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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1180606
審判番号 不服2006-13048  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-22 
確定日 2008-07-10 
事件の表示 特願2001-261167「配線用ボックス」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月14日出願公開、特開2003- 79022〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成13年8月30日の特許出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年11月18日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1は次のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項1】有底箱状をなすボックス本体より構成され、当該ボックス本体にバー材が取り付けられ、当該バー材が建築物内に設置された支持体に固定されることにより当該支持体に支持される配線用ボックスであって、
前記ボックス本体の周壁には、前記バー材をボックス本体に取り付けるための取付具に形成された板状の取付片が挿通される取付孔が形成され、当該取付孔に対する取付片の非挿通状態で、取付孔は、ボックス本体の周壁外面側に開口し、ボックス本体の周壁内面側が薄肉部により閉塞され、当該薄肉部は取付片により突き破られるように形成されているとともに、前記取付孔に挿通された取付片をボックス本体内で折り曲げて取付具がボックス本体に取り付けられた状態で、当該取付具に対するボックス本体の移動を規制すべく取付孔の内周形状が取付片の外形形状とほぼ同一に形成されていることを特徴とする配線用ボックス。」

2.引用刊行物の記載事項
(1)刊行物2(特開昭60-152747号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2には、図面と共に次の記載がある。
(2a)コンクリート埋設物の架設具(特許請求の範囲)
「(1)手による折り曲げが可能で、かつ曲げられた状態で型枠に埋設物を押圧できる突張り強度を有する線状の支持部と、支持部をコンクリート壁内に埋設される埋設物に取付る取付部とからなるコンクリート埋設物の架設具。」
(2b)鉄筋へ架設される線状の支持部(第2頁右上欄第5行?左下欄末行)
「以下、図面にしたがって本発明に係る架設具を説明する。
第1図および第2図において、支持部(1)はコンクリート壁の支骨をなす鉄筋(5)に架設される部分である。支持部(1)は手で曲げることができるものであって曲げ方向を自在に設定できるものである。線状の支持部(1)の具体的な形状については、断面が円形のものや四角のもの、或いは、偏平なもの等色々考えられるが、特に支骨をなす鉄筋(5)へ架設のしやすさ、さらに曲げ方向の自在性という点から断面円形のものがすぐれている。具体的には通称番線と呼ばれ、その中で8番線前後の軟鋼線が最適である。また、支持部(1)は、曲げられた状態で型枠に埋設物を押圧できる突っ張り強度を有するものであつて、第1図に示すように、埋設物(4)を型枠(6)に押し当てた状態のときに、埋設物(4)に対して加わる矢印(61)方向の力に対して、支持部(1)が曲げられた状態で、これに対向するように矢印(62)方向に埋設物(4)を突っ張らせる押圧力を有している。この状態では埋設物(4)は支持部(1)によって、型枠(6)に押しつけられた状態換言すれば密接した状態に保たれている。
取付部(2)は、支持部(1)を埋設物(4)に取付けるための構造を有するものである。取付けには螺子による取付け、嵌合による取付け等種々の手段がある。取付部(2)の形状については埋設物(4)の外形状によつて種々の態様をとる。しかし、第2図に示すように、埋設物(電気配線用ボックス)(4)に一様に支持部(1)の押圧(矢印(63))が加わるような態様となるのが型枠への密着性の点から好ましい。」
(2c)電気配線用ボックスに取付ける架設具(第2頁右下欄第1行?第3頁左上欄第14行)
