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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1180560
審判番号 不服2005-7706  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2008-07-10 
事件の表示 平成 9年特許願第 35601号「パチンコ遊技機における賞球払出誘導構造」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月18日出願公開、特開平10-216319〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年2月3日の出願であって、平成16年1月6日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年3月5日付けで手続補正がなされ、平成17年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年5月23日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成20年2月4日付けで、前記平成17年5月23日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶理由が通知され、これに対し、平成20年3月28日付けで手続補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、上記平成20年3月28日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 遊技機本体の裏面に設けられる機構板面に入賞信号により賞球を払出する賞球払出機構部が設けられると共に、該賞球払出機構部から払出される賞球を一時的に保留する上面が開口した箱型の賞球保留部が前記賞球払出機構部と同一平面的に設けられ、前記賞球保留部には上受け皿へ賞球を払出する球出口が設けられる一方、該賞球保留部の側板を乗り越えてオーバーフローする賞球を側方へ平面誘導し下受け皿に払出する側方溢れ出し路が前記機構板面に沿って設けられ、該側方溢れ出し路に連通して賞球を前記下受け皿に払出する賞球通路樋体が前記賞球保留部と同一平面的に同じく前記機構板面に沿って設けられると共に、前記賞球保留部の側板の上縁の高さが前記機構板面側に向けて次第に低く形成され、該側板の上縁の低い位置を賞球が乗り越えてオーバーフローすることを特徴とするパチンコ遊技機における賞球払出誘導構造。」(以下「本願発明」という。)

第二.当審の拒絶理由
一方、当審において上記平成20年2月4日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願の請求項1に係る発明は、下記の刊行物1又は2に記載された発明に基づいて、本願の請求項2に係る発明は、下記の刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、又は刊行物2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第三.刊行物に記載された発明
刊行物1:特開平1-285281号公報(以下、「引用刊行物A」という。)
刊行物2:実公平6-1175号公報
刊行物3:実公昭58-31590号公報(以下、「引用刊行物B」という。)

当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された引用刊行物A(特開平1-285281号公報)において、
(A-1)第4頁左上欄第14行乃至右上欄第9行には、「 次に、第1図及び第3図?第5図に基づいてパチンコ遊技機1の背面について説明する。・・・
また、遊技盤固定枠32の一側には、支持金具35a,35bを介して機構板34が開閉自在に設けられている。この機構板34は、前記遊技盤6の裏面のほぼ全域を覆うように設けられると共に、通常時において、機構板固定具36a?36cによって遊技盤固定枠32に固定されるようになっている。」と、
(A-2)第6頁左下欄第3行乃至第14行には、「景品玉払出装置71は、景品玉を一列に収納する景品玉収納筒72と、該景品玉収納筒72の景品玉入口75及び景品玉放出口76を開閉する上部玉ストッパー77と下部玉ストッパー79と、該上部玉ストッパー77と下部玉ストッパー79との動作を制御する摺動部材82と、前記連杆49の他端が連結され、かつ摺動部材82を動作させる作動部材88と、から構成されている。そして、上記した作動部材88を除く他の部品は、取付基板73に一体的に設けられて、固定具74によって機構板34に着脱自在に取り付けられている。」と、
(A-3)第7頁右上欄第6行乃至第13行には、「したがって、景品玉は、・・・下部玉ストッパー79による規制が解除されて収納されていた景品玉が景品玉放出口76から放出されるようになっている。」と、
(A-4)第7頁右下欄第2行乃至第19行には、「 景品玉払出装置71は、上記した構成により景品玉を払い出すが、払い出された景品玉は、景品玉誘導径路の一部である景品玉排出通路91を流下する。景品玉排出通路91の下方には、誘導開口93が開設され、景品玉排出通路91を落下してきた景品玉を前記打球供給皿26に誘導するようになっている。・・・
前記誘導開口93の一側には、仕切壁94が突設され、該仕切壁94の側方には、景品玉誘導径路の一部であって、前記余剰景品玉受皿30と連通する連通部95が形成されている。このため、景品玉払出装置71から払い出された景品玉が打球供給皿26を充満し、さらに誘導開口93をも満たすと、それ以上の景品玉は仕切壁94を超えて連通部95を流下して余剰景品玉受皿30に誘導されるようになっている。」と、それぞれ記載されている。

