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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1180575
審判番号 不服2005-16085  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-23 
確定日 2008-07-10 
事件の表示 平成11年特許願第212627号「ヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月25日出願公開、特開2000- 58556〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年7月27日(パリ条約による優先権主張1998年7月31日、米国)の出願であって、平成17年5月20日に拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月15日付けで手続補正がなされたものである。
そして、その後当審において、平成18年8月22日付けで審尋がなされ、平成19年2月23日に回答書が提出されている。

第2 平成17年9月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成17年9月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1ないし10を、補正後の請求項1ないし10と補正するものであって、補正後の請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項1】 半導体基板内にn型にドーピングされたコレクタ領域を形成するステップと、
前記コレクタ領域上にSiGeを含むベース領域をエピタキシャル的に形成するステップとを含むヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法であって、
前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に前記インジウムの自然濃度ドーピングプロファイルを達成するドーピングステップと、
前記ベース領域上にエミッタ領域を形成するステップとを含み、前記エミッタ領域の形成中に前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されていることを特徴とするヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法。」

2.補正事項の整理
本件補正の内、請求項1についての補正は、以下の補正事項1及び2に整理される。
(補正事項1)
補正前の請求項1の「さらに、前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に前記インジウムのドーピングプロファイルを達成するドーピングステップ」を、補正後の請求項1の「前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に前記インジウムの自然濃度ドーピングプロファイルを達成するドーピングステップ」と補正すること。
(補正事項2)
補正前の請求項1の「前記エミッタ領域の形成中に前記ドーピングプロファイルが維持されていること」を、補正後の請求項1の「前記エミッタ領域の形成中に前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されていること」と補正すること。

3.本件補正についての検討
(1)補正の目的の適否及び新規事項の追加について
(補正事項1)
補正事項1についての補正の内、補正前の「さらに、」を削除することについて検討すると、「前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に前記インジウムのドーピングプロファイルを達成するドーピングステップ」は、その前段に記載される「前記コレクタ領域上にSiGeを含むベース領域をエピタキシャル的に形成するステップ」と実質的に同一のステップであって、新たなステップを追加するものではないから、「さらに、」との記載は誤記であって、補正前の「さらに、」を削除することは、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
補正前の請求項1の「前記インジウムのドーピングプロファイル」を「前記インジウムの自然濃度ドーピングプロファイル」と補正することは、「ドーピングプロファイル」を限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法第17条の2第4項に規定する要件を満たしている。
また、本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0023】には、「インジウムをシリコン製基板に注入する間、このインジウムはシリコン製基板内で自然な濃度分散を達成する。」と記載されているから、補正事項1についての補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしている。
(補正事項2)
補正事項2についての補正の内、補正前の請求項1の「前記ドーピングプロファイル」を「前記自然濃度ドーピングプロファイル」と補正することは、上記補正事項1についての検討のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、補正前の請求項1の「維持されていること」を「前記ベースにより維持されていること」と補正することは、後記のとおり、ベース内において維持されていることを意味するものと解釈され、「維持されていること」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。よって、補正事項2についての補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしている。
また、本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0023】には、「従来技術のデバイスにおける高温のアニールは、本発明では必要はない。そのためベース120内のインジウムの自然濃度分布に悪影響を及ぼさない。」と記載されているから、補正事項2についての補正は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしている。

以上のとおり、請求項1についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、以下において、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件について検討する。

