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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1180484
審判番号 不服2005-20677  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-27 
確定日 2008-07-03 
事件の表示 平成11年特許願第193585号「脂肪族ポリエステル延伸成形体及びその製法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月23日出願公開、特開2001- 18290〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成11年7月7日の特許出願であって、平成17年6月28日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年9月2日に意見書と手続補正書が提出されて、同年9月22日付けで拒絶査定がされたものであるところ、同年10月27日に審判が請求され、同年11月25日に手続補正書(方式)と明細書の手続補正書が提出され、平成18年1月27日付けで前置報告がされて、その後、当審において平成20年1月15日付けで審尋がされ、同年3月21日に回答書が提出されたものである。

II.平成17年11月25日に行った明細書の補正に対する補正の却下の決定
[結論]
平成17年11月25日に行った明細書の補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成17年11月25日に行った明細書の補正(以下、「審判時補正」という。)は、審判請求の日から30日以内にされたものであって、明細書の特許請求の範囲についての以下の補正事項を含むものである。
「【請求項1】
脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂の予備成形体を二軸延伸成形することからなる脂肪族ポリエステル延伸成形体の製法において、予備成形体の二軸延伸を、一定の延伸温度下、初期の延伸速度が大きく且つ終期の延伸速度が小さくなるように延伸速度を可変制御して延伸成形することを特徴とする延伸成形体の製法。
【請求項2】
形成される脂肪族ポリエステル延伸成形体の少なくとも一方の表面に化学蒸着法により硬質炭素膜を形成することを特徴とする請求項1記載の延伸成形体の製法。
【請求項3】
脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂から形成された延伸成形体であって、下記式(1)
T_(45)≦Tx ‥(1)
式中、Txは成形体の二軸延伸方向の引張降伏点強度(MPa)であり、T_(45)は成形体の延伸方向に対して45゜方向の引張降伏点強度(MPa)である、
で表される強度特性を有することを特徴とする脂肪族ポリエステル延伸成形体。
【請求項4】
下記式(2)
Do=(S-Sa)/S ‥(2)
式中、Sは成形体試料を^(13)C広幅NMRで測定したときの化学シフト100乃至300ppmのピーク面積を表し、Saは前記脂肪族ポリエステルの非晶質粉末について上記と同様に測定したときのNMRスペクトルのピーク面積を表す、
で定義される配向結晶化度(Do)が0.15以上であることを特徴とする請求項3記載の延伸成形体。
【請求項5】
脂肪族ポリエステルがガラス転移点(Tg)が-60℃以上の脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項3または4に記載の延伸成形体。
【請求項6】
脂肪族ポリエステルがポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項3または4に記載の延伸成形体。
【請求項7】
脂肪族ポリエステル延伸成形体の少なくとも一方の表面に硬質炭素膜が形成されていることを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載の延伸成形体。
【請求項8】
請求項3乃至7の何れかに記載の延伸成形体からなることを特徴とする包装容器。」を、
「【請求項1】
脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂の予備成形体を二軸延伸成形することからなる脂肪族ポリエステル延伸成形体の製法において、予備成形体の二軸延伸を、一定の延伸温度下、初期の延伸速度が大きく且つ終期の延伸速度が小さくなるように延伸速度を可変制御して延伸成形することを特徴とする延伸成形体の製法。
【請求項2】
形成される脂肪族ポリエステル延伸成形体の少なくとも一方の表面に化学蒸着法により硬質炭素膜を形成することを特徴とする請求項1記載の延伸成形体の製法。
【請求項3】
脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂から形成された二軸延伸シートであって、下記式(1)
T_(45)≦Tx ‥(1)
式中、Txはシートの二軸延伸方向の引張降伏点強度(MPa)であり、T_(45)はシートの延伸方向に対して45゜方向の引張降伏点強度(MPa)である、
で表される強度特性を有することを特徴とする脂肪族ポリエステル二軸延伸シート。
【請求項4】
下記式(2)
Do=(S-Sa)/S ‥(2)
式中、Sはシートから切り出した試料を^(13)C広幅NMRで測定したときの化学シフト100乃至300ppmのピーク面積を表し、Saは前記脂肪族ポリエステルの非晶質粉末について上記と同様に測定したときのNMRスペクトルのピーク面積を表す、
で定義される配向結晶化度(Do)が0.15以上であることを特徴とする請求項3記載の二軸延伸シート。
【請求項5】
脂肪族ポリエステルがガラス転移点(Tg)が-60℃以上の脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項3または4に記載の二軸延伸シート。
【請求項6】
脂肪族ポリエステルがポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項3または4に記載の二軸延伸シート。
【請求項7】
脂肪族ポリエステル延伸成形体の少なくとも一方の表面に硬質炭素膜が形成されていることを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載の二軸延伸シート。
【請求項8】
脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂から形成された二軸延伸ブローボトルであって、下記式(1)
T_(45)≦Tx ‥(1)
式中、Txはボトルの二軸延伸方向の引張降伏点強度(MPa)であり、T_(45)はボトルの延伸方向に対して45゜方向の引張降伏点強度(MPa)である、
で表される強度特性を有することを特徴とする脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル。
【請求項9】
下記式(2)
Do=(S-Sa)/S ‥(2)
式中、Sはボトルから切り出した試料を^(13)C広幅NMRで測定したときの化学シフト100乃至300ppmのピーク面積を表し、Saは前記脂肪族ポリエステルの非晶質粉末について上記と同様に測定したときのNMRスペクトルのピーク面積を表す、
で定義される配向結晶化度(Do)が0.15以上であることを特徴とする請求項8記載の二軸延伸ブローボトル。
【請求項10】
脂肪族ポリエステルがガラス転移点(Tg)が-60℃以上の脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項8または9に記載の二軸延伸ブローボトル。
【請求項11】
脂肪族ポリエステルがポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項8または9に記載の二軸延伸ブローボトル。
【請求項12】
脂肪族ポリエステル延伸成形体の少なくとも一方の表面に硬質炭素膜が形成されていることを特徴とする請求項8乃至11の何れかに記載の二軸延伸ブローボトル。」と補正する。

