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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B22F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1180742
審判番号 不服2006-12546  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-16 
確定日 2008-07-11 
事件の表示 特願2001-213462「タングステン棒材及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年1月29日出願公開、特開2003-27111〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年7月13日の出願であって、平成18年5月9日付けで拒絶査定され、これに対して、同年6月16に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年7月18日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成18年7月18日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月18日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1.手続補正の内容
本件手続補正は、特許請求の範囲を、次の(1-1)から(1-2)のとおりに補正するものである。

(1-1)
「【請求項1】 Mo,Wの内の少なくとも一方であるか又は少なくとも一方を含む合金からなり、非円形の断面形状に塑性加工を施されることによって、円形加工されたものよりも、中心部の密度が理論密度の98.7%以上でより高く、結晶粒径が150μm以下でより小さく形成されていることを特徴とする高融点金属材料。
【請求項2】 請求項1記載の高融点金属材料において、前記非円形は、多角形、楕円、またはこれらの両方を含む断面形状であることを特徴とする高融点金属材料。
【請求項3】 請求項1記載の高融点金属材料において、長尺状の棒材であることを特徴とする高融点金属材料。
【請求項4】 請求項3記載の高融点金属材料からなり、放電灯に用いられることを特徴とする高融点金属電極。
【請求項5】 Mo,Wのうちの少なくとも一方であるか又は少なくとも一方を含む合金からなるインゴットを、断面が非円形状となるように、700℃?1700℃の温度範囲内で塑性加工し、長尺状の棒材であって、中心部の密度が理論密度の98.7%以上で、結晶粒径が150μm以下に形成した高融点金属材料を得ることを特徴とする高融点金属材料の製造方法。
【請求項6】 請求項5記載の高融点金属材料の製造方法において、前記非円形状の断面は、多角形、楕円、またはこれらの両方を含む断面形状であることを特徴とする高融点金属材料の製造方法。
【請求項7】 請求項6記載の高融点金属材料の製造方法において、前記高融点金属材料は、長尺状の棒材であることを特徴とする高融点金属材料の製造方法。」

(1-2)
「【請求項1】 2000℃×1hrの再結晶熱処理後の中心部の結晶粒径が150μm以下を呈するタングステン棒材であって、前記タングステン棒材は、直径が18?30mmで、中心部の密度が19.05g/cm^(3)以上を備えていることを特徴とするタングステン棒材。
【請求項2】 請求項1記載のタングステン棒材において、前記非円形は、多角形、楕円、またはこれらの両方を含む断面形状であり、前記塑性加工は、全断面減少率が64%以上の溝ロールを用いた圧延加工を3パスのみ施したものであることを特徴とするタングステン棒材。
【請求項3】 請求項1記載のタングステン棒材を用いてなることを特徴とする放電灯陽極用タングステン電極。
【請求項4】 請求項1又は2に記載のタングステン棒材の製造方法であって、2000℃で焼結したタングステンインゴットを、断面が非円形状となるように、700℃?1700℃の温度範囲内で塑性加工3回のみで断面減少率64%以上施して前記直径と前記密度を得ることを特徴とするタングステン棒材の製造方法。
【請求項5】 請求項4記載のタングステン棒材の製造方法において、前記塑性加工は、非円形状の断面は、多角形、楕円、またはこれらの両方を含む断面形状の溝ロールを用いた圧延加工であることを特徴とするタングステン棒材の製造方法。
【請求項6】 請求項5記載のタングステン棒材の製造方法において、前記タングステンインゴットは、タングステン粉末を少なくとも200MPa以上で加圧して2000℃の焼結温度で焼結されたものを用いることを特徴とするタングステン棒材の製造方法。」

2.補正の適否の判断
本件手続補正後の特許請求の範囲の記載は、上記(1-2)のとおりであるところ、補正前の請求項2、4に、溝ロールを用いた圧延加工における全断面減少率に係る「64%以上」なる事項を追加している。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書又は図面に、請求人が主張するように、実施例の欄に「64%」の場合について記載されているとしても、「64%以上」とすることについては記載されていないし、また、「64%以上」とすることが、同明細書又は図面に記載した事項から自明の事項とも認められないから、この補正は、同明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
また、補正前の各請求項に「2000℃×1hrの再結晶熱処理後の」(請求項1)、「直径が18?30mm」(請求項1)、「前記塑性加工は、全断面減少率が64%以上の溝ロールを用いた圧延加工を3パスのみ施したものである」(請求項2)、「2000℃で焼結した」(請求項4)、「塑性加工3回のみで断面減少率64%以上施して」(請求項4)、「前記タングステンインゴットは、タングステン粉末を少なくとも200MPa以上で加圧して2000℃の焼結温度で焼結されたものを用いる」(請求項6)なる事項を追加しているが、これらの補正は、請求項に記載した発明特定事項を限定するものではないから、同法第17条の2第4項第2号でいう限定的減縮を目的とするものとは認められない。
そして、同項の他の各号のいずれにも該当しないことは明らかである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるし、さらに、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第4項の規定に違反するものでもあるから、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである

第3 本願についての審決
1.本願発明
平成18年7月18付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成16年12月20日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの請求項5に係る発明(以下、「本願発明5」という。)は、次のとおりのものである。

「Mo,Wのうちの少なくとも一方であるか又は少なくとも一方を含む合金からなるインゴットを、断面が非円形状となるように、700℃?1700℃の温度範囲内で塑性加工し、長尺状の棒材であって、中心部の密度が理論密度の98.7%以上で、結晶粒径が150μm以下に形成した高融点金属材料を得ることを特徴とする高融点金属材料の製造方法。」

2.原査定の理由の概要
原審の拒絶査定の理由の概要は、本願の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記刊行物1,2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、下記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


刊行物1;特開平4-45234号公報
刊行物2;特開平3-47606号公報

3.引用例及びその主な記載事項
原審の拒絶査定の理由で引用された刊行物1(以下、「引用例1」という。)には次の事項が記載されている。

引用例1;特開平4-45234号公報
(a)「一方、近年、各種金属又はガラス等の溶解用電極又は照射用電極として、直径20mm以上の直径を有する所謂太物のタングステン棒材の需要が増加しつつある。
[発明が解決しようとする課題]
しかし、上述の従来のスエージング機による10%前後の断面加工率で、太物タングステン棒材を加工した場合、表面と中心部との間に組織差および密度差が生じることを防ぐことができず、これらの組織差及び密度差が不所望な組織斑及び密度斑の一固となっていた。言い換えれば、加工初期に生ずる表面部と中心部の組織斑、密度斑は加工度を得やすい細物(直径10mm以下)の製品においては、無視できる程度であるが、タングステン棒材が太くなればなるほど、組織斑、密度斑が生じる傾向は顕著となる。このような組織斑、密度斑が生じる傾向は顕著となる。このような組織斑及び密度斑は物理特性の低下を招き、製品寿命を短くする等の原因になっていた。」(第2頁左上欄第4行?同右上欄第1行)

(b)「即ち、本発明は、タングステン焼結体を伸延ロールに楕円、角、楕円の穴を付け、そこを加熱したタングステン焼結棒を順次通過させ最後に円のロール孔型の孔に通過させ仕上げる。これにより、伸延ロールを一回通過させたときの面積加工率を20%?40%にすることで、表面部と中心部の均質組織にすることを特徴とするものである。
ここで、本発明において、一回通過させたときの面積加工率を20?40%と限定したのは、面積加工率が20%より小さな場合において、前述したように、従来と同様にその効果がなく、一方、40%より大なる場合は、歪みが生じてしまい、後加工において、種々の不都合が生じるからである。」(第2頁左下欄第16行?同右下欄第9行)

(c)「第3図に示す焼結体は次のようにして製造された。2μ?3μのタングステン粉末を使用し、静水圧ラバープレスにより圧粉体を作り、これを水素中で1800℃以上の温度、30時間、間接加熱によって、30mm径で17.5の比重を有する焼結体を作った。
次に、この焼結体を加熱温度1400℃?1500℃に加熱した後、第1図(A)乃至(D)の伸延ロールに順次通過させた。このとき、各伸延ロールを通過させる際、1回加熱する度毎に0.8m/s以上の加工スピードで加工し、直径20mmの加工材を得た。
このようにして得られた加工材は、19.2以上の比重を有していた。」(第3頁右下欄第1行?同第14行)

