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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1180512
審判番号 不服2006-13101  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-22 
確定日 2008-07-03 
事件の表示 特願2001-254925「電磁波シールド材及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 7日出願公開、特開2003- 69284〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成13年8月24日に出願されたものであって、その願書に添付した明細書又は図面についての平成18年4月3日付け手続補正がなされた後、同年5月17日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたものであって、平成20年1月30日付け拒絶理由通知書が発送され、これに対して同年4月4日付け意見書が提出されると共に、上記明細書又は図面についての同日付け手続補正がなされている。

2.拒絶理由の内容
平成20年1月30日付け拒絶理由通知書で示した拒絶理由は、概要、以下の拒絶理由Aである。

拒絶理由A;本件出願は、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たさない。

そして、上記拒絶理由通知書には、以下の記載が認められる。

「【請求項1】の記載について、以下に、指摘するが、他の【請求項】の記載についても、指摘したうちの幾つかと同趣旨の指摘ができる。

a;「シールド層を保護する保護層」とあるが、保護層については、その具体的な構造が特定されていない等のために、保護層たらしめている技術的事項が不明である。
・・・(審決注;「・・・」は、記載の省略を示す。以下、同様。)。
c;「表面抵抗値が5Ω/sq 以下であることを特徴とする電磁波シールド材」とあるが、この記載によれば、この表面抵抗値とは、電磁波シールド材を構成する面についてのものである。
その一方で、発明の詳細な説明における「なお、上記第1、第2実施形態においては、シールド層と保護層、若しくはシールド層と保護層と粘着剤層を具備する電磁波シールド材についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の層を追加形成することも可能である。但し、粘着剤層を備えた電磁波シールド材においては、粘着剤層が最裏面に位置する必要がある。」(段落【0049】参照。)の記載を参照すれば、上記表面抵抗値とは、必ずしも、最外層を構成しているシールド層又は保護層における面についてのものではないが、このような発明は、発明の詳細な説明に、実質的に記載があるとはいえない。
この点に関連して、発明の詳細な説明には、実施例1及び2に係る電磁波シールド材につき、表面抵抗値なるものが【表1】に記載されているが、これが、例えば、実施例2でいえば、最外層を構成している保護層の面のものなのか、或いは粘着剤層の面のものなのかが不明である。
更に、電磁波シールド材を構成する面の表面抵抗値を5Ω/sq 以下としたことの技術的意義も、発明の詳細な説明には、記載がない。」

3.当審の判断
拒絶理由Aの妥当性について検討する。

3-1.特許請求の範囲の記載
本件出願の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】 銀粒子含有樹脂からなるシールド層と、前記シールド層の表面に形成され、導電性カーボン含有樹脂からなり、前記シールド層を保護する保護層とを具備してなり、
10MHz?10GHzに渡って電磁波の電界成分を30dB以上シールドすることが可能であると共に、前記保護層の表面抵抗値が5Ω/sq 以下であることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項2】 ・・・。」

3-2.検討

1)請求項1に記載の発明は、電磁波シールド材についてのものであって、「導電性カーボン含有樹脂からなり、前記シールド層を保護する保護層とを具備してなり、」と記載した事項を、いわゆる、発明特定事項として有するものであるが、該事項を有する発明は、発明の詳細な説明に記載があるとする理由は見当たらない。

2)請求人は、平成20年4月4日付け意見書(以下、「本件意見書」という。)の「[2]補正の概要」において、同日付け手続補正の適法性についての主張を展開しているが、該主張は、先に「1)」で述べた、請求項1に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載があるとする理由は見当たらない、との判断に対する主張とも解せるので、この点を含めて検討する。

2-1)請求人の上記主張の根拠とする段落【0024】及び【0051】を含め、本件明細書等の発明の詳細な説明には、以下の記載ア?エが認められる。

ア;「【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するべく検討を行った結果、以下の電磁波シールド材及びその製造方法を発明するに到った。なお、本明細書では、電磁波シールド材の壁面や天井等に取り付ける側を「裏側」、その反対側を「表側」と定義する。
本発明の第1の電磁波シールド材は、銀粒子含有樹脂からなるシールド層と、前記シールド層の表面及び/又は裏面に形成され、前記シールド層を保護する保護層とを具備してなり、10MHz?10GHzの電磁波の電界成分を30dB以上シールドすることが可能であると共に、表面抵抗値が5Ω/sq 以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の電磁波シールド材は、銀粒子含有樹脂からなるシールド層と、前記シールド層の表面及び/又は裏面に形成され、前記シールド層を保護する保護層と、最裏面に形成され、粘着剤を含有する粘着剤層とを具備してなり、10MHz?10GHzの電磁波の電界成分を30dB以上シールドすることが可能であると共に、表面抵抗値が5Ω/sq以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第1、第2の電磁波シールド材において、前記シールド層の表面抵抗値が1Ω/sq以下であることが好ましい。また、前記シールド層が10?95質量%の金属を含有することが好ましい。また、前記シールド層の膜厚が3?80μmであることが好ましい。また、前記シールド層が、前記銀粒子として、平均粒子径が2?20μmの鱗片状金属粒子と、平均粒子径が5μm以下の超微粉状金属粒子とを含有することが好ましい。
【0011】
以上の本発明の第1、第2の電磁波シールド材によれば、低周波から高周波までの広域に渡って、優れた電磁波シールド性を示すと共に、軽量化、薄型化を図ることができ、柔軟性、伸長性に優れた電磁波シールド材を提供することができる。また、本発明の第2の電磁波シールド材によれば、壁面等に取り付ける際の作業を簡略化することができるという効果も合わせて得られる。なお、本発明の第1、第2の電磁波シールド材により、かかる効果を得ることができる理由については、「発明の実施の形態」の項において詳述する。」(段落【0008】?【0011】)