(2)独立特許要件について
(2-1)補正後の発明
本件補正後の請求項1に係る発明は、上記「1.本件補正の内容」に記載したとおりである。

(2-2)刊行物に記載された発明
(a)刊行物1:特開平9-181091号公報
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前である平成9年7月11日に日本国内において頒布された特開平9-181091号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「ヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法」(発明の名称)に関して、図1ないし図13とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は強調のため、本審決において付加した。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベース層がシリコン-ゲルマニウム合金からなるシリコンヘテロ接合バイポーラトランジスタおよびこれを製造するための方法に関する。」
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、急速熱エピタキシ(rapid thermal epitaxy:RTE)の技術を用いて、高レベルの集積が可能となる新規でより平面上の構造体を有するHBTを形成した。」
「【0008】図示しないシリコン基板の上に少なくとも1つのn+サブコレクタ領域10が形成される。n型コレクタ領域20は、領域10の一部分の上に形成され、絶縁フィールド酸化物領域30横方向に有する。・・・
【0009】薄いシリコンの核となる層40,50が、後続の製造ステップを容易にするために、領域20および30の上に形成される。この層が非選択RTEにより形成される場合、誘電体材料の上にある外側領域部分40は、実質的に多結晶層となり、単結晶シリコンの上にある内側領域部分50は、実質的に単結晶層となる。薄い層40,50は、少なくとも100?500オングストロームの範囲の厚さに形成される場合、誘電体領域30上の多結晶シリコンの成長の核となるための種層として有効である。一般に、核となる層の内側領域部分50は、デバイスのコレクタの一部として機能することになる。
【0010】内側領域ベース60は、部分50の上に形成される。内側領域ベースは、典型的には5%?50%の範囲、好ましくは30%のゲルマニウム分子の割合を有するエピタキシャルSiGe合金からなる。・・・」
「【0025】トランジスタは、半導体層のシーケンスを成長させることにより形成される。これらは、限定反応処理として知られる成長モードを使用して急速熱エピタキシ(RTE)により成長させられる。・・・RTEは、成長温度の高速調節のために大きな放射熱を使用する化学気相成長法によるエピタキシャル成長である。
【0026】先ず、酸化物層200が、サブコレクタ10の上に通常の方法で形成される。次に、図4および5に示されているように、ウィンドウ210が通常の方法で層200中にあけられ、コレクタ20がサブコレクタ10上のウィンドウにおいて本来の場所での砒素ドーピングと共に選択的エピタキシャル成長(SEG)により成長させられる。この成長は、典型的には800℃?1000℃、好ましくは950℃において、ジクロロシラン、塩化水素、および砒化水素の混合物の流れ中で実行される。・・・
【0027】図6に示されているように、シリコン層230が、次のSiGeベースおよびエミッタの成長を容易にするために成長させられる。層230は、シランから成長させられる。層230の部分231(即ち外側領域部分)は、酸化物の上に成長させられ、多結晶層として形成される。層230の部分232(即ち内側領域部分)は、単結晶シリコンの上に成長させられ、エピタキシャル層として形成される。次に、図7に示されているように、SiGeベース層240が成長させられる。この層は、ジクロロシラン、ジャーマイン、およびホウ素ドーピングのためのジボランから成長させられる。先の層と同様に、層240は先の層の部分231の上に横たわる外側領域部分241における多結晶材料として形成され、先の層の部分232の上に横たわる内側領域部分242においてエピタキシャルに形成される。
【0028】次に、シリコン層250が、図8に示されているように成長させられる。この層(エミッタとなるべき内側領域部分)は、ジクロロシランおよび砒化水素により、好ましい厚さ150nmに、好ましい温度800℃において、好ましいドーピングレベル3×10^(18)cm^(-3)で成長させられる。層240にドープされるホウ素の移動を防止するために、約825℃よりも低い成長温度を層250の成長において保つことが望ましい。先の2つの層の場合のように、層250は、外側領域部分251において多結晶であり、その内側領域部分252においてエピタキシャルである。
【0029】次に、図9に示されているように、好ましくは300nmの厚さの二酸化珪素層260が、典型的にはPETEOS反応炉中で、TEOSからプラズマ強化化学気相成長法により形成される。図10に示されているように、エミッタウィンドウ270は、反応イオンエッチングにより層260中にあけられ、多結晶シリコン層280が堆積されて、このウィンドウ270を埋める。RTE反応炉において層280を形成することが好都合であることがわかった。エミッタ下側コンタクト層110(図1参照)となるべき層280は、シランおよび砒化水素(本来の場所のドーピングのため)から好ましい成長温度700℃において好ましい厚さ140nmに成長させられる。
【0030】次に、図11に示されているように、層260および280が、レジスト処理およびその後のエッチングによりパターン化される。これは、図1にも示されているようにエミッタ下側コンタクト110およびスペーサ100を形成することになる。レジスト285を存在させたままで、以下に説明するように外側領域ベース注入が実行される。そして、デバイスが、さらなるリソグラフィパターン化ステップの実行により、その後の層230,240および250のエッチングにより絶縁される。得られる構造が、図12に示されている。
【0031】図11および12において、外側ベース領域290が、上述したように、ホウ素およびボロンジフルオライドの層230,240および250へのイオン注入により形成される。この注入の間、スペーサ100は、これらの層の内側領域部分にイオンが注入されることを阻止する。・・・
【0033】次に、図13に示されているように、エミッタ上側コンタクト層120およびベースコンタクト層130が、2つのステップ、好ましくは640℃で60秒、および次に800℃において40秒行われる急速熱アニーリングプロセスで、チタニウムジシリサイド層を成長させることにより自己整合的に形成される。このアニールは、好ましくは大気圧において5リットル/分の流れで窒素中で実行される。この熱サイクルは、外側領域ベース中の注入されたホウ素ドーパントを活性化するためにも有効である。
【0034】図1において、酸化物層170は、好ましくはPETEOSプロセスにより300nmの厚さに形成され、電極のためのコンタクトホールを作るために従来の方法によりパターン化される。電極140,150および160が、通常の金属堆積、およびその後のパターン化された3レベルレジストによる反応イオンエッチングにより形成される。・・・」

よって、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「シリコン基板の上にn+サブコレクタ領域10を形成し、前記領域10の一部分の上にn型コレクタ領域20を形成し、その上に薄いシリコンの核となる層40,50(層230の部分231,232)を形成する工程と、
次に、SiGeベース層240を成長し、前記層240を先の層の部分232の上に横たわる内側領域部分242においてエピタキシャルに形成する工程とを含むヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法であって、
前記SiGeベース層240を、ジクロロシラン、ジャーマイン、およびホウ素ドーピングのためのジボランから成長する工程と、
前記SiGeベース層240上に、エミッタとなるべき内側領域部分252を含むシリコン層250を、ジクロロシランおよび砒化水素により成長する工程とを含むことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。」

