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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1180647
審判番号 不服2005-24527  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-20 
確定日 2008-07-07 
事件の表示 平成 8年特許願第 60108号「アイアンゴルフクラブセット」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 2日出願公開、特開平 9-225073〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年2月22日の出願であって、平成17年11月25日付で拒絶査定がなされ、同年12月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
番手の小さいクラブから大きいクラブになるに従って実質的にシャフト長さが漸次短くなるようにセッティングされたアイアンゴルフクラブセットにおいて、
ヘッド本体に装着されたシャフトのヘッド本体から露出する始端からグリップ側へ向けて実質上同一径で延びるストレート部を有するシャフトを備えた複数のクラブを有し、
上記ストレート部を有するシャフトでは上記ストレート部の終端からグリップ側へ向けてわずかに膨径して延びるテーパ部を有し、
上記ストレート部を有さないシャフトではヘッド本体から露出する始端からグリップ側へ向けてわずかに膨張して延びるテーパ部を有し、
上記ストレート部を有するシャフトを備えたクラブのみあるいは上記ストレート部を有さないシャフトを備えたクラブも含むセッティングとし、
上記ストレート部の長さを3番で70?90mm、4番で60?80mm、5番で50?70mm、6番で40?60mm、7番で30?50mm、8番で20?40mm、9番で10?30mm、ウェッジで0?20mmとしてシャフト長さが短い番手から長い番手の順に実質上長くなるシャフトを使用し、前記ストレート部の直径を3番及び4番で9.0?9.3mm、5番から7番で9.3?9.6mm、8番以下を9.4?9.8mmとしたことを特徴とするアイアンゴルフクラブセット。
【請求項2】
前記テーパ部を1000分の3?4のテーパとしたことを特徴とする請求項1に記載のアイアンゴルフクラブセット。」
と補正された(補正個所に下線を引いた。)。
本件補正は、特許請求の範囲について、補正前の請求項1及び補正前の請求3の請求項1引用部分を削除すると共に、補正前の請求項2を補正後の請求項1とし、補正前の請求項3の請求項2引用部分を請求項2としたものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とする適法な補正と認められる。
そうすると、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-213654号公報及び特開平3-272781号公報(以下順に、「引用例1」及び「引用例2」という。)にはそれぞれ本願発明に関連する事項として以下の事項が図示と共に記載されている。
(1)引用例1
ア.「番手の異なる複数本の管状繊維強化プラスチック製ゴルフクラブシャフトからなるゴルフクラブシャフトセットにおいて、(i)チップ端外径及びバット端外径が番手にかかわらず同じ大きさに設定されていること、(ii)チップ端から一定の長さにわたって同一外径に形成された部分を有するとともに、該同一外径部分は番手が大きくなるに従って順次短くなるように設定されていること、(iii)該同一外径部分のバット側端位置からバット端までのシャフト外周部が次第に径が大きくなるテーパー状に形成されていること、(iv)全シャフト重量が番手にかかわらず一定となるように設定されていること、(v)キックポイントが番手が大きくなるに従って順次チップ側からバット側に移行するように設定されていること、を特徴とするゴルフクラブシャフトセット。」(【請求項2】)
イ.「本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので下記のことをその課題とする。(1)ロングアイアンは先調子で楽にボールが上がり、ショートアイアンは手元調子でボールの方向性を良好なものとすること。(2)製造にあたって使用するマンドレル及びゴルフクラブシャフト素管の種類が少なくてすみ、製造の工程数を少なくし、生産性を向上させること。(3)番手が大きくなるとともに各種のシャフト特性が順次変化して、プレイヤーに良好なフィーリングを与えるものとすること。(4)クラブセットの中でバット外径を一定にでき、各番手でグリップ外径の異和感をなくすこと。」(段落【0007】参照)
