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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1180451
審判番号 不服2005-17773  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-15 
確定日 2008-07-04 
事件の表示 特願2001-106852「アイアンヘッドの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月18日出願公開、特開2001-346924〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年3月25日に出願した特願平8-96137号の一部を平成13年4月5日に新たな特許出願としたものであって、拒絶理由通知に応答して平成16年5月17日付けで手続補正がされたが、平成17年8月10日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成17年9月15日付けで審判請求がされるとともに、平成17年10月5日付けで明細書についての手続補正がされたものである。

第2 本件補正の内容及び適否
本件補正における特許請求の範囲についての補正は、
補正前(平成16年5月17日付け手続補正書参照)に
「【請求項1】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、ヘッド本体部1の少なくともトウ部3に上記ウエイト部材6の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記ウエイト部材6を、上記内端よりも小形状である開口側の上記外端より該嵌込凹窪部7に、該ウエイト部材6の拡大状の内端6aが該嵌込凹窪部7の拡大状の内端に対応するよう、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項2】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、ヘッド本体部1の少なくとも底部5に上記ウエイト部材6の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記ウエイト部材6を、上記内端よりも小形状である開口側の上記外端より該嵌込凹窪部7に、該ウエイト部材6の拡大状の内端6aが該嵌込凹窪部7の拡大状の内端に対応するよう、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項3】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、ヘッド本体部1のトウ部3及び底部5に上記ウエイト部材6の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記ウエイト部材6を、上記内端よりも小形状である開口側の上記外端より該嵌込凹窪部7に、該ウエイト部材6の拡大状の内端6aが該嵌込凹窪部7の拡大状の内端に対応するよう、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項4】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、ヘッド本体部1の少なくともトウ部3に有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記ウエイト部材6を、該ウエイト部材6の径寸法が大きな内端6a側から、該嵌込凹窪部7に、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項5】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、ヘッド本体部1の少なくとも底部5に有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記ウエイト部材6を、該ウエイト部材6の径寸法が大きな内端6a側から、該嵌込凹窪部7に、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項6】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、ヘッド本体部1のトウ部3及び底部5に有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記ウエイト部材6を、該ウエイト部材6の径寸法が大きな内端6a側から、該嵌込凹窪部7に、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項7】
ウエイト部材6を、円錐台状、四角錐台状又は断面星型錐台状に形成する請求項1,2,3,4,5又は6記載のアイアンヘッドの製造方法。
【請求項8】
ヘッド本体部1を、基本材質部12と打球面形成部13とから構成して、かつ、ウエイト部材6の比重を上記基本材質部12の比重よりも大きく設定し、さらに、上記打球面形成部13の比重を上記基本材質部12の比重よりも小さく設定した請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のアイアンヘッドの製造方法。」
とあったものを、
「【請求項1】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成されたヘッド本体部1の少なくともトウ部3に上記ウエイト部材6の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記基本材質部12よりも比重が大きい上記ウエイト部材6を、上記内端よりも小形状である開口側の上記外端より該嵌込凹窪部7に、該ウエイト部材6の拡大状の内端6aが該嵌込凹窪部7の拡大状の内端に対応するよう、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項2】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成されたヘッド本体部1の少なくとも底部5に上記ウエイト部材6の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記基本材質部12よりも比重が大きい上記ウエイト部材6を、上記内端よりも小形状である開口側の上記外端より該嵌込凹窪部7に、該ウエイト部材6の拡大状の内端6aが該嵌込凹窪部7の拡大状の内端に対応するよう、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項3】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成されたヘッド本体部1のトウ部3及び底部5に上記ウエイト部材6の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記基本材質部12よりも比重が大きい上記ウエイト部材6を、上記内端よりも小形状である開口側の上記外端より該嵌込凹窪部7に、該ウエイト部材6の拡大状の内端6aが該嵌込凹窪部7の拡大状の内端に対応するよう、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項4】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成されたヘッド本体部1の少なくともトウ部3に有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記基本材質部12よりも比重が大きい上記ウエイト部材6を、該ウエイト部材6の径寸法が大きな内端6a側から、該嵌込凹窪部7に、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項5】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成されたヘッド本体部1の少なくとも底部5に有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記基本材質部12よりも比重が大きい上記ウエイト部材6を、該ウエイト部材6の径寸法が大きな内端6a側から、該嵌込凹窪部7に、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項6】
比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成されたヘッド本体部1のトウ部3及び底部5に有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記基本材質部12よりも比重が大きい上記ウエイト部材6を、該ウエイト部材6の径寸法が大きな内端6a側から、該嵌込凹窪部7に、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。
【請求項7】
ウエイト部材6を、円錐台状、四角錐台状又は断面星型錐台状に形成する請求項1,2,3,4,5又は6記載のアイアンヘッドの製造方法。」
と補正するものである。

