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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1180572
審判番号 不服2005-14932  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-04 
確定日 2008-07-10 
事件の表示 特願2000-172785「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月18日出願公開、特開2001-346969〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年6月8日の出願であって、平成17年6月29日付で拒絶査定がなされたところ、これに対し、同年8月4日に拒絶査定不服審判が請求され、平成20年3月13日付で通知された当審の拒絶理由に対して、同年4月11日付で手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成20年4月11日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のもの(以下、「本願発明」という)と認められる。

「遊技画像が表示される遊技画像表示領域を有する表示部と、
前記表示部に表示された遊技画像を可変表示せしめる為のトリガーとなる弾球を受け入れる始動入賞口と、
前記表示部及び前記始動入賞口の近傍に配置される複数の障害物と、を盤面上に有し、
前記盤面の上部に弾球を打ち出しつつ、その打ち出された弾球を重力により落下させて遊技が行われる遊技機であって、
前記表示部に表示される遊技画像の画像サイズを変更して当該表示部に表示する表示領域変更手段を備えるとともに前記表示部の全表示領域を使用して表示される第1の遊技画像および前記表示部の一部の表示領域を使用して表示される第2の遊技画像を記憶する遊技画像記憶手段を備え、
前記表示領域変更手段は、前記遊技画像表示領域の拡大時に前記遊技画像記憶手段から前記第1の遊技画像を前記表示部上に読み出し表示すると共に、前記遊技画像表示領域の縮小時に前記第2の遊技画像を前記表示部上に読み出し表示し、
前記表示部に前記第2の遊技画像が表示された時、表示部の表示領域のうち、前記第2の遊技画像によって使用される表示領域を除く他の表示領域であって前記第2の遊技画像の周囲に位置する領域と、前記表示部の遊技画像表示領域全体の外周を囲む枠状のフレームとが視認上同化して見えるように、前記領域には、フレームの色と同じ単色の画像が表示されることを特徴とする遊技機。」

3 引用例
当審で通知した拒絶の理由に引用された、特開平11-57137号公報(以下、「引用例1」という)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「同図において、遊技機制御装置10は実質的に特別図柄表示装置20の制御部分を兼用するものであり、同特別図柄表示装置20自体は制御部21とディスプレイコントローラ22とLCD23とから構成されている。同図からも明らかなように、CPU11は遊技機の制御と表示の制御とを兼用するものであり、必ずしも実体的な分別があるわけではない。この遊技機制御装置10はCPU11とともに、プログラムやデータを記憶するROM12と、プログラムの実行に使用する作業領域とともに映像表示の際のフレームメモリとして使用するRAM13と、各種の入賞口などに配設される入賞スイッチに接続されるとともに電動役物やランプ類に制御信号や駆動信号を出力するインターフェイス14とを備えており、上述した遊技機の制御を実行している。また、CPU11が実行する映像表示制御によってRAM13のフレームメモリに映像データが書き込まれると、ディスプレイコントローラ22は適宜同映像データを読み込んで上記LCD23に対して表示用信号を出力し、LCD23には図柄変動表示などの画像が表示される。」(段落【0020】)
イ.「一方、遊技盤35においては、概略中央部に上記LCD23の表示面23aが配置されている。また、この表示面23aの周囲を取り囲むように表示部装飾部材35aが設けられているし、当該表示部装飾部材35aの下方には可変表示ゲームを始動させるための始動口35bが設けられている。すなわち、この始動口35bへの入賞球は上記インターフェイス14に接続された専用の入賞スイッチを導通させることになり、これを上記CPU11が検出して上記特別図柄表示装置20としての可変表示ゲームを開始する。」(段落【0027】)
ウ.「なお、上記遊技盤35の前面には、上記表示部装飾部材35aや始動口35bや変動入賞装置35cなどを取り囲むようにしてガイドレール35dが取り付けられており、このガイドレール35dは、上記遊技空間を取り囲む略円形の遊技領域Gを構成するとともに上記発射装置43によって打ち出される遊技球を当該遊技領域G内へ誘導するようになっている。」(段落【0029】)
エ.「ここで表示画像を生成する具体的な処理について説明する。ROM12にはLCD23で表示するためのいくつかの画像データが保存されており、それらは背景部分の画像であったり、三桁の数字表示の画像であったりする。CPU11はステップS315にて表示画像を生成するにあたり、同ROM12の画像データを読み込み、表示画像のイメージに対応してRAM13におけるフレームメモリ領域に書き込む。すると、ディスプレイコントローラ22は適宜同フレームメモリ領域のデータを参照し、これに応じた走査信号を生成してLCD23に出力するため、同LCD23には図9?図14に示すような複数の可変表示ゲームが同時に、且つ、互いに連動して表示されることになる。」(段落【0050】)
オ.「ところで、これまではLCD23に対して複数の可変表示ゲームを表示させる前提としているが、ワイド画面を利用する価値はこれ以外にもあることは上述したとおりであり、図15および図16を参照して説明する。LCD23がワイド画面である場合、従前どおりの可変表示ゲームを表示しようとすれば幅方向に余白が生じる。一方、遊技領域Gには表示部装飾部材35aが配置されるのが通常であり、LCD23の左右にも装着されている。これに対して、図15に示すようにワイド画面の左右に表示部装飾部材の代わりとなる装飾表示を行うことが可能である。」(段落【0057】)
カ.「一方、可変表示ゲームにおいてリーチとなった場合、図16に示すように可変表示ゲームを幅広に表示させることもできる。このとき、表示部装飾部材35aを利用していれば表示領域を広げるということは不可能であり、画像表示で装飾部を表示しているが故にこのようなことが可能となる。さらには、リーチの場合に図16に示すような「リーチ」という表示だけでも構わないし、これまでの大当たり確率であったり、過去のリーチ結果を順次表示するなど期待感を向上させるさまざまな表示を行うようにしても良い。むろん、大当たりの時には図14に示すように画面前面を使って表示するということも可能である。」(段落【0058】)
キ.図2には、遊技盤35の表示面23a及び始動口35bの近傍に複数の小円形の部材が配置された構成が示されており、該小円形の部材がいわゆる「風車」であることは当業者にとって自明である。