ウ.「本発明によるゴルフクラブシャフトセットの各シャフトは、チップ端外径(図1のdに相当)が番手にかかわらず同じ大きさに設定されている。また、バット端外径(図1のDに相当)も番手にかかわらず同じ大きさに設定されている。通常、チップ端外径dは6.5?10.0mm程度に設定され、バット端外径Dは13.0?16.0mm程度に設定される。本発明のゴルフクラブシャフトセットでは、チップ端外径dが番手にかかわらず同じ大きさに設定されているため、ヘッドのフォーゼル内径(シャフト差し込み内径)を一定にできるという利点がある。また、バット端外径Dが番手にかかわらず同じ大きさに設定されているため、セット内で同一種類のグリップを使用でき、グリップ外径が一定のため同一感触でにぎれるという利点がある。また、本発明によるゴルフクラブシャフトセットでは、チップ端から一定の長さにわたって同一外径に形成された部分(図1の5に相当)の長さSが番手が大きくなるに従って順次短くなるように設定されている。この場合、長さSの短くなる割合は3?20mm/番手、より好ましくは5?15mm/番手である。このようにすることにより、番手の小さい長いシャフトから順次キックポイントをバット側に移行でき、ロングアイアンは先調子、ショートアイアンは手元調子となるゴルフクラブシャフトセットが得られるという利点がある。」(段落【0012】?【0013】参照)
エ.「本発明のゴルフクラブシャフトセットでは、各シャフトのキックポイントが番手が大きくなるに従って順次チップ側からバット側に移行するように設定されている。ここでキックポイントとは、シャフトを軸方向に圧縮したときの最大たわみ位置であり、シャフト長さに対する%表示を行うと、シャフト長さをL_(0)(mm)、該最大たわみ位置からシャフトのチップ先端までの距離をb(mm)としたとき、(b/L_(0))×100(%)で表わされるものである。シャフトのキックポイントを番手に応じて上記のように移行させるには、上記と同様、同一外径部分の長さS、内周の2段テーパーの境界位置、該2段テーパーのテーパー角度、内層と外層の膜厚比等を調整すればよい。シャフトのキックポイントのチップ側からバット側への移行割合は0.1?0.5%/番手である。シャフトのキックポイントが上記のように移行することにより、番手の小さいアイアンは打球が上がりやすく、順次番手が大きくなるに従い打球の方向性の正確さが出るという利点がある。」(段落【0015】参照)
オ.「ゴルフクラブシャフト素管をもとに各番手のゴルフクラブシャフトを製造する。ここでチップ側は番手にかかわらず芯鉄端から一定の長さ位置、例えば100mmの位置で切断する。この切断には例えばダイヤモンドカッター、砥石タイプの高速カッター等公知の切断手段を用いることができる。一方、バット側は最も番手の小さな長い番手から番手毎に例えば0.5インチずつ短くなるように上記切断手段で切断する。次に、所定長さとなったゴルフクラブシャフト素管を研磨して図1に示すような所要形状に仕上げることにより、所望の特性を持つ本発明によるゴルフクラブシャフトセットを得ることができる。【発明の効果】本発明によるゴルフクラブシャフトセットは、前記構成としたので、番手が大きくなるとともに各種のシャフト特性が順次変化し、ロングアイアンに用いた場合は先調子で楽にボールが上がり、ショートアイアンに用いた場合は手元調子でボールの方向性が良好となる。しかも、全シャフト重量が番手にかかわらず一定か、或いは番手が大きくなるに従って重くなっているので、クラブのスウィングバランスがセット内で一定若しくは一定割合で増加するという利点がある。さらに、本発明のゴルフクラブシャフトセットは、製造にあたって使用するマンドレル及びゴルフクラブシャフト素管が1種類でよいため、ゴルフクラブシャフトセットを製造の工程数が少なくなり、生産性を向上させることが可能となる。」(段落【0022】?【0023】参照)
オ.「8本のゴルフクラブシャフト素管を得た。次に、上記ゴルフクラブシャフト素管のうちの1本について、先端から100mmの位置でカットしてチップ端とし、該チップ端よりL_(0)=986mmの位置でカットしバット端とするとともに、センタレス研磨にて図1に示す形状に研磨した後、塗装して3番アイアン用シャフトとした。チップ端外径は9.4mmφ、チップ端内径は3.83mmφ、バット端外径は15.3mmφ、バット端内径は12.43mmφ、チップ端から同一外径部分のバット側端位置までの距離L_(1)は150mm、該距離L_(1)の位置における内径は5.52mmφであった。また、上記ゴルフクラブシャフト素管の残りのものについて、先端から100mmの位置でカットしてチップ端とし、該チップ端よりそれぞれ表1に示すL_(0)の位置でカットしバット端とするとともに、上記と同様にセンタレス研磨にて、チップ端外径及びバット端外径は3番アイアン用シャフトの場合と同様に、チップ端から同一外径部分のバット側位置までの距離L_(1)は表1に示す値となるように研磨した後、塗装してそれぞれ4番?9番アイアン用シャフト及びPW用シャフトを製造した。」(段落【0025】?【0027】参照)