つまり、本件補正は、特許請求の範囲についての以下の補正事項を含む。
補正前の請求項1乃至請求項7を削除するとともに、補正前の請求項8において請求項1乃至請求項6を引用する部分をそれぞれ独立形式として補正後の請求項1乃至請求項6とし、補正前の請求項8において請求項7を引用する部分を補正後の請求項7とする補正。

この補正に関して、請求人は審判請求書の【請求の理由】(平成17年10月5日付けで理由補充されている)において、
「2.まず、上記手続補正書にて行なった補正について説明致します。平成16年5月17日提出の手続補正書にて補正された特許請求の範囲と、今回の補正後の請求項との関係は、
以下のとおりです。
・新請求項1:旧請求項1+旧請求項8
・新請求項2:旧請求項2+旧請求項8
・新請求項3:旧請求項3+旧請求項8
・新請求項4:旧請求項4+旧請求項8
・新請求項5:旧請求項5+旧請求項8
・新請求項6:旧請求項6+旧請求項8
・新請求項7:旧請求項7」(【請求の理由】のうち「【本願発明が特許されるべき理由】 2.」を参照)
と、補正後の請求項1乃至請求項6がそれぞれ、補正前の請求項8に記載された要件を補正前の請求項1乃至請求項6に付加して発明特定事項を限定したものであるかのように主張している。
しかしながら、補正後の請求項1乃至請求項7はそれぞれ、補正前の請求項1乃至請求項7を引用する補正前の請求項8と実質的に同一であるから、この補正は、補正前の請求項1乃至請求項7を削除するとともに、補正前の請求項8を補正後の請求項1乃至請求項7とするものと解するべきである。
したがって、この補正は、補正前の請求項1乃至請求項7の削除を削除するとともに、それに伴って他の請求項を形式的に補正するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものと認める。

以上のように、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とする適法な補正と認め、本件補正により補正された明細書を本願明細書として審理の対象とする。

第3 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、平成17年10月5日付けで補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下のウエイト部材6を、内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状に、粉末焼結により中実形状になるよう形成し、かつ、基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成されたヘッド本体部1の少なくともトウ部3に上記ウエイト部材6の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の嵌込凹窪部7を形成し、上記基本材質部12よりも比重が大きい上記ウエイト部材6を、上記内端よりも小形状である開口側の上記外端より該嵌込凹窪部7に、該ウエイト部材6の拡大状の内端6aが該嵌込凹窪部7の拡大状の内端に対応するよう、打撃又は圧入によって、嵌め込むことを特徴とするアイアンヘッドの製造方法。」(以下、「本願発明」という。)