したがって、引用刊行物Aには、
「遊技盤固定枠32の一側には、遊技盤6の裏面のほぼ全域を覆うように機構板34が開閉自在に設けられ、
景品玉を払い出す景品玉払出装置71は、景品玉を一列に収納する景品玉収納筒72と、該景品玉収納筒72の景品玉入口75及び景品玉放出口76を開閉する上部玉ストッパー77と下部玉ストッパー79と、該上部玉ストッパー77と下部玉ストッパー79との動作を制御する摺動部材82と、摺動部材82を動作させる作動部材88と、から構成され、上記作動部材88を除く他の部品は、前記機構板34に着脱自在に取り付けられ、
前記景品玉放出口76から払い出された景品玉が落下する景品玉排出通路91の下方には、景品玉誘導径路の一部である前記景品玉排出通路91を落下してきた景品玉を打球供給皿26に誘導する誘導開口93が開設され、
前記誘導開口93の一側には、仕切壁94が突設され、該仕切壁94の側方には、景品玉誘導径路の一部であって、余剰景品玉受皿30と連通する連通部95が形成されている、パチンコ遊技機1であって、
前記景品玉払出装置71の景品玉放出口76から払い出された景品玉が前記打球供給皿26を充満し、さらに前記誘導開口93をも満たすと、それ以上の景品玉は前記仕切壁94を超えて連通部95を流下して前記余剰景品玉受皿30に誘導されるようになっている、パチンコ遊技機1。」の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

また、当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された引用刊行物B(実公昭58-31590号公報)において、
(B-1)第2頁第4欄第29行乃至第32行には、「一方、前面板4に設けられる連絡樋7は前面板の背面から後方に向け突き出し基板に開設した窓9に臨むようにしてあり、その後部には上方を開放した皿形の球受け部12が一体に連設してある。」と、
(B-2)第3頁第5欄第12行乃至第25行には、「この状態において賞球ケースより賞球の放出があると、賞球樋8を通して落下した球は球受け部12に捕球され、その傾斜に沿つて連絡樋7を通り、前面板の賞球上皿6へと誘導され、前記自動打球供給装置に導かれることになる。・・・
従つて、遊技中における賞球の放出は優先的に上皿6に排出され、これが満杯となつたとき下皿11に排出されることから、従来のパチンコ機における賞球の排出と全く変りなく行われることになる。」と、それぞれ記載されている。

したがって、引用刊行物Bには、
「賞球ケースより賞球の放出があると、賞球樋8を通して落下した球は球受け部12に捕球され、その傾斜に沿つて連絡樋7を通り、前面板の賞球上皿6へと誘導され、これが満杯となつたとき下皿11に排出されるパチンコ機において、
連絡樋7の後部には上方を開放した皿形の球受け部12が一体に連設してある、パチンコ機。」の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。

第四.本願発明と引用発明Aとの比較・検討
(第四-1)引用発明Aの「機構板34」は本願発明の「機構板」に相当し、以下同様に「景品玉」は「賞球」に、「景品玉払出装置71」は「賞球払出機構部」に、「打球供給皿26」は「上受け皿」に、「誘導開口93」は「球出口」に、「仕切壁94」は「側板」に、「余剰景品玉受皿30」は「下受け皿」に、「連通部95」は「側方溢れ出し路」及び「賞球通路樋体」に、「パチンコ遊技機1」は「パチンコ遊技機」に、それぞれ相当する。また、引用発明Aの「景品玉を払い出す景品玉払出装置71は、・・・機構板34に着脱自在に取り付けられ、」の事項は本願発明の「機構板面に賞球払出機構部が設けられる」の事項に相当する。
(第四-2)機構板が「遊技機本体の裏面に設けられる」技術、及び賞球払出機構部が「入賞信号により賞球を払出する」技術は、当該技術分野においては技術常識である。
(第四-3)引用発明Aの「景品玉排出通路91を落下してきた景品玉を打球供給皿26に誘導する誘導開口93が開設され」との技術事項、及び「払い出された景品玉が打球供給皿26を充満し、さらに誘導開口93をも満たすと、それ以上の景品玉は仕切壁94を超えて連通部95を流下して余剰景品玉受皿30に誘導される」との技術事項について検討すると、「払い出された景品玉が打球供給皿26を充満し、さらに誘導開口93をも満たす」以前の段階では、落下してきた景品玉が仕切壁94近傍に保留されていることは明らかであるから、引用発明Aは、本願発明の「賞球を一時的に保留する賞球保留部が設けられ、賞球保留部には上受け皿へ賞球を払出する球出口が設けられる」に相当する構成を有しているといえる。また、引用発明Aの「連通部95」は「仕切壁94の側方に形成されている」から、引用発明Aは、本願発明の「賞球保留部の側板を乗り越えてオーバーフローする賞球を側方へ平面誘導し下受け皿に払出する側方溢れ出し路が設けられ、該側方溢れ出し路に連通して賞球を下受け皿に払出する賞球通路樋体が設けられる」に相当する構成を有しているといえる。
(第四-4)引用発明Aの「景品玉排出通路91を落下してきた景品玉を打球供給皿26に誘導する」との技術事項、及び「それ以上の景品玉は前記余剰景品玉受皿30に誘導される」との技術事項は、本願発明の「賞球払出誘導構造」に相当する。

