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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) E01C
管理番号 1180847
判定請求番号 判定2008-600012  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-08-29 
種別 判定 
判定請求日 2008-02-21 
確定日 2008-07-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第2623491号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びイ号説明書に示す「切削オーバーレイ工法」は、特許第2623491号発明の技術的範囲に属さない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求人である株式会社ハネックス・ロードは、判定請求書のイ号図面及びイ号説明書に示す「切削オーバーレイ工法」(以下「イ号工法」という)が、特許第2623491号の発明の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件特許第2623491号の発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分説すると次のとおりである。
A マンホール枠を含む舗装の切削オーバーレイ工法において、
B(a)マンホール枠周囲の舗装が筒状に切断されると共に切断舗装版及びマンホール枠が撤去される工程、
C(b)マンホール基壁上に支持蓋が仮設されると共に支持蓋の周囲の空胴部に舗装材が打設される工程、
D(c)舗装表面がマンホール基壁上の舗装材表面も含めて切削されると共に切削面にオーバーレイが施工される工程、
E(d)マンホール枠の設置予定域周囲の舗装がオーバーレイ上から筒状に切断されると共に切断舗装版及び支持蓋が撤去される工程、
F(e)マンホール基壁上にマンホール枠の据え付け基礎が構築されると共に据え付け基礎上にマンホール枠がその上面をオーバーレイ表面の高さに合わせて設置される工程、及び
G(f)マンホール枠周囲の空洞部に舗装材がオーバーレイ表面の高さまで打設される工程からなる
H 切削オーバーレイ工法。

