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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1180557
審判番号 不服2005-3007  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-21 
確定日 2008-07-10 
事件の表示 特願2000-319695「ディスプレイシステムのビット深さ拡張方法およびデイスプレイシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月29日出願公開、特開2001-175236〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年10月19日(パリ条約による優先権主張 1999年10月22日 アメリカ合衆国(US))の出願であって、平成17年1月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審から平成19年11月16日付けで拒絶理由が通知され、平成20年1月21日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成20年1月21日付けの手続補正によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項2に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「ディスプレイ装置と、
該ディスプレイ装置が有するディスプレイノイズを用いて、ノイズを生成するノイズ生成手段と、
該生成されたノイズを画像データから差し引き、ノイズ補償画像データを生成するノイズ補償画像データ生成手段と、
該ノイズ補償画像データを量子化する量子化手段と、
該量子化手段により量子化されたノイズ補償画像データを表示するスクリーンと、を含んでなることを特徴とするディスプレイシステム。」

3.当審拒絶理由通知
当審は、平成19年11月16日付けの拒絶理由で、本願発明は、下記の引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨通知した。
引用刊行物:特開平7-121136号公報

4.引用刊行物に記載の事項及び引用発明
(1)引用刊行物に記載の事項
本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平7-121136号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
【請求項1】入力したnビットの原画素の映像信号に、前記原画素より過去に生じた再現誤差を加算する再現誤差加算回路と、この再現誤差加算回路から出力する拡散出力信号をm(≦n-1)ビットの信号に変換して表示パネルへ出力するビット変換回路と、前記表示パネルの輝度階調補正用に予め設定された補正輝度レベルと前記再現誤差加算回路から出力する拡散出力信号との差を検出し、重み付けをして出力する誤差検出回路と、この誤差検出回路から出力する誤差荷重出力信号を所定画素分遅延させ再現誤差として前記再現誤差加算回路に出力する遅延回路とを具備した誤差拡散回路であって、ドットまたはライン単位のタイミングで擬似ランダムパルス信号を発生する擬似ランダムパルス発生回路と、この擬似ランダムパルス発生回路の擬似ランダムパルス信号のHまたはLレベルの連続出現回数が設定値を超えたときに前記擬似ランダムパルス信号の反転信号を出力し、設定値を超えないときに前記擬似ランダムパルス信号の非反転信号を出力する補正量制御回路と、この補正量制御回路の出力信号に±k(|k|<1)倍の係数を掛けて出力する補正係数回路と、この補正係数回路から出力する信号を前記誤差拡散回路中の信号に加算する補正加算回路とを具備してなることを特徴とする擬似中間調表示装置の誤差拡散回路。
【0001】【産業上の利用分野】本発明は、駆動信号のビット数を低減して発光輝度を増加し、しかも、画質の低下を招くことのないようにした擬似中間調表示装置(例えば、プラズマディスプレイパネル(以下単にPDPと記述する)表示装置)の誤差拡散回路に関するものである。
【0006】【発明が解決しようとする課題】以上のようなAC駆動方式では、階調数を増やせば増やすほど、1フレーム期間内でパネルを点灯発光させる準備期間としてのアドレス期間のビット数が増加するため、発光期間としてのサスティン期間が相対的に短くなり、最大輝度が低下する。
このように、パネル面から発光される輝度階調は、扱う信号のビット数によって定まるため、扱う信号のビット数を増やせば、画質は向上するが、発光輝度が低下し、逆に扱う信号のビット数を減らせば、発光輝度が増加するが、階調表示が少なくなり、画質の低下を招く。
【0007】本出願人は、上述のような問題点を解決するために、図5に示すような擬似中間調表示装置の誤差拡散回路28を提案した(特願平5-229542号)。この図5に示す誤差拡散回路28は、映像信号入力端子30に垂直方向加算回路31、水平方向加算回路32およびビット変換回路33を介して映像出力端子34を結合し、水平方向加算回路32の出力側に誤差検出回路35を結合する。
【0008】そして、誤差検出回路35は、PDP10の輝度階調補正用に予め設定された補正輝度レベルのデータを記憶するROM(リード・オンリ・メモリ)38、このROM38の設定デ-タと水平方向加算回路32からの拡散出力信号との差をとって誤差信号を出力する減算回路39、この誤差信号に所定の重み付けをして誤差荷重信号を出力する荷重回路40、41からなる。
