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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1180561
審判番号 不服2005-7876  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2008-07-10 
事件の表示 特願2001- 96752「携帯情報端末への案内情報提供方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月11日出願公開、特開2002-300642〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成13年3月29日の出願であって、平成17年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年4月28日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年5月23日付けで手続補正がなされたものである。
本願の請求項1に係る発明は、平成17年5月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。
「サービス提供者のコンピュータが、携帯情報端末と通信を行って前記携帯情報端末に案内情報を提供する方法であって、
前記携帯情報端末が設定した目的地を把握し、
前記携帯情報端末から送信された前記携帯情報端末の位置を示すデータに基づいて前記携帯情報端末の位置を監視し、
前記携帯情報端末が前記目的地に対する所定のエリアに入るまでは、前記目的地に行くための概略の案内情報を前記携帯情報端末に提供し、
前記携帯情報端末が前記目的地に対する前記所定のエリアに入ると、前記目的地に行くための詳細な案内情報を前記携帯情報端末に提供することを特徴とする携帯情報端末への案内情報提供方法。」

2.引用刊行物
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平10-304433号公報」(以下、「引用刊行物」という。)には図面とともに以下の記載がある。

(イ)「【請求項1】移動局と、移動局との間で無線通信を行う基地局と、基地局が接続された交換機とからなる無線通信システムを備え、交換機及び基地局を介して移動局との間で通信するとともに該通信により該移動局の現在位置に応じた案内情報を該移動局へ送信する情報案内センターを設け、移動局と基地局との間で送受信される電波から該移動局の位置に係わる信号を検出する検出手段と、検出手段の検出結果を情報案内センターへ送信する通知手段とを、移動局又は基地局の内少なくとも何れか一方に設けるとともに、通知手段から送信された検出手段の検出結果より該移動局の位置情報を求める解析処理手段を情報案内センターに設けて成ることを特徴とする情報案内システム。
【請求項2】基地局が少なくとも3つ以上設けられ、移動局に設けられた検出手段が、各基地局から受信した電波の電界強度を夫々検出することを特徴とする請求項1記載の情報案内システム。」(第2頁左欄)

(ロ)「【請求項9】解析処理手段によって得られた移動局の位置情報に基づいて、予め設定された案内情報の中から該移動局に送信する案内情報を自動的に選択する情報選択手段を情報案内センターに設けて成ることを特徴とする請求項1記載の情報案内システム。」(第2頁左欄)

(ハ)「【0002】
【従来の技術】従来、展示会会場や美術館やテーマパークなどの屋内或いは屋外の会場において、利用者に会場内の案内を行う方法としては、所定の場所に案内所や案内板を設置して案内を行ったり、無線ガイドシステムのように所定の場所に利用者が来ると全ての利用者に対して同様の案内を行うものがあった。また、汎地球測位システム〔以下、GPS(Global Positioning System )と略す〕を利用したナビゲーションシステムのように、GPSによって得られた位置情報から利用者の現在位置を特定し、予め登録された情報を利用者に提供するものもあった。さらに、携帯電話などの無線通信システムにおいても、基地局と移動局との間で通信を行うために、移動局の位置情報を着信エリア又は基地局単位で管理しており、この位置情報を利用して移動局を所持した利用者に現在位置に応じた案内情報を提供することも考えられる。」(第2頁右欄)