以上の記載事項ア?キを参酌すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されているものと認められる。

「LCD23には図柄変動表示などの画像が表示され、
可変表示ゲームを始動させるための始動口35bが設けられ、この始動口35bへの入賞球は専用の入賞スイッチを導通させることになり、これをCPU11が検出して可変表示ゲームを開始し、
遊技盤35の表示面23a及び始動口35bの近傍に複数の風車が配置され、
遊技盤35の前面には、ガイドレール35dが取り付けられており、このガイドレール35dは、遊技空間を取り囲む略円形の遊技領域Gを構成するとともに発射装置43によって打ち出される遊技球を当該遊技領域G内へ誘導するようになっており、
ROM12にはLCD23で表示するためのいくつかの画像データが保存されており、
LCD23はワイド画面であり、ワイド画面の左右に表示部装飾部材の代わりとなる装飾表示を行い、可変表示ゲームにおいてリーチとなった場合、可変表示ゲームを幅広に表示させるパチンコ遊技機30。」

また、当審で通知した拒絶の理由に引用された、特開2000-70476号公報(以下、「引用例2」という)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

a.「図柄画像ROM62には、例えば、表示画面66aの背景である図5に示す背景画像50、図6に示すキャラクタ画像51a、51b、図7に示す複数個の図柄画像52a?52l、複数個の図柄画像52a?52lを縮小した縮小図柄画像53a?53lなどが記憶されている。なお、本発明の図柄画像等は、この実施例に示した図柄画像等に限定されるものではなく、適宜任意の図柄画像等を用いることができる。」(段落【0048】)