【0009】誤差検出回路35の荷重回路40、41の出力側には、原画素A(i,j)よりhライン前の画素、例えば1ラインだけ過去に生じた再現誤差E(i,j-1)を出力するhライン遅延回路36を介して垂直方向加算回路31に接続されるとともに、原画素A(i,j)よりdドット前の画素、例えば1ドットだけ過去に生じた再現誤差E(i-1,j)を出力するdドット遅延回路37を介して水平方向加算回路32に接続されている。
【0010】そして、垂直方向加算回路31、水平方向加算回路32によって誤差を組み入れて拡散させた拡散出力信号をビット変換回路33に送り、このビット変換回路33でnビットで量子化された拡散出力信号を、m(≦n-1)ビットに変換して映像出力端子34からPDP10へ駆動信号として出力する。このようにして、原映像入力信号を誤差の組み入れで拡散させ、かつ、原映像入力信号よりも少ないビット数の信号により、発光輝度が低下することなく、しかも、滑らかな応答が得られる。
【0011】しかしながら、図5に示した誤差拡散回路28では、映像信号入力端子30に同一レベルの映像信号が連続して入力した場合、例えば、8ビットの原画素映像信号がFF、FF、…、FFと同一のレベルで連続して入力したような場合、荷重回路40、41からhライン遅延回路36、dドット遅延回路37へ出力する誤差荷重出力値が、それぞれ連続した同一値となるため、PDP10が規則的な繰り返しパターンである擬似紋様を表示するという若干の問題点があった。
【0012】つぎに、この擬似紋様を作る現象を図6?図8を用いて説明する。PDP10への駆動信号に対する発光輝度レベルを実測し、この発光輝度レベルをその最大値で正規化したものが、図6に示す階段状の実測線であったものとする。なお、この例では、映像入力信号が8ビットであるものを、駆動信号を4ビットにした例を示している。前記実測線に基づいて、y=ax+bで表わされる補正輝度線を求める。この補正輝度線は、y=xという理想線からややずれているので、補正をすることが必要となる。これを補正した輝度線は、図7に示され、拡散補正信号レベルに対し{(補正輝度線勾配a-1)-補正輝度線接片b}の補正を施したものである。この図7のように、補正輝度線をy=xとなるように補正したときの階段状のデ-タがROM(リード・オンリ・メモリ)38に記憶される。
【0015】本発明は、上述の問題点に鑑みなされたもので、入力信号のビット数よりも出力駆動信号のビット数を低減しながら、入力信号と発光輝度との濃淡誤差を最小にするとともに、同一レベルの映像信号が連続して入力した場合にも擬似紋様が発生するのを防止できる擬似中間調表示装置の誤差拡散回路を提供することを目的とするものである。
【0021】【実施例】以下、本発明による擬似中間調表示装置の誤差拡散回路の一実施例を図1を用いて説明する。図1において図6と同一部分は同一符号とする。
図1において、30は、nビットの原画素A(i,j)の映像信号入力端子で、この映像信号入力端子30は、垂直方向加算回路31、補正加算回路50及び水平方向加算回路32を経、さらにビット変換回路33でビット数を減らす処理をして映像出力端子34に接続される。前記垂直方向加算回路31と水平方向加算回路32は再現誤差加算回路を構成している。
【0022】52は、ドットまたはライン単位のタイミングで擬似ランダムパルス信号を発生する擬似ランダムパルス発生回路である。この擬似ランダムパルス信号は、ある周期の繰り返しはもっているが、その周期が十分長いのでランダムパルス信号と見做せるような信号をいう。前記擬似ランダムパルス発生回路52は原始多項式回路やM系列符号発生回路で構成されている。この原始多項式回路は、例えば、19個のフリップフロップ回路と3個の加算回路を主体に構成された19次の原始多項式回路からなり、周期(219-1)(即ち周期524,287)でH(例えば1)、L(例えば0)のランダムパルス信号を出力するように構成されている。ここで、周期524,287は、1周期の長さが単位パルス期間の524,287倍の長さ(期間)であることを表わす。
【0023】前記擬似ランダムパルス発生回路52の出力側には補正量制御回路54が結合している。この補正量制御回路54は、前記擬似ランダムパルス発生回路52の擬似ランダムパルス信号のHレベル(例えば1)またはLレベル(例えば0)の連続出現回数が設定値(例えば3)を超えたか否かを監視する補正量監視回路56と、この補正量監視回路56の監視信号に基づいて前記擬似ランダムパルス発生回路52の擬似ランダムパルス信号を反転、非反転して出力する反転回路58とからなり、擬似ランダムパルス信号のHまたはLレベルの連続出現回数が設定値を超えたときに擬似ランダムパルス信号の反転信号を出力し、連続出現回数が設定値を超えないときに擬似ランダムパルス信号をそのまま出力するように構成されている。
【0024】前記補正量制御回路54の出力側は、±k(|k|<1)倍の係数を掛けて出力する補正係数回路60を介して前記補正加算回路50に結合されている。前記水平方向加算回路32の出力側には誤差検出回路35が接続されている。この誤差検出回路35は、予め輝度階調補正用の補正輝度レベルのデータが設定記憶されたROM38と、このROM38で設定された補正輝度レベルと前記水平方向加算回路32から出力する拡散出力信号との差を演算して誤差検出信号を出力する減算回路39と、この減算回路39から出力する誤差検出信号に所定の重み付けをした誤差荷重信号を出力する荷重回路40、41とからなっている。
【0025】前記誤差検出回路35の荷重回路40と41の出力側には、それぞれhライン遅延回路36とdドット遅延回路37を介して前記垂直方向加算回路31と水平方向加算回路32とが結合している。前記hライン遅延回路36は、前記荷重回路40から出力する誤差荷重出力信号をhライン遅延するもので、原画素A(i,j)よりhライン前の画素についての再現誤差(例えば、h=1のときは1ラインだけ過去に生じた再現誤差E(i,j-1))を出力し、前記dドット遅延回路37は、前記荷重回路41から出力する誤差荷重出力信号をdドット遅延するもので、原画素A(i,j)よりdドット前の画素についての再現誤差(例えば、d=1のときは1ドットだけ過去に生じた再現誤差E(i-1,j))を出力する。