第3 イ号工法
請求人は、本件判定を求める「イ号工法」は、イ号図面及びイ号説明書(別添参照)に記載の通りの舗装工法であり、次の技術的構成(A)?(H)からなるものであると主張している(なお、丸数字は(マル1)等と表す。)。
(A)マンホール枠(1a)を含む道路舗装の切削オーバーレイ工法であり、
(B-1)カッター(13)により、マンホール枠の周囲で舗装(2)の表面から円環状の切削溝(14)を切削する工程(図1)、
(B-2)第1のマンホールリムーバ(5a)により、前記切削溝(14)で囲まれた舗装版(4)とマンホール枠(1a)を引き上げ撤去する工程(図3)、
(B-3)前記第1のマンホールリムーバ(5a)は、建機のブームに取付けられており、前記切削溝(14)の外周に合わせて舗装(2)の表面に接地されるリング状の押さえ枠(15a)と、マンホール枠(la)の内部に挿入された状態で求心遠心方向に移動する係合爪(16)と該係合爪(16)をリフト用ロッド(17a)を介して昇降させる油圧シリンダ(18a)を備えており、(マル1)マンホール基壁(3)の上の調整ブロック(11a)とマンホール枠(la)と舗装版(4)を一挙に引き上げ撤去する場合と、(マル2)マンホール枠(1a)と舗装版(4)を引き上げ撤去した後に調整ブロック(11a)を引き上げ撤去する場合との2方法がある。
前記(マル1)の場合、係合爪(16)を遠心方向に移動させてマンホール基壁(3)と調整ブロック(11a)との間に挿入し(図2)、その状態で油圧シリンダ(18a)によりリフト用ロッド(17a)を介して係合爪(16)を上昇させ、その反力で押さえ枠(15a)を舗装(2)の表面に押し付け、切削溝(14)から舗装版(4)を剪断し、調整ブロック(11a)とマンホール枠(la)と舗装版(4)を一挙に引き上げ撤去する(図3)。
前記(マル2)の場合、係合爪(16)を遠心方向に移動させて調整ブロック(11a)とマンホール枠(1a)の間に挿入した状態で、油圧シリンダ(18a)によりリフト用ロッド(17a)を介して係合爪(16)を上昇させ、その反力で押さえ枠(15a)を舗装(2)の表面に押し付け、切削溝(14)から舗装版(4)を剪断し、マンホール枠(1a)と舗装版(4)を一挙に引き上げ撤去した後、再び下降させた係合爪(16)を遠心方向に移動させてマンホール基壁(3)と調整ブロック(11a)との間に挿入した状態で、油圧シリンダ(18a)によりリフト用ロッド(17a)を介して係合爪(16)を上昇させ、調整ブロック(1la)を引き上げ撤去する。
(B-4)前記円環状の切削溝(14)は、前記マンホールリムーバ(5a)でマンホール枠(1a)を引き上げたとき該切削溝(14)から舗装版(4)を剪断できる深さと形状を有するように形成されている。換言すれば、このような切削溝(14)を有しない状態でマンホール枠(1a)を引き上げるときは、リフト用ロッド(17a)の上昇可能な上死点までマンホール枠(1a)を引き上げたとき舗装版(4)が隆起するように持ち上げられ(図11)、更に、建機のブームによりマンホールリムーバ(5a)の全体を引き上げることによりマンホール枠(1a)を引き上げたとき、舗装版(4)が隆起状態で路面に残存し、マンホール枠(1a)だけが上方に引き抜かれ(図12)、舗装版(4)が剪断されないのに対し、前記(B-1)で形成した切削溝(14)により、前記(B-3)における舗装版(4)の剪断と撤去を可能にする。
(C-1)前記引き上げ撤去により形成された空洞部(S1)の底部に位置するマンホール基壁(3)の上に、中心部に連結手段(19a)を有する仮蓋(6)を仮設することにより、マンホール基壁(3)の開口を塞ぐ工程(図4)、
(C-2)仮蓋(6)の周囲の空胴部(S1)に仮復旧材(7)を打設することにより道路を仮復旧する工程(図5)、
(D)舗装(2)の表面を前記仮復旧材(7)も含めて切削し、切削面(8)にオーバーレイ(9)を施工する工程(図6)、
(E-1)カッター(13)により、仮蓋(6)の周囲でオーバーレイ(9)の表面から円環状の切削溝(20)を切削形成する工程(図7)、
(E-2)オーバーレイ(9)の表面から仮蓋(6)の中心部に至る穴(21)を穿孔し、連結手段(19a)を露出させる工程(図7)、
(E-3)第2のマンホールリムーバ(5b)により、前記切削溝(20)で囲まれた舗装版(10)と仮蓋(6)を引き上げ撤去する工程(図8)、
(E-4)前記第2のマンホールリムーバ(5b)は、建機のブームに取付けられており、前記切削溝(20)の外周に合わせてオーバーレイ(9)の表面に接地されるリング状の押さえ枠(15b)と、穴(21)に挿入された状態で仮蓋(6)の連結手段(19a)に連結される連結手段(19b)と、該連結手段(19b)をリフト用ロッド(17b)を介して昇降させる油圧シリンダ(18b)を備えており、前記連結手段(19a)(19b)を連結した状態で、油圧シリンダ(18b)によりリフト用ロッド(17b)を介して仮蓋(6)を引き上げ、その反力で押さえ枠(15b)をオーバーレイ(9)の表面に押し付け、切削溝(20)から舗装版(10)を剪断し、仮蓋(6)と舗装版(10)を一挙に引き上げ撤去する(図8)。
(E-5)前記円環状の切削溝(20)は、前記マンホールリムーバ(5b)で仮蓋(6)を引き上げたとき該切削溝(20)から舗装版(10)を剪断できる深さと形状を有するように形成されている。換言すれば、このような切削溝(20)を有しない状態で仮蓋(6)を引き上げるときは、リフト用ロッド(17b)の上昇可能な上死点まで仮蓋(6)を引き上げたとき舗装版(10)が隆起するように持ち上げられ(図13)、更に、建機のブームによりマンホールリムーバ(5b)の全体を引き上げることにより仮蓋(6)を引き上げたとき、舗装版(l0)が周囲の舗装(2)(9)と共に持ち上げられ(図14)、舗装版(10)が剪断されないのに対して、前記(E-1)で形成した切削溝(20)により、前記(E-4)における舗装版(10)の剪断と撤去を可能にする。
(F-1)前記引き上げ撤去により形成された空洞部(S2)の底部に位置するマンホール基壁(3)の上に、調整ブロック(1lb)を設置する工程(図9)、
(F-2)調整ブロック(11b)の上にマンホール枠(1a)の上面がオーバーレイ(9)の表面に合わせられるように設置し、マンホール枠(1a)を固定ボルト(図示省略)で固定する工程(図9)、
(G)マンホール枠(1a)の周囲の空洞部(S2)にモルタル(12a)を打設し該モルタル(12a)の上方に復旧材(12b)をオーバーレイ(9)の表面の高さまで舗装施工する工程から成る
(H)切削オーバーレイ工法。

