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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1180571
審判番号 不服2005-14758  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-03 
確定日 2008-07-10 
事件の表示 特願2002- 36251「画像表示装置および画像表示プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月29日出願公開、特開2003-241737〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年2月14日の出願であって、平成17年7月1日付け(発送日:同年7月5日)で拒絶査定がされ、これに対し、同年8月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月31日付け手続補正により明細書又は図面についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容・補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正前の
「原画像データに対して所定の方法でモザイク処理を施し、モザイク処理画像データを生成するモザイク処理手段と、前記モザイク処理画像データを一時的に記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記モザイク処理画像データを、最初は所定の読み取り開始位置から読み取り、その後は同一のモザイク処理画像データを読み取り開始位置を周期的に変化させつつ読み取るモザイク処理画像データ読取手段と、前記モザイク処理画像データ読取手段で読み取ったモザイク処理画像データを順次表示する表示手段と、を備えることを特徴とする画像表示装置。」から、補正後の
「原画像データに対して所定の方法でモザイク処理を施し、モザイク処理画像データを生成するモザイク処理手段と、前記モザイク処理画像データを一時的に記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記モザイク処理画像データを、最初は所定の読み取り開始位置から読み取り、その後は同一のモザイク処理画像データを、その横又は縦の一方向において前記読み取り開始位置を周期的に変化させつつ繰り返し読み取るモザイク処理画像データ読取手段と、
前記モザイク処理画像データ読取手段で読み取ったモザイク処理画像データを順次表示する表示手段と、を備え、前記原画像データが左右端の形状が一致する左右対称な画像データである場合、前記モザイク処理画像データ読取手段は横方向において読み取り開始位置を変化させ、前記原画像データが上下端の形状が一致する上下対称な画像データである場合、前記モザイク処理画像データ読取手段は縦方向において読み取り開始位置を変化させることを特徴とする画像表示装置。」に補正する補正事項を含むものである。(下線は補正箇所を明示するために当審で付した。)
この補正は、
(イ)請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「同一のモザイク処理画像データを読み取り開始位置を周期的に変化させつつ読み取る」との構成を「同一のモザイク処理画像データを、その横又は縦の一方向において前記読み取り開始位置を周期的に変化させつつ繰り返し読み取る」との構成に限定するものであり、かつ、
(ロ)「前記原画像データが左右端の形状が一致する左右対称な画像データである場合、前記モザイク処理画像データ読取手段は横方向において読み取り開始位置を変化させ、前記原画像データが上下端の形状が一致する上下対称な画像データである場合、前記モザイク処理画像データ読取手段は縦方向において読み取り開始位置を変化させる」との構成を付加するものである。
そこで、前記補正(ロ)の構成が願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「当初明細書」という。)に記載されているか否かについて検討する。
当初明細書には、次の記載(a)?(e)がある。
(a)「このように、CPU2がX方向オフセットを徐々に変更しつつ画像RAMからモザイク処理画像データを読み取り、読み取ったモザイク処理画像データを表示装置の左端から順次表示して簡易アニメーションを行う場合、原画像データはX方向における両端部において画像中の図形などに連続性を有することが好ましい。図2(a)に示した原画像データの例では、その画像を構成する同心状の楕円がほぼ左右対称であり、原画像データの左端と右端を縦方向に見た場合にほぼ同一の形状となっている。よって、その原画像データをモザイク処理し、X方向オフセットを変更しつつ読み取り及び表示を行うことにより、図4に示すようにモザイク処理画像データがX方向に流れているように見える。」(段落【0036】)
(b)「このような場合に好適な原画像の例としては、例えば図5(a)に示すようなものが挙げられる。図5(a)に示す例でも、その原画像の左端と右端の形状はほぼ一致する(即ち、上端、中点及び下端の3点で直線が終わっている)ので、これをモザイク処理した後、X方向オフセットを変更しつつ表示を行えば、画像がX方向に連続的に流れているように見える。」(段落【0037】