「第3図から第11図までは、電気配線用のボックス(10)に取付ける架設具についての一例である。第3図は架設具の平面図、第4図は架設具の断面図(A-A)である。この例の場合は、手による折り曲げ可能な線状の支持部(11)と板状の取付部(12)とからなり、支持部(11)は取付部(12)の両側に並設されている。取付部(12)はボックス(10)の外壁に取付るための切り起こしによる突片(13)を有している。支持部(11)は、取付部(12)の両側に断面半円弧状に形成する凹部(14)に嵌め込まれて、スポツト溶接により取付部(12)に固定されている。
これは、例えば取付部(12)の凹部(14)を弾性を有する部材により形成し、凹部(14)の内径が支持部(11)の径より小径になるようにして凹部(14)の弾性を利かせて支持部(11)を強制的に凹部(14)に嵌め込んで嵌着するようにしてもよく、また、凹部(14)を形成することなく単に支持部(11)を取付部(12)にスポツト溶接により固定してもよい。
(15)は螺孔であり、取付部(12)をボックス(10)に取付けた状態ではボックス(10)に設けられた透孔17と一致するように形成されている。・・・・・或いは螺孔(15)はなしでよい。(16)は取付部(12)の変形を防ぐための補強リブである。」
(2d)架設具を電気配線用ボックス(10)に取付けた状態(第3頁左上欄第15行?右上欄第13行)
「第6図は架設具をボックス(10)に取付けた状態の断面図を示したものである。この例の場合、ボックス(10)の外壁には、取付部(12)の突片(13)が挿入される挿入孔(18)が形成されている。まず、取付部(12)の突片(13)をボックス(10)の外壁に向かうようにし、次いでボックス(10)の外壁に形成された挿入孔(18)に挿入し、突片(13)の先端をボックス(10)の内側へ突出させる。次に、この突出部分を、第7図に示すように、ボックス(10)の内壁に向かつて折り曲げる。このとき、第6図に示すように突片(13)の先端が相互に矢印(64)および(65)に示すように反対方向に向くように折り曲げると取付部(12)がボックス(10)から外れにくくなる。このように、突片(13)でボックス(10)の外壁を挟持させ、取付部(12)をボックス(10)に固定する。かかる構造により架設具のボックス(10)への取付けがなされる。」
(2e)架設具を取付けたボックスの壁面を構成するコンクリート壁内への埋設(第3頁右上欄第14行?右下欄第11行)
「次に、第9図を用いて架設具を取付けたボックス(10)を壁面を構成するコンクリート壁内に埋設する場合について説明する。ボックス(10)を埋設するに際しては、まず線状の支持部(11)を手で折り曲げてコンクリート壁の支骨をなすように巡らされた鉄筋(5)に接しさせる。このときボックス(10)をコンクリート壁内に埋設する位置にくるように、支持部(11)の曲げ具合を調節する。支持部(11)は手で折り曲げることができるから調節は容易に行なえる。次いで支持部(11)と鉄筋(5)との接する部分を針金(7)等で結束して、支持部(11)を鉄筋(5)に架設する。こうして第9図に示すようにボックス(10)を所定の埋設位置に設置する。尚、図中(8)はボックス(10)に連結する電線管であり、(9)はボックス(10)と電線管(8)とを接続するコネクターである。
次いで、第10図に示すようにボックス(10)の開口部に向かつて型枠(6)を当接させる。このとき支持部(11)の突張り強度によつて矢印(66)方向にボックス(10)を押圧し、ボックス(10)は型枠(6)に密接した状態に保たれている。
本発明においては、支持部(11)を手で自由に折り曲げることができるから、例えば、第10図に点線で示すように鉄筋(5a)が配筋されている場合であつても、支持部(11a)を第10図に一点鎖線で示すように折り曲げてきて鉄筋(5a)に架設することは容易に行なえる。また、鉄筋(5)の配筋状態により、一方の支持部(11)を第10図の縦に走る鉄筋(5b)に架設するようにしてもよい。
このように支持部(11)を鉄筋(5)に架設し、ボックス(10)の開口部に型枠(6)を当接させたら、次いで、コンクリート打設を行ない、第11図に示すようにボックス(10)をコンクリート壁(90)内に埋設する。」
(2f)第6,7図には、取付部(12)の板状部分を切り起こして形成されている板状の突片(13)がボックス(10)の外壁に設けられた挿入孔(18)に挿入されており、挿入口(18)の内周形状が突片(13)の外形形状とほぼ同一であることが示されている。