請求人は、構成(B-4)、(E-5)の根拠として、甲第3号証-1、イ号図面の図11ないし14を示し、切削溝を有しない状態でマンホール枠(1a)又は仮蓋(6)を引き上げるときは、上死点までマンホール枠(1a)又は仮蓋(6)を引き上げただけでは舗装版が隆起するだけであり、建機のブームによりマンホールリムーバ全体を持ち上げると、リング状押さえ枠も浮き上がるので、舗装版(4)(10)が剪断されることはないのに対して、円環状の切削溝(14)(20)を設けることにより舗装版(4)(10)の剪断と撤去が可能になったと主張する。
しかし、請求人が提出した甲第3号証-1には、「3 マンホールリムーバの上下シリンダを稼動することにより、マンホールフレームの撤去をします。」との説明とともにマンホールフレームを撤去した写真が示され、該写真には、マンホール枠とマンホールリムーバの押さえ枠との間の舗装版に、径方向の亀裂及び押さえ枠の内周に沿った剪断線が現れることが示されており、続いて「4 マンホールリムーバにより、マンホールフレーム・調整コンクリートの撤去が簡単に完了します。」との説明があることから、切削溝を有しない状態でマンホール枠を引き上げたときでも、舗装版は剪断され撤去が可能であると認められる。
また、請求人が、イ号工法であるとする甲第3号証-2の「MR^(2)AB工法」に記載された特許第3378551号公報には、舗装面に仮蓋の外周を囲むようにリング状の押さえ枠を押し当て、リフト用ロッドを引き上げると、仮蓋の上部舗装は、仮蓋の引き上げにより舗装面を下向きに押さえる押さえ枠の内側に沿って剪断されることが記載されている(段落【0013】)。
そうすると、切削溝を有しない状態でマンホールリムーバを用いてマンホール枠(1a)又は仮蓋(6)を引き上げた場合でも、舗装版は剪断され撤去されると認められ、切削溝(14)(20)が、舗装版を剪断できるような、特定の深さと形状を有するように形成されているとすることはできないし、切削溝(14)(20)により、舗装版(6)の剪断と撤去を可能にしたともいえない。
また、イ号図面の図11ないし14は「イ号工法」に含まれない工法である。
したがって、上記構成(B-4)、(E-5)は、イ号を特定する構成と認めることはできないから、イ号工法を次のとおり特定する。