(c)「これに対し、図5(b)に示すような画像は、左端と右端の形状が一致しない(即ち、左端は上端、中央及び下端の3点で直線が終わっているが、右端は中央のみで直線が終わっている)ので、これをモザイク処理し、X方向オフセットを変更して表示を行うと、表示画像の上下端付近では直線が不連続となり、表示画像は横方向に滑らかに流れるようには表示できない。以上より、本発明において、より滑らかに画像が流れる状態をアニメーションするためには、図2(a)や図5(a)に例示するように、画像の左右端の形状が一致するような画像を原画像とすることが好ましい。」(段落【0038】)
(d)「・・・その際、CPU2はモザイク処理画像データ25の読み取り開始位置のX座標にX方向オフセットXoffを加えることにより、モザイク処理画像データをX方向における異なる位置から読み出す。」(段落【0028】)
(e)「上記の例では、オフセットをX方向に変更することにより、X方向に画像が流れるような簡易アニメーションを行っている。そのかわりに、オフセットをY方向に変更することにより、Y方向に画像が流れるような簡易アニメーションを行うこともできる。また、その場合には、原画像データはY方向、即ち画像の上端と下端において連続するような図形を含む画像とすると、画像がY方向に滑らかに流れる様子を表現することができる。」(段落【0051】) 以上の記載(a)?(d)から、「左右端の形状が一致する左右対称な原画像データに対してモザイク処理画像データ読取手段は横方向において読み取り開始位置を変化させる画像表示装置」については読み取ることができる。
また、前記記載(e)について、X方向に対する原画像データとモザイク処理画像データ読取手段との関係についての記載(a)?(d)を参酌し、それらの記載に倣って読み解くと、記載(e)から
「上下端の形状が一致する上下対称な画像データに対してモザイク処理画像データ読取手段は縦方向において読み取り開始位置を変化させる画像表示装置」については読み取ることができる。
しかしながら、前記補正(ロ)に記載の「・・・原画像データが左右対称な画像データである場合、・・・上下対称な画像データである場合、・・・」とあるように、原画像データをその対称性についての性質に応じて場合分けを行うとともに、その場合分けに応じて、モザイク処理画像データ読取手段を、それぞれ「横方向において読み取り開始位置を変化させ」るようにし、また「縦方向において読み取り開始位置を変化させ」るようにするとの構成は当初明細書からは読み取ることはできない。
すなわち、当初明細書には、原画像データが左右対称な画像データに対する画像表示装置と、原画像データが上下対称な画像データに対する画像表示装置の、二つの画像表示装置が個別に開示されているにとどまり、前記補正(ロ)に記載されているような左右対称な画像データ及び上下対称な画像データのいずれの画像データにも対処し得る画像表示装置を開示しているとはいえず、また、このことが自明であるともいえない。
そうしてみると、前記補正(ロ)の構成は当初明細書に記載されているとはいえないから、前記補正は当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえない。
したがって、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
以上に検討したとおり、本件補正は却下されるべきものであるが、仮に本件補正が当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるとすれば、本件補正は前記したように補正事項(イ)、(ロ)を含むものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。そこで念のため本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについても検討しておく。

(2)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭54-142935号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に以下の記載(a)?(h)がある。
(a)「この発明はデイジタルメモリを用いた画像表示方式に関する。
近時マイクロコンピュータを用いて画像表示を制御し、任意の図形を表示せしめるようにしたゲーム装置や教育機器等の開発が進んでいる。
このようなマイクロコンピュータを用いた画像表示装置において、表示する画像が静止画である場合には、マイクロコンピュータによりデジタルメモリ(リフレッシュメモリ)に書き込む情報量は少なくてすむため、通常の方式でこの書き込まれた情報を順次読み出して表示すればよい。しかし動画を表示する場合には、書き込む情報量が多く完全に表示することは不可能である。・・・
しかし実際の動画は、・・・多くの場合背景に相当する部分の画像は、その相対位置が一定のままで全体に平行に移動し、・・・が多。そこでこのような一般の動画の傾向を利用し、平行移動のみの画像とランダムに移動する画像とを分離して制御すれば、動画といえども実際にメモリに書き込む情報量は少なくても済む。
この発明はこのような点に着目してなされたもので、メモリに記憶された画像情報を繰り返して読み出す際、読み出し位置を一定の割でずらすことによって、メモリの情報をすべて変換するということなくして動画の表示を行うことのできる画像表示方式を提供することを目的とするものである。」(1頁左下欄16行?2頁左上欄11行)