(b)刊行物2:特開平9-186171号公報
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前である平成9年7月15日に日本国内において頒布された特開平9-186171号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「バイポーラトランジスタの製造方法」(発明の名称)に関して、図1ないし図5とともに以下の事項が記載されている。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、バイポーラ技術でもってより高速でより高いコレクター電流を有しながら、初期電圧とパンチスルーの性能劣化のない素子を提供することである。」
「【0006】
【発明の実施の形態】図1において、p型基板11の上にn+領域13とn-エピタキシャル領域15が堆積される。一方、フィールド酸化物17が形成され、その下にp型ウェル19と21がそれぞれ形成される。・・・
【0007】図2において、インジウム23でもってイオン注入し、そのときのエネルギは20Kev?200Kevで、ドーズ量は、10^(12)?10^(15)cm^(-2)である。このインジウムドーパントが、ベース領域25を形成する。以下に説明するように、インジウムをドーピングしてできたベースは、高速且つ狭いベースを有するトランジスタとなる。さらにまた、インジウムドーパントの不完全なイオン化により、高いコレクタ電流と初期電圧とベースパンチスルーの性能劣化のない素子の形成が可能となる。・・・
【0008】図3においてブランケット酸化物層が形成され、パターン化されて、酸化物セグメント27,29が残る。その後ポリシリコン製のブランケット層が1000?3000オングストロームの厚さで堆積される。その後このポリシリコン層をパターン化してエミッタコンタクト31を形成する。次にエミッタコンタクト31に砒素または燐で通常50?100Kevのエネルギで10^(16)cm^(-2)のドーズ量でもって注入する。
【0009】次に図4において、急速熱アニール(rapid thermal anneal(RTA))あるいは炉内ドライブイン(furnace drive-in)を実行する。ポリシリコン製のエミッタコンタクト31からの砒素あるいは燐のドーパントが導出されて、n^(+ )領域33を形成する。かくして、エミッタ33,ベース領域25,コネクタ15を有するバイポーラトランジスタが形成される。このトランジスタのベース幅は、図4でWb で示される。」
「【0016】
【発明の効果】インジウムをnpnバイポーラトランジスタのpベース領域に対し、アクセプタドーパントとして用いると、以下のような利点がある。
(1)インジウムは、ボロン(従来のベースドーパント)よりもはるかに遅く、拡散するので狭いベース幅(W_(B))と、より改良されたベース移動位相時間とf_(t)を有するトランジスタを形成できる。
(2)ボロンに比較してインジウムは、より深いアクセプタレベルを有する。このインジウムの特性を用いて、疑似中立ベースのガンメル数を減少させることができるが、一方ベースは、パンチスルーをすることがない。その理由は、インジウムアクセプタ状態の完全なイオン化がディプレーション領域(空乏領域)で達成されるからである。その結果、ボロンをドープしたベースの構造体に対し、より改良されたh_(fe)×V_(A) (ゲイン-初期電圧の積)が得られる。」