【0026】つぎに、図1に示した実施例の作用を図2、図6、図7を併用して説明する。
(1)補正輝度線が直線の場合
図6に示すように、PDP10への駆動信号に対する発光輝度レベルを実測し、この発光輝度レベルをその最大値で正規化した実測線に基づいて、y=ax+bで表わされる補正輝度線を求める。この補正輝度線は、y=xという理想線からややずれているので、補正をすることが必要となる。これを補正した輝度線は、図7に示され、拡散出力信号レベルに対し{(補正輝度線勾配a-1)-補正輝度線接片b}の補正を施したものである。この図7のような、補正輝度線をy=xとなるように補正したときの階段状のデータがROM38に記憶される。
【0027】補正輝度線がy=xの場合、補正輝度レベルは発光輝度レベルと同一になる。したがって、駆動出力ビット数をmとすれば、2のm乗ワード(m=4のときは2の4乗の16ワード)の輝度レベルのデ-タをROM38に記憶させればよい。なお、図6において、補正輝度線y=ax+bがy=xとほとんど一致している場合には、図7に示すような処理をすることなく、図6に示した実測値のデ-タをROM38に記憶してもよい。
【0028】以上のような構成における誤差拡散方式の原理は、既提案の図5の回路と同様にして、2つの輝度階調で密度変調を行い、ある広がりを持った小領域内で視覚上擬似的な階調を作り出し、多階調を得るようにしたものである。 図2によりさらに詳しく説明する。
A(i,j) :現処理対象の入力画素値
A(i,j-1):1ライン前の入力画素値(h=1の場合)
A(i-1,j):1ドット前の入力画素値(d=1の場合)
δv:1ライン前からの拡散出力画素の誤差荷重値
δh:1ドット前からの拡散出力画素の誤差荷重値
とすると、誤差検出回路35に入力した拡散出力信号とROM38からのデータとが、減算回路39でその差がとられて誤差出力信号が得られる。
【0029】この誤差出力信号は、荷重回路40、41でそれぞれKv(<1)、Kh(=1-Kv)の重み付けされた誤差荷重出力信号δv、δhとなり、1ライン遅延回路36(h=1の場合)と1ドット遅延回路37(d=1の場合)に入力し、垂直方向加算回路31と水平方向加算回路32で原画素A(i,j)に組み入れられ、
C(i,j)=A(i,j)+δv+δh となる。
【0030】なお、C(i,j):現処理対象の拡散出力画素値
δv=Kv×〔f{C(i,j-1)}-Br〕
δh=Kh×〔f{C(i-1,j)}-Br〕
f{C(i,j)}:C(i,j)に対する補正輝度
Br:発光輝度レベルである。
【0031】誤差を組み入れて拡散させた拡散出力信号をビット変換回路33に送り、このビット変換回路33にてnビットで量子化された拡散出力信号を、m(≦n-1)ビットに変換して映像出力端子34より出力する。このようにして、原映像入力信号を誤差を組み入れて拡散させ、かつ、原映像入力信号よりも少ないビット数の信号により、発光輝度が低下することなく、しかも、滑らかな応答が得られる。
【0032】さらに、補正加算回路50は、擬似ランダムパルス発生回路52から出力し、補正量制御回路54を経、補正係数回路56で±k倍された擬似ランダムパルス信号を、ドットまたはライン毎に垂直方向加算回路31の出力側で入力信号に加算しているので、映像信号入力端子30に入力する原画素映像信号のレベルが連続した同一値であっても、その連続したデ-タに揺らぎができ、拡散出力に規則的な繰り返しパターンが発生するのを防止する。したがって、PDP10における擬似紋様の発生を防止(抑制)することができる。
【0035】(2)補正輝度線が直線でない場合
PDP10の輝度を曲線状に補正したい場合(ガンマ補正など)には、補正輝度線を希望する曲線に設定し、発光輝度レベルとの誤差値を求め、前記(1)の場合と同様にして補正輝度レベル設定回路に設定記憶される。その他の作用は前記(1)の場合と同様である。
【0036】前記実施例では、再現誤差加算回路を垂直方向加算回路と水平方向加算回路とで構成し、補正加算回路を垂直方向加算回路と水平方向加算回路の間に挿入するようにしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、再現誤差加算回路は垂直方向加算回路と水平方向加算回路の一方のみで構成してもよい。また、補正加算回路は誤差拡散回路中の信号に擬似ランダムパルス信号を加算できる適宜の個所に設けるものであればよい。例えば、図1において、映像信号入力端子30と垂直方向加算回路31との間、水平方向加算回路32の出力側、または減算回路39と荷重回路40、41の間に、補正加算回路50を挿入するようにしてもよい。
【0039】【発明の効果】本発明による擬似中間調表示装置の誤差拡散回路は、上記のように、再現誤差加算回路(例えば垂直方向加算回路や水平方向加算回路)とビット変換回路と誤差検出回路と遅延回路とを具備し、この誤差検出回路は、補正輝度レベルと拡散出力信号との差を検出し重み付けをして遅延回路に出力しているので、既提案の回路と同様に、原映像入力信号よりも少ないビット数の信号により、発光輝度が低下することなく、しかも、滑らかな応答が得られる。
【0040】さらに、補正加算回路は、擬似ランダムパルス発生回路で発生し補正係数回路で±k倍した擬似ランダムパルス信号を、誤差拡散回路中の信号に加算しているので、入力する原画素映像信号のレベルが連続した同一値であっても、映像出力端子から表示パネル(例えばPDP)へ出力する映像出力信号(駆動信号)に揺らぎができ、連続した同一値とならない。したがって、表示パネルにおける擬似紋様の発生を防止(抑制)することができる。