(b)「第1図はこの発明の一実施例を示すものである。図において、11はスキャン発振器であり、このスキャン発振器11からは所定の周波数の信号が発生され、列スキャンカウンタ12に供給される。列スキャンカウンタ12は後述のランダムアクセスメモリ20(以下単にメモリという)の列方向のアドレスを指定するもので、スキャン発振器11からの信号を順次カウントし、順に(00)、(01)、(10)、(11)、(00)・・・と変化するカウント値を得る。このカウント値は加算器13に供給される。一方上記列スキャンカウンタ12はカウント値が(11)になるごとに水平同期パルスHを発生して陰極線管14および行スキャンカウンタ15に供給する。行スキャンカウンタ15は後述のメモリ20の行方向のアドレスを指定するもので、列スキャンカウンタ12からの水平同期パルスを順次カウントし、順に(00)、(01)、(10)、(11)、(00)・・・・・と変化するカウント値を得る。」(2頁左上欄13行?右上欄11行)
(c)「このメモリ20の情報は次のようにして読み出されて表示される。まず第3図(a)に示すように、最初の1垂直走査期間においては、第1図の列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15のカウント値がそのまま列アドレス、行アドレスとしてメモリ20に供給され、メモリ20からはメモリ番号0、1、2、3・・・15の順で情報が読み出され画面上では第4図(a)のような表示がなされる。・・・しかし、次の1垂直走査に際しては行レジスタ18に(01)の加算データが蓄えられる。この加算データは行スキャンカウンタ12のカウント値に加算されるために新しい行アドレスは(01)から始まり(10)、(11)、(00)の順で変化する。従ってメモリ20は第3図(b)に示すようにメモリ番号4、5、6・・・15、0、1、2、3の順で情報を読み出すことになる。」(2頁左下欄下から4行?右下欄下から6行)
(d)「更に次の1垂直走査においては、メモリ20の読み出し開始位置をさらに1行シフトさせるために、行レジスタ18には新たに(10)の加算データが蓄えられる。この結果、メモリ20の読み出しは第3図(c)に示すようにメモリ番号8から読み出しが開始され、以下9、10、11・・・・15、0、・・・6、7の順で読み出される。」(3頁左上欄下から7行?末行)
(e)「以下同様にして順にメモリの読み出し開始位置を1行ずつシフトして読み出す・・・」(3頁右上欄4行?5行)
(f)「・・・メモリ20はこの新しい列アドレス、行アドレスに応じて情報を読み出し陰極線管14に送出し表示する。」(2頁左下欄2行?4行)
(g)「・・・但しこの場合メモリ番号0、1、2、3の情報は走査の最後に読み出されて画面上最下部に表示されるようになり、もとのままの内容ではメモリ番号12?15内容と連続しないことがある。この場合必要に応じてこのメモリ番号0、1、2、3には新しい情報(例えば画像41に対応する情報)を書き込んで連続的な画像が得られるようにする。・・・」(3頁左上欄1行?8行)
(h)「・・・また行レジスタ17に加算データを蓄え、これを列スキャンカウント12のカウント値と加算すれば画面の左、右方向に移動する画像を得ることができる。・・・」(3頁右上欄末行?左下欄4行)
・前記記載(a)、(b)より、
(イ)「画像情報を記憶するランダムアクセスメモリ20」及び
(ロ)「ランダムアクセスメモリ20に記憶された画像情報を繰り返して読み出すこと」が読み取れる。
・前記記載(b)?(e)並びに第1図、第3図及び第4図より、順にメモリの読み出し開始位置を1行ずつシフトして読み出す結果として、ランダムアクセスメモリ20に記憶された画像情報の読み出し開始位置はやがてメモリ番号0に戻ること、すなわち、
(ハ)「ランダムアクセスメモリ20に記憶された画像情報を、読み出し開始位置を周期的に変化させながら読み取ること」が読み取れる。
さらに、前記(ロ)、(ハ)を考慮すると、前記記載(b)?(e)並びに第1図、第3図及び第4図より、
(ニ)「ランダムアクセスメモリ20に記憶された画像情報を、最初の1垂直走査期間においては、メモリ番号0から読み出し、その後は読み出し開始位置を周期的に変化させながら繰り返し読み出すスキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18」も読み取ることができる。
・前記記載(f)及び第1図より、
(ホ)「スキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18で読み出した情報を順次表示する陰極線管14」が読み取れる。
・前記記載(g)には、画像が順次上方にシフトした結果、画面最下部にメモリ番号0、1、2、3の情報が表示されたとき、もとのままの内容ではメモリ番号12?15の内容と連続しない場合があること、必要に応じてこのメモリ番号0、1、2、3に新しい情報を書き込んで連続的な画像が得られるようにすること、が記載されている。
これらの記載は、画像が順次上方にシフトしたとき、もとのままの内容で連続する画像が得られる場合もあること、そしてその場合とは、メモリ番号0、1、2、3の内容(画面最上部の内容)とメモリ番号12?15の内容(画面最下部の画像)とが画面の端部で連続する画像情報の場合であること、そういった画像情報ならば何ら新しい情報を書き込むことなく(すなわち同一の画像情報を読み取ることにより)連続的な画像が得られること、を意味するから、前記記載(g)より、
(ヘ)「画像情報が上下端で連続する画像情報であって、スキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18は上下方向において読み出し開始位置を変化させる画像表示装置」が読み取れる。
また、前記記載(h)を上下方向に読み出す場合の内容(ヘ)に倣って読み解くと、
(ト)「画像情報が左右端で連続する画像情報であって、スキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18は左右方向において読み出し開始位置を変化させる画像表示装置」が読み取れる。
さらに、前記(ロ)、(ハ)を考慮すると、