(ニ)「【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)本実施形態の情報案内システムでは、図1に示すように、無線通信システムとしてパーソナルハンディホンシステム〔以下、PHS(Personal Handy-phone System )と略す〕を利用しており、1は移動局(PHS子機)、21 …は所定のエリア内の移動局1との間で無線通信を行う基地局、3は回線6を介して複数の基地局21 …が接続された交換機、4は交換機3及び基地局21 …を介して移動局1との間で通信を行うとともに、移動局1の現在位置に応じた案内情報を該移動局1に送信する情報案内センターを示す。
【0016】移動局1は、アンテナ11を介して基地局21 …との間で電波信号を送受信する送受信回路12と、送受信回路12を介して基地局21 …との間で通信を行う通信手段13と、基地局21 …から受信した電波の電界強度を検出する検出手段14と、検出手段14の検出結果を基地局21 …及び交換機3を介して情報案内センター4へ送信する通知手段15とから構成される。
【0017】基地局21 …は、アンテナ21を介して移動局1との間で電波信号を送受信する送受信回路22、送受信回路22を介して移動局1との間で通信を行うとともに、交換機3との間で通信を行う通信手段23と、移動局1から受信した電波の電界強度を検出する検出手段24と、検出手段24の検出結果を交換機3を介して情報案内センター4へ送信する通知手段25とから構成される。
【0018】情報案内センター4は、交換機3及び基地局2_(1) …を介して、移動局1と通信する通信手段41と、移動局1から送信される各基地局2_(1) …の位置に係わる信号或いは各基地局2_(1) …から送信される移動局1の位置に係わる信号に基づいて移動局1の現在位置を解析する解析処理手段42とから構成される。ところで、移動局1と基地局2_(1) …との間で通信を行う際、移動局1は常に周囲の基地局2_(1) …の中から受信電波の電界強度が最も強い基地局を探して、該基地局との間で通信を行っており、検出手段14が、各基地局2_(1) …から受信した電波の電界強度を検出し、通知手段15が、基地局2_(1) …及び交換機3を介して検出手段14の検出結果を情報案内センター4へ送信する。
【0019】また、基地局2_(1) …でも、移動局1との間で通話中に該移動局1からの電波の電界強度が低下すると、該移動局1に他の基地局へハンドオーバーするよう指示するようになっており、検出手段24が、移動局1から受信した電波の電界強度を検出し、通知手段25が、検出手段24の検出結果を情報案内センター4へ送信する。
【0020】ここで、各基地局2_(1) …の設置場所が予め分かっており、移動局1及び各基地局2_(1) …から送信される電波の出力を固定とすると、情報案内センター4の解析処理手段42は、電波の電界強度の減衰量と伝搬距離との換算式をもとに、通信手段41が受信した検出手段14又は24の検出結果から、移動局1と各基地局2_(1) …との間の距離を求めることができる。その結果、移動局1がいると予想される範囲を、各基地局2_(1) …を中心とする環状の予想エリアA_(1) …に絞り込むことができ、解析処理手段42は、全ての予想エリアA_(1) …が重なるエリアA_(4) 内に移動局1が居るものと判断し、移動局1の位置情報を正確に求めることができる。そして、情報案内センター4は、この位置情報をもとに、移動局1を所持した利用者毎に、現在位置における最適な案内情報を提供することができる。
【0021】尚、本実施形態では、予想エリアA1 …は略環状となっているが、解析処理手段42の処理の結果、予想エリアが略環状以外の範囲となっても良い。また、本実施形態では、移動局1及び基地局21 …の両方に、検出手段14,24を設けているが、移動局1又は基地局21 …のいずれか一方のみに検出手段14,24を設けても良い。」(第4頁左欄?右欄)

(ホ)「【0024】尚、移動局1の位置検出を移動局1の発呼時ではなく、移動局1への着呼時に行っても良いし、移動局1が現在位置をPHSのネットワーク上に登録する際に行っても良いし、一定の間隔で行うようにしても良く、移動局1の位置情報を検出する回数を少なくして、基地局2_(1) …の負担を減らし、基地局2_(1) …が他の移動局1と通信できなくなるような事態を防いでいる。また、移動局1、基地局2_(1) …、交換機3及び情報案内センター4が移動局1の位置検出以外の処理を行う時間を増やすことができ、各部を有効に活用することができる。」(第5頁左欄)