2.新規事項の追加の有無についての検討
2-1.補正後の請求項8に係る発明について
補正後の請求項8に係る発明は、
「脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂から形成された二軸延伸ブローボトル」であること(以下、「ボトル要件」という。)、及び、
「式(1)
T_(45)≦Tx ‥(1)
式中、Txはボトルの二軸延伸方向の引張降伏点強度(MPa)であり、T_(45)はボトルの延伸方向に対して45゜方向の引張降伏点強度(MPa)である、
で表される強度特性を有する」こと(以下、「引張強度要件」という。)を、発明を特定するための事項(以下、「発明特定事項」という。)に備えるものである。
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に、「ボトル要件」が記載されていたことは、個々の記載箇所を摘示するまでもなく明らかなことである。
しかしながら、当初明細書等に、「引張強度要件」が記載されていたとする理由は見当たらない。以下、詳述する。

当初明細書等における、「ボトル要件」を充足する二軸延伸ブローボトル及びその「強度」に関する記載をみると、
段落【0009】及び【0010】に、「脂肪族ポリエステルの二軸延伸成形体は機械的強度の異方性が生じており、特に本来強度が増加すべき延伸軸方向で強度が低くなるため、成形体の強度設計が難しいという問題を有している。例えば、ボトルやカップなどの立体成形容器では、延伸方向を容器軸方向と容器周方向にとるのが適している。この場合、延伸軸のなす面の機械的強度を等方的に存することは座屈防止や落下衝撃による割れ防止、膨張、収縮や変形による割れを防止にも重要な要点となっている。
ところが、軸方向や周方向の強度が延伸軸と45度方向をなす方向においても機械的強度が異なるため、脂肪族ポリエステルの二軸延伸成形体の強度は所期の目的を達成していない。一方、容器の軸方向や周方向から45度偏った方向に延伸操作を行うことは実際的でない。
しかも、上記のように機械的強度の異方性を有する二軸延伸成形体では、比較例に示すとおり、圧縮変形に際し、しばしば割れを発生する傾向もあることが分かった。」と、
段落【0033】ないし【0037】に、「予備成形体の延伸成形は、脂肪族ポリエステルの延伸温度において、延伸速度が前述した方法をとり、且つ得られた成形体の配向結晶化度(Do)が0.15以上となる条件で行う。…
延伸速度の変化は、二段或いはそれ以上の多段にわたって段階的に変化させることもできるし、また連続的に変化させることもできる。勿論、これら何れの場合にも、延伸初期から終段に向けて延伸速度が単調に減少するよう延伸速度に勾配を設けなければならない。 延伸速度の切り替えは、機械的延伸では延伸棒や把持チャックの移動速度を変化させることにより、また膨張延伸ではブロー圧を変化させることにより行うことができる。
延伸倍率は、前記式(2)で定義される配向結晶化度(Do)が0.15以上となるようなものであり、一般的にいって、機械方向(容器軸方向)の延伸倍率が1.4乃至4倍、横断方向(容器周方向)の延伸倍率が1.4乃至4倍で、好適には面積延伸倍率が2乃至16倍となるようなものである。」と、
段落【0045】に、「(用途)
本発明の延伸成形体は、各種プラスチック包装容器、例えばボトル、カップ、チューブ、プラスチック缶、パウチ、キャップ等として、またフィルム、トレイ等の包装材料として、更にコンテナー、タンク、篭等の流通用容器として、更にパイプ、ケース等の構造物として有用である。」と、
段落【0047】に、「(成形)
ボトル成形: 重量平均分子量が180000のポリ乳酸を用いた。射出成形機を用い、190?200℃条件下、口径28mmφのプリフォームを射出成形した。金型温度15℃。次に、プリフォームを赤外線ヒーターにて65?75℃に再加熱後、金型ブロー成形機を用い、丸形の500ml容金型ブローボトルを作成した。この場合、ブロー圧を圧縮空気圧30Kg/cm2とする定圧ブロー成形とした。又、圧縮空気吹き込み口と排気口を併設させ、初期の圧縮空気圧が30Kg/cm^(2)とした後、排気バルブを暫時開放し、ブロー時間内に段階的にブロー圧を減少させ、最終的なブロー圧を0.5Kg/cm^(2)まで減圧した金型ブローを行った。」と、