(2)引用発明
前記摘示の記載及び図面によれば、引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「入力したnビットの原画素の映像信号に、前記原画素より過去に生じた再現誤差を加算する再現誤差加算回路(31、32)と、前記再現誤差加算回路(31、32)の出力に擬似紋様の発生を防止する揺らぎを加算する補正加算回路(50)と、前記nビットの原画素の映像信号に前記再現誤差及び揺らぎを加算して出力される拡散出力信号をm(≦n-1)ビットの駆動信号に変換して表示パネル(10)へ出力するビット変換回路(33)とを備える擬似中間調表示装置であって、
前記再現誤差加算回路(31、32)は、前記表示パネル(10)の前記mビットの駆動信号に対する発光輝度レベルを実測して、理想の補正輝度線となるように前記実測した発光輝度レベルを補正してROM(38)に予め設定記憶した補正輝度レベルと、前記再現誤差加算回路(31、32)から出力される拡散出力信号との差が誤差検出回路(35)により誤差出力信号として出力されると、該誤差出力信号を遅延回路(36、37)により所定画素分遅延して出力した信号を前記再現誤差として前記原画素の映像信号に加算するものであり、
前記補正加算回路(50)は、擬似ランダムパルス発生回路(52)から出力される擬似ランダムパルス信号を補正係数回路(60)により±k(|k|<1)倍した信号を擬似紋様の発生を防止する揺らぎとして前記原画素の映像信号に加算するものである、
擬似中間調表示装置。」