上記記載及び図面の記載から、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「有底箱状をなすボックス(10)より構成され、当該ボックス(10)に線状の支持部(11)が取り付けられ、当該支持部(11)が建築物内に設置された鉄筋(5)に固定されることにより当該鉄筋(5)に支持される電気配線用のボックスであって、
前記ボックス(10)の周壁には、前記支持部(11)をボックス(10)に取り付けるための取付部(12)に形成された板状の突片(13)が挿通される挿入孔(18)が形成され、前記挿入孔(18)に挿通された突片(13)をボックス内で折り曲げて取付部(12)がボックス(10)に取り付けられた状態で、挿入孔(18)の内周形状が突片(13)の外形形状とほぼ同一に形成されている電気配線用のボックス。」(以下、「刊行物2記載発明」という。)

(2)刊行物3(特開平9-172721号公報)
同じく原査定の拒絶の理由に引用された刊行物3には、
(3a)特許請求の範囲に「【請求項1】 壁面の少なくとも一側に、底面と平行なスリット孔又はスリット孔形成用ノック孔が設けられたものであることを特徴とするアウトレットボックス。」と、
(3b)そして、2頁右欄には「【0005】ここで、アウトレットボックスとは、配線の接続箇所等に設けた概ね直方体形状でその天面が開いた箱体(即ち、4つの側面と1つの底面より形成される一体物)である。ほとんどは金属製であるが、民間住宅用としてプラスチック製のものもある。このボックスは、種々な使用方法のある汎用性のある部材で、上向きに設置して電線の分岐やジョイント箇所を確保するために使用したり、下向きに設置して電気器具や電灯器具用の電線を天井から室内に出す部分に使用したり、場合によっては横向きに設置するなどしている。そして、単に電線の分岐やジョイントをする場合、或いは軽量部材を保持する場合には、二重天井を構成している野ぶち材又は野ぶち受け材に固定する。重量物(シャンデリア等)を吊持する場合には、強度不足の問題もあるため、野ぶち材や野ぶち受け材に固定せず上側スラブから吊りボルトをつり下げてこれに固定するという場合もある。また、アウトレットボックスには、電線その他を通すための孔が必要となる。そこで、4側面及び底面にはそれぞれ、通常は塞がっているが使用者自身が工具等で叩けば簡単に孔が形成できるように加工された孔(ノック孔)が設けられている。」と、
(3c)また、該スリット孔又はスリット孔形成用ノック孔について、同じく2頁右欄に「【0006】スリット孔又はスリット孔形成用ノック孔は、上記箱体の少なくとも1側面にに設けられるものであって、製品段階で孔となっているものをスリット孔、該孔は塞がっているが使用者自身が工具等で叩けば簡単に孔が形成できるように加工されたものをスリット孔形成用ノック孔と呼ぶものとする。この孔を実際に使用する場合には当然スリット孔の方が利便性は高いわけであるが、使用頻度が著しく低い現場、或いは要求される密閉性が高い現場ではスリット孔を別途密閉部材で覆う必要があるため、ノック孔とした方が好適である。従って、これらは状況に応じて適宜選択すれば良い。」と記載されると共に、
(3d)図1?6には、これらのスリット孔等には折り曲げられた板状部材から形成された「クリップ5」の板状の「舌部51」が挿通されて、配線用のボックスであるアウトレットボックスが建築物内に設置された支持体(野ぶち材3又は野ぶち受け材4)に固定され支持されることが、示されている。

3.対比・検討
(1)一致点・相違点
本願発明と上記刊行物2記載発明とを対比すると、刊行物2記載発明の「ボックス(10)」、「線状の支持部(11)」、「鉄筋(5)」、「取付部(12)」およびそれに形成された板状の「突片(13)」は、それぞれ、本願発明の「ボックス本体」、「バー材」、「支持体」、「取付具」および「取付片」に相当し、また該突片が挿通される「挿入孔(18)」は、本願発明の「取付孔」に相当することが明らかである。
また、刊行物2記載発明において、挿入孔(18)の内周形状が突片(13)の外形形状とほぼ同一に形成されているから、取付部(12)に対するボックス(10)の移動が規制されていることは、明らかである。
してみると、両者は、
(一致点)