【イ号工法】
(a)マンホール枠(1a)を含む道路舗装の切削オーバーレイ工法であり、
(b-1)カッター(13)により、マンホール枠の周囲で舗装(2)の表面から円環状の切削溝(14)を切削する工程(図1)、
(b-2)第1のマンホールリムーバ(5a)により、前記切削溝(14)で囲まれた舗装版(4)とマンホール枠(1a)を引き上げ撤去する工程(図3)、
(b-3)前記第1のマンホールリムーバ(5a)は、建機のブームに取付けられており、前記切削溝(14)の外周に合わせて舗装(2)の表面に接地されるリング状の押さえ枠(15a)と、マンホール枠(la)の内部に挿入された状態で求心遠心方向に移動する係合爪(16)と該係合爪(16)をリフト用ロッド(17a)を介して昇降させる油圧シリンダ(18a)を備えており、(マル1)マンホール基壁(3)の上の調整ブロック(11a)とマンホール枠(la)と舗装版(4)を一挙に引き上げ撤去する場合と、(マル2)マンホール枠(1a)と舗装版(4)を引き上げ撤去した後に調整ブロック(11a)を引き上げ撤去する場合との2方法がある。
前記(マル1)の場合、係合爪(16)を遠心方向に移動させてマンホール基壁(3)と調整ブロック(11a)との間に挿入し(図2)、その状態で油圧シリンダ(18a)によりリフト用ロッド(17a)を介して係合爪(16)を上昇させ、その反力で押さえ枠(15a)を舗装(2)の表面に押し付け、切削溝(14)から舗装版(4)を剪断し、調整ブロック(11a)とマンホール枠(la)と舗装版(4)を一挙に引き上げ撤去する(図3)。
前記(マル2)の場合、係合爪(16)を遠心方向に移動させて調整ブロック(11a)とマンホール枠(1a)の間に挿入した状態で、油圧シリンダ(18a)によりリフト用ロッド(17a)を介して係合爪(16)を上昇させ、その反力で押さえ枠(15a)を舗装(2)の表面に押し付け、切削溝(14)から舗装版(4)を剪断し、マンホール枠(1a)と舗装版(4)を一挙に引き上げ撤去した後、再び下降させた係合爪(16)を遠心方向に移動させてマンホール基壁(3)と調整ブロック(11a)との間に挿入した状態で、油圧シリンダ(18a)によりリフト用ロッド(17a)を介して係合爪(16)を上昇させ、調整ブロック(1la)を引き上げ撤去する。
(c-1)前記引き上げ撤去により形成された空洞部(S1)の底部に位置するマンホール基壁(3)の上に、中心部に連結手段(19a)を有する仮蓋(6)を仮設することにより、マンホール基壁(3)の開口を塞ぐ工程(図4)、
(c-2)仮蓋(6)の周囲の空胴部(S1)に仮復旧材(7)を打設することにより道路を仮復旧する工程(図5)、
(d)舗装(2)の表面を前記仮復旧材(7)も含めて切削し、切削面(8)にオーバーレイ(9)を施工する工程(図6)、
(e-1)カッター(13)により、仮蓋(6)の周囲でオーバーレイ(9)の表面から円環状の切削溝(20)を切削形成する工程(図7)、
(e-2)オーバーレイ(9)の表面から仮蓋(6)の中心部に至る穴(21)を穿孔し、連結手段(19a)を露出させる工程(図7)、
(e-3)第2のマンホールリムーバ(5b)により、前記切削溝(20)で囲まれた舗装版(10)と仮蓋(6)を引き上げ撤去する工程(図8)、
(e-4)前記第2のマンホールリムーバ(5b)は、建機のブームに取付けられており、前記切削溝(20)の外周に合わせてオーバーレイ(9)の表面に接地されるリング状の押さえ枠(15b)と、穴(21)に挿入された状態で仮蓋(6)の連結手段(19a)に連結される連結手段(19b)と、該連結手段(19b)をリフト用ロッド(17b)を介して昇降させる油圧シリンダ(18b)を備えており、前記連結手段(19a)(19b)を連結した状態で、油圧シリンダ(18b)によりリフト用ロッド(17b)を介して仮蓋(6)を引き上げ、その反力で押さえ枠(15b)をオーバーレイ(9)の表面に押し付け、切削溝(20)から舗装版(10)を剪断し、仮蓋(6)と舗装版(10)を一挙に引き上げ撤去する(図8)。
(f-1)前記引き上げ撤去により形成された空洞部(S2)の底部に位置するマンホール基壁(3)の上に、調整ブロック(1lb)を設置する工程(図9)、
(f-2)調整ブロック(11b)の上にマンホール枠(1a)の上面がオーバーレイ(9)の表面に合わせられるように設置し、マンホール枠(1a)を固定ボルト(図示省略)で固定する工程(図9)、
(g)マンホール枠(1a)の周囲の空洞部(S2)にモルタル(12a)を打設し該モルタル(12a)の上方に復旧材(12b)をオーバーレイ(9)の表面の高さまで舗装施工する工程から成る
(h)切削オーバーレイ工法。