5.対比判断
(1)本願発明と引用発明との対比
i.引用発明の「表示パネル(10)」は、本願発明の「スクリーン」に相当し、引用発明の「擬似中間調表示装置」は、表示装置を含む表示システム全体の構成であるから、本願発明の「ディスプレイ装置」及び「ディスプレイシステム」に相当する。

ii.本願発明の「ノイズ生成手段」について、引用発明と対比する。
(ア)まず、本願発明の「ノイズ生成手段」の意味について検討すると、これを構成する「ディスプレイノイズ」及び「ノイズ」について、本願明細書の発明の詳細な説明の欄には、以下の記載がある。
「【0041】図1は本発明によるビット深さが制限されているディスプレイシステムの中の静的ディスプレイノイズを利用する一実施例を示す図である。ディスプレイ装置14は、固定パターン誤差20を測定し、静的ノイズを決定する。このノイズは、図2のコントラスト受信装置での減算ノイズとして扱われる。固定パターン誤差20を測定するステップから得たノイズ配列は、光単位からディジタルコード値に換算し、擬似ランダムノイズ12を発生させる。このノイズを量子化前に画像から減算し、ノイズ補償連続階調画像データを生成し、ディスプレイ装置の固有ノイズがこれを相殺する。この代わりに、連続階調画像にノイズの逆数を付加してもよい。両方共、他の技法と同様に、静的ディスプレイノイズを減算する技法と呼ぶ。量子化による小さな残差ノイズが存在するが、このディスプレイ装置は、上記ノイズ補償を略相殺する。
【0042】本発明におけるディスプレイノイズは、静的なディスプレイノイズを意味することに留意すべきである。大多数の視聴者は、ディスプレイノイズを、実際には動的なノイズである画像中で連続して変化するノイズと結び付けるが、全てのディスプレイ装置は、装置に関連する静的なノイズを有している。例えば、代表的な陰極線管(CRT)ディスプレイは画像を形成するために用いられる蛍光体に関係するノイズを有している。
【0043】この測定は、製造される各ディスプレイ装置毎に製造時に実行できる。別の方法では、ディスプレイをモデル化して、ディスプレイの等級又はカテゴリ毎に固有のノイズを測定する。これは、図5に関する記述の際にも適用する。」