4 対比
本願発明と引用発明1を比較すると、引用発明1の「パチンコ遊技機30」は本願発明の「遊技機」に相当し、さらに以下のことがいえる。
引用発明1の「LCD23には図柄変動表示などの画像が表示され」の事項について、「LCD23」「図柄変動表示などの画像」は本願発明の「表示部」「遊技画像」にそれぞれ相当し、LCD23が表示領域を有することは当然であるから、引用発明1は本願発明の「遊技画像が表示される遊技画像表示領域を有する表示部」を備えている。
引用発明1の「可変表示ゲームを始動させるための始動口35bが設けられ、この始動口35bへの入賞球は専用の入賞スイッチを導通させることになり、これをCPU11が検出して可変表示ゲームを開始し」の事項について、「始動口35b」は本願発明の「始動入賞口」に相当し、「入賞球」は「専用の入賞スイッチを導通させることになり、これをCPU11が検出して可変表示ゲームを開始」することから、本願発明の「表示部に表示された遊技画像を可変表示せしめる為のトリガーとなる弾球」ということができる。よって、引用発明1は本願発明の「前記表示部に表示された遊技画像を可変表示せしめる為のトリガーとなる弾球を受け入れる始動入賞口」を備えている。
引用発明1の「遊技盤35の表示面23a及び始動口35bの近傍に複数の風車が配置され」の事項について、「表示面23a」は本願発明の「表示部」に相当し、「風車」は「障害物」と換言できるから、引用発明1は本願発明の「前記表示部及び前記始動入賞口の近傍に配置される複数の障害物」を備えている。
引用発明1の「遊技盤35の前面には、ガイドレール35dが取り付けられており、このガイドレール35dは、遊技空間を取り囲む略円形の遊技領域Gを構成するとともに発射装置43によって打ち出される遊技球を当該遊技領域G内へ誘導するようになっており」の事項について、「遊技盤35の前面」「遊技球」は本願発明の「盤面」「弾球」にそれぞれ相当し、「ガイドレール35d」は「発射装置43によって打ち出される遊技球を当該遊技領域G内へ誘導するようになって」おり、当該遊技領域G内で、打ち出された遊技球が重力により落下するのは明らかであるから、引用発明1は本願発明の「前記盤面の上部に弾球を打ち出しつつ、その打ち出された弾球を重力により落下させて遊技が行われる」事項を備えている。
引用発明1の「ROM12にはLCD23で表示するためのいくつかの画像データが保存されており」の事項について、「ROM12」「画像データ」「保存」は本願発明の「遊技画像記憶手段」「遊技画像」「記憶」にそれぞれ相当し、本願発明の「前記表示部の全表示領域を使用して表示される第1の遊技画像および前記表示部の一部の表示領域を使用して表示される第2の遊技画像を記憶する遊技画像記憶手段」と「前記表示部の表示領域を使用して表示される遊技画像を記憶する遊技画像記憶手段」を備える点で共通している。
引用発明の「LCD23はワイド画面であり、ワイド画面の左右に表示部装飾部材の代わりとなる装飾表示を行い、可変表示ゲームにおいてリーチとなった場合、可変表示ゲームを幅広に表示させる」の事項について、「可変表示ゲームを幅広に表示」は本願発明の「表示部の全表示領域を使用して表示」に対応し、一方、幅広に表示させていない場合には、ワイド画面の左右に表示部装飾部材の代わりとなる装飾表示を行っていることから、可変表示ゲームは「表示部の一部の表示領域を使用して表示」されるといえる。そして、引用発明1が、かかる表示領域の変更を行うための手段、すなわち本願発明の「前記表示部に表示される遊技画像の画像サイズを変更して当該表示部に表示する表示領域変更手段」に対応する手段を備えていることは自明である。ところで、本願発明において「第2の遊技画像」は「前記遊技画像表示領域の縮小時に・・・前記表示部上に読み出し表示」され、また「表示部の一部の表示領域を使用して表示」されるのであるから、「前記表示部に第2の遊技画像が表示された時」は「前記遊技画像表示領域の縮小時」ということができ、引用発明1は本願発明の「前記表示部に前記第2の遊技画像が表示された時、表示部の表示領域のうち、前記第2の遊技画像によって使用される表示領域を除く他の表示領域であって前記第2の遊技画像の周囲に位置する領域と、前記表示部の遊技画像表示領域全体の外周を囲む枠状のフレームとが視認上同化して見えるように、前記領域には、フレームの色と同じ単色の画像が表示される」事項と「前記遊技画像表示領域の縮小時、表示部の表示領域のうち、遊技画像によって使用される表示領域を除く他の表示領域であって遊技画像の周囲に位置する領域に画像が表示される」点で共通している。