イ;「【0056】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明では、金属含有樹脂からなるシールド層の表面及び/又は裏面に、シールド層を保護する保護層を設ける構成としたので、低周波から高周波までの広域に渡って、優れた電磁波シールド性を示すと共に、軽量化、薄型化を図ることができ、柔軟性、伸長性に優れた電磁波シールド材を提供することができる。また、最裏面に粘着剤層を設けることが好ましく、かかる構成とすることにより、壁面等に取り付ける際の作業を簡略化することができる。
また、本発明の電磁波シールド材の製造方法によれば、本発明の電磁波シールド材を簡易に製造することができる。」(段落【0056】)

ウ;「【0023】
以下、保護層20が少なくとも厚み方向に対して導電性を有する場合について説明する。
保護層20側から電磁波が入射する場合には、保護層20として、樹脂内に、導電性を有するフィラーを含有したものが好適である。なお、本明細書において、「フィラー」とは、微細な固形粉体であって、粒子径20μm以下のものを意味しているものとする。
【0024】保護層20に含有させるフィラーとしては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、白金、チタン、コバルト、ベリリウム、パラジウム、導電性カーボン等の粒子が好適である。これらの中でも、特に、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、導電性カーボンからなるフィラーを用いることが好適である。これらの金属や導電性カーボンは高い導電性を有するため、これらを用いることにより、保護層20の導電性を向上させることができる。」(段落【0023】?【0024】)

エ;「【0051】
(実施例1)
導電性カーボン粒子10質量%、ポリウレタン樹脂10質量%、及びN,N-ジメチルホルムアミド35質量%とメチルエチルケトン65質量%との混合溶媒80質量%からなる導電性カーボン含有ポリウレタン樹脂液を調製した。次いで、この導電性カーボン含有ポリウレタン樹脂液を離型紙上にコンマコータを用いて塗布し、120℃で3分間乾燥することにより、導電性を有する保護層を形成した。得られた保護層の膜厚は20μm 、導電性カーボンの含有率は50.0質量%であった。
【0052】
次いで、鱗片状の銀粒子(平均長径6μm 、平均短径2μm )36質量%、ポリウレタン樹脂4質量%、及びN,N-ジメチルホルムアミド30質量%とトルエン70質量%との混合溶媒60質量%からなる銀含有ポリウレタン樹脂液を調製した。次に、この銀含有ポリウレタン樹脂液を先に形成した保護層上にコンマコータを用いて塗布し、120℃で3分間乾燥することにより、シールド層を形成し、シールド層及び保護層からなる積層体を得た。得られたシールド層の膜厚は10μm 、銀含有率は90.0質量%であった。
最後に、得られたシールド層と保護層の積層体を離型紙から剥離することにより、本発明の第1のフィルム状の電磁波シールド材を得た。なお、得られた電磁波シールド材は、シールド層と保護層とが積層形成されたものであるので、その膜厚は30μmである。
【0053】
(実施例2)
アクリル樹脂20質量%、鱗片状のニッケル粒子3質量%、酢酸エチル77質量%からなるニッケル含有アクリル樹脂液を調製した。次いで、このニッケル含有アクリル樹脂液を離型紙上にコンマコータを用いて塗布し、120℃で3分間乾燥することにより、膜厚15μmの粘着剤層を形成させた。次いで、この粘着剤層と実施例1において得られた電磁波シールド材とを貼り合わせ、120℃で0.4MPaの圧力にて熱圧着して、粘着剤層を具備する本発明の第2の電磁波シールド材を得た。
なお、シールド層上に粘着剤層が位置するように、粘着剤層と実施例1において得られた電磁波シールド材とを貼り合わせることにより、本発明の第2のフィルム状の電磁波シールド材を得た。なお、得られた電磁波シールド材は、実施例1で得られた電磁波シールド材に粘着剤層を形成したものであるので、その膜厚は45μmである。」(段落【0051】?【0053】)