段落【0050】に、「(評価)
二軸延伸シートの延伸応力:…
機械的強度: 二軸延伸シートを用いた。延伸軸方向(X,Y)を軸とする方向、及び、延伸二軸方向のなす対角方向(45゜方向)を軸とする方向にそれぞれASTMD-1822型ダンベルを切り出し、ORIENTEC社製引っ張り試験機にて引っ張り応力-ひずみ曲線を得た。
圧縮強度: 金型ブローボトルとサーモフォーム成形カップを用いた。ボトル、及び、カップの胴部(横方向)に10mmφのジグを用い、ひずみ量10%の圧縮ひずみ試験を行った。ひずみ変形時に胴部方向に割れを生成したボトル、及び、カップを×とし、変形時に割れが生成しないボトル、及び、カップを○とした。」と、
段落【0057】ないし【0058】に、「[実施例3] 前記ポリ乳酸を用いた。射出成形機を用い、190?200℃条件下、28mmφのプリフォームを射出成形した。金型温度15℃。プリフォームを赤外線ヒーターを用い70?75℃に再加熱後、金型ブロー成形機にて丸形の500ml容ブローボトルを作成した。ブロー時のブロー圧力は、圧縮空気吹き込み口と排気口を併設させ、初期に圧縮空気圧を30Kg/cm^(2)とした後、排気バルブを暫時開放し、ブロー時間内にブロー圧を段階的に減圧した。最終的に0.5Kg/cm^(2)まで減圧し金型ブローをした。上記成形金型ブローボトルの胴部(横方向)を、10mmφ平板ジグを用い、ヒズミ量10%まで圧縮ひずみ変形させた。圧縮ひずみ変形後、胴部に割れが生じないボトルを○とし、ひずみ変形時に胴部に割れが生じたボトル×とした。結果を表3に示した。
[比較例4] 前記ポリ乳酸を用いた。射出成形機を用い、190?200℃条件下、ノズル径28mmφのプリフォームを射出成形した。金型温度15℃。プリフォームを赤外線ヒーターを用い70?75℃に再加熱後、金型ブロー成形機で500ml容の丸形ブローボトルを作成した。ブロー時の圧縮空気圧を30Kg/cm^(2)とする定圧ブロー成形を行った。上記成形金型ブローボトルにつき、胴部(横方向)を10mmφ平板ジグを用い、ヒズミ量10%の圧縮ひずみ変形させた。圧縮ひずみ変形後、胴部に割れが生じないボトルを○とし、ひずみ変形時に胴部に割れが生じたボトル×とした。結果を表3に示した。」と、
段落【0061】に、【表3】として、「ボトル成形品」である実施例3及び比較例4の「圧縮ひずみ10%時成型品の材料強度」が、
段落【0062】、【0063】に、「次に硬質炭素膜を形成した脂肪族ポリエステル延伸成形性に関する実施例及び比較例において、試料の調製及び測定を示した。
(ボトル成形)
ポリ乳酸を射出成形機を用い、190℃?200℃条件下、口径28mmφのプリフォームを射出成形した。金型温度15℃。次に、プリフォームを赤外線ヒーターにて65?75℃に再加熱後、金型ブロー成形機を用い、500ml容の平均肉厚300μmの金型ブローボトルを作成した。この場合、圧縮空気吹き込み口と排気口を併設させ、初期の圧縮空気圧を30Kg/cm2とした後、段階的にブロー時間内に減圧した。最終的なブロー圧力を0.5Kg/cm^(2)とした金型ブロー成形を行った。又、ブロー圧力を30Kg/cm^(2)の定圧とした金型ブロー成形を行った。」と、
段落【0065】ないし【0067】に、「(炭素膜の製膜)
(ボトル) CVD蒸着装置にて、ボトル形状の電極とボトル内部に設置した電極を用い、ボトル内圧力を真空減圧後、ヘキサン・アルゴン混合ガスを原料ガスとした、成膜圧0.1torr、高周波電力13.56MHzのPE-CVD炭素膜蒸着を行った。成膜温度25℃。…
(酸素ガスバリア性)
