停止制御させ、該停止表示態様が予め定めた一定の図柄の組み合わせである特別賞態様であった場合に、遊技者に特別遊技を行わせるとともに、確率抽選の結果が予め定めた特別の条件と一致する場合には、特別賞態様が発生する確率を通常時よりも高確率に変動させるスロットマシンであって、
図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率となるように当たり図柄を配設した通常確率図柄列群を記憶している通常確率図柄列群記憶手段と、 図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率と比較して高確率となるように当たり図柄を配設した高確率図柄列群を記憶している高確率図柄列群記憶手段と、
図柄の抽選上における特別賞態様の発生確率を、通常確率又は高確率のいずれかに決定する発生確率決定手段と、
発生確率決定手段において決定された発生確率にもとづいて、上記通常確率図柄列群記憶手段に記憶している通常確率図柄列群と、上記高確率図柄列群記憶手段に記憶している高確率図柄列群とを、選択的に切り替えて画像表示部に表示させることにより、確率変動を行う図柄列群表示切替手段と、
予め行われた図柄の抽選結果にもとづいて、図柄の移動表示を停止させるためのストップスイッチの遊技者による操作時から所定数の図柄の移動範囲内で図柄の移動表示を停止させることで、図柄の停止表示態様が、特別賞態様となるように、該図柄列における図柄の移動表示を停止させる制御手段と、
を有することを特徴とするスロットマシン。」

2.本願発明の進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「前記高確率図柄列群は、前記特別賞態様となる当たり図柄の数を前記通常確率図柄列群よりも多く配置することにより、図柄列における図柄上のすべての組合せ数に対する特別賞態様となる図柄の組合せ数から算出される特別賞態様が発生する確率が通常確率よりも高確率となるようにした」との構成を省いたものである。これに伴い、上記相違点5は存在しなくなり、本願発明と引用発明1とは相違点1?4で相違し、この相違点1?4については前記第2の4.に記載したとおりである。
したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-18 
結審通知日 2008-04-24 
審決日 2008-05-08 
出願番号 特願平6-36674
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 太田 恒明
中槙 利明
発明の名称 スロットマシン  
代理人 竹山 宏明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