(ヘ)「【0025】ここで、本実施形態の情報案内システムを、図10に示すテーマパーク5に適用し、テーマパーク5を運営する団体が、テーマパーク5に入場した利用者に対して、各種の案内情報を提供する場合について説明する。まず、利用者がテーマパーク5に入場する際に、利用者は移動局1_(1) …を渡される。テーマパーク5内で、移動局1_(1) …を所持した利用者が自分の行きたい場所への道順が分からない場合、利用者はその場所で移動局1_(1) …から特定のダイヤル番号を発呼して、情報案内センター4を呼び出し、情報案内センター4に自分の行きたい場所までの道順を尋ねる。移動局1_(1) …から呼び出された情報案内センター4では、解析処理手段42が、上述のようにして移動局1_(1) …の位置情報を調べ、その場所から利用者の行きたい場所までの道順を送信手段41に移動局1_(1) …へ送信させる。
【0026】例えば、移動局1_(3) を所持した利用者が、一番近い場所にあるトイレを情報案内センター4に尋ねると、情報案内センター4では、解析処理手段42が、移動局1_(3) を所持した利用者は基地局2_(4) とアトラクション53_(5) との間にいることを検出し、一番近いトイレはアトラクション53_(5) の西側にあるトイレ57_(5) と判断して、通信手段41から移動局1_(3) に案内情報を送信し、この移動局1_(3) を所持した利用者に対して、例えば「一番近いトイレは57_(5) です。ここからですと南西の方向へ50m行ったところにあります。」というように案内情報を提供する。
【0027】このように、移動局1_(1) …を所持した利用者は、テーマパーク5内のどこにいても、又、自分の居る場所が分からなくても、自分の行きたい場所までの案内情報を受けることができる。
・・・(省略)・・・」(第5頁左欄)

(ト)「【0034】・・・(省略)・・・
(実施形態4)本実施形態では、実施形態1の情報案内システムにおいて、図6に示すように、解析処理手段42によって検出された移動局1の位置情報を表示する表示手段43を情報案内センター4に設けている。
【0035】したがって、情報案内センター4では、情報提供者が表示手段43により通信中の移動局1の状況(現在位置や移動方向など)を容易に把握することができ、該移動局1が移動中に通信していても、移動局1の移動方向に応じて、さらに詳細な案内情報を移動局1に提供することができる。例えば、本実施形態の情報案内システムを図10に示すテーマパーク5に適用する場合、移動局1_(2) を所持した利用者が施設54_(4) の西側を図10中矢印Cの方向に移動している場合、情報案内センター4では、情報提供者が、表示手段43の表示から移動局1_(2) を所持した利用者が矢印Cの方向へ移動していると判断し、この利用者に対して例えば「現在、アトラクション53_(3) のほうへ向かっています。さらに進むとアトラクション53_(2) です。」というように、利用者の現在位置に関する案内情報だけではなく、利用者の移動方向に応じて、さらに詳細な案内情報を提供することができる。」
(第6頁左欄?右欄)

(チ)「【0042】・・・(省略)・・・
(実施形態7)本実施形態では、実施形態1の情報案内システムにおいて、図9に示すように、所定の案内情報が予め登録された案内情報DB45と、予め設定された時間に所定の移動局1を発呼し、該移動局1に対して案内情報DB45から選択した所定の案内情報を提供するとともに、予め設定された場所に移動局1がくると、該移動局1を発呼し、該移動局1に対して案内情報DB45から選択した所定の案内情報を提供する第1及び第2の情報提供手段たる情報提供手段47とを設けている。」(第7頁左欄?右欄)