(ボトル) 試作ボトルを真空チャンバー内に入れ、真空減圧した後、高純度窒素ガスを流入させ、ボトル内気相を窒素ガス置換した。その後、ゴム栓にて密封した。酸素濃度20.9%の30℃-RH80%条件に保存した。3週間後に、ガスタイトシリンジを用い、ボトル内空気を採取し、GC分析し、BO_(2)に換算した。…
(機械的強度)
(ボトル) 金型ブローボトルと炭素薄膜を蒸着後のボトル胴部(横方向)に10mmφのジグを用い、ひずみ量10%の圧縮ひずみ試験を行った。ひずみ変形時に胴部方向で割れが生成したボトルを×とし、変形時に割れの生じないボトルを○とした。」と、
段落【0068】ないし【0070】に、「[実施例4] ポリ乳酸を射出成形機を用い、190℃?200℃条件下、口径28mmφのプリフォームを射出成形した。金型温度15℃。次に、プリフォームを赤外線ヒーターにて65℃?75℃に再加熱後、金型ブロー成形機を用い、500ml容の平均肉厚300μmの金型ブローボトルを作成した。この場合、圧縮空気吹き込み口と排気口を併設させ、初期の圧縮空気圧を30Kg/cm^(2)とした後、段階的にブロー時間内に減圧した。最終的なブロー圧力を0.5Kg/cm^(2)とした金型ブロー成形を行った。次に、CVD蒸着装置にて、ボトル形状の電極とボトル内部に設置した電極を用い、ボトル内圧力を真空減圧後、ヘキサン・アルゴン混合ガスを原料ガスとする、成膜圧0.1torr、高周波電力13.56MHzのPE-CVD炭素膜蒸着を行った。成膜温度25℃。炭素膜を蒸着後のボトルを酸素濃度20.9%の40℃-RH80%に保存して得たBO_(2)を得た。更に、ボトル胴部(横方向)に10mmφのジグを用い、ひずみ量10%の圧縮ひずみ試験を行った。ひずみ変形時に胴部方向で割れが生成したボトルを×とし、変形時に割れの生じないボトルを○とした。得られた結果を表4に示した。
[比較例5] ポリ乳酸を射出成形機を用い、190℃?200℃条件下、口径28mmφのプリフォームを射出成形した。金型温度15℃。次に、プリフォームを赤外線ヒーターにて65℃?75℃に再加熱後、金型ブロー成形機を用い、500ml容の平均肉厚300μmの金型ブローボトルを作成した。この場合、圧縮空気吹き込み口と排気口を併設させ、初期の圧縮空気圧を30Kg/cm^(2)とした後、段階的にブロー時間内に減圧した。最終的なブロー圧力を0.5Kg/cm^(2)とした金型ブロー成形を行った。上記ボトルを窒素置換後、酸素濃度20.9%の30℃-RH80%に保存して得たボトルのBO_(2)を得た。更に、ボトル胴部(横方向)に10mmφのジグを用い、ひずみ量10%の圧縮ひずみ試験を行った。ひずみ変形時に胴部方向で割れが生成したボトルを×とし、変形時に割れの生じないボトルを○とした。得られた結果を表4に示した。
[比較例6] ポリ乳酸を射出成形機を用い、190℃?200℃条件下、口径28mmφのプリフォームを射出成形した。金型温度15℃。次に、プリフォームを赤外線ヒーターにて65℃?75℃に再加熱後、金型ブロー成形機を用い、500ml容の平均肉厚300μmの金型ブローボトルを作成した。この場合、圧縮空気圧力を30Kg/cm^(2)の一定圧とした金型ブロー成形を行った。次に、CVD蒸着装置にて、ボトル形状の電極とボトル内部に設置した電極を用い、ボトル内圧力を真空減圧後、ヘキサン・アルゴン混合ガスを原料ガスとする、成膜圧0.1torr、高周波電力13.56MHzのPE-CVD炭素膜蒸着を行った。成膜温度25℃。炭素膜を蒸着後のボトルを酸素濃度20.9%の30℃-RH80%に保存して得たボトルのBO_(2)を得た。更に、ボトル胴部(横方向)に10mmφのジグを用い、ひずみ量10%の圧縮ひずみ試験を行った。ひずみ変形時に胴部方向で割れが生成したボトルを×とし、変形時に割れの生じないボトルを○とした。得られた結果を表4に示した。」と、
段落【0074】に、【表4】として、「ボトル成形品」である実施例4及び比較例4、5の「ボトル平均肉厚」「炭素蒸着膜厚」「酸素バリア性」及び「圧縮ひずみ10%時のボトル強度」が、
それぞれ記載されており、その他に、関連する記載はみられない。