第4 引用例
本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-328151号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の〈ア〉?〈オ〉の記載が図示とともにある。
〈ア〉「図1及び図2は、本発明によるゴルフクラブのアイアンヘッド1を示しており、該アイアンヘッド1は……フェース面(打球面)2と重量を適当に配分した形状の背面3とからなる打球部……が一体に作られている。そして、アイアンヘッド1のトウ5側でソール6寄りにスイングウェイト、バランスを調節する重量体(重錘)10が装着されている。」(【0009】参照)
〈イ〉「重量体10を装着するための挿着穴7はトウ5の端面から内側に向けて設けられ、図3に示すように、円形断面の長穴の内奥に底部に向かって徐々に拡径する拡大腔部8……が設けられており……」(【0010】参照)
〈ウ〉「重量体10は、図6に示すように、アルミ合金、真ちゅう等の展性に富む金属材料により成形された円筒体11と、アイアンヘッド1の材質(例えば軟鉄、ステンレス鋼等)より比重の大きい鉛や純タングステンあるいはタングステンカーバイト(WC)などの金属材料により円柱状に形成した焼結体12とから成っている。……」(【0012】参照)
〈エ〉「上記のように構成された重量体10は、図3に示すように、アイアンヘッド1の挿通穴7に先端部分の円筒部11aから挿入し、ハンマー等で叩き込んでアイアンヘッド1に固着される。すなわち、重量体10が挿通穴7に圧入される……」(【0014】参照)
〈オ〉【図1】のアイアンヘッドの正面図、及び【図4】の重量体の圧入完了状態を示すアイアンヘッド要部の拡大断面図において、「アイアンヘッド1」の「トウ5」に、底部付近が内端から外側へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の「挿着穴7」が形成され、内端よりも小形状である開口側の外端部より、「挿着穴7」に「重量体10」が嵌め込まれていることが看取できる。

上記〈ウ〉には「重量体10は……アルミ合金、真ちゅう等の展性に富む金属材料により成形された円筒体11と、アイアンヘッド1の材質(例えば軟鉄、ステンレス鋼等)より比重の大きい鉛や純タングステンあるいはタングステンカーバイト(WC)などの金属材料により円柱状に形成した焼結体12とから成っている。」と、また上記〈ア〉には「アイアンヘッド1のトウ5側でソール6寄りにスイングウェイト、バランスを調節する重量体(重錘)10が装着されている。」と、それぞれ記載されている。これらの記載から、「焼結体12」を含み重錘として使用される「重量体10」は、「アイアンヘッド1」よりも比重が大きいものと解される。

以上のことから、上記〈ア〉?〈オ〉の記載等を含む引用例1には、次の発明が記載されていると認めることができる。
「アイアンヘッド1のトウ5に、底部付近が内端から外側へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の挿着穴7を形成し、アイアンヘッド1よりも比重が大きい焼結体12を含む重量体10を、内端よりも小形状である開口側の外端部より挿着穴7に、圧入によって嵌め込むアイアンヘッドの製造方法。」(以下、「引用発明」という。)

第5 対比・判断
a.引用発明の「アイアンヘッド1」及び「トウ5」は、それぞれ本願発明の「ヘッド本体部」及び「トウ部」に相当する。
b.本願発明の「ウエイト部材」は、本願明細書段落【0026】に「しかして、このアイアンヘッドによれば、高比重のウエイト部材6…をトウ部3と底部5に埋設したことにより、トウ重心化と低重心化を図ることができる。」と記載されているように、高比重であることによってアイアンヘッドの重心を調整するものと解される。さらに、本願発明の「ヘッド本体部」が「基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成された」と特定されている一方で、本願発明の「ウエイト部材」は「基本材質部12よりも比重が大きい」と特定されているのであるから、本願発明の「ウエイト部材」は基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13とから構成された「ヘッド本体部」よりも比重が大きいということができる。
そして、引用発明の「重量体10」はヘッド本体部(「アイアンヘッド1」)よりも比重が大きく重錘として使用される点で本願発明の「ウエイト部材」と共通しており、本願発明に倣って「ウエイト部材」と称することができる。
c.引用発明の「挿着穴7」と本願発明の「嵌込凹窪部」とは、少なくとも底部付近が内端から外側へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状に形成され、ウエイト部材(「重量体10」)が嵌め込まれる点で共通しており、引用発明の「挿着穴7」は本願発明に倣って「嵌込凹窪部」と称することができる。