(リ)「【0046】このように、予め設定された時間がくると、移動局1に対して所定の案内情報を提供しているので、移動局1を所持した利用者に、きめ細かい案内情報を提供することができる。一方、移動局1を所持した利用者が所定の場所にくると、この利用者に対して所定の案内情報を提供したい場合、情報提供者が情報提供手段47にその場所と案内情報の内容とを予め設定しておけば、情報提供手段47は、解析処理手段42によって検出された移動局1の位置から、該移動局1が予め設定された場所にきたことを検出し、通信手段41に該移動局1を発呼させるとともに、該移動局1に対して案内情報DB45から選択した所定の案内情報を送信させることができる。
【0047】例えば、テーマパーク5内のアトラクション53_(1) が工事のため立入禁止区域になっている場合、情報提供者は、アトラクション53_(1) の場所及びアトラクション53_(1) が立入禁止区域になっているという案内情報を情報提供手段47に予め設定する。ここで、移動局1_(4) を所持した利用者が、立入禁止区域であるアトラクション53_(1) 内に入ると、情報提供手段47は、解析処理手段41によって検出された移動局1_(4) の現在位置から、移動局1_(4) がアトラクション53_(1) 内にいることを検出する。すると、情報提供手段47は、通信手段41に移動局1_(4)を発呼させるとともに、案内情報DB45から予め設定された案内情報を選択して移動局1_(4) に送信し、「アトラクション53_(1) はただいま工事中です。ご利用できませんので、速やかに退去して下さい。」というように利用者に案内情報を提供し、この利用者に注意を促して、立入禁止区域内で事故などが発生するのを未然に防止することができる。
【0048】また、テーマパーク5内に所定の見学コースがある場合、情報提供者は情報提供手段47に見学コースと道順などの案内情報を設定しておけば、移動局1が見学コースに沿って見学できるように、移動局1が要所要所にくると、情報提供手段47は、解析処理手段によって検出された移動局1の現在位置から移動局1が所定の場所にきたことを検知し、通信手段41に該移動局1を発呼させるとともに、案内情報DB45から選択した道順などの案内情報を該移動局1に送信させることができる。また、移動局1が見学コースから外れた場合にも、同様にして、情報提供手段47は該移動局1に正しい道順を送信することができる。
【0049】このように、移動局1が所定の場所にくると、予め登録された案内情報を提供するようにしているので、移動局1を所持した利用者によりきめ細かな案内情報を提供することができる。尚、案内情報DB45及び情報提供手段47以外の構成は実施形態1の情報案内システムと同様であるので、その説明は省略する。」(第7頁右欄?第8頁左欄)

これら引用刊行物の記載から、引用刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「利用者が所持する移動局(PHS)と通信を行って移動局の現在位置に応じた案内情報を移動局に送信する情報案内システムであって、
移動局に設けられた位置に係わる信号を検出する検出手段は、各基地局から受信した電波の電界強度を検出し、検出結果を情報案内センターへ送信し、情報案内センターは検出手段の検出結果から移動局の位置情報を求め、
移動局が情報案内センターに利用者が行きたい場所までの道順を尋ねると、情報案内センターは移動局の位置情報から利用者が行きたい場所を特定し、当該場所までの道順を移動局に送信し、
移動局が所定のアトラクション内に入ると情報案内センターは移動局に所定の案内情報を送信する、
情報案内システム。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「情報案内センター」は移動局の位置情報を求め、移動局の位置に応じて移動局に所定の案内情報を送信するから、引用発明の「情報案内センター」は本願発明のサービス提供者の「コンピュータ」に相当する。
また、引用発明の利用者が所持する「移動局(PHS)」は本願発明の「携帯情報端末」と「携帯端末」である点で一致している。
引用発明の利用者が行きたい場所までの「道順」および「案内情報」は、本願発明の「案内情報」に相当する。
また、引用発明の「利用者が行きたい場所」は本願発明の「目的地」に相当し、引用発明の携帯端末(移動局)が目的地(利用者が行きたい場所)までの道順を尋ねるとコンピュータ(情報案内センター)は目的地までの案内情報(道順)を携帯端末に送信するから、引用発明の携帯端末は目的地を「設定」しており、コンピュータは携帯端末が設定した目的地を「把握」しているということができる。
また、引用発明の携帯端末の検出手段により検出された位置に係わる信号(各基地局から受信した電波の電界強度)は、コンピュータ(情報案内センター)へ送信されてコンピュータは当該信号から携帯端末の位置情報を求めるから、引用発明の検出手段により検出された「位置に係わる信号」は、本願発明の「位置を示すデータ」と「位置に係わるデータ」である点で一致し、引用発明のコンピュータは携帯端末の位置を監視しているということができる。
また、引用発明には、コンピュータから携帯端末へ案内情報を送信する方法について記載されており、引用発明の「情報案内システム」は本願発明の「案内情報提供方法」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は
「サービス提供者のコンピュータが、携帯端末と通信を行って前記携帯端末に案内情報を提供する方法であって、
前記携帯端末が設定した目的地を把握し、
前記携帯端末から送信された前記携帯端末の位置に係わるデータに基づいて前記携帯端末の位置を監視し、
目的地に行くための案内情報を前記携帯端末に提供
する携帯端末への案内情報提供方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明の端末は携帯情報端末であるのに対し、引用発明の端末は携帯端末である点。

