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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) E01C |
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管理番号 | 1180848 |
判定請求番号 | 判定2008-600013 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2008-02-21 |
確定日 | 2008-07-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2623492号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びイ号説明書に示す「舗装工法」は、特許第2623492号発明の技術的範囲に属さない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求人である株式会社ハネックス・ロードは、判定請求書のイ号図面及びイ号説明書に示す「舗装工法」(以下「イ号工法」という)が、特許第2623492号の発明の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。 第2 本件特許発明 本件特許第2623492号の発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分説すると次のとおりである。 A マンホール枠の設置を含む舗装工法において、 B(a)非舗装路面内のマンホール基壁上に支持蓋が仮設されると共に非舗装路面に支持蓋表面を含めて舗装が施工される工程、 C(b)マンホール枠の設置予定域周囲の舗装が筒状に切断されると共に切断舗装版及び支持蓋が撤去される工程、 D(c)マンホール基壁上にマンホール枠の据え付け基礎が構築されると共に据え付け基礎上にマンホール枠がその上面を舗装表面の高さに合わせて設置される工程、及び E(d)マンホール枠周囲の空洞部に舗装材が舗装表面の高さまで打設される工程からなる F 舗装工法。 第3 イ号工法 請求人は、本件判定を求める「イ号工法」は、イ号図面及びイ号説明書(別添参照)に記載の通りの舗装工法であり、次の技術的構成(A)?(F)からなるものであると主張している。 (A)マンホール枠の設置を含む舗装工法であり、 (B-1)非舗装道路の路盤(1)に設置されたマンホール基壁(2)の上に、中心部に連結手段(9a)を有する仮蓋(3)を仮設することにより、マンホール基壁(2)の開口を塞ぐ工程(図2)、 (B-2)前記路盤(1)に前記仮蓋(3)を含めて舗装(4)を施工する工程(図3)、 (C-1)カッター(10)により、仮蓋(3)の周囲で舗装(4)の表面から円環状の切削溝(11)を切削形成する工程(図4)、 (C-2)舗装(4)の表面から仮蓋(3)の中心部に至る穴(12)を穿孔し、連結手段(9a)を露出させる工程(図4)、 (C-3)マンホールリムーバ(13)により、前記切削溝(11)で囲まれた舗装版(6)と仮蓋(3)を引き上げ撤去する工程(図5)、 (C-4)前記マンホールリムーバ(13)は、建機のブームに取付けられており、前記切削溝(11)の外周に合わせて舗装(4)の表面に接地されるリング状の押さえ枠(14)と、穴(12)に挿入された状態で仮蓋(3)の連結手段(9a)に連結される連結手段(9b)と、該連結手段(9b)をリフト用ロッド(15)を介して昇降させる油圧シリンダ(16)を備えており、前記連結手段(9a)(9b)を連結した状態で、油圧シリンダ(16)によりリフト用ロッド(15)を介して仮蓋(3)を引き上げ、その反力で押さえ枠(12)を舗装(4)の表面に押し付け、切削溝(11)から舗装版(6)を剪断し、仮蓋(3)と舗装版(6)を一挙に引き上げ撤去する(図5)。 (C-5)前記円環状の切削溝(11)は、前記マンホールリムーバ(13)で仮蓋(3)を引き上げたとき該切削溝(11)から舗装版(6)を剪断できる深さと形状を有するように形成されている。