してみれば、本願発明と引用発明とは、
「ヘッド本体部のトウ部に、少なくとも底部付近が内端から外側へ次第に縮小するテーパ状でかつ有底状の嵌込凹窪部を形成し、ヘッド本体部よりも比重が大きい部分を含むウエイト部材を、内端よりも小形状である開口側の外端部より嵌込凹窪部に、圧入によって、嵌め込むアイアンヘッドの製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
本願発明ではウエイト部材が「比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下」であり「粉末焼結により中実形状になるよう」形成されると特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点2〉
本願発明では、
[1]ウエイト部材が「内端6aから外端6bへ次第に縮小するテーパ状」になるよう形成されるとともに、
[2]嵌込凹窪部が「ウエイト部材6の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ次第に縮小するテーパ状」であり、
[3]「該ウエイト部材6の拡大状の内端6aが該嵌込凹窪部7の拡大状の内端に対応するよう」嵌め込む、
と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点3〉
本願発明では、
[1]ヘッド本体部が「基本材質部12と該基本材質部12よりも比重が小さい打球面形成部13」とから構成されるとともに、
[2]ウエイト部材が「基本材質部12よりも比重が大きい」、
と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

4.判断
〈相違点1〉について
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平4-124243号公報(以下、「引用例2」という。)には、
「本発明に係る高比重金属材は、例えば上述したタングステン原料粉末に所定量の遷移金属等の粉末を添加して均一に混合し、得られた混合体を所定形状に加圧成形した後に非酸化性雰囲気で温度1400?1900℃で焼結したり、ホットプレスを行うことにより製造される。
上記高比重金属材は、いずれも密度が15?19.5g/cm^(3)の範囲にあり、高比重のWを基材とした焼結体で形成されているため、従来の金やプラチナと同等以上の重量感が発揮され……」(第3頁右上欄第7行?第16行)、
「実施例2として……ドライバー用のヘッドプロテクタプレート4aを製造し、クラブヘッド3aの底部に一体的に装着して第1図に示すようなドライバー2aを製造した。
本実施例に係る高比重金属材をヘッド底部に装着したドライバー2aは……クラブヘッドをより低重心化することができる。」(第4頁左上欄第2行?第13行)とそれぞれ記載されている。また、第1図の高比重金属材を使用して形成したゴルフクラブとしてのドライバーのクラブヘッドの一部を破断して示す側面図において、クラブヘッドに装着される高比重金属材からなる「ヘッドプロテクタプレート4a」が中実形状であると解される。
これらの記載等から、引用例2には、粉末焼結により中実形状に形成された密度15?19.5g/cm^(3)の高比重金属材を、ゴルフクラブに装着して重心位置を調整する技術が記載されていると認めることができる。そしてこの密度15?19.5g/cm^(3)という数値範囲が、本願発明の「比重が10g/cm^(3) 以上かつ22g/cm^(3) 以下」との数値範囲に含まれることは明らかである。
してみれば、引用例2に記載された技術事項を引用発明に適用し、粉末焼結により中実形状に形成されるとともに比重が本願発明の数値範囲内にあるような高比重金属材をウエイト部材として使用することは、当業者が容易になし得ることである。
このように、相違点1に係る本願発明の特定事項は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項であるといえる。