相違点2
本願発明は コンピュータは携帯情報端末が設定した目的地について案内情報を携帯情報端末に提供しているのに対し、引用発明もコンピュータが目的地の案内情報を携帯端末に提供しているが、案内情報は携帯端末が設定した目的地に基づいてコンピュータが特定した目的地の案内情報である点。

相違点3
本願発明は、携帯情報端末から「位置を示すデータ」がコンピュータに送信されて携帯情報端末の位置が監視されるのに対し、引用発明では携帯端末から「位置に係わるデータ」がコンピュータに送信されて携帯端末の位置が監視される点。

相違点4
本願発明は、携帯情報端末が前記目的地に対する所定のエリアに入るまでは、目的地に行くための概略の案内情報を前記携帯情報端末に提供し、前記携帯情報端末が前記目的地に対する前記所定のエリアに入ると、前記目的地に行くための詳細な案内情報を前記携帯情報端末に提供しているのに対し、引用発明では、目的地に行くための案内情報を携帯端末に提供しているが、携帯情報端末が前記目的地に対する所定のエリアに入るまでは、目的地に行くための概略の案内情報を提供し、所定のエリアに入ると、前記目的地に行くための詳細な案内情報を提供することについては記載がない点。

4.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
相違点1について
案内情報を携帯情報端末に提供することは本願明細書にも従来例(段落【0002】)として記載されているように周知であって格別のことではなく、引用発明の携帯端末を携帯情報端末として本願発明のように構成することは当業者が適宜になし得ることである。

相違点2について
端末において設定した目的地の案内情報を提供することは情報案内システムであるナビゲーションシステムにみられるように周知であるから、引用発明においてもコンピュータが携帯情報端末が設定した目的地について案内情報を携帯情報端末に提供するようにして本願発明のように構成することに格別の困難性はない。

相違点3について
引用発明は携帯端末から送信される位置に係わるデータに基づいてコンピュータが携帯端末の位置情報(本願発明の「位置データ」に相当する。)を求めているが、携帯端末から送信するデータを位置に係わるデータとするか、位置に係わるデータから求めた位置データとするかは設計的事項である。 またGPSを利用してナビゲーションを行うことは引用刊行物にも従来の技術として記載されている(記載事項(ハ))ように周知であって、その場合にGPSを有する端末において位置データを得ていることは当然のことであることから、引用発明において携帯端末から送信する位置に係わるデータを位置を示すデータとして本願発明のように構成することに格別の困難性はない。