(チ)「同一の画像情報を読み出し開始位置を周期的に変化させながら繰り返し読み出すこと」も読み取ることができる。
そして、前記(ヘ)、(ト)から、読み出し開始位置は左右・上下のいずれかの方向において変化させるものであるといえることを考慮に入れて、前記(イ)、(ニ)?(チ)を総合勘案すると、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「画像情報を記憶するランダムアクセスメモリ20と、前記ランダムアクセスメモリ20に記憶された画像情報を、最初の1垂直走査期間においては、メモリ番号0から読み出し、その後は同一の画像情報を左右又は上下のいずれかの方向において読み出し開始位置を周期的に変化させながら繰り返し読み出すスキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18と、前記スキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18で読み出した情報を順次表示する陰極線管14とを備え、前記画像情報が左右端で連続する画像情報であって、前記スキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18は左右方向において読み出し開始位置を変化させるか、または、前記画像情報が上下端で連続する画像情報であって、前記スキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18は上下方向において読み出し開始位置を変化させる画像表示装置。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における
「画像情報」、「記憶するランダムアクセスメモリ20」、「最初の1垂直走査期間においては」、「メモリ番号0」、「読み出し」、「左右又は上下のいずれかの方向において」、「スキャン発振器11、列スキャンカウンタ12、行スキャンカウンタ15、加算器13、16、列レジスタ17、行レジスタ18」、「陰極線管14」は、本願補正発明の
「画像データ」、「一時的に記憶する記憶手段」、「最初は」、「所定の読み取り開始位置」、「読み取り」、「その横又は縦の一方向において」、「画像データ読取手段」、「表示手段」にそれぞれ相当する。
本願補正発明における「モザイク処理画像データ」も、引用発明における「画像情報」も、共に「画像データ」である点で共通する。
さらに、本願補正発明における「左右端の形状が一致する左右対称な画像データ」も、引用発明における「左右端で連続する画像情報」も、共に「左右端で連続する画像データ」である点で共通している。
同様に、本願補正発明における「上下端の形状が一致する上下対称な画像データ」も、引用発明における「上下端で連続する画像情報」も、共に「上下端で連続する画像データ」である点で共通している。
してみると、両者は
「画像データを一時的に記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記画像データを、最初は所定の読み取り開始位置から読み取り、その後は同一の画像データを、その横又は縦の一方向において前記読み取り開始位置を周期的に変化させつつ繰り返し読み取る画像データ読取手段と、前記画像データ読取手段で読み取った画像データを順次表示する表示手段と、を備え、前記画像データが左右端で連続する画像データであって、前記画像データ読取手段は横方向において読み取り開始位置を変化させるか、または、前記画像データが上下端で連続する画像データであって、前記画像データ読取手段は縦方向において読み取り開始位置を変化させる画像表示装置。」で一致し、以下の3点で相違する。

相違点1:画像データの扱いについて、
本願補正発明では、原画像データに対してモザイク処理を施していることから、モザイク処理画像データを生成、読み取るモザイク処理手段及びモザイク処理画像データ読取手段を有するのに対し、引用発明では画像データにモザイク処理を施していないことから、かかるモザイク処理手段、モザイク処理画像データ読取手段を有していない点。
相違点2:画像データの図柄について、
本願補正発明では、画像データを「左右端の形状が一致する左右対称な画像データ」及び「上下端の形状が一致する上下対称な画像データ」であるとしているのに対し、引用発明では左右端又は上下端で連続すること以外に画像データの図柄について特定していない点。
相違点3:画像データの対称性の方向に係る対処について、
本願補正発明では、「原画像データが左右端の形状が一致する左右対称な画像データである場合、前記モザイク処理画像データ読取手段は横方向において読み取り開始位置を変化させ、前記原画像データが上下端の形状が一致する上下対称な画像データである場合、前記モザイク処理画像データ読取手段は縦方向において読み取り開始位置を変化させ」とあるように、原画像データの対称性の方向が横方向か、縦方向かについての場合分けを行い、その場合分けに応じて対称性の方向がいずれの原画像に対しても本願補正発明に係る(単一の)画像表示装置において対処し得るものとしているのに対して、
引用発明は、画像情報が左右端で連続する画像情報(本願補正発明の左右対称な画像データに対応する)である場合と画像情報が上下端で連続する画像情報(本願補正発明の上下対称な画像データに対応する)である場合とをそれぞれ別個に扱って対処している点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について、