これら全記載を総合すると、「ボトル要件」を充足する二軸延伸ブローボトルの「強度」に関しては、段落【0067】に「機械的強度」という記載はあるが、これも「ひずみ量10%の圧縮ひずみ試験」によるものであり、その余のボトルの「強度」に関する試験結果もすべて「圧縮ひずみ試験」によるものであるから、当初明細書等に記載される「強度」とは、段落【0050】に記載される、「(評価)」のうちの「圧縮強度」を実質的に意味するものと解するほかはない。
すなわち、当初明細書等には、「ボトル要件」を充足する二軸延伸ブローボトルにおける「引張強度要件」については記載がなく、また、該「引張強度要件」が当業者に自明のことであると認めることもできない。
したがって、「引張強度要件」を発明特定事項に備える請求項8に係る発明は、当初明細等に記載されたものではない。

なお、この点について、請求人は、平成17年11月25日付けの手続補正書(方式)において、「請求項8乃至12の補正の根拠は、それぞれ出願時の請求項3乃至7と明細書段落番号(0047)及び(0057)」である旨を主張している。
確かに、補正後の請求項8の発明特定事項である「二軸延伸ブローボトル」は、補正前の請求項3の発明特定事項である「延伸成形体」の下位概念に当たるものであるし、請求人が指摘するとおり、明細書の段落【0047】、【0057】には、二軸延伸ブローボトルが記載されている。したがって、既に述べたように、請求項8に係る発明の発明特定事項のうち、「ボトル要件」は当初明細書等に記載された事項である。
しかしながら、「二軸延伸ブローボトル」が「延伸成形体」の下位概念に当たるからといって、「引張強度要件」を充足する「延伸成形体」を、「引張強度要件」を充足する二軸延伸ブローボトルとする補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内でした補正であるとすることはできない。
つまり、発明特定事項を概念的に下位の事項に補正することにより、当初明細書等に記載した事項以外のものが個別化されることとなる場合は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でした補正とはいえないものであるところ、先に述べたように、当初明細書等には、「ボトル要件」を充足する二軸延伸ブローボトルにおける「引張強度要件」については記載がなく、また、該「引張強度要件」が当業者に自明のことであると認めることもできないのであるから、補正後の請求項8とする補正は、当初明細書等に記載した事項以外のものが個別化されることとなる場合に当たると認められる。
したがって、請求人の主張は採用しない。