第4 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、判定請求書において、概略次の理由によりイ号工法は、本件特許発明の技術的範囲に属する旨主張している。
(1)イ号工法の構成(a)は、本件特許発明の構成要件Aを充足する。
(2)イ号工法の構成(b-1)の「マンホール枠の周囲で舗装(2)の表面から円環状の切削溝(14)を切削する」は、本件特許発明の構成要件Bのうち、「マンホール枠周囲の舗装が筒状に切断される」に該当し、構成(b-2)は、構成要件Bのうち「切断舗装版及びマンホール枠が撤去される」に該当するから、イ号工法の構成(b-1)及び(b-3)は、本件特許発明の構成要件Bを充足する。
すなわち、本件特許発明の構成要件Bの「切断」とは、実施例のようなマンホール基壁の上面に至る深さのものに限定されず表層の上面だけに切込みを入れる場合を含むこと、「撤去」とは筒状切断溝の内側で切断舗装版を破砕撤去する場合を含むことが明らかであり、「筒状に切断」の要件は、その深さや形状等を何ら限定されるものではないから、「筒状に切断」の要件を充足するかどうかは、切削オーバーレイ工法において、その「切断」がなければその後の「撤去」が可能でないかどうかに基づいて判断すべきである。そして、イ号工法は、「切断」を行わなければ「撤去」もできないものであり、換言すれば、「撤去」を可能とするために「切断」を行うものであるから、これが構成要件Bの「筒状に切断」の要件を充足する。
(3)イ号工法の「仮蓋(6)」は、本件特許発明の「支持蓋」に相当するから、構成(c-1)は、本件特許発明の構成要件Cのうち「マンホール基壁上に支持蓋が仮設される」に相当し、構成(c-2)は、本件特許発明の構成要件Cのうち「仮蓋(6)の周囲の空胴部(S1)に仮復旧材(7)を打設する」に該当するから、イ号工法の構成(c-1)及び(c-2)は、本件特許発明の構成要件Cを充足する。
(4)イ号工法の構成(d)は、本件特許発明の構成要件Dを充足する。
(5)イ号工法の構成(e-1)は、本件特許発明の構成要件Eのうち「マンホール枠の設置予定域周囲の舗装がオーバーレイ上から筒状に切断される」に該当し、構成(e-3)は、本件特許発明の構成要件Eのうち「切断舗装版及び支持蓋が撤去される」に該当するから、イ号工法の構成(e-1)及び(e-3)は、本件特許発明の構成要件Eを充足する。
すなわち、本件特許発明の構成要件Bの「切断」とは、実施例のようなマンホール基壁の上面に至る深さのものに限定されず表層の上面だけに切込みを入れる場合を含むこと、「撤去」とは筒状切断溝の内側で切断舗装版を破砕撤去する場合を含むことが明らかであり、「筒状に切断」の要件は、その深さや形状等を何ら限定されるものではないから、「筒状に切断」の要件を充足するかどうかは、切削オーバーレイ工法において、その「切断」がなければその後の「撤去」が可能でないかどうかに基づいて判断すべきである。そして、イ号工法は、「切断」を行わなければ「撤去」もできないものであり、換言すれば、「撤去」を可能とするために「切断」を行うものであるから、これが構成要件Bの「筒状に切断」の要件を充足する。
(6)イ号工法の構成(f-1)は、本件特許発明の構成要件Fのうち「マンホール基壁上にマンホール枠の据え付け基礎が構築される」に該当し、構成(f-2)は、本件特許発明の構成要件Fのうち「据え付け基礎上にマンホール枠がその上面をオーバーレイ表面の高さに合わせて設置される」に該当するから、イ号工法の構成(f-1)及び(f-2)は、本件特許発明の構成要件Fを充足する。
(7)イ号工法の構成(g)は、空洞部の部分をモルタル(12a)と復旧材(12b)の2層により「路面」となるように築造するものであり、その2層の全体により「舗装材」を構成しているから、構成(g)は、本件特許発明の構成要件Gを充足する。
(8)イ号工法の構成(h)は、本件特許発明の構成要件Hを充足する。
(9)したがって、イ号工法は本件特許発明の技術的範囲に属する。

2.被請求人の主張
被請求人は、判定請求答弁書において、イ号工法は、少なくとも本件特許発明の構成要件B及びEを充足していない旨主張し、その理由を次のように述べている。
(1)イ号図面中の図11ないし14及びイ号説明書におけるイ号工法を特定する技術的構成(B-4)、(E-5)は誤った認識に基づく不適切な特定であり、イ号工法にあって、切削溝(14)、(20)を有しない状態で、マンホール枠(1a)又は仮蓋(6)を引き上げた場合でも、舗装版は剪断されるのであって、切削溝(14)、(20)は舗装版(4)、(10)の剪断には何らの寄与もしていない。
(3)イ号工法にあっては、切削溝(14)は舗装版(4)の撤去に不可欠のものではなく、切削溝(14)がなくても剪断により舗装版(4)を「撤去」できるものであるから、イ号工法の構成(b-1)ないし(b-3)は、本件特許発明の構成要件Bを充足するものでない。
(4)イ号工法にあっては、切削溝(20)は舗装版(10)の撤去に不可欠のものではなく、切削溝(20)がなくても剪断により舗装版(10)を「撤去」できるものであるから、イ号工法の構成(e-1)ないし(e-5)は、本件特許発明の構成要件Eを充足するものでない。