カ.表1から、3番からPWまでのアイアンシャフトの同一外径部分のバット側端位置までの距離L_(1)が150mm、138mm、125mm、113mm、100mm、88mm、75mm、63mmと順次短くなり、それに伴い長さL_(0)が986mm、974mm、961mm、949mm、936mm、924mm、911mm、899mmと同じ減少差(12もしくは13mm=ほぼ0.5インチ)で順次短くなることが看取できる。
[引用発明の認定]
記載ウの「チップ端から一定の長さにわたって同一外径に形成された部分(図1の5に相当)の長さS」と、記載オ、カの「チップ端から同一外径部分のバット側端位置までの距離L_(1)」とは、その規定振りからみてその意味するものと異ならない(以下、「チップ端同一外径部分の長さS」という。)。
また、チップ端がヘッドのフォーゼルのシャフト差し込み部に差し込まれる(記載ウ参照)こと、3番からPWまでのアイアンシャフトのチップ端同一外径部分の長さSが150mm、138mm、125mm、113mm、100mm、88mm、75mm、63mmであること及びこれに対する通常のフォーゼルの差し込み深さ(番手によらずほぼ一定で50mm以下である)を考慮すれば、引用例1に記載のゴルフクラブシャフトセットを使用するアイアンゴルフクラブセットは、ヘッド本体に装着されたシャフトのヘッド本体から露出する始端からバット端すなわちグリップ側へ向けて実質上同一径で延びる同一外径部分(以下、「露出同一外径部分」という。)及び該露出同一外径部分の終端からバット端までのシャフト外周部が次第に径が大きくなるテーパー状に形成されている部分を有し、上記露出同一外径部分の長さがPWから3番の順に言い換えると短い番手から長い番手の順に実質上長くなる複数のシャフトを使用していることが明らかである。
さらに、チップ端外径が9.4mmφである(記載オ参照)ことは、露出同一外径部分の直径が9.4mmであることに他ならない。
したがって、上記記載ア?カを含む引用例1には以下の発明が記載されている。
「3番からPWまでのアイアンシャフトのチップ端同一外径部分の長さSが150mm、138mm、125mm、113mm、100mm、88mm、75mm、63mmと順次短くなり、それに伴いシャフト長さL_(0)が986mm、974mm、961mm、949mm、936mm、924mm、911mm、899mmと順次短くなるようにセッティングされたアイアンゴルフクラブセットにおいて、
ヘッド本体に装着されたシャフトのヘッド本体から露出する始端からグリップ側へ向けて延びる露出同一外径部分を有するシャフトを備えた複数のクラブを有し、
上記露出同一外径部分を有するシャフトでは上記露出同一外径部分の終端からバット端までのシャフト外周部が次第に径が大きくなるテーパー状に形成されている部分を有し、
上記露出同一外径部分を有するシャフトを備えたクラブのみを備えたクラブからなるセッティングとし、
上記露出同一外径部分の長さをシャフト長さが短い番手から長い番手の順に実質上長くなるシャフトを使用し、前記同一外径部分の直径を番手によらず9.4mmと同一としたアイアンゴルフクラブセット。」(以下、「引用発明」という。)
(2)引用例2
キ.「1、ウッドクラブ及びアイアンクラブから成るゴルフクラブセットに於て、ロングアイアンからショートアイアンにかけて、ゴルフクラブの全長L_(0)が1番手毎に所定の長さΔL_(0)づつ漸減すると共に、該ゴルフクラブの第1ステップの長さL_(1)が1番手毎に所定の長さΔL_(1)づつ漸減するように設定し、かつ、全長減少長さΔL_(0)よりも第1ステップ減少長さΔL_(1)を大きな値に設定したことを特徴とするゴルフクラブセット。
2、ウッドクラブ及びアイアンクラブから成るゴルフクラブセットに於て、ロングアイアンからショートアイアンにかけて、シャフトの先端径を1番手毎乃至3番手毎に増加するように設定し、かつ、ロングアイアンのシャフトの先端径を、ウッドクラブのシャフトの先端径と略同一値に設定したことを特徴とするゴルフクラブセット。」(特許請求の範囲)
ク.「(第1項と第2項のいずれにおいても、)ボール打撃時のロングアイアンのフィーリングがソフトになり、手への衝撃が小さくなる。また、ロングアイアンがいわゆる先調子のシャフトとなって、ボールの打出角が高くなり、キャリーが伸びる。」(3頁左上欄14?19行)