(イ)本願明細書の発明の詳細な説明の上記記載によれば、本願発明における「ディスプレイノイズ」とは、ディスプレイ装置の「固定パターン誤差20」あるいは「固有ノイズ」を測定することによって決定される「静的ディスプレイノイズ」を意味し、その例として、ディスプレイ装置に表示される画像中で連続して変化する動的なノイズとは別の、ディスプレイ装置として代表的な陰極線管(CRT)ディスプレイ装置に関連する蛍光体に関係する固有のノイズがあり、これが製造時に測定可能であり、また、本願発明における「ノイズ」とは、「静的ディスプレイノイズ」に対応して発生される「擬似ランダムノイズ」である。

(ウ)また、審判請求人が平成17年2月21日に提出した審判請求書においては、「ディスプレイノイズ」及び「ノイズ」について、以下の記載がある。
「本願出願時の技術常識を裏付けるための技術文献として、
文献1;「テレビジョン・画像情報工学ハンドブック」,
1034頁,1990年11月30日
文献2;「カラーハードコピー画像処理技術」,33-45頁,
平成2年5月25日
を物件提出書により別途提出致します。
まず、本願明細書[0041]に記載の「固定パターン誤差20を測定するステップから得たノイズ配列は、光単位からディジタルコード値に換算し、擬似ランダムノイズ12を発生させる。」について補足致します。
「固定パターン誤差」とは静的ディスプレイノイズのことを指し、「ノイズ配列」とは静的ディスプレイのノイズ配列を指します。
すなわち上記記載は、静的ディスプレイノイズの測定値を擬似ランダムノイズの振幅に反映させ(静的ディスプレイノイズの測定値に応じて擬似ランダムノイズの振幅を変化させ)、当該擬似ランダムのノイズを発生させることを意味します。
また、静的ディスプレイノイズの測定とは、すなわち、静的な画像を測定することです。ここで、静的な画像の測定、および、その測定値の画像への反映について説明します。
上記文献1の1034ページには、画像のバックグラウンドの部分(静的な画像)の輝度が高く対象物の正確な定量化が難しい場合に、バックグラウンドの部分だけをあらかじめ計測しておき、これを原画像から減算することで対象物の画像を得る、バックグラウンド補正の技術が記載されています。
さらに上記文献1には、別の技術として、レンズの透過ムラ、センサの感度ムラなどの影響によるシェージングにより、対象物が定量的輝度情報とならない場合に、背景光だけの画像(静的な画像)を用いてこれが均一となる補正係数を各画素について求め、メモリーに記録し、これを、対象物を含む原画像と乗算することにより輝度の補正を行う、シェージング補正の技術が記載されています。
次に、ランダムノイズの振幅を変化させる点について説明します。
上記文献2の38?40ページには、カラーハードコピーにおいて、画信号を2値化する際の処理方法の一つである誤差拡散法について記載されています。この方法は、ある画像が2値化をされる際には、すでに2値化された周辺の画素からの重み(すなわち振幅)付き誤差分で補正した後に2値化(すなわちノイズが加算)されます。すでに2値化された周辺の画素のマトリクスに重み付け係数を付したものをウエイトマトリクスと呼びます。このウエイトマトリクスのサイズや重み係数の制御(すなわちノイズの振幅を変化させること)により、様々な画質の改善が図られています。
また、上記文献2の40?41ページには、画信号を2値化する際の他の処理方法である、ランダムディザ法について記載されています。ディザ法は、入力画信号をN×Nのしきい値マトリクス(すなわち振幅)と比較して画素ごとに2値化(すなわちノイズを加算)していきます(文献2の36ページ)。ランダムディザ法は、マトリクスの係数やパターン(すなわち振幅)を条件つきでランダムに制御する(すなわちランダムにノイズを制御する)手法です。この条件は、補正や制御等目的によって異ならせる(すなわちランダムノイズを、補正や制御等目的によって振幅を変化させる)ことができます。
さらに、文献2の43?44ページには、カラーハードコピーにおける多値面積階調法(多値画像の再量子化法)の一つである、ハイライト表現のための多段ディザ法について記載されています。多段ディザ法は、3段のディザマトリクスを画像の濃淡レベルにより使い分ける(すなわち画像の濃淡レベルにより複数の振幅を使い分ける)手法です。特にハイライト部では濃度で等間隔よりも、他の部分に比較して階調数を多く割り当てた方が階調の滑らかさが増し画質的にも好ましいため、このような手法がとられています。 以上、輝度を補正するために画像の静的な部分を測定する点、および、擬似ランダムノイズの振幅を変化させる点につきましては、いずれも、上記刊行物に記載されている技術の適用または転用で可能であります。」