2-2)記載アには、電磁波シールドを発明するに到ったことが記載され、該電磁波シールドは、シールド層を保護する保護層を具備していることが記載されているものの、該保護層が導電性カーボン含有樹脂からなることについては記載されておらず、また、記載アの段落【0011】や記載イには、電磁波シールド材の発明についての効果が記載されていると認められるものの、やはり、保護層が導電性カーボン含有樹脂からなることについて触れた記載は見当たらない。

2-3)また、記載ウには、保護層20に含有させるフィラーとして、導電性カーボンの粒子が好適であることと共に、フィラーとは、微細な固形粉体であって、粒子径20μm以下のものを意味していることが記載されており、保護層に粒子径20μm以下の粒粉体である導電性カーボンを含有させることが記載されていると認められ、また、記載エには、保護層に、その含有成分として、導電性カーボン粒子が記載されていると認められるものの、いずれの記載を見ても、粒子径20μm以下の粒粉体であるか否かを問わない、或いは、少なくとも、粒粉体であるか否かを問わない導電性カーボンを含有した保護層についての記載はない。

2-4)したがって、請求人の主張に理由はない。

3)請求項1に記載の発明は、電磁波シールド材についてのものであって、「シールド層を保護する保護層とを具備してなり、」及び「前記保護層の表面抵抗値が5Ω/sq 以下である」と記載した事項を、いわゆる、発明特定事項として有するものであるが、これらの事項を有する発明は、発明の詳細な説明に記載があるとする理由は見当たらない。

4)これに対し、請求人は、本件意見書において、主張していないが、以下に、補足する。

4-1)本件明細書等の発明の詳細な説明には、先に「2-1)」で摘示した記載ア、イ及びエに加えて、以下の記載オが認められる。

オ;「【0054】
(評価結果)
実施例1、2において得られたフィルム状電磁波シールド材の評価結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1、2において得られた電磁波シールド材の膜厚は、各々、30μm、45μmと薄いものであったが、いずれも10MHz?10GHzの広域に渡って、60dB以上シールドすることができ、優れた電磁波シールド性を示すことが判明した。また、表面抵抗値も0.03Ω/sqと低いものであることが判明した。」(段落【0054】)

4-2)記載アには、電磁波シールドを発明するに到ったことが記載され、該電磁波シールドは、シールド層を保護する保護層を具備していることが記載されていると認められるものの、該保護層の表面抵抗値が5Ω/sq 以下であることについては記載されておらず、また、記載アの段落【0011】や記載イには、電磁波シールド材の発明についての効果が記載されていると認められるものの、やはり、保護層の表面抵抗値が5Ω/sq 以下であることについて触れた記載は見当たらない。

4-3)また、記載エ及びオには、実施例1として、その層構成から見れば、シールド層及び保護層の2層構造物からなる電磁波シールド材を得、その表面抵抗値は0.03Ω/sqであり、また、実施例2として、粘着剤層、シールド層及び保護層がこの順で積層した3層構造物からなる電磁波シールド材を得、その表面抵抗値は0.03Ω/sqであることが記載されている。
そして、この表面抵抗値が、実施例1においては、シールド層及び保護層のいずれの層のものかや、実施例2においては、粘着剤層及び保護層のいずれの層のものかについての記載はないものの、実施例1及び2が同じ数値の表面抵抗値であることなどから、0.03Ω/sqであるとされている表面抵抗値は、電磁波シールド材を構成している保護層のものであることが推定される。
以上のことから、記載エ及びオには、電磁波シールド材を構成している保護層の表面抵抗値が0.03Ω/sqであることが記載されているとまではいえるものの、その上限値が5Ω/sqの表面抵抗値を持つ保護層が記載されている訳ではないし、また、この0.03Ω/sqとの数値を見ると、上記上限値である5Ω/sqとは、その桁数で2桁もの違いがあり、記載エ及びオから、保護層の表面抵抗値が5Ω/sq 以下であることが記載されているとすることはできない。

4-4)したがって、以上の検討からも、「シールド層を保護する保護層とを具備してなり、」及び「前記保護層の表面抵抗値が5Ω/sq 以下である」と記載した事項を有する電磁波シールド材についての発明は、発明の詳細な説明に記載があるとはいえない。

3-3.まとめ
以上述べたことから、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることに適合するとはいえないから、本件出願は、特許法第36条第6項の規定に違反するものであって、拒絶理由Aは、妥当である。

4.むすび
拒絶理由Aは、妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-02 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-20 
出願番号 特願2001-254925(P2001-254925)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 平塚 義三
坂本 薫昭
発明の名称 電磁波シールド材及びその製造方法  
代理人 青山 正和  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 西 和哉  
代理人 鈴木 三義  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  

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