ケ.「第1図に於て、ウッドクラブ用シャフト21とアイアンクラブ用シャフト22を略図にて示し、シャフト先端部から始まる最初のステップ───これを第1ステップ23と呼ぶ───の長さをL_(1)とし、ゴルフクラブ全長をL_(0)とし、第1ステップの先端径(チップ径)をD_(t)、シャフトの基端径(バット径)をD_(b)とする。」(3頁右上欄1?7行)
コ.「第2表から明らかなように、本発明に係るゴルフクラブセットでは、ロングアイアンからショートアイアンにかけて(番手が多くなると)、ゴルフクラブの全長L_(0)が1番手毎に(従来例と同一の)ΔL_(0)=12.7mmづつ漸減するように設定し、かつ、第1ステップ減少長さΔL_(1)がこの全長減少長さΔL_(0)よりも、大きな値───即ちΔL_(l)=22.7mm───に設定した。」(3頁右下欄3?10行)
サ.「第3表から明らかなように、本発明に係るゴルフクラブセットでは、第1ステップの先端径(チップ径)D_(t)を、ロングアイアンほど細くし、ミドルアイアンからショートアイアンになるに従って徐々に太くしている。」(4頁右下欄1?5行)
シ.「第2表と第3表とを組み合わせたゴルフクラブセットとするも自由である。例えば、シャフト外径を各番手毎に違うものとすると、シャフトの種類が増えるため、2番手毎(又は3番手毎)にシャフト外径を変えて、その番手間の第1ステップの長さL_(l)の変化量ΔL_(1)を、22.7mmとすることも望ましい。」(5頁左上欄14?末行)

4.対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「3番からPWまでのシャフト長さL_(0)が986mm、974mm、961mm、949mm、936mm、924mm、911mm、899mmと順次短くなるようにセッティングされたアイアンゴルフクラブセット」は、「番手の小さいクラブから大きいクラブになるに従って実質的にシャフト長さが漸次短くなるようにセッティングされたアイアンゴルフクラブセット」ということができる。
また、引用発明の「露出同一外径部分」は、本願発明の「ヘッド本体から露出する始端からグリップ側へ向けて実質上同一径で延びるストレート部」に相当し、したがって、引用発明の「露出同一外径部分の終端からバット端までのシャフト外周部が次第に径が大きくなるテーパー状に形成されている部分」は、本願発明の「ストレート部の終端からグリップ側へ向けてわずかに膨径して延びるテーパ部」に相当している。
したがって、両者は、
「番手の小さいクラブから大きいクラブになるに従って実質的にシャフト長さが漸次短くなるようにセッティングされたアイアンゴルフクラブセットにおいて、
ヘッド本体に装着されたシャフトのヘッド本体から露出する始端からグリップ側へ向けて実質上同一径で延びるストレート部を有するシャフトを備えた複数のクラブを有し、
上記ストレート部を有するシャフトでは上記ストレート部の終端からグリップ側へ向けてわずかに膨径して延びるテーパ部を有し、
上記ストレート部を有するシャフトを備えたクラブのみを備えたクラブからなるセッティングとし、
上記ストレート部の長さをシャフト長さが短い番手から長い番手の順に実質上長くなるシャフトを使用したアイアンゴルフクラブセット。」
の点で一致し、次の点で相違している。
[相違点]
A.ストレート部の長さについて、本願発明では、3番で70?90mm、4番で60?80mm、5番で50?70mm、6番で40?60mm、7番で30?50mm、8番で20?40mm、9番で10?30mm、ウェッジで0?20mmと特定されているのに対して、引用発明では、番手毎の具体的数値(範囲)が定かでない点。
B.ストレート部の直径について、本願発明では、3番及び4番で9.0?9.3mm、5番から7番で9.3?9.6mm、8番以下を9.4?9.8mmと特定されているのに対して、引用発明では、番手によらず9.4mmと同一である点。
[相違点の判断]
相違点Aについて
引用発明の各番手毎のストレート部の長さについては定かでない。
そこで、本願発明が、各番手毎のストレート部の長さの具体的数値として、3番で70?90mm、4番で60?80mm、5番で50?70mm、6番で40?60mm、7番で30?50mm、8番で20?40mm、9番で10?30mm、ウェッジで0?20mmと数値(範囲)を特定していることの意義について検討するに、本願の詳細な説明の記載を参照しても、格別の臨界的意義が見いだせない。