よって、補正後の請求項8とする補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でした補正ではない。

2-2.補正後の請求項9ないし12に係る発明について
補正後の請求項9ないし12は、補正後の請求項8を直接又は間接に引用するものであるから、補正後の請求項9ないし12に係る発明は、2-1.で述べた理由と同様の理由により、当初明細書等に記載されたものではない。
よって、補正後の請求項9ないし12とする補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でした補正ではない。

2-3.まとめ
以上のとおりであるから、補正後の請求項8ないし12とする補正を含む審判時補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3.補正の目的の適否の検討
3-1.審判時補正と「物の発明」
審判時補正による補正後の請求項3ないし12に係る発明は、「脂肪族ポリエステル二軸延伸シート」(請求項3ないし7)及び「脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル」(請求項8ないし12)に関するものであるから、「物の発明」に属するものである。これに対し、補正前の特許請求の範囲に記載された「物の発明」は、請求項3ないし8に係る発明であって、「脂肪族ポリエステル延伸成形体」(請求項3ないし7)及び「包装容器」(請求項8)に関するものである。
3-2.補正前の請求項8との関係の検討
まず、特許請求の範囲の記載について、「包装容器」を、「シート」又は「ブローボトル」とする補正が、補正前の特許請求の範囲に記載した発明特定事項を限定するものでないことは明らかである。また、この補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものでないことも明らかである。
したがって、補正後の請求項3ないし12とする補正が、補正前の請求項8について、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的としてしたものであるということはできない。

3-3.補正前の請求項3ないし7との関係の検討
補正後の請求項3ないし12に係る発明が、「脂肪族ポリエステル二軸延伸シート」(請求項3ないし7)及び「脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル」(請求項8ないし12)に関するものに大別されることからみて、補正前の請求項3は、補正後の請求項3及び請求項8に補正されたものということができるが、補正前の請求項3を、補正後の請求項3及び請求項8に補正することが、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的としてしたものであるということはできない。

この点、請求人は、平成17年11月25日付けの手続補正書(方式)において、「訂正後の請求項3乃至7の補正の根拠は、それぞれ出願時の請求項3乃至7と明細書の段落番号(0049)、(0052)及び(0060)であり、また請求項8乃至12の補正の根拠は、それぞれ出願時の請求項3乃至7と明細書段落番号(0047)及び(0057)であり、これらの補正は、特許請求の範囲の減縮に相当すると思考致します。」と主張しているので、この主張の当否について検討する。
審判時補正によって、補正前の請求項3という1つの請求項を、補正後の請求項3と請求項8という2つの請求項にするという、請求項の数を増加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでなく、また、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。
すなわち、補正前の請求項3に係る発明の「脂肪族ポリエステル延伸成形体」を補正後の請求項3に係る発明の「脂肪族ポリエステル二軸延伸シート」と補正すること自体は、上位概念の下位概念化であり、また、補正前の請求項3に係る発明の「脂肪族ポリエステル延伸成形体」を補正後の請求項8に係る発明の「脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル」と補正すること自体は、上位概念の下位概念化であるといえるが、請求項の数を増加することが、上位概念の下位概念化であるということはできない。
確かに、請求項を増加する補正であっても、例えば、n項を引用する1つの引用形式請求項を、n-1以下の請求項に変更する補正は、特許請求の範囲の減縮に相当すると認められるものがある。しかし、補正前の請求項3という1つの請求項を、補正後の請求項3と請求項8という2つの請求項にする補正は、n項を引用する1つの引用形式請求項を、n-1以下の請求項に変更する補正に当たるものではない。
同様に、他の請求項に関しても、補正前の請求項4を、補正後の請求項4と請求項9という2つの請求項に項の数を増やす補正、補正前の請求項5を、補正後の請求項5と請求項10という2つの請求項に項の数を増やす補正、補正前の請求項6を、補正後の請求項6と請求項9という2つの請求項に項の数を増やす補正、、及び、補正前の請求項7を、補正後の請求項4と請求項9という2つの請求項に項の数を増やす補正も、同様の理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでなく、また、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。
したがって、請求人の主張は採用しない。