(エ)審判請求書の上記記載によれば、本願発明における「ディスプレイノイズ」に関して、「静的ディスプレイノイズの測定とは、静的な画像を測定する」ことを意味し、「静的な画像」として、「対象物を含む原画像」のうち「画像のバックグラウンドの部分」や「背景光だけの画像」を例示し、また、本願発明における「ノイズ」に関して、「静的ディスプレイノイズの測定値を擬似ランダムノイズの振幅に反映させ、当該擬似ランダムのノイズを発生させる」ことを意味し、階調画像の処理方式としての誤差拡散法や各種のディザ法を例示している。

(オ)以上の本願明細書の発明の詳細な説明及び審判請求人が提出した審判請求書の記載によれば、本願発明における「ディスプレイノイズ」は、その具体的特性については必ずしも明らかとはいえないがディスプレイ装置固有の特性に関連するノイズのみならず、ディスプレイ装置に表示される静的な画像の特性に関連するノイズのいずれもが該当するものである。

(カ)一方、引用発明は、前記認定した構成に示されるように、実測した発光輝度レベルが理想の補正輝度線と差があることを踏まえて、実測した発光輝度レベルを補正した補正輝度レベルを予め設定記憶しておき、いわゆる誤差拡散法により原画素より過去に生じた再現誤差を組み入れて拡散した拡散出力信号と前記補正輝度レベルとの差である誤差出力信号を原画素の映像信号に加算して画像の中間調表示を改善するとともに、原画素の映像信号のレベルが連続した同一値のために前記誤差出力信号が連続した同一値となっても、±k倍した擬似ランダムパルス信号を前記拡散出力信号に加算することにより揺らぎを発生させて、擬似紋様の発生を防止することを課題とするものであるところ、「実測した発光輝度レベルが理想の補正輝度線と差がある」とは、本願明細書の発明の詳細な説明に記載される如き、ディスプレイ装置の発光輝度レベルに係る装置固有の誤差特性をいうものであり、また、「原画素の映像信号のレベルが連続した同一値となるような画像」を補正対象とすることは、審判請求書に記載される如き、「静的な画像」を補正対象とすることをいうものである。

(キ)してみると、引用発明の「実測した発光輝度レベルを補正した補正輝度レベルと、拡散出力信号との差である誤差出力信号」は、発光輝度レベルに係るディスプレイ装置固有の特性と、静的な画像の特性の両者に関連して生じる不確定なノイズレベルの誤差を出力するものであるから、ディスプレイ装置が有するノイズを出力するものといえ、よって、本願発明の「ディスプレイノイズ」に相当する。
また、引用発明の「±k倍した擬似ランダムパルス信号」は、映像信号に揺らぎを発生させるためのノイズとして、誤差出力信号が連続した同一値となっても擬似紋様の発生を防止して画像の中間調表示を改善するものであり、これに前記「±k倍した擬似ランダムパルス信号」を組み合わせたものが原画素の映像信号に作用するノイズを形成することになるから、引用発明の「誤差出力信号」と「±k倍した擬似ランダムパルス信号」の両者を組み合わせたものは、本願発明の「ノイズ」と対比して、「ディスプレイノイズに関連するノイズ」において共通する。
よって、引用発明における、「誤差検出回路(35)」及び「遅延回路(36、37)とからなる「誤差出力信号」を出力する回路と、「擬似ランダムパルス発生回路52」及び「補正係数回路60」とからなる揺らぎを出力する回路とを併せたものは、「ディスプレイノイズに関連するノイズを生成する」機能において、本願発明の「ノイズ生成手段」に相当する。