他方、引用発明は、各番手毎のストレート部にフォーゼル部への差し込み長さを加えた部分であるチップ端同一外径部分の長さSについては3番からPWまでの順に150mm、138mm、125mm、113mm、100mm、88mm、75mm、63mmであり、通常のフォーゼルの差し込み深さは番手によらずほぼ一定で50mm程度であることからみて、引用発明は、仮にフォーゼル部の長さを50mmとすれば、3番で100mm、4番で88mm、5番で75mm、6番で63mm、7番で50mm、8番で38mm、9番で25mm、PWすなわちウェッジで13mmとなり、本願発明の数値(範囲)との間でさほどの違いがなく、クラブの構造あるいは製造方法上のさほどの変更を余儀なくするものでもないから、格別の長さ数値でない。
また、クラブを先調子あるいは手元調子にする程度は、ストレート部の長さのみで決まるものでなく、クラブの製造材料、シャフトの各部分の肉厚等如何によっても決まるものであり、しかも、クラブ使用者の体力及び要請等に応じて適宜決定可能な事項である。
以上のことを考えれば、引用発明において、番手毎のストレート部の長さの具体的数値に関する相違点Aに係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜変更可能な範囲内のことと認める。
相違点Bについて
引用例2には、番手の小さいクラブから大きいクラブになるに従って実質的にシャフト長さが漸次短くなるようにセッティングされたアイアンゴルフクラブセットにおいて、シャフト先端部から始まる最初のステップである第1ステップの長さL_(1)が、番手の小さいクラブから大きいクラブになるに従って、漸次短くなると共に当該第1ステップの直径D_(t)が、番手の小さいクラブから大きいクラブになるに従って、漸次大きくすること、つまり第1ステップの長さだけでなく、直径を変えることが記載されている(引用例2の上記記載キ?シ参照)。
ところで、引用例2には、引用発明のストレート部と同じく、第1ステップの外径がその軸方向で同一であることについては明示がないが、引用例2に記載の第1ステップは、引用発明のストレート部と同様に、その長さを番手毎に変えることにより、シャフトの長いクラブではシャフトが先調子となり打球が上がり易くなり、シャフトの短いクラブでは手元調子となり打球が安定してしっかりと打つことができるという機能を発揮するものである(引用例2の上記記載ク参照)。
そうすると、引用発明において、引用例2に記載の第1ステップと同様の機能を持つストレート部について、長さだけでなく直径も変えることは、引用例2の上記記載にふれた当業者であれば格別困難性を要せず想到しうることである。
その際、本願発明が、ストレート部の直径の具体的数値(範囲)として、3番及び4番で9.0?9.3mm、5番から7番で9.3?9.6mm、8番以下を9.4?9.8mmと特定した点について検討するに、本願の詳細な説明の記載を参照しても、格別の臨界的意義が見いだせず、また、引用発明のストレート部の直径の具体的数値である9.4mmと比較して、その差が0.4mm以内におさまっており、クラブの構造あるいは製造方法上のさほどの変更を余儀なくするものでもないから、格別の直径数値でない。
クラブを先調子あるいは手元調子にする程度は、上述のとおり、ストレート部の長さ及び直径のみで決まるものでなく、クラブの製造材料、シャフトの各部分の肉厚等如何によっても決まるものであり、しかも、クラブ使用者の体力及び要請等に応じて適宜決定可能な事項である。
以上のことをことを考えれば、引用発明において、番手毎のストレート部の直径の具体的数値に関する相違点Bに係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜変更可能な範囲内のことと認める。
そして、上述したように、クラブを先調子あるいは手元調子にする程度は、ストレート部の長さ及び直径のみで決まるものでなく、クラブの製造材料、シャフトの各部分の肉厚等如何によっても決まるものであり、しかも、クラブ使用者の体力及び要請等に応じて適宜決定可能な事項であることを考えれば、本願発明のストレート部の長さに関する相違点Aの具体的数値範囲及びストレート部の直径に関する相違点Bに係る具体的数値(範囲)を同時に選択することも当業者が適宜採用する範囲内のこと認められる。
以上のとおり、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-09 
結審通知日 2008-05-13 
審決日 2008-05-26 
出願番号 特願平8-60108
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 菅藤 政明
酒井 進
発明の名称 アイアンゴルフクラブセット  
代理人 増田 竹夫  

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