(2-3)対比
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)と刊行物発明とを対比する。
(a)刊行物発明の「ヘテロ接合バイポーラトランジスタ」は、補正発明の「ヘテロ構造バイポーラトランジスタ」に相当する。
(b)本願明細書には、「図1には、本発明により構成されたヘテロ構造npnバイポーラトランジスタ100の断面図を示す。・・・同図に示した実施例のヘテロ構造npnバイポーラトランジスタ(HBT)100は、コレクタ110と・・・を有する。この実施例は、さらにp型基板140とn+基板領域150と・・・を有する。このp型基板140は、シリコン製ウェハの上部表面である。このp型基板140は、その上に形成された少なくとも1つのn+サブコレクタ領域150を有する。」(段落【0015】)と記載され、更に、「このコレクタ領域110は、CVDにより形成される。」(段落【0017】)と、実施例について記載されているから、補正発明における「半導体基板内にn型にドーピングされたコレクタ領域を形成する」ことは、半導体基板の上に、n+サブコレクタ領域150を形成し、CVDによりコレクタ領域110を形成することを含むものである。
一方、刊行物1には、「コレクタ20がサブコレクタ10上のウィンドウにおいて・・・選択的エピタキシャル成長(SEG)により成長させられる。」(段落【0026】)及び「一般に、核となる層の内側領域部分50は、デバイスのコレクタの一部として機能することになる。」(段落【0009】)と記載されているから、刊行物発明の少なくとも、「n型コレクタ領域20」及び「層50」が、補正発明の「n型にドーピングされたコレクタ領域」に相当する。また、刊行物発明の「シリコン基板」は、補正発明の「半導体基板」に相当する。
よって、刊行物発明の「シリコン基板の上にn+サブコレクタ領域10を形成し、前記領域10の一部分の上にn型コレクタ領域20を形成し、その上に薄いシリコンの核となる層40,50(層230の部分231,232)を形成する工程」は、補正発明の「半導体基板内にn型にドーピングされたコレクタ領域を形成するステップ」に相当する。
(c)刊行物発明において、「層の部分232」は「層50」のことであるから、上記(b)での検討を参照すると、刊行物発明の「先の層の部分232の上に横たわる」は、補正発明の「前記コレクタ領域上」に相当する。また、刊行物発明の「SiGeベース層240」の「内側領域部分242」は、補正発明の「SiGeを含むベース領域」に相当する。そして、刊行物発明の「エピタキシャルに形成」と、補正発明の「エピタキシャル的に形成」とは、実質的に同等であるから、刊行物発明の「次に、SiGeベース層240を成長し、前記層240を先の層の部分232の上に横たわる内側領域部分242においてエピタキシャルに形成する工程」は、補正発明の「前記コレクタ領域上にSiGeを含むベース領域をエピタキシャル的に形成するステップ」に相当する。
(d)刊行物発明は、「SiGeベース層240を、ジクロロシラン、ジャーマイン、およびホウ素ドーピングのためのジボランから成長」しており、上記(c)を参照すると、この結果として、「前記層240を先の層の部分232の上に横たわる内側領域部分242においてエピタキシャルに形成する」のであるから、このベース層240の成長工程は、SiGeベース層240の内側領域部分242にアクセプタドーパントである「ホウ素」を「エピタキシャル的にドーピング」していると言える。そして、刊行物発明の「ホウ素」は、「アクセプタドーパント」であることにおいて、補正発明の「インジウム」に対応している。
よって、刊行物発明の「前記SiGeベース層240を、ジクロロシラン、ジャーマイン、およびホウ素ドーピングのためのジボランから成長する工程」は、補正発明の「前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域に」アクセプタドーパントを「エピタキシャル的にドーピング」する「ドーピングステップ」に対応する。
(e)後述するように、補正発明において「エミッタ領域」の定義は明確ではないが、刊行物発明のシリコン層250の「エミッタとなるべき内側領域部分252」は、少なくとも、補正発明の「エミッタ領域」の一部に対応するから、刊行物発明の「前記SiGeベース層240上に、エミッタとなるべき内側領域部分252を含むシリコン層250を、ジクロロシランおよび砒化水素により成長する工程」は、補正発明の「前記ベース領域上にエミッタ領域を形成するステップ」に相当する。

よって、補正発明と刊行物発明とは、
「半導体基板内にn型にドーピングされたコレクタ領域を形成するステップと、
前記コレクタ領域上にSiGeを含むベース領域をエピタキシャル的に形成するステップとを含むヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法であって、
前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域にアクセプタドーパントをエピタキシャル的にドーピングするドーピングステップと、
前記ベース領域上にエミッタ領域を形成するステップとを含むことを特徴とするヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

(相違点1)
補正発明は、「ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピング」しているのに対し、刊行物発明は、ベース層240をホウ素ドーピングのためのジボランを用いて成長している点。
(相違点2)
補正発明は、ドーピングステップにおいて「前記ベース中に前記インジウムの自然濃度ドーピングプロファイルを達成」しているのに対し、刊行物発明は、このことが記載されていない点。
(相違点3)
補正発明は、「前記エミッタ領域の形成中に前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されている」のに対し、刊行物発明は、このことが記載されていない点。