4.本願発明についての当審の判断
(1)引用発明
引用例1の(c)には、「第3図に示す焼結体は次のようにして製造された。2μ?3μのタングステン粉末を使用し、静水圧ラバープレスにより圧粉体を作り、これを水素中で1800℃以上の温度、30時間、間接加熱によって、30mm径で17.5の比重を有する焼結体を作った。
次に、この焼結体を加熱温度1400℃?1500℃に加熱した後、第1図(A)乃至(D)の伸延ロールに順次通過させた。このとき、各伸延ロールを通過させる際、1回加熱する度毎に0.8m/s以上の加工スピードで加工し、直径20mmの加工材を得た。
このようにして得られた加工材は、19.2以上の比重を有していた。」ことが記載されている。
ここで、上記加工材は、第3図の記載からみて、長尺状の棒材であり、この棒材は、タングステン材料からなるものであるから、上記(c)には、タングステンからなる長尺状の棒材であって、比重19.2以上に形成したタングステン材料の製造方法が記載されているといえる。
また、第1図(A)乃至(D)の伸延ロールは、第1図から明らかなとおり、それぞれ、楕円、角、楕円の孔を付けた伸延ロールであるし、一方、比重を、密度(単位;g/cm^(3))と言い換えることができることは明らかであるから、上記記載を、本願発明5の記載ぶりに従って整理すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「タングステン粉末から圧粉体を作り、これを焼結した焼結体を、1400℃?1500℃に加熱した後、楕円、角、楕円の孔を付けた伸延ロールに順次通過させて加工し、長尺状の棒材であって、密度19.2g/cm^(3)以上に形成したタングステン材料を得る、タングステン材料の製造方法」

(2)本願発明5と引用発明との対比
本願発明5と引用発明とを対比する。
本願明細書の記載「【0029】まず、200MPaにおいて、タングステン粉末から10Kgの円筒形圧粉体を製造した後、2000℃,30hr焼結を行ってインゴットを制作した。」からみて、本願発明5のインゴットは、タングステン粉末から圧粉体をつくり、これを焼結した焼結体を包含するものであるから、引用発明の「焼結体」は、本願発明5の「インゴット」に相当するといえる。
また、引用発明は、焼結体を、楕円、角、楕円の孔を付けた伸延ロールに順次通過させて加工しているのであるから、焼結体を断面が非円形状となるように、塑性加工しているといえるし、一方、引用発明の「タングステン」は、本願発明5の「W」と同義であって、上位概念で表現すれば、高融点金属であるから、本願発明5の高融点金属に相当する。
そして、引用発明の「密度19.2g/cm^(3)以上」は、タングステンの理論密度が、19.3g/cm^(3)であるから(例えば、「金属術語辞典」アグネ社、1972年4月5日改訂板第8刷発行、付録3;各種金属の諸性質、340頁等参照)、理論密度に対する割合に換算すると、密度が理論密度の99.5%以上であるといえる。
してみると、両者は、「Wからなるインゴットを、断面が非円形状となるように、塑性加工し、長尺状の棒材であって、密度が理論密度の99.5%以上に形成した高融点金属材料を得る、高融点金属材料の製造方法」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点;
(イ)本願発明5は、インゴット(焼結体)を、700℃?1700℃の温度範囲で塑性加工するのに対して、引用発明は、インゴットを、1400℃?1500℃に加熱した後、塑性加工するものであるが、700℃?1700℃の温度範囲で塑性加工するか否か不明である点
(ロ)本願発明5では、中心部の密度を限定するのに対して、引用発明では、密度を限定するものの、この密度が中心部の密度であるか否か不明である点
(ハ)本願発明5は、中心部の結晶粒径が150μm以下に形成したものであるのに対して、引用発明では、中心部の結晶粒径が不明である点

(3)相違点についての判断
以下、上記相違点について検討する。
相違点(イ)について
引用発明は、タングステン粉末から圧粉体を作り、これを焼結した焼結体を、1400℃?1500℃に加熱した後、圧延するものである。一方、本願発明5の具体的な実施例を記載した、本願明細書の次の記載「【0029】まず、200MPaにおいて、タングステン粉末から10kgの円筒形圧粉体を製造した後、2000℃,30hr焼結を行ってインゴットを制作した。次に、図2(a)に示すように、インゴットを1400℃に加熱した後、圧延加工を行った。」によれば、本願発明5は、1400℃に加熱した後、圧延を行う場合を包含するものといえる。
すると、両者はともに、タングステンの焼結体を、1400℃に加熱した後、圧延をするものであって、その加熱温度が同じであるから、次いで行われる圧延の温度範囲も同じであると解するのが合理的といえる。
してみると、両者はともに、700℃?1400℃の温度範囲内で塑性加工するものといえるから、相違点(イ)は実質的な相違ではない。
また、仮に、引用発明は、700℃?1400℃の温度範囲で塑性加工するものとはいえないとしても、以下の理由により、相違点(イ)は当業者が容易になし得たことである。
すなわち、タングステン焼結体を加工する場合の加工温度を、700℃?1600℃程度の温度範囲とすることは、本願出願前に、周知の技術事項であったから(例えば、特開昭63-303042号公報の実施例の記載を参照されたい。)、引用発明において、塑性加工の温度範囲として、上記周知の温度範囲を用いることは、当業者が容易に想到することができたことといえる。