〈相違点2〉について
例えば、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-337222号公報には、
「【実施例】以下、本発明の第1実施例を図1及び図2を参照して説明する。ヘッド本体1は、所定の角度Aを有するフェース2が設けられ、さらにヘッド本体1の一側にはシャフト3を接続するためのシャフト取付部4が設けられている。そしてベリリューム銅合金(比重略8.2)またはステンレス(比重略7.9)等によって形成されソール5を有する前記ヘッド本体1は、その前面側に薄板状のフェース部材6が嵌着する凹部7が形成される。前記フェース部材6はチタン、チタン合金(比重略4.5)、アルミニューム、アルミニューム合金、マグネシューム合金、カーボン繊維等の比重の小さい材料から形成される。前記凹部7の全部または一部の周面8は、後側が深くなるように逆テーパ状に形成されており、また前記フェース部材6の縁部6Aは前記周面8より僅かに大きく形成されている。さらに前記凹部7の後部には窓孔9が形成されており、この窓孔9には段部10が形成されていると共に、この段部10の全部または一部の周面10Aは、後部側が深くなるように逆テーパ状に形成されている。前記フェース部材6は前記凹部7に嵌着するものであって、その後面には凸所11が設けられている。前記凸所11は前記段部10より僅かに大きく形成されている。そしてヘッド本体1にフェース部材6を固着する場合には、凹部7にフェース部材6をプレス等によって圧入するものである。この際にフェース部材6の縁部6Aが周面8に、また凸所11の縁部11Aが周面12に逆テーパ状に嵌合して固着されるものであるため、強固にヘッド本体1とフェース部材6を固着できる。尚、13はヘッド本体1のトップ、14はヒールを示している。」(【0009】参照)と、また、
「尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば実施例の縁部6A、縁部11Aを予め逆テーパに形成して、凹部7、段部10に嵌着してもよい等各種の変形が可能である。」(【0015】参照)とそれぞれ記載され、【図1】において、凹部7が内端から外端へ縮小するテーパ状に形成されるとともに、フェース部材6の内端が凹部7の拡大状の内端に対応するよう嵌め込まれている点が看取でき、
同じく本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-337221号公報には、
「【実施例】以下、本発明の第1実施例を図1及び図2を参照して説明する。ベリリューム銅合金(比重略8.2)またはステンレス(比重略7.9)等の比重が大きい材料によって形成されソール1を有するヘッド本体2には、その前面側にヘッドのフェース3を形成したフェース部材4が嵌着する凹部5を介して窓孔6が形成される。そして前記フェース部材4は前記ヘッド本体2よりも材料の比重が小さい材料からなる薄板状の例えばチタン、チタン合金、マグネシューム合金、アルミニューム、アルミニューム合金、カーボン繊維等によって形成される。前記ヘッド本体2の一側にはシャフト2Aを連結するためのシャフト取付部2Bが一体に設けられている。前記凹部5の全部または一部の周面7は、後部側が深くなるように逆テーパ状に形成されている。さらに前記窓孔6には段部8が形成されていると共に、この段部8の全部または一部の周面9は、後部側が深くなるように逆テーパ状に形成されている。さらに前記窓孔6の後方には空洞10を介して後部殻11が一体に形成されている。すなわち前記後部殻11の下部は前記ソール1に連設されると共に、後部殻11の上部はヘッドのトップ12に連設されている。前記フェース部材4は前記凹部5に嵌着するものであって、その後面には凸所13が設けられている。尚、フェース部材4の縁部4Aは予め周面7より僅かに大きく形成され、また凸所13の縁部13Aは予め周面9より僅かに大きく形成されている。そしてヘッド本体2にフェース部材4を固着する場合には、凹部5にフェース部材4をプレス等によって圧入するものである。この際にフェース部材4の縁部4Aが周面7に嵌着し、また凸所13の縁部13Aが周面9に嵌着して固着されるものである。」(【0009】参照)と、また、
「尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば前記フェース部材4の縁部4A、凸所13の縁部13Aを予め逆テーパ状に形成し、これを圧入してもよいなど種々の変形が可能である。」(【0013】参照)とそれぞれ記載され、【図1】において、凹部5が内端から外端へ縮小するテーパ状に形成されるとともに、フェース部材4の内端が凹部5の拡大状の内端に対応するよう嵌め込まれている点が看取でき、
さらに同じく本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭61-110366号(実開昭63-16065号)のマイクロフィルムには、
「第1,2図は本考案の第1実施例を示しており……ヘッド本体1の背面部には嵌着部である凹部7を横設する。この凹部7は底面部7Aと端面部7Bと両側面部7C,7Dによって構成する。……各部位における幅は第2図に示すように、両側面部7C,7Dをテーパ状にして底面部7Aの幅Bを開口部8の幅Cより大きくしたものである(B>C)。……バランスウエイト9は断面が台形であって、幅B^( ̄)を前記幅C^( ̄)より大(B^( ̄)>C^( ̄))としたものである。そして、ヘッド本体1を基台10に載置した後、バランスウエイト9をプレス装置の上金型11等によって数万トンの圧力で圧入嵌着し、一体化したものである。」(第4頁第3行?第5頁第10行参照)と記載され、第1図及び第2図において、バランスウエイト9が内端から外端へ縮小する断面テーパ状に形成されるとともに、凹部7がバランスウエイト9の外形寸法と略同一の内形寸法を有し内端から外端へ縮小する断面テーパ状に形成され、バランスウエイト9の拡大状の内端が凹部7の拡大状の内端に対応するよう嵌め込まれる点が看取できる。
これらの記載等から、ゴルフクラブ用ヘッドにおいてヘッド本体に別部材を嵌着するにあたり、嵌着すべき部材及びヘッド本体の被嵌着部を内端から外端へ縮小するテーパ状の略同一形状に形成し、それぞれの拡大状の内端が対応するよう圧入によって嵌め込む手法は、本願出願前に周知の技術であるといえる。
そして、引用発明においてかかる周知の技術事項を採用し、ウエイト部材及び嵌込凹窪部を内端から外端へ縮小するテーパ状の略同一形状に形成し、それぞれの拡大状の内端が対応するよう圧入によって嵌め込むことは、当業者が容易になし得ることである。
このように、相違点2に係る本願発明の特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項であるといえる。