(2-4)判断
以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
(a)刊行物2には、npnバイポーラトランジスタにおいて、インジウムをp型ベース領域のアクセプタドーパントとして用いることにより、「高いコレクタ電流と初期電圧とベースパンチスルーの性能劣化のない素子の形成が可能となる」(段落【0007】)ことが記載されている。(なお、刊行物2の「初期電圧」は、本願明細書における「アーリー電圧」と同じものであると認められる。)
刊行物2に記載のものは、シリコンからなるバイポーラトランジスタに、インジウムをイオン注入してベース領域を形成したものであるが、刊行物2には、インジウムをベースのドーパントとして用いたものと、ボロンをベースのドーパントとして用いたものとの2個のバイポーラトランジスタの特性を、理論式に基づいて導出・比較して、p型ベース領域にインジウムをアクセプタドーパントとして用いることの利点が開示されている。そして、この利点は、「インジウムのアクセプタ状態は、価電子帯よりも高い156meVであり、室温では完全にはイオン化されないからである」(段落【0014】)というインジウムの物性に基づくものであるから、半導体材料がSiGeであってもほぼ同様に成立することは当業者にとって明らかであり、刊行物2の記載に基づいて、SiGeヘテロ構造バイポーラトランジスタのベース領域のドーパントとしてインジウムを用いることは、当業者が直ちに想到し得ることである。
(b)また、インジウムを半導体のアクセプタドーパントとして利用する際に、インジウムをトリメチルインジウム等のインジウム系化合物として供給し、半導体内に導入することは、例えば、特開昭59-218727号公報(「ドーパント不純物としてほう素またはりんを用いた場合について説明したが、・・・トリメチルインジウム・・・などの有機金属のガスを真空容器に導入し、グロー放電を行えば・・・インジウム・・・などの不純物を含む半導体領域を母材半導体基体中に形成される。」[第4頁左上欄第8行?第16行])に記載されるように、従来からよく知られていることであるから、バイポーラトランジスタのベース層をドーパントを含むガスとともにエピタキシャル成長する際に、インジウムをインジウム系有機金属化合物ガスとして供給し、ベース層にインジウムをドーピングすることは、当業者が何の困難もなくなし得ることである。
(c)よって、刊行物発明において、SiGeベース層240を成長させる際に、ホウ素ドーピングのためのジボランに代えて、インジウム系有機金属化合物ガスを供給してインジウムをドーピングすること、即ち、補正発明のごとく、「ベース領域の形成中に、前記ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピング」することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
(a)補正発明の「前記ベース中に前記インジウムの自然濃度ドーピングプロファイルを達成」することについて検討すると、本願の明細書には、「自然濃度ドーピングプロファイル」について明確な定義が無く、発明の詳細な説明に以下の関連する記載があるのみである。
(ア)「インジウムをシリコン製基板に注入する間、このインジウムはシリコン製基板内で自然な濃度分散を達成する。しかし、インジウム原子はシリコン結晶構造体を損傷させ、そのため、この損傷をアニール処理で除去しなければならない。しかし高温におけるアニールはインジウムの自然濃度分散に悪影響を及ぼす。」(段落【0009】)
(イ)「インジウムをシリコン製基板に注入する間、このインジウムはシリコン製基板内で自然な濃度分散を達成する。インジウムはベース120がエピタキシャル成長するのと同時に注入されるためにシリコン結晶構造体に何等の損傷を与えない。かくして、トランジスタデバイスをアニールする必要はない。したがって、従来技術のデバイスにおける高温のアニールは、本発明では必要はない。そのためベース120内のインジウムの自然濃度分布に悪影響を及ぼさない。」(段落【0023】)
ここで、上記(ア)、(イ)の記載及び半導体分野の技術常識から判断して、上記の「自然な濃度分散」、「自然濃度分散」、及び「自然濃度分布」が、補正発明の「自然濃度ドーピングプロファイル」に相当するものと解される。
(b)インジウムをイオン注入で導入する場合について記述した上記(ア)において、「インジウムをシリコン製基板に注入する間、このインジウムはシリコン製基板内で自然な濃度分散を達成する。」と記載されており、また、インジウムをエピタキシャル成長と同時に導入する場合について記述した上記(イ)においても、「インジウムをシリコン製基板に注入する間、このインジウムはシリコン製基板内で自然な濃度分散を達成する。」と記載されていることから、「自然な濃度分散」(即ち、「自然濃度ドーピングプロファイル」)は、インジウムをイオン注入で導入することによっても、エピタキシャル成長と同時に導入することによっても、格別な処理を行うことなく、直ちに達成されることが明らかである。
また、上記(ア)の「高温におけるアニールはインジウムの自然濃度分散に悪影響を及ぼす。」との記載から、「自然濃度分散」は、高温のアニールにより、何らかの変化を生じることが明らかである。
したがって、これらの記載から、補正発明の「自然濃度ドーピングプロファイル」(「自然濃度分散」又は「自然濃度分布」)とは、半導体基板にインジウムを導入したままの状態であって、「高温のアニールを受ける前の半導体基板内におけるドーパント(補正発明においてはインジウム)の分散状態」を意味するものと解釈する他はない。
(c)刊行物発明も、SiGeベース層をドーピングガスとともにエピタキシャル成長するものであって、補正発明のごとく、ベース領域の形成中に、前記ベース領域にアクセプタドーパントをエピタキシャル的にドーピングするものであるから、上記(b)の解釈に基づけば、アクセプタドーパントの元素こそ異なるものの、刊行物発明においても、ベース中に、アクセプタドーパントの「自然濃度ドーピングプロファイル」が結果的に達成されることは、当然のことである。