第5 対比・判断
請求人がイ号工法であるとする被請求人等の「MR^(2)AB工法」(甲第3号証-2)が、実施あるいは実施の予定がされているか不明であるが、判定制度の趣旨に鑑み、イ号工法が実施された場合を仮定して、以下判断する。

本件特許発明とイ号工法とを対比する。
(1)イ号工法の構成(a)は、本件特許発明の構成要件Aを充足している。

(2)イ号工法の構成(b-1)ないし(b-4)と、本件特許発明の構成要件Bを対比する。
ア.本件特許発明の構成要件Bは、「マンホール枠周囲の舗装がオーバーレイ上から筒状に切断される工程」と「切断舗装版及びマンホール枠が撤去される工程」からなる。
本件特許明細書には、構成要件Bについて次のように記載されている。
「前記工程(a)において、マンホール枠周囲の舗装を四角形に切断する旧来の舗装工法、或は特公昭61-25844号公報や特公昭61-33938号公報に開示されるように、マンホール枠周囲の舗装を円形状に切断する改良された舗装工法等における前段の工程に従って、マンホール枠周囲の舗装の筒状切断及び切断舗装版及びマンホール枠の撤去が行われる。工程(b)において、切断舗装版及びマンホール枠の撤去により開口された空洞部が支持蓋を介して舗装材で埋め戻されると共に交通開放のために仮復旧され、支持蓋はマンホール基壁を閉塞すると共に前記仮復旧舗装材を支持する。」(段落【0005】)、
「マンホール枠周囲或はマンホール枠の設置予定域周囲の舗装の切断等に際して、切断手段に特別の制限はない。円筒状切断の場合に、例えば特公昭61-52283号公報に開示されるような円筒状ビットを備えた路面円形切断機を好適に利用でき、またオーバーレイ上から切断中心を特定するために金属探知機等の公知の探知手段を使用して内部の支持蓋の位置を確認してもよい。マンホール枠周囲の切断舗装版は、ブレーカーを使用する破砕により撤去されてもよいが、作業性の向上や騒音振動の防止等の観点から特公昭61-33938号公報に開示されるようにマンホール枠に付着したままで撤去されることが好ましい。切断舗装版及びマンホール枠を一体的に撤去するために、例えば実開昭59-156942号公報や実開昭59-193679号公報に開示されるように、マンホール枠とマンホール基壁との間にマンホール枠内部から放射状に拡縮するくさび体やアームを挿入するようにしたマンホール枠引き上げ機やマンホール枠剥離機等を必要に応じて利用できる。」(段落【0006】)。
これらの記載によれば、構成要件Bの技術的意義は、マンホール基壁を露出させ、その基壁上に支持蓋を設置できるようにすることであると認められる。
そうすると、構成要件Bの「筒状に切断」とは、その深さは限定されていないものの、切断部の内側の切断舗装版とマンホール枠を撤去することにより、マンホール基壁が露出される深さ、すなわちマンホール基壁2上面近傍まで切断されることと解される。

イ.一方、イ号工法の構成(b-1)では、舗装版の表面に円環状の切削溝(14)が設けられている。しかしながら、切削溝(14)の底部からマンホール基壁(3)に至る舗装版(4)は切断されておらず、切削溝の内側の舗装版を撤去しただけでは、マンホール基壁(3)を露出させることができないから、構成(b-1)の「円環状の切削溝(14)を切削形成する」は、構成要件Bの「筒状に切断」に相当しない。
また、構成(b-2)、(b-3)において、切削溝(14)の底部からマンホール基壁(3)に至る舗装版(4)の撤去は、マンホールリムーバ(5a)によるマンホール枠引き上げに伴って剪断され撤去されるものであり「切断舗装版の撤去」には相当しないから、構成(b-2)、(b-3)は、構成要件Bの「切断舗装版及びマンホール枠が撤去される」に相当しない。
なお、構成要件Bの「切断舗装版が撤去される」には、請求人が主張するように、切断溝の内側の舗装版を破砕撤去する場合も含まれるが、切断されていない舗装版を撤去することまでが含まれるものではない。
したがって、イ号工法の構成(b-1)ないし(b-3)は、本件特許発明の構成要件Bを充足していない。