相違点4について
引用発明には所定の地点で所定の案内情報を提供すること、所定のエリア(アトラクション内)に入ると所定の情報を提供することが記載されている。そして、所定の地点で案内情報の内容をどのようなものとするかは必要に応じて決定される設計的事項である。
また、目的地に行くための案内情報(地図)を提供する案内システム(携帯ナビゲーションシステム)において所定のエリア(目的地から所定の距離)に入ると案内情報(地図)をより詳細な情報とすることは、特開平9-134123号公報(第2頁【請求項1】、第3頁段落【0006】)、特開平11-38872号公報(第3頁右欄段落【0013】?【0015】、第6頁左欄?右欄【0042】?【0045】に記載されているように周知である。
そして、引用発明において上記周知技術を適用して、携帯情報端末が目的地に対する所定のエリアに入るまでは、目的地に行くための概略の案内情報を携帯情報端末に提供し、前記携帯情報端末が前記目的地に対する前記所定のエリアに入ると、前記目的地に行くための詳細な案内情報を前記携帯情報端末に提供するようにして本願発明のように構成することは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予想できる程度のものであって、格別のものではない。

したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(なお、審判請求人が審判請求書の請求の理由(平成17年5月23日付け手続補正書)の「(3)引用例の説明」の項において、引用刊行物の記載について「引用文献1、2に記載の発明は何れも、基地局が有するどの通信エリアに携帯情報端末が存在するかによって、およその位置を把握するものであり、通信エリアを跨いで移動した場合に移動状況が分かり、」、「同一通信エリア内での移動に関しては、携帯情報端末が設定した目的地に対する所定のエリアに入っても、提供する情報の種類は変更されない。」と主張している点について付言すると、
引用刊行物の段落【0020】(記載事項(ニ))には、「各基地局2_(1) …の設置場所が予め分かっており、移動局1及び各基地局2_(1) …から送信される電波の出力を固定とすると、情報案内センター4の解析処理手段42は、電波の電界強度の減衰量と伝搬距離との換算式をもとに、通信手段41が受信した検出手段14又は24の検出結果から、移動局1と各基地局2_(1) …との間の距離を求めることができる。その結果、移動局1がいると予想される範囲を、各基地局2_(1) …を中心とする環状の予想エリアA_(1) …に絞り込むことができ、解析処理手段42は、全ての予想エリアA_(1) …が重なるエリアA_(4) 内に移動局1が居るものと判断し、移動局1の位置情報を正確に求めることができる。そして、情報案内センター4は、この位置情報をもとに、移動局1を所持した利用者毎に、現在位置における最適な案内情報を提供することができる。」と記載されており、複数の基地局からの電波が受信できれば何れの位置にあっても移動局の位置は検知可能である。また、段落【0021】(同じく記載事項(ニ))には、「尚、本実施形態では、予想エリアA1 …は略環状となっているが、解析処理手段42の処理の結果、予想エリアが略環状以外の範囲となっても良い。」と記載されており予想エリアは基地局の通信可能エリアとは明らかに異なる。また段落【0024】(記載事項(ホ))には「移動局1の位置検出を移動局1の発呼時ではなく、移動局1への着呼時に行っても良いし、移動局1が現在位置をPHSのネットワーク上に登録する際に行っても良いし、一定の間隔で行うようにしても良く」と記載されており、段落【0034】(記載事項(ト))には、「利用者の現在位置に関する案内情報だけではなく、利用者の移動方向に応じて、さらに詳細な案内情報を提供することができる。」と記載され、段落【0047】(記載事項(リ))には利用者が立ち入り禁止区域になっているアトラクション内に入ると移動局に速やかに退去するようにという案内情報を提供する旨記載され、段落【0048】(同じく記載事項(リ)には、移動局が見学コースに沿って見学できるように移動局が要所要所にくると道順などの案内情報を送信し、移動局が見学コースから外れると正しい道順を送信する旨が記載されており、これらの記載から、引用刊行物の利用者(テーマパーク内で徒歩により移動していると考えられる。)が所持する移動局の位置は基地局の通信エリア単位で把握されているものではなく、移動局の位置は随時把握されており、移動局の位置に応じた内容の案内情報が送信されているものと認められるから、審判請求人の上記主張は妥当なものではない。)

5.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-08 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-26 
出願番号 特願2001-96752(P2001-96752)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高木 進山本 春樹  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 清水 稔
角田 慎治
発明の名称 携帯情報端末への案内情報提供方法  
代理人 加藤 大登  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  

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