「有底箱状をなすボックス本体より構成され、当該ボックス本体にバー材が取り付けられ、当該バー材が建築物内に設置された支持体に固定されることにより当該支持体に支持される配線用ボックスであって、
前記ボックス本体の周壁には、前記バー材をボックス本体に取り付けるための取付具に形成された板状の取付片が挿通される取付孔が形成され、前記取付孔に挿通された取付片をボックス本体内で折り曲げて取付具がボックス本体に取り付けられた状態で、当該取付具に対するボックス本体の移動を規制すべく取付孔の内周形状が取付片の外形形状とほぼ同一に形成されている配線用ボックス。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
取付孔が、本願発明では、「当該取付孔に対する取付片の非挿通状態で、取付孔は、ボックス本体の周壁外面側に開口し、ボックス本体の周壁内面側が薄肉部により閉塞され、当該薄肉部は取付片により突き破られるように形成されている」ものであるのに対し、刊行物2には、取付孔(挿入孔(18))全体が開放されていることは記載されているが、当該取付孔に対する取付片の非挿通状態で取付孔がボックス本体の周壁外面側に開口し、ボックス本体の周壁内面側が薄肉部により閉塞され、当該薄肉部は取付片により突き破られるように形成されていることについては記載がない点。

(2)相違点についての検討
刊行物3には、配線用ボックスを建築物内に設置された支持体(野ぶち材又は野ぶち受け材)に支持させる際に取付具であるクリップの板状の取付片(舌部)を挿入して使用するボックス周壁に形成された取付用の孔を、該孔全体が開放された「スリット孔」としてだけでなく、当該取付用孔に対する取付片(舌部)の非挿通状態では閉塞され、取付片(舌部)が挿通される使用時には突き破られるように形成された「スリット孔形成用ノック孔」として設けることも、記載されている(上記2.(2)の記載参照)。
刊行物3には、該「スリット孔形成用ノック孔」の具体的な形態は記載されていないものの、非使用状態では閉塞している開口部であるが使用時には簡単に開口できる、いわゆる「ノックアウト孔(穴)」などと呼ばれている開口部を、壁部に設けられた開口部分の内面側あるいは外面側などを突き破られやすいような薄肉部で閉塞して構成することは、本願出願前の周知技術すぎない(必要ならば、特開2000-48890号公報の特に特許請求の範囲、段落【0016】および図4、特開2000-188160号公報の特に段落【0024】、特開2001-218332号公報の特に段落【0013】および図1(c)、図2(b)、特開2000-333352号公報の特に段落【0005】参照。)し、薄肉部であると、特別な工具を使用しなくとも、突片によって突き破られて突片が挿通できることも、日常生活で普通に経験されている事象にすぎない。
そうすると、刊行物3記載の技術的思想及び上記周知技術を刊行物2記載発明に用いて、刊行物2記載発明の取付孔(挿入孔)を、該孔全体が開放された孔としてではなく、当該取付孔に対する取付片(突片)の非挿通状態で取付孔がボックス本体の周壁外面側に開口し、ボックス本体の周壁内面側が薄肉部により閉塞され、当該薄肉部は取付片により突き破られるように形成したいわゆるノックアウト孔として形成するように設計することは、当業者ならば容易に想到し得たものと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物2,3記載の発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された上記刊行物2、3に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-02 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-26 
出願番号 特願2001-261167(P2001-261167)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤川 誠一清田 健一  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 秋田 将行
信田 昌男
発明の名称 配線用ボックス  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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