3-4.まとめ
以上のとおりであるから、審判時補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

4.独立特許要件についての予備的検討
4-1.予備的検討の趣旨
3.で述べたように、審判時補正が、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮、すなわち、いわゆる請求項の限定的減縮を目的とするものであるとする余地はない。また、補正後の請求項8とする補正は、2.で述べたように、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとすることはできないから、いわゆる請求項の限定的減縮を目的とするものであるかどうかを検討する余地すらない。
ただ、3-2.で言及したように、補正前の請求項3に係る発明の「脂肪族ポリエステル延伸成形体」を補正後の請求項3に係る発明の「脂肪族ポリエステル二軸延伸シート」と補正すること自体は、上位概念の下位概念化であり、また、補正前の請求項3に係る発明の「脂肪族ポリエステル延伸成形体」を補正後の請求項8に係る発明の「脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル」と補正すること自体は、上位概念の下位概念化であるといえるので、仮に、補正前の請求項3に関わる審判時補正が、補正後の請求項3とするもののみであったならば、いわゆる請求項の限定的減縮を目的とするものであったとする余地がなかったものでもない。また、補正前の請求項3に関わる審判時補正が、補正後の請求項8とするもののみであったならば、いわゆる請求項の限定的減縮を目的とするものであったとする余地がなかったものでもない。
そして、仮に審判時補正がいわゆる請求項の限定的減縮を目的とするものであったとすれば、特許法第17条の2第5項の規定により、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討することとなるという事情にかんがみて、ここで予備的に検討する。

4-2.補正後の請求項8についての実施可能要件の検討
補正後の請求項8に係る発明は、「脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂から形成された二軸延伸ブローボトルであって、下記式(1)
T_(45)≦Tx ‥(1)
式中、Txはボトルの二軸延伸方向の引張降伏点強度(MPa)であり、T_(45)はボトルの延伸方向に対して45゜方向の引張降伏点強度(MPa)である、
で表される強度特性を有することを特徴とする脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル。」を発明特定事項とするものとなる。
そこで、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が、補正後の請求項8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものであるかどうか、特に、2.で述べた「引張強度要件」を備える「脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル」を製造するために必要な技術的事項が、明確かつ十分に記載されているかどうかについて検討する。
なお、審判時補正により補正された本願明細書の発明の詳細な説明は、段落【0012】のみが、当初明細書等の記載から変更されている。

