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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42F |
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管理番号 | 1180472 |
審判番号 | 不服2005-9227 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-18 |
確定日 | 2008-07-03 |
事件の表示 | 特願2001-270537「衣料用後付け簡易ポケット」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 4日出願公開、特開2002-160481〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年9月6日(国内優先権主張 平成12年9月18日)に出願したものであって、平成17年4月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月18日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月16日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 2.平成17年6月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年6月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。 〈補正前〉 「【請求項1】2枚のシート材を重合し、この重合状態で隣り合う複数の辺を、少なくとも1辺を除いて接合された接合辺部とすることによりポケット部を構成し、このポケット部の一方の外側面のうち、少なくとも前記接合辺部の内側に位置する部分を衣料への接合面とし、この接合面とは反対側に位置するシート材の表面に印刷層を形成したことを特徴とする衣料用後付け簡易ポケット。 【請求項2】前記両シート材が、タック部を介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の衣料用後付け簡易ポケット。 【請求項3】前記接合面に接着層を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の衣料用後付け簡易ポケット。 【請求項4】前記シート材が布製であり、接着層が熱可塑性接着剤で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の衣料用後付け簡易ポケット。」 〈補正後〉 「【請求項1】2枚のシート材を重合し、この重合状態で隣り合う複数の辺を、少なくとも1辺を除いて接合された接合辺部とすることによりポケット部を構成し、このポケット部の一方のシート材の外側面の全面を衣料への接合面とし、この接合面とは反対側に位置する他方のシート材の表面に印刷層を形成し、前記した一方のシート材の全面の接合面に接着層を形成して衣料に前記一方のシート材の全面で接合するように構成したことを特徴とする衣料用後付け簡易ポケット。 【請求項2】前記両シート材が、タック部を介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の衣料用後付け簡易ポケット。 【請求項3】前記シート材が布製であり、接着層が熱可塑性接着剤で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の衣料用後付け簡易ポケット。」(下線は補正箇所を示すために当審で付した。) 補正前請求項1?4と補正後請求項1?3との対応関係を検討すると、補正後請求項1は「接着層」との特定事項を有しているが、補正前請求項1,2は該特定事項を有さず、補正前請求項3が該特定事項を有する。すると、補正後請求項1は、補正前請求項3に対応するものである。 該対応関係は、平成17年6月16日付け審判請求書についての手続補正書「(2)補正の根拠の明示」における「平成17年6月16日付けの手続補正書における請求項1は、平成16年12月17日付けの手続補正書における[請求項3]に記載した発明を請求項1とし、さらに接合面を明確に「一方のシート材の外側面の全面」として特許請求の範囲を減縮した。」との記載からも裏付けられる。 そして上記補正は、補正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「接合面」及び「接着層」について、それぞれ、「ポケット部の一方の外側面のうち、少なくとも前記接合辺部の内側に位置する部分」、及び「接合面に接着層を形成し」と特定していたのを、「接合面」については「ポケット部の一方のシート材の外側面の全面」に限定し、「接着層」については「一方のシート材の全面の接合面に接着層を形成して衣料に前記一方のシート材の全面で接合するように構成した」と限定したものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物 (a)原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3027996号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。 ア.「上記目的を達成するために、本考案の袋状ホルダーは、背面板2と正面板3を有し且つ背面板2と正面板3の両横側辺部の間に伸縮自在な襠部4,5を設けて上辺部を開口したプラスチック製の袋体1を形成し、その袋体1の背面板2の裏面に粘着剤6を塗布して剥離紙7を貼り合わせたことを特徴とする構成を具えるものである。」(段落【0004】) イ.「以下、図示した本考案の実施例について説明する。まず、図1及び図2は使用前の状態を示したものである。図中、符号1が袋体であり、この袋体1は透明なプラスチックシート製である。この袋体1は背面板2と、正面板3と、左右の襠部4,5とによって構成されている。正面板3と背面板2は下辺部を一体的に溶着して接合している。また、正面板3と背面板2の両横側辺部の間には伸縮自在な襠部4,5を設けている。この袋体1はその上辺部を開口し、背面板2の上端部は正面板3の上端部より少し上方へ突出している。なお、この実施例では、正面板3と背面板2の下辺部が一体的に接合しているが、正面板3と背面板2の下辺部の間に底板を設けることも可能である。」(段落【0005】) ウ.