(d)そして、上記(相違点1について)での検討を併せ考慮すれば、刊行物発明において、アクセプタドーパントとしてインジウムを用い、補正発明のごとく、ドーピングステップにおいて「前記ベース中に前記インジウムの自然濃度ドーピングプロファイルを達成」することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点3について)
(a)まず、補正発明の「前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されている」ことについて検討すると、上記(相違点2について)で検討したとおり、補正発明は、インジウムをドーピングして、「前記ベース中に前記インジウムの自然濃度ドーピングプロファイルを達成」するものであること、及び、請求人が平成19年2月23日付けの回答書において、『第2の認識は、「ベース層内のインジウムの自然濃度は、ベース層上にエミッタ領域を形成している間そのままに保たれる」ということです。』と、本願の発明について説明していることから、補正発明の「前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されている」ことは、「前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベース内において維持されている」ことを意味するものと解釈される。
(b)刊行物1には、「次に、シリコン層250が、図8に示されているように成長させられる。この層(エミッタとなるべき内側領域部分)は、ジクロロシランおよび砒化水素により、好ましい厚さ150nmに、好ましい温度800℃において、好ましいドーピングレベル3×10^(18)cm^(-3)で成長させられる。層240にドープされるホウ素の移動を防止するために、約825℃よりも低い成長温度を層250の成長において保つことが望ましい。」(段落【0028】)と記載されているから、刊行物発明も、バイポーラトランジスタの実質的なエミッタとなる内側領域部分252を含むシリコン層250を形成する間は、「層240にドープされるホウ素の移動を防止する」こと、即ち、ベースにおけるアクセプタドーパントの分散状態が変化しないようにしていることは明らかであり、これは、アクセプタドーパントの元素こそ異なるものの、補正発明の「前記エミッタ領域の形成中に前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されている」ことに実質的に相当する。
(c)この点について、請求人は、審判請求の理由において、刊行物1(引用例2)は、『エミッタ下部コンタクトの形成後であるがエミッタ上部コンタクトの形成前のホウ素注入ステップを教示している。このホウ素注入ステップはゲートの外側部分におけるドーピングプロファイルの修正をもたらすものである。』と指摘し、『これら引用例は、単独あるいは組み合わせによって、本願発明を自明とするものではあり得ない。』と主張している。
(d)請求人の上記指摘について検討すると、刊行物1において、エミッタ下側コンタクト層110は「多結晶シリコン層280」から構成されるものであり(段落【0029】、【0030】参照)、また、エミッタ上側コンタクト層120は「チタニウムジシリサイド層」を成長させることにより形成されるものであるから(段落【0033】参照)、これらはエミッタに接続する導電層として認識されるべきものであって、刊行物1のバイポーラトランジスタの実質的な「エミッタ」は、シリコン層240のうちのエピタキシャルに形成された「内側領域部分252」である。
よって、刊行物発明の「内側領域部分252」が、補正発明の「エミッタ領域」に実質的に相当するから、刊行物発明も、補正発明の「前記エミッタ領域の形成中に前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されている」構成を実質的に備えている。
したがって、請求人の上記主張は失当である。
なお、刊行物1に記載のものにおいて、シリコンで形成された「エミッタ下側コンタクト層110」をエミッタ領域に含めるとしても、上記「エミッタ下側コンタクト層110」はRTE(rapid thermal epitaxy)反応炉において好ましい成長温度700℃において成長させられるものであり、この温度ではアクセプタドーパントの移動はほとんど起こらないから、この場合も、刊行物発明は、補正発明の「前記エミッタ領域の形成中に前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されている」構成を実質的に備えていると言える。
(e)補正発明において、「エミッタ領域」がどの部分を特定するものであるか明確ではないが、更に、刊行物1の「エミッタ上側コンタクト層120」をも含めて、補正発明の「エミッタ領域」に相当するとしても、刊行物1記載のものにおいて、外側ベース領域290を形成するためのホウ素等のイオン注入は、酸化物層170の形成前の任意の時点において適宜なし得るから、「エミッタ上側コンタクト層120」を低温処理で形成するとともに、「エミッタ上側コンタクト層120」形成後に外側ベース領域290を形成することにより、刊行物発明において、「前記エミッタ領域の形成中に前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されている」ようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。
(f)以上のとおりであるから、上記(相違点1について)での検討を併せ考慮すれば、刊行物発明において、補正発明のごとく「前記エミッタ領域の形成中に前記自然濃度ドーピングプロファイルが前記ベースにより維持されている」ようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、補正発明が奏する効果も、刊行物1及び2に記載されたものから、当業者が容易に予測し得る程度のものである。