本願補正発明において、画像データにモザイク処理を施したのは、本願明細書の段落【0005】、【0052】に記載されているように、画像データの情報量を低減させ、高性能プロセッサや大容量メモリを不要としたことを意図したものであるが、このように、画像データにモザイク処理を施すことにより画像データの情報量を低減させ、端末全体の負荷を軽減させることは、例えば、特開平9-275548号公報(特に、段落【0044】、【0045】、【0049】を参照)や特開平7-302327号公報(特に、段落【0036】?【0039】を参照)に示されているように周知な技術である。
そして、引用発明も前記記載事項(2)(a)に記載されているように、通常の動画表示では情報量が多すぎるという点に着目したものである。
そうしてみると、引用発明において、本願補正発明のようにモザイク処理手段を設けて原画像に対してモザイク処理を施し、モザイク処理画像データ読取手段を設けてモザイク処理画像データを読み取る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るところといえる。

[相違点2]について、
左右対称な図柄は、図形が垂直な対称軸に対して左右で対称な性質を有するものであるから、図柄が左右端においても形状を有するのであればその左端の形状は右端の形状に対称的に一致するといえる。したがって、本願補正発明の「左右端の形状が一致する左右対称な画像データ」が意味するところは、「左右端において(も)形状を有する左右対称な画像データ」のことである。
ところで、左右端で連続するような性質を有する図柄には種々のものがあるが、そのうち代表的なものとして良く知られているものは左右端においても形状を有するような左右対称画像である。
そうしてみると、左右端で連続する図柄として本願補正発明のような左右端において形状を有する左右対称な図柄を選択することは、当業者ならば容易になし得るところといえる。
以上のことは、「上下端の形状が一致する上下対称な画像データ」に対しても同様にいえることであるから、上下端で連続する図柄として、上下端において形状を有する上下対称な図柄を選択することは、当業者が容易になし得るところといえる。

[相違点3]について、
原画像として用いられる対称性を有する図柄としては、左右対称のものと上下対称のものと両方有り、しかも、対称性の方向によって画像データの対処方法がデータの読み取り開始位置の変化の方向を除き異なるものでもないから、それらを別個に扱って対処する引用発明において、本願補正発明のように原画像の対称性の方向に応じて(単一の)画像表示装置において対処しようとすることは当業者ならば容易になし得ることである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、そうでないとしても、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであるから、いずれにせよ特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年8月31日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成16年12月24日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「原画像データに対して所定の方法でモザイク処理を施し、モザイク処理画像データを生成するモザイク処理手段と、前記モザイク処理画像データを一時的に記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記モザイク処理画像データを、最初は所定の読み取り開始位置から読み取り、その後は同一のモザイク処理画像データを読み取り開始位置を周期的に変化させつつ読み取るモザイク処理画像データ読取手段と、前記モザイク処理画像データ読取手段で読み取ったモザイク処理画像データを順次表示する表示手段と、を備えることを特徴とする画像表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例記載の発明・事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明において
・「同一のモザイク処理画像データを、その横又は縦の一方向において前記読み取り開始位置を周期的に変化させつつ繰り返し読み取る」との構成を「同一のモザイク処理画像データを読み取り開始位置を周期的に変化させつつ読み取る」との構成に上位概念化するとともに、
・「前記原画像データが左右端の形状が一致する左右対称な画像データである場合、前記モザイク処理画像データ読取手段は横方向において読み取り開始位置を変化させ、前記原画像データが上下端の形状が一致する上下対称な画像データである場合、前記モザイク処理画像データ読取手段は縦方向において読み取り開始位置を変化させる」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-07 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-27 
出願番号 特願2002-36251(P2002-36251)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 561- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江塚 政弘村田 尚英  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山下 雅人
下中 義之
発明の名称 画像表示装置および画像表示プログラム  
代理人 山本 晃司  
代理人 中村 聡延  
代理人 星野 哲郎  

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