「背面板2の裏面には、図2に示すように粘着剤6を塗布して、剥離紙7を背面板2の裏面に貼り合わせている。」(段落【0006】) エ.第1図及び第3図から、「正面板3と背面板2の両横側辺部」が「左右の襠部4,5」を介して接合されていることが看取できる。 オ.第2図から、「背面板2の裏面」の全面に「粘着剤6」が塗布されていることが看取できる。 上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。 「正面板3と背面板2と、左右の襠部4,5を介して接合された正面板3と背面板2の両横側辺部と、一体的に接合された正面板3と背面板2の下辺部とから、袋体1を構成し、背面板2の裏面の全面に粘着剤6を塗布してなる袋状ホルダー」 (3)対比 本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の、「左右の襠部4,5を介して接合された正面板3と背面板2の両横側辺部と、一体的に接合された正面板3と背面板2の下辺部」、「袋体1」、「背面板2の裏面」、「粘着剤6」、「袋状ホルダー」は、それぞれ本願補正発明の、「重合状態で隣り合う複数の辺を、少なくとも一辺を除いて接合された接合辺部」、「ポケット部」、「接合面」、「接着層」、「簡易ポケット」に相当し、 刊行物1記載の発明の「正面板3」と「背面板2」は、本願補正発明の「シート材」と、面状部材である点で共通する。 よって本願補正発明と刊行物1記載の発明とは、 「2枚の面状部材を重合し、この重合状態で隣り合う複数の辺を、少なくとも1辺を除いて接合された接合辺部とすることによりポケット部を構成し、このポケット部の一方の面状部材の外側面の全面を接合面とし、接合面に接着層を形成して前記一方の面状部材の全面で接合するように構成したことを特徴とする簡易ポケット」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 面状部材について、本願補正発明では「シート材」と特定されるのに対して、刊行物1記載の発明においては「正面板」或いは「背面板」であって、そのような特定がされていない点。 [相違点2] 本願補正発明では、「印刷層」が「接合面とは反対側に位置する他方のシート材の表面」に設けられると特定されるのに対して、刊行物1記載の発明ではそのような特定がされていない点。 [相違点3] 本願補正発明では、取付対象を「衣料」として「簡易ポケット」を「衣料用後付け簡易ポケット」と特定するのに対して、刊行物1記載の発明ではそのような特定がされていない点。 (4)判断 上記相違点1について検討する。 「シート材」との特定は、面状部材の厚みを特に規定するものでないが、該特定により仮に厚みが板材より薄いものと解するとしても、厚みをどの程度にするかは当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項の範囲内である。 上記相違点2について検討する。 後付けされるポケットの表面に印刷により装飾を施すことは、例えば、原審における拒絶査定時に挙げられた、実願昭49-7956号(実開昭50-98901号)のマイクロフィルムの他、実願昭48-47831号(実開昭49-145801号)のマイクロフィルム等に示されるように、従来周知技術であり、刊行物1記載の発明において、ポケットの表面となる、接合面とは反対側に位置する面状部材の表面に印刷層を設けることは、該周知技術の単なる採用程度である。 上記相違点3について検討する。 衣料にポケットを後付けすることは、例えば、原審における拒絶査定時に挙げられた、実願昭46-91694号(実開昭48-46805号)のマイクロフィルム、実願昭49-7956号(実開昭50-98901号)のマイクロフィルム、実願昭58-118179号(実開昭60-25720号)のマイクロフィルム、実願昭60-200727号(実開昭62-106919号)のマイクロフィルム、の他、実願昭48-47831号(実開昭49-145801号)のマイクロフィルム等に示されるように従来より周知の事項である。一方、本願補正発明においては、取付対象を単に「衣料」として簡易ポケットを「衣料用後付け」と特定するのみであって、特に取付対象の材料を規定するものでもなく、該特定に伴い簡易ポケットそのものの構成を限定しているとは認められず、簡易ポケットの使い方を示す程度のものである。よって上記相違点3は、単なる表現上の差異程度、或いは、当業者が上記周知の事項に基づいて容易に想到し得たことに過ぎない。 そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年6月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明は、平成16年12月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定されるものである。請求項3は従属請求項であるので、請求項1を引用する請求項3を独立形式で記載すると、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「2枚のシート材を重合し、この重合状態で隣り合う複数の辺を、少なくとも1辺を除いて接合された接合辺部とすることによりポケット部を構成し、このポケット部の一方の外側面のうち、少なくとも前記接合辺部の内側に位置する部分を衣料への接合面とし、この接合面とは反対側に位置するシート材の表面に印刷層を形成し、前記接合面に接着層を形成したことを特徴とする衣料用後付け簡易ポケット。」 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「接合面」及び「接着層」についての限定事項の一部を省いたものである。 そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-25 |
結審通知日 | 2008-04-30 |
審決日 | 2008-05-16 |
出願番号 | 特願2001-270537(P2001-270537) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B42F)
P 1 8・ 121- Z (B42F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤木 啓二 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
酒井 進 佐藤 宙子 |
発明の名称 | 衣料用後付け簡易ポケット |
代理人 | 津久井 照保 |