したがって、補正発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定する要件を満たさず、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、特許法第17条の2第5項により準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

4.むすび
以上のとおりであるから、請求項1についての補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項により準用する同法第126条第5項の規定に適合せず、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成17年9月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成16年9月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ない10に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明は、その請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】 半導体基板内にn型にドーピングされたコレクタ領域を形成するステップと、
前記コレクタ領域上にSiGeを含むベース領域をエピタキシャル的に形成するステップとを含むヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法であって、
さらに、前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に前記インジウムのドーピングプロファイルを達成するドーピングステップと、
前記ベース領域上にエミッタ領域を形成するステップとを含み、前記エミッタ領域の形成中に前記ドーピングプロファイルが維持されている
ことを特徴とするヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法。」

第4 刊行物に記載された発明
刊行物1及び刊行物2に記載される事項は、「第2 3.(2)(2-2)刊行物に記載された発明」に記載したとおりであり、刊行物1には、先に記載した「刊行物発明」が記載されている。

第5 対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と刊行物発明とを対比する。
(a)刊行物発明の「ヘテロ接合バイポーラトランジスタ」は、本願発明の「ヘテロ構造バイポーラトランジスタ」に相当する。
(b)前記「第2 3.(2)(2-3)対比」の(b)で検討したとおり、刊行物発明の「シリコン基板の上にn+サブコレクタ領域10を形成し、前記領域10の一部分の上にn型コレクタ領域20を形成し、その上に薄いシリコンの核となる層40,50(層230の部分231,232)を形成する工程」は、本願発明の「半導体基板内にn型にドーピングされたコレクタ領域を形成するステップ」に相当する。
(c)刊行物発明において、「層の部分232」は「層50」のことであるから、刊行物発明の「先の層の部分232の上に横たわる」は、本願発明の「前記コレクタ領域上」に相当する。また、刊行物発明の「SiGeベース層240」の「内側領域部分242」は、本願発明の「SiGeを含むベース領域」に相当する。そして、刊行物発明の「エピタキシャルに形成」と、本願発明の「エピタキシャル的に形成」とは、実質的に同等であるから、刊行物発明の「次に、SiGeベース層240を成長し、前記層240を先の層の部分232の上に横たわる内側領域部分242においてエピタキシャルに形成する工程」は、本願発明の「前記コレクタ領域上にSiGeを含むベース領域をエピタキシャル的に形成するステップ」に相当する。
(d)刊行物発明は、「SiGeベース層240を、ジクロロシラン、ジャーマイン、およびホウ素ドーピングのためのジボランから成長」しており、上記(c)を参照すると、この結果として、「前記層240を先の層の部分232の上に横たわる内側領域部分242においてエピタキシャルに形成する」のであるから、このベース層240の成長工程は、SiGeベース層240の内側領域部分242にアクセプタドーパントである「ホウ素」を「エピタキシャル的にドーピング」していると言える。
また、この工程において、ベース層240にホウ素が分散するから、ベース層240中に、ホウ素のドーピングプロファイルが形成されることは明らかである。
そして、刊行物発明の「ホウ素」は、「アクセプタドーパント」であることにおいて、本願発明の「インジウム」に対応している。
よって、刊行物発明の「前記SiGeベース層240を、ジクロロシラン、ジャーマイン、およびホウ素ドーピングのためのジボランから成長する工程」は、本願発明の「前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域に」アクセプタドーパントを「エピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に」前記アクセプタドーパントの「ドーピングプロファイルを達成するドーピングステップ」に対応する。
(e)刊行物発明のシリコン層250の「エミッタとなるべき内側領域部分252」は、少なくとも、本願発明の「エミッタ領域」の一部に対応するから、刊行物発明の「前記SiGeベース層240上に、エミッタとなるべき内側領域部分252を含むシリコン層250を、ジクロロシランおよび砒化水素により成長する工程」は、本願発明の「前記ベース領域上にエミッタ領域を形成するステップ」に相当する。

よって、本願発明と刊行物発明とは、
「半導体基板内にn型にドーピングされたコレクタ領域を形成するステップと、
前記コレクタ領域上にSiGeを含むベース領域をエピタキシャル的に形成するステップとを含むヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法であって、
さらに、前記ベース領域の形成中に、前記ベース領域にアクセプタドーパントをエピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に前記アクセプタドーパントのドーピングプロファイルを達成するドーピングステップと、
前記ベース領域上にエミッタ領域を形成するステップとを含むことを特徴とするヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、「前記ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に前記インジウムのドーピングプロファイルを達成する」のに対し、刊行物発明は、ベース層240をホウ素ドーピングのためのジボランを用いて成長している点。
(相違点2)
本願発明は、「前記エミッタ領域の形成中に前記ドーピングプロファイルが維持されている」のに対し、刊行物発明は、このことが記載されていない点。