〈相違点3〉について
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭63-103512号(実開平2-25267号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、
「第1図ないし第3図は、本考案のゴルフクラブヘッドの一実施例を示すもので、これ等の図において符号11は、例えば比重7.9のステンレス,比重4.5のチタン等からなり、ネック部13およびソール部15を形成する芯部材を示している。……突芯部17の打球面側に形成される凹部20には、芯部材11より比重の小さい、すなわち、例えば、比重1.5のCFRP,FRP,比重2.8のFRM,比重3.0以下の軽量部材等からなるフェース部材21が固着されている。」(第6頁第17行?第7頁第11行)と記載されている。
この記載から、引用例3には、ヘッド本体部(「ゴルフクラブヘッド」)を基本材質部(「芯部材11」)と基本材質部よりも比重が小さい打球面形成部(「フェース部材21」)とから構成する技術が記載されていると認めることができる。
してみれば、引用例3に記載された技術事項を引用発明に適用し、ヘッド本体部を基本材質部と基本材質部よりも比重が小さい打球面形成部とから構成することは、当業者が容易になし得ることである。
また、引用発明のウエイト部材(「重量体10」)はヘッド本体部(「アイアンヘッド1」)よりも比重が大きいものであるから、ヘッド本体部の基本材質部よりも比重が大きいものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
このように、相違点3に係る本願発明の特定事項は、引用発明及び引用例3に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項であるといえる。

以上のように、上記相違点1乃至相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明、引用例2及び引用例3に記載の技術事項、並びに周知の技術事項に基づいて当業者が想到容易な事項であり、かかる発明特定事項を採用したことによる本願発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2及び引用例3に記載の技術事項、並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-30 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-21 
出願番号 特願2001-106852(P2001-106852)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 番場 得造
坂田 誠
発明の名称 アイアンヘッドの製造方法  
代理人 中谷 武嗣  

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