iii.引用発明は、原画素の映像信号に、前記原画素より過去に生じた再現誤差を組み入れて拡散した拡散出力信号から補正輝度レベルを差し引いた誤差出力信号と、±k倍した擬似ランダムパルス信号とを加算して補正輝度レベルに起因する誤差分を補償することにより、輝度レベルを補償した拡散出力信号を得るものであるから、その技術的意義は、本願発明でいう画像データからノイズ分を差し引くことと同様であるといえる。
よって、引用発明の「原画素の映像信号」及び「拡散出力信号」は、それぞれ本願発明の「画像データ」及び「ノイズ補償画像データ」に相当し、引用発明の「再現誤差加算回路(31、32)」と「補正加算回路(50)」とを併せたものは、原画素の映像信号に前記誤差出力信号と±k倍した擬似ランダムパルス信号とを加算する回路手段として、本願発明の「ノイズ補償画像データ生成手段」に相当する。

iv.引用発明の「ビット変換回路(33)」は、nビットの原画素の映像信号に再現誤差及び揺らぎを加算した拡散出力信号について、これをm(≦n-1)ビットの駆動信号に変換して表示パネル(10)へ出力するものであるから、本願発明の「量子化手段」に相当する。

そうすると、本願発明と引用刊行物1発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点.「ディスプレイ装置と、
該ディスプレイ装置が有するディスプレイノイズに関連するノイズを生成するノイズ生成手段と、
該生成されたノイズを画像データから差し引き、ノイズ補償画像データを生成するノイズ補償画像データ生成手段と、
該ノイズ補償画像データを量子化する量子化手段と、
該量子化手段により量子化されたノイズ補償画像データを表示するスクリーンと、を含んでなるディスプレイシステム。」
相違点.ノイズ生成手段が、本願発明は、ディスプレイノイズを用いてノイズを生成するのに対し、引用発明は、誤差出力信号をディスプレイノイズとして、これに±k倍した擬似ランダムパルス信号を組み合わせてノイズを生成する点。

(2)相違点の検討
i.ノイズ生成手段について、本願発明は、ディスプレイノイズを用いてノイズを生成するものとしか規定しておらず、何らかの形でディスプレイノイズを用いてノイズを生成する手段をすべて包含するものであるから、引用発明に示される、本願発明のディスプレイノイズに相当する誤差出力信号に±k倍した擬似ランダムパルス信号を組み合わせたときに得られる、ノイズを生成する手段が本願発明に含まれることは明らかである。

ii.また、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されるように、ノイズ生成手段に擬似ランダムノイズを導入するものとして、ディスプレイ装置に固有の特性に関連する「ディスプレイノイズ」に基づいて、これに対応した関数としてのホワイトノイズあるいはランダムノイズを画質を改良する「ノイズ」として生成するようにした画像処理技術が、周知(例えば、特開昭63-155948号公報、特開平9-214767号公報参照。以下、「周知技術」という。)であるから、引用発明に前記周知技術を適用して、前記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

iii.作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明(本願発明)は、引用発明及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項1及び3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-12 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-26 
出願番号 特願2000-319695(P2000-319695)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 山川 雅也
堀部 修平
発明の名称 ディスプレイシステムのビット深さ拡張方法およびデイスプレイシステム  
代理人 高野 明近  
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