相違点(ロ)について
引用例1には、従来のスエージング機による10%前後の断面加工率で、太物タングステン棒材を加工した場合、表面と中心部との間に組織差及び密度差が生じることを防ぐことができないので〔(a)参照〕、タングステン焼結体を伸延ロールに楕円、角、楕円の穴を付け、そこを加熱したタングステン焼結棒を順次通過させ最後に円のロール孔型の孔に通過させ仕上げることにより、伸延ロールを一回通過させたときの面積加工率を20%?40%にすることで、組織差及び密度差のない均質な組織にすること〔(b)参照)〕が記載されている。
そして、この記載によれば、引用発明は、太物タングステン棒材、長尺状の棒材の表面と中心部の間の密度に差がなく均質な密度を有する高融点金属材料を得るものといえる。
してみると、引用発明により得られる高融点金属材料の密度は、表面と中心部で差がなく均質なものであるから、引用発明において、密度を限定することは、中心部の密度を限定することを意味しているといえる。
したがって、相違点(ロ)は実質的な相違ではない。
また、仮に、引用発明における密度が、中心部の密度ではないとしても、引用発明は、表面と中心部との間に密度差が生じるのを防止することを目的とするものである以上、引用発明において、表面と中心部の密度差が生じることを確実に防止するために、表面との間に密度差が生じやすい中心部の密度に注目して、その下限値を限定する程度ことは、当業者が容易に想到することといえる。

相違点(ハ)について
引用例1の(c)及び第1図には、引用発明の具体的な製造工程が記載されており、これらの記載によれば、引用発明は、タングステン粉末を使用して作成した30mm径の焼結体を、加熱温度1400℃?1500℃に加熱した後、伸延ロールに順次通過させ、このとき、各伸延ロールを通過させる際、第1パスで29%、第2パスで24%等の加工度で順次加工することにより、19.2以上の比重、言い換えると、理論密度の99.5%以上の密度を有する直径20mmのタングステン材料を得ることができることが認められる。そして、その製造工程の条件は、加工前の加熱温度、各パスの加工度、総加工度、及び、得られたタングステン材料の密度のいずれにおいても、本願発明5の実施例の製造工程の条件と格別の相違がないことから(本願明細書の【0029】?【0035】参照)、両者の塑性加工の加工度には差がないというべきである。
一方、再結晶における一般則として、再結晶後の結晶粒度は、加工度に大きく依存し、加工度が大きいほど、結晶粒は細かくなることは、当業者の技術常識であるから(「改訂3版 鉄鋼便覧」昭和46年6月25日発行、第908頁、6.5.4再結晶現象の項を参照)、このような技術常識を踏まえて、相違点は(ハ)について検討すると、上述のとおり、両者の加工度に差はないのであるから、再結晶後の結晶粒度も同じものが得られるものといえる。
してみると、引用発明の製造方法に従って得られたタングステン材料も、2000℃×1hr加熱し、再結晶させたとき、結晶粒径は150μm以下に形成されるものといえるから、両者は、相違点(ハ)において実質的な相違はないというべきである。
また、仮に、引用発明では、中心部の結晶粒径が150μm以下ではないとしても、放電灯などの電極に使用されるタングステン電極においては、寿命の延長のために、再結晶による結晶粒の粗大化を防止する必要があることは、本願出願前に周知の技術事項であり(例えば、特開平11-96964号公報参照)、一方、上述のとおり、再結晶後の結晶粒度は、加工度が大きいほど細かくなることは技術常識であるから、引用発明において、電極の長寿命化を図るために、塑性加工の加工度を大きくすることにより、再結晶による結晶粒の粗大化を防止することは当業者が容易に想到することができたことであり、また、その際に、結晶粒度の範囲を検討して150μm以下に限定することも、この値に格別の臨界的意義があるとはいえないから、所望の寿命が得られるように、当業者が適宜に限定することができたことといえる。

(4)小括
以上のとおり、本願発明5は、引用発明と同一であるか、又は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.むすび
したがって、本願発明5は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-13 
結審通知日 2008-05-14 
審決日 2008-05-27 
出願番号 特願2001-213462(P2001-213462)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B22F)
P 1 8・ 561- Z (B22F)
P 1 8・ 572- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 猛  
特許庁審判長 長者 義久
特許庁審判官 山本 一正
守安 太郎
発明の名称 タングステン棒材及びその製造方法  
代理人 福田 修一  
代理人 池田 憲保  

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