したがって、両者は、
「遊技機本体の裏面に設けられる機構板面に入賞信号により賞球を払出する賞球払出機構部が設けられると共に、該賞球払出機構部から払出される賞球を一時的に保留する賞球保留部が設けられ、前記賞球保留部には上受け皿へ賞球を払出する球出口が設けられる一方、
該賞球保留部の側板を乗り越えてオーバーフローする賞球を側方へ平面誘導し下受け皿に払出する側方溢れ出し路が設けられ、該側方溢れ出し路に連通して賞球を前記下受け皿に払出する賞球通路樋体が設けられる、パチンコ遊技機における賞球払出誘導構造。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点イ
賞球保留部が、本願発明では上面が開口した箱型であり、賞球払出機構部と同一平面的に設けられるのに対し、引用発明Aではそのような構成を有するかどうか明らかでない点。
相違点ロ
側方溢れ出し路が、本願発明では機構板面に沿って設けられるのに対し、引用発明Aではそのような構成を有するかどうか明らかでない点。
相違点ハ
賞球通路樋体が、本願発明では賞球保留部と同一平面的に機構板面に沿って設けられるのに対し、引用発明Aではそのような構成を有するかどうか明らかでない点。
相違点ニ
本願発明では、賞球保留部の側板の上縁の高さが機構板面側に向けて次第に低く形成され、該側板の上縁の低い位置を賞球が乗り越えてオーバーフローするのに対し、引用発明Aでは側板を賞球が乗り越えてオーバーフローする点。

上記相違点イについて検討する。
引用発明Bには、「上面が開口した箱型の賞球保留部(上方を開放した皿形の球受け部12)が設けられたパチンコ遊技機(パチンコ機)」が記載されている。また、賞球の流路において上流側の機構部分と下流側の機構部分とを同一平面的に設けることは、賞球が重力を受けて下方に流下することを考慮すれば、当業者が容易になし得ることである。したがって、相違点イに係る本願発明を特定する事項とすることは、引用発明A及びBに基づいて、当業者が容易になし得ることである。
上記相違点ロ及びハについて検討する。
パチンコ遊技機を構成する各部材をどのような配置関係とするかは、当業者が適宜なし得る設計上の事項にすぎない。また、機構板面に沿って種々の部材を設けることは当該技術分野においては技術常識であり、さらに、賞球の流路において上流側の機構部分と下流側の機構部分とを同一平面的に設けることは、賞球が重力を受けて下方に流下することを考慮すれば、当業者が容易になし得ることである。したがって、相違点ロ及びハに係る本願発明を特定する事項とすることは、引用発明Aに基づいて、当業者が容易になし得ることである。
次に上記相違点ニについて検討する。
賞球保留部の側板状部分の上縁の高さが上受け皿側に向けて次第に低く形成され、該側板状部分の上縁を賞球が乗り越えてオーバーフローする技術は、例えば特許第2558616号公報(平成8年11月27日発行)に示された「仕切り用の突条41a」(【0018】、【0023】、【0024】、【図4】及び【図8】参照)及び実用新案登録第2520361号公報(平成8年12月18日発行)に示された「球通出規制案内用のレール条36a」(【0017】、【0018】、【0023】、【図5】乃至【図8】参照)のように当該技術分野においては、周知・慣用の技術である。そして、該技術における「上受け皿側に向けて」は本願発明の「機構板面側に向けて」と遊技機の前面側に向けた方向である点で異なるところはなく、側板の上縁と機構板面との位置関係をどのようなものとするかは当業者が適宜なし得る設計上の事項である。また、側板の上縁を賞球が乗り越えてオーバーフローする場合に、上縁の低い位置を賞球が乗り越えてオーバーフローすることは当然に予測できる事項である。したがって、当該周知・慣用の技術を引用発明Aの「側板」に適用し、相違点ニに係る本願発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、薄型化し嵩張らないようにすることは、パチンコ遊技機に限らず、一般的な技術分野において、当然に考慮すべき技術事項であるから、本願発明の効果に格別のものは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明A及び引用発明B並びに周知・慣用の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第五.むすび
以上のとおり、本願発明は、当審の拒絶理由通知に引用された上記引用発明A及び引用発明B並びに周知・慣用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2008-05-07 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-26 
出願番号 特願平9-35601
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
中槙 利明
発明の名称 パチンコ遊技機における賞球払出誘導構造  
代理人 上野 登  

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