本願明細書の発明の詳細な説明には、先に2-1.において摘示したように、段落【0036】、【0047】、【0057】、【0058】、【0061】?【0063】、【0066】?【0070】、【0074】の記載がある。
しかし、これらの記載では、「引張強度要件」を備える「脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル」を製造するためには、当業者であっても、過度の試行錯誤を行う必要があるといわざるを得ない。
第1に、発明の詳細な説明には、段落【0061】の【表3】や【0074】の【表4】にみられるように、「引張強度要件」を備える「脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル」自体が記載されていないのであるから、実施例3及び4、比較例4?6と、「引張強度要件」を実現するための手段との関係は不明である。換言すれば、実施例3及び4を追試したとしても、「引張強度要件」を実現できるのかどうかは皆目不明である。
第2に、実施例3及び4、比較例4?6の記載をみても、その追試を行うことは到底不可能である。すなわち、例えば、段落【0057】には、「ブロー時のブロー圧力は、圧縮空気吹き込み口と排気口を併設させ、初期に圧縮空気圧を30Kg/cm^(2)とした後、排気バルブを暫時開放し、ブロー時間内にブロー圧を段階的に減圧した。最終的に0.5Kg/cm^(2)まで減圧し金型ブローをした。」と記載されているが、少なくとも、全体のブロー時間、初期の空気圧の継続時間、減圧する段階の数と時間と圧力、最終的段階の時間などが不明であり、しかも、これらの要素は、「引張強度要件」と無関係であるとは認められないものである。同様の記載不備は、段落【0063】や【0068】の実施例4に関する記載についても存在する。

したがって、発明の詳細な説明は、当業者が補正後の請求項8に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

4-3.補正後の請求項9ないし11についての実施可能要件の検討
補正後の請求項9ないし11は、補正後の請求項8を引用するものであるから、4-2.で述べた理由と同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が補正後の請求項9ないし11に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載したものではない。

4-4.まとめ
以上のとおりであるから、審判時補正により補正した後の請求項8ないし11については、本願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので、その特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
なお、この点、請求人は、平成17年11月25日付けの手続補正書(方式)において、「追加実験」の結果として、実施例3及び比較例4を追試し、作成した二軸延伸ブローボトルの降伏点強度の評価を行った旨を述べているが、先に述べたとおり、本願明細書の発明の詳細な説明における実施例3の記載をみても、その追試を行うことは到底不可能であり、しかも、「追加実験」においても、この記載不備は治癒されたとはいえないから、この主張は採用しない。

5.補正の却下の決定のむすび
したがって、補正事項aを含む審判時補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものであり、更に、予備的に検討したところによれば、第17条の2第5項の規定にも違反するといえるものであるので、第159条第1項において準用する第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

III.本願明細書及び図面
II.で述べたとおり、審判時補正は却下されたので、本願明細書及び図面は、平成17年9月2日付け手続補正書により補正された明細書及び図面である。
したがって、本願の請求項3に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載されるとおりの事項を発明特定事項に備える以下のものである。
「脂肪族ポリエステルを主体とする樹脂から形成された延伸成形体であって、下記式(1)
_(T45)≦Tx ‥(1)
式中、Txは成形体の二軸延伸方向の引張降伏点強度(MPa)であり、_(T45)は成形体の延伸方向に対して45゜方向の引張降伏点強度(MPa)である、
で表される強度特性を有することを特徴とする脂肪族ポリエステル延伸成形体。」

IV.原査定の拒絶の理由の概要
平成17年6月28日付けの拒絶理由通知書及び同年9月22日付けの拒絶査定からみて、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に、記載したものではないから、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない、という理由(以下、単に「査定理由」という。)を含むものである。

V.明細書の発明の詳細な説明の記載についての検討
請求項3に係る発明における「脂肪族ポリエステル延伸成形体」とは、明細書の段落【0036】、【0045】、【0047】、【0057】ないし【0058】の記載等からみて、少なくとも脂肪族ポリエステルのブローボトルを包含するものと認められるから、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が、II.の2.で述べた「引張強度要件」を備えるブローボトルを製造するために必要な技術的事項が、明確かつ十分に記載されているかどうかについて検討する。
すると、先にII.の4-2.で検討したように、発明の詳細な説明の記載では、「引張強度要件」を備える「脂肪族ポリエステル二軸延伸ブローボトル」を製造するには、当業者であっても、過度の試行錯誤を必要とするものである。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

VI.むすび
本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
したがって、原査定の査定理由は妥当なものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-01 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-20 
出願番号 特願平11-193585
審決分類 P 1 8・ 536- Z (B29C)
P 1 8・ 561- Z (B29C)
P 1 8・ 57- Z (B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高田 和孝杉江 渉  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 野村 康秀
亀ヶ谷 明久
発明の名称 脂肪族ポリエステル延伸成形体及びその製法  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  
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