ウ.なお、請求人は、構成要件Bの「筒状に切断」の要件を充足するかどうかは、その「切断」がなければその後の「撤去」が可能でないかどうかに基づいて判断すべきであり、イ号工法は、切削溝(14)により、舗装版(4)の剪断と撤去を可能にするものであるから、本件特許発明の構成要件Cを充足している旨主張している。
しかし、構成要件Bは「筒状に切断」された「切断舗装版」と「マンホール枠」を撤去するものであり、「切断」がなければ「切断舗装版の撤去」が可能でないことは当然であるが、切断されていない舗装版を撤去することまでも含むものではないから、イ号工法は、筒状に切断された切断舗装版が撤去されるものとはいえない。
また、イ号工法が、切削溝(14)により舗装版(4)の剪断と撤去を可能にするものといえないことは、上記第3で述べたとおりである。

(3)イ号工法の構成(c-1)の「仮蓋(6)」は、マンホール基壁上に仮置きされる蓋であるから、本件特許発明の「支持蓋」に相当し、イ号工法の構成(c-2)の「仮復旧材(7)」は、本件特許発明の「舗装材」に相当するから、構成(c-1)及び(c-2)は、本件特許発明の構成要件Cを充足している。

(4)イ号工法の構成(d)は、本件特許発明の構成要件Dを充足している。

(5)イ号工法の構成(e-1)ないし(e-4)と、本件特許発明の構成要件Eを対比する。
本件特許明細書には、構成要件Eについて、
「工程(d)において、マンホール枠の設置予定域周囲の舗装が前記工程(a)と同様の手段でオーバーレイ上から筒状に切断されると共に切断舗装版及び支持蓋が撤去される。最後に、工程(e)?(f)において、改良された前記マンホール枠周囲の舗装工法における後段の工程に従って、マンホール基壁上へのマンホール枠の据え付け基礎の構築、据え付け基礎上へのマンホール枠の設置及びマンホール枠周囲の空洞部への舗装材の打設が順次行われる。」(段落【0005】)
と記載されている。
この記載によれば、構成要件Eの技術的意義は、マンホール基壁上へマンホール据え付け基礎及びマンホール枠を設置するために、マンホール基壁を露出させることであると認められる。
そうすると、構成要件Eの「筒状に切断」とは、その深さは限定されていないものの、切断部の内側の切断舗装版と支持蓋を撤去することにより、マンホール基壁が露出される深さ、すなわちマンホール基壁上面あるいは、支持蓋上面の近傍まで切断されることと解される。
一方、イ号工法の構成(e-1)ないし(e-4)においては、構成(b-1)ないし(b-3)について述べたと同様に、円環状の切削溝(20)は、舗装表面に設けられるにすぎず、切削溝(20)の底部からマンホール基壁(3)に至る舗装版(10)は切断されておらず、切削溝(20)の内側の舗装版を撤去しただけでは、マンホール基壁(3)を露出させることができないから、構成(e-1)の「円環状の切削溝(20)を切削形成する」は、構成要件Eの「筒状に切断」に相当しない。
また、構成(e-3)、(e-4)において、切削溝(20)の底部からマンホール基壁に至る舗装版(10)の撤去は、マンホールリムーバ(5a)による仮蓋(6)の引き上げに伴って剪断され撤去されるものであり「切断舗装版が撤去される」には相当しないから、構成(e-3)、(e-4)は、構成要件Eの「切断舗装版及び支持蓋が撤去される」に相当しない。
したがって、イ号工法の構成(e-1)ないし(e-4)は、構成要件Eを充足していない。

(6)イ号工法の構成(f-1)及び(f-2)は、本件特許発明の構成要件Fを充足している。

(7)イ号工法の構成(g)における「モルタル(12a)」と「復旧材(12b)」は、本件特許発明の構成要件Gの「舗装材」に相当するから、構成(g)は構成要件Gを充足している。

(8)イ号工法の構成(h)は、本件特許発明の構成要件Hを充足している。

(9)したがって、イ号工法は、本件特許発明の構成要件B、Eを充足していないから、本件特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり、イ号工法は、本件特許発明の技術的範囲に属さない。
 
別掲
 
判定日 2008-06-26 
出願番号 特願平3-359362
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (E01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
砂川 充
登録日 1997-04-11 
登録番号 特許第2623491号(P2623491)
発明の名称 切削オーバーレイ工法  
代理人 大塚 明博  
代理人 中野 収二  
代理人 大塚 明博  
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