したがって、両者は、
「遊技画像が表示される遊技画像表示領域を有する表示部と、
前記表示部に表示された遊技画像を可変表示せしめる為のトリガーとなる弾球を受け入れる始動入賞口と、
前記表示部及び前記始動入賞口の近傍に配置される複数の障害物と、を盤面上に有し、
前記盤面の上部に弾球を打ち出しつつ、その打ち出された弾球を重力により落下させて遊技が行われる遊技機であって、
前記表示部に表示される遊技画像の画像サイズを変更して当該表示部に表示する表示領域変更手段を備え、
前記表示部の表示領域を使用して表示される遊技画像を記憶する遊技画像記憶手段を備え、
前記遊技画像表示領域の縮小時、表示部の表示領域のうち、遊技画像によって使用される表示領域を除く他の表示領域であって遊技画像の周囲に位置する領域に画像が表示される遊技機。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
表示部の表示領域を使用して表示される遊技画像を記憶する遊技画像記憶手段が、本願発明では、表示部の全表示領域を使用して表示される第1の遊技画像および前記表示部の一部の表示領域を使用して表示される第2の遊技画像を記憶するのに対して、引用発明1では、どのように遊技画像を記憶しているか明らかでない点。

(相違点2)
表示部に表示される遊技画像の画像サイズを変更して当該表示部に表示する表示領域変更手段が、本願発明では、遊技画像表示領域の拡大時に遊技画像記憶手段から第1の遊技画像を表示部上に読み出し表示すると共に、遊技画像表示領域の縮小時に第2の遊技画像を表示部上に読み出し表示するのに対して、引用発明1では、具体的な構成が明らかでない点。

(相違点3)
遊技画像表示領域の縮小時、表示部の表示領域のうち、遊技画像によって使用される表示領域を除く他の表示領域であって遊技画像の周囲に位置する領域に表示される画像が、本願発明では、表示部の遊技画像表示領域全体の外周を囲む枠状のフレームと視認上同化して見える、フレームの色と同じ単色の画像であるのに対して、引用発明1では、表示部装飾部材の代わりとなる装飾表示である点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
引用例2の記載(上記4記載事項a参照)において、「図柄画像ROM62」「複数個の図柄画像52a?52l」「複数個の図柄画像52a?52lを縮小した縮小図柄画像53a?53l」は本願発明の「遊技画像記憶手段」「第1の遊技画像」「第2の遊技画像」にそれぞれ相当するから、引用例2には「遊技画像記憶手段が、第1の遊技画像及び第1の遊技画像を縮小した第2の遊技画像を記憶する」技術事項が記載されている。
そして、引用発明1において、表示部に表示される遊技画像の画像サイズを変更するにあたり、遊技画像記憶手段に引用例2に記載の上記技術事項を適用し(相違点1)、表示画像領域変更手段が遊技画像表示領域の拡大時及び縮小時に対応する遊技画像を該遊技画像記憶手段から表示部上に読み出し表示するように構成すること(相違点2)は、当業者であれば必要に応じて容易になしえる程度の事項である。
よって、上記相違点1及び2にかかる本願発明の構成は、引用発明1及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者であれば容易に想到しえるものである。

次に、上記相違点3について検討する。
引用発明1の「表示部装飾部材」は「表示面23aの周囲を取り囲むように・・・設けられている」(上記4記載事項イ参照)から、「表示部の遊技画像表示領域全体の外周を囲む」部材ということができ、引用発明1の「表示部装飾部材の代わりとなる装飾表示」の画像は「表示部の遊技画像表示領域全体の外周を囲む」部材の代わりとなる画像ということができる。そして、「表示部の遊技画像表示領域全体の外周を囲む」部材として、従来周知慣用の「枠状のフレーム」を適用することは当業者であれば容易になしえる事項であり、かかる適用に際して、「表示部の遊技画像表示領域全体の外周を囲む」部材の代わりとなる画像として「枠状のフレーム」の代わりとなる画像、すなわち「フレームの色と同じ単色の画像」を表示することは当業者にとって設計的事項であり、また該画像が「枠状のフレームと視認上同化して見える」ことは明らかである。
よって、上記相違点3にかかる本願発明の構成は、引用発明1及び上記周知慣用技術に基づいて当業者であれば容易に想到しえるものである。

また、本願発明の作用効果も引用発明1、引用例2に記載の上記技術事項及び上記周知慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用例2に記載の技術事項及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-12 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-26 
出願番号 特願2000-172785(P2000-172785)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎池谷 香次郎  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 中槙 利明
太田 恒明
発明の名称 遊技機  
代理人 遠山 勉  
代理人 松倉 秀実  
代理人 永田 豊  
代理人 川口 嘉之  

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