第6 当審の判断
以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
(a)刊行物2には、npnバイポーラトランジスタにおいて、インジウムをp型ベース領域のアクセプタドーパントとして用いることにより、「高いコレクタ電流と初期電圧とベースパンチスルーの性能劣化のない素子の形成が可能となる」(段落【0007】)ことが記載されている。(なお、刊行物2の「初期電圧」は、本願明細書における「アーリー電圧」と同じものであると認められる。)
刊行物2に記載のものは、シリコンからなるバイポーラトランジスタに、インジウムをイオン注入してベース領域を形成したものであるが、刊行物2には、インジウムをベースのドーパントとして用いたものと、ボロンをベースのドーパントとして用いたものとの2個のバイポーラトランジスタの特性を、理論式に基づいて導出・比較して、p型ベース領域にインジウムをアクセプタドーパントとして用いることの利点が開示されている。そして、この利点は、「インジウムのアクセプタ状態は、価電子帯よりも高い156meVであり、室温では完全にはイオン化されないからである」(段落【0014】)というインジウムの物性に基づくものであるから、半導体材料がSiGeであってもほぼ同様に成立することは当業者にとって明らかであり、刊行物2の記載に基づいて、SiGeヘテロ構造バイポーラトランジスタのベース領域のドーパントとしてインジウムを用いることは、当業者が直ちに想到し得ることである。
(b)また、インジウムを半導体のアクセプタドーパントとして利用する際に、インジウムをトリメチルインジウム等のインジウム系化合物として供給し、半導体内に導入することは、例えば、特開昭59-218727号公報(「ドーパント不純物としてほう素またはりんを用いた場合について説明したが、・・・トリメチルインジウム・・・などの有機金属のガスを真空容器に導入し、グロー放電を行えば・・・インジウム・・・などの不純物を含む半導体領域を母材半導体基体中に形成される。」[第4頁左上欄第8行?第16行])に記載されるように、従来からよく知られていることであるから、バイポーラトランジスタのベース層をドーパントを含むガスとともにエピタキシャル成長する際に、インジウムをインジウム系有機金属化合物ガスとして供給し、ベース層にインジウムをドーピングすることは、当業者が何の困難もなくなし得ることである。そして、このとき、インジウムのドーピングプロファイルが達成されることは、当然の結果にすぎない。
(c)よって、刊行物発明において、SiGeベース層240を成長させる際に、ホウ素ドーピングのためのジボランに代えて、インジウム系有機金属化合物ガスを供給してインジウムをドーピングすること、即ち、本願発明のごとく、「前記ベース領域にインジウムをエピタキシャル的にドーピングし、前記ベース中に前記インジウムのドーピングプロファイルを達成する」ことは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
(a)刊行物1には、「次に、シリコン層250が、図8に示されているように成長させられる。この層(エミッタとなるべき内側領域部分)は、ジクロロシランおよび砒化水素により、好ましい厚さ150nmに、好ましい温度800℃において、好ましいドーピングレベル3×10^(18)cm^(-3)で成長させられる。層240にドープされるホウ素の移動を防止するために、約825℃よりも低い成長温度を層250の成長において保つことが望ましい。」(段落【0028】)と記載されているから、刊行物発明も、バイポーラトランジスタの実質的なエミッタとなる内側領域部分252を含むシリコン層250を形成する間は、「層240にドープされるホウ素の移動を防止する」こと、即ち、ベースにおけるアクセプタドーパントの分散状態が変化しないようにしていることは明らかであり、これは、アクセプタドーパントの元素こそ異なるものの、本願発明の「前記エミッタ領域の形成中に前記ドーピングプロファイルが維持されている」ことに実質的に相当する。
(b)この点について、請求人は、審判請求の理由において、刊行物1(引用例2)は、『エミッタ下部コンタクトの形成後であるがエミッタ上部コンタクトの形成前のホウ素注入ステップを教示している。このホウ素注入ステップはゲートの外側部分におけるドーピングプロファイルの修正をもたらすものである。』と指摘し、『これら引用例は、単独あるいは組み合わせによって、本願発明を自明とするものではあり得ない。』と主張しているが、前記「第2 3.(2)(2-4)判断」の(相違点3について)で検討したとおり、刊行物1のバイポーラトランジスタの実質的な「エミッタ」は、シリコン層240のうちのエピタキシャルに形成された「内側領域部分252」であるから、刊行物発明の「内側領域部分252」が、本願発明の「エミッタ領域」に実質的に相当し、刊行物発明も、本願発明の「前記エミッタ領域の形成中に前記ドーピングプロファイルが維持されている」構成を実質的に備えている。
また、刊行物1に記載のものにおいて、シリコンで形成された「エミッタ下側コンタクト層110」をエミッタ領域に含めるとしても、刊行物発明は、本願発明の「前記エミッタ領域の形成中に前記ドーピングプロファイルが維持されている」構成を実質的に備えていると言え、更に、刊行物1の「エミッタ上側コンタクト層120」をも含めて、本願発明の「エミッタ領域」に相当するとしても、刊行物1記載のものにおいて、外側ベース領域290を形成するためのホウ素等のイオン注入は、酸化物層170の形成前の任意の時点において適宜なし得るから、「エミッタ上側コンタクト層120」を低温処理で形成するとともに、「エミッタ上側コンタクト層120」形成後に外側ベース領域290を形成することにより、刊行物発明において、「前記エミッタ領域の形成中に前記ドーピングプロファイルが維持されている」ようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。
(c)以上のとおりであるから、上記(相違点1について)での検討を併せ考慮すれば、刊行物発明において、本願発明のごとく「前記エミッタ領域の形成中に前記ドーピングプロファイルが維持されている」ようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、本願発明が奏する効果も、刊行物1及び2に記載されたものから、当業者が容易に予測し得る程度のものである。

したがって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定するにより特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願は、請求項2ないし請求項10に係る発明について判断するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-06 
結審通知日 2008-02-12 
審決日 2008-02-29 
出願番号 特願平11-212627
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 井原 純
河合 章
発明の名称 ヘテロ構造バイポーラトランジスタの製造方法  
代理人 産形 和央  
代理人 越智 隆夫  
代理人 本宮 照久  
代理人 岡部 正夫  
代理人 朝日 伸光  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 臼井 伸一  
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