換言すれば、このような切削溝(11)を有しない状態で仮蓋(3)を引き上げるときは、リフト用ロッド(15)の上昇可能な上死点まで仮蓋(3)を引き上げたとき舗装版(6)が隆起するように持ち上げられ(図8)、更に、建機のブームによりマンホールリムーバ(13)の全体を引き上げることにより仮蓋(3)を引き上げたとき、舗装版(6)が周囲の舗装(4)と共に持ち上げられ(図9)、舗装版(6)が剪断されないのに対して、前記(C-1)で形成した切削溝(11)により、前記(C-4)における舗装版(6)の剪断と撤去を可能にする。 (D-1)前記引き上げ撤去により形成された空洞部(S)の底部に位置するマンホール基壁(2)の上に、調整ブロック(7)を設置する工程(図6)、 (D-2)調整ブロック(7)の上にマンホール枠(5)の上面が舗装(4)の表面の高さに合わせられるように設置し、マンホール枠(5)を固定ボルト(図示省略)で固定する工程(図6)、 (E)マンホール枠(5)の周囲の空洞部(S)にモルタル(8a)を打設し、該モルタル(8a)の上方に復旧材(8b)を舗装(4)の表面の高さまで舗装施工する工程から成る (F)舗装工法。 請求人は、構成(C-5)の根拠として、甲第3号証-1、イ号図面の図8、9を示し、切削溝(11)を有しない状態で仮蓋(3)を引き上げるときは、リフト用ロッド(15)の上昇可能な上死点まで仮蓋(3)を引き上げたとき舗装版(6)が隆起するように持ち上げられ、更に、建機のブームによりマンホールリムーバ(13)の全体を引き上げることにより仮蓋(3)を引き上げたとき、舗装版(6)が周囲の舗装(4)と共に持ち上げられ、舗装版(6)が剪断されないのに対して、円環状の切削溝(11)を設けることにより舗装版(6)の剪断と撤去が可能になったと主張する。 しかし、請求人が提出した甲第3号証-1には、「3 マンホールリムーバの上下シリンダを稼動することにより、マンホールフレームの撤去をします。」との説明とともにマンホールフレームを撤去した写真が示され、該写真には、マンホール枠とマンホールリムーバの押さえ枠との間の舗装版に、径方向の亀裂及び押さえ枠の周に沿った剪断線が現れることが示されており、続いて「4 マンホールリムーバにより、マンホールフレーム・調整コンクリートの撤去が簡単に完了します。」との説明があることから、切削溝を有しない状態でマンホール枠を引き上げたときでも、舗装版は剪断され撤去が可能であると認められる。 また、請求人が、イ号工法であるとする甲第3号証-2の「MR^(2)AB工法」に記載された特許第3378551号公報には、舗装面に仮蓋の外周を囲むようにリング状の押さえ枠を押し当て、リフト用ロッドを引き上げると、仮蓋の上部舗装は、仮蓋の引き上げにより舗装面を下向きに押さえる押さえ枠の内側に沿って剪断されることが記載されている(段落【0013】)。 そうすると、切削溝を有しない状態でマンホールリムーバを用いて仮蓋を引き上げた場合でも、舗装版は剪断され撤去されると認められ、切削溝(11)が、舗装版(6)を剪断できるような、特定の深さと形状を有するように形成されているとすることはできないし、切削溝(11)により、舗装版(6)の剪断と撤去を可能にしたともいえない。 また、イ号図面の図8、9は「イ号工法」に含まれない工法である。 したがって、上記構成(C-5)は、イ号を特定する構成と認めることはできないから、イ号工法を次のとおり特定する。 【イ号工法】 (a)マンホール枠の設置を含む舗装工法であり、 (b-1)非舗装道路の路盤(1)に設置されたマンホール基壁(2)の上に、中心部に連結手段(9a)を有する仮蓋(3)を仮設することにより、マンホール基壁(2)の開口を塞ぐ工程(図2)、 (b-2)前記路盤(1)に前記仮蓋(3)を含めて舗装(4)を施工する工程(図3)、 (c-1)カッター(10)により、仮蓋(3)の周囲で舗装(4)の表面から円環状の切削溝(11)を切削形成する工程(図4)、 (c-2)舗装(4)の表面から仮蓋(3)の中心部に至る穴(12)を穿孔し、連結手段(9a)を露出させる工程(図4)、 (c-3)マンホールリムーバ(13)により、前記切削溝(11)で囲まれた舗装版(6)と仮蓋(3)を引き上げ撤去する工程(図5)、 (c-4)前記マンホールリムーバ(13)は、建機のブームに取付けられており、前記切削溝(11)の外周に合わせて舗装(4)の表面に接地されるリング状の押さえ枠(14)と、穴(12)に挿入された状態で仮蓋(3)の連結手段(9a)に連結される連結手段(9b)と、該連結手段(9b)をリフト用ロッド(15)を介して昇降させる油圧シリンダ(16)を備えており、前記連結手段(9a)(9b)を連結した状態で、油圧シリンダ(16)によりリフト用ロッド(15)を介して仮蓋(3)を引き上げ、その反力で押さえ枠(12)を舗装(4)の表面に押し付け、切削溝(11)から舗装版(6)を剪断し、仮蓋(3)と舗装版(6)を一挙に引き上げ撤去する(図5)。 (d-1)前記引き上げ撤去により形成された空洞部(S)の底部に位置するマンホール基壁(2)の上に、調整ブロック(7)を設置する工程(図6)、 (d-2)調整ブロック(7)の上にマンホール枠(5)の上面が舗装(4)の表面の高さに合わせられるように設置し、マンホール枠(5)を固定ボルト(図示省略)で固定する工程(図6)、 (e)マンホール枠(5)の周囲の空洞部(S)にモルタル(8a)を打設し、該モルタル(8a)の上方に復旧材(8b)を舗装(4)の表面の高さまで舗装施工する工程から成る (f)舗装工法。 第4 当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は、判定請求書において、概略次の理由によりイ号工法は、本件特許発明の技術的範囲に属する旨主張している。 (1)イ号工法の構成(a)は、本件特許発明の構成要件Aを充足する。 (2)イ号工法の構成(b-1)の「非舗装道路の路盤(1)に設置されたマンホール基壁(2)の上に、…仮蓋(3)を仮設する…」は、本件特許発明の構成要件Bのうち「非舗装路面内のマンホール基壁上に支持蓋が仮設される」に相当し、構成(b-2)の「前記路盤(1)に前記仮蓋(3)を含めて舗装(4)を施工する」は、構成要件Bのうち「非舗装路面に支持蓋表面を含めて舗装が施工される」に該当するから、イ号工法の構成(b-1)及び(b-2)は、本件特許発明の構成要件Bを充足する。 (3)イ号工法は、構成(c-1)において、舗装(4)の表面から円環状の切削溝(11)を切削形成する。この際、切削溝(11)が切削形成される舗装(4)の部位は、「マンホール枠の設置予定域周囲の舗装」であるから、構成(c-1)は、本件特許発明の構成要件Cのうち「マンホール枠の設置予定域周囲の舗装が筒状に切断される」に該当し、構成(c-3)における「切削溝(11)で囲まれた舗装版(6)と仮蓋(3)を引き上げ撤去する」は、構成要件Cのうち「切断舗装版及び支持蓋が撤去される」に該当するから、イ号工法の構成(c-1)及び(c-3)は、本件特許発明の構成要件Cを充足する。 すなわち、本件特許発明の構成要件Cの「切断」とは、実施例のようなマンホール基壁の上面に至る深さのものに限定されず表層の上面だけに切込みを入れる場合を含むこと、「撤去」とは筒状切断溝の内側で切断舗装版を破砕撤去する場合を含むことが明らかであり、「筒状に切断」の要件は、その深さや形状等を何ら限定されるものではないから、「筒状に切断」の要件を充足するかどうかは、その「切断」がなければその後の「撤去」が可能でないかどうかに基づいて判断すべきである。そして、イ号工法は、切削溝(11)により、舗装版(6)の剪断と撤去を可能にするものであり、「撤去」を可能とするために「切断」を行うものであるから、構成要件Cの「筒状に切断」の要件を充足する。 (4)イ号工法の構成(d-1)は、本件特許発明の構成要件Dのうち「マンホール基壁上にマンホール枠の据え付け基礎が構築される」に該当し、構成(d-2)は、構成要件Dのうち「据え付け基礎上にマンホール枠がその上面を舗装表面の高さに合わせて設置される」に該当するから、イ号工法の構成(d-1)及び(d-2)は、本件特許発明の構成要件Dを充足する。 (5)イ号工法の構成(e)は、空洞部の部分をモルタル(8a)と復旧材(8b)の2層により「路面」となるように築造するものであり、その2層の全体により「舗装材」を構成しているから、構成(e)は構成要件Eを充足する。 (6)イ号工法の構成(f)は、本件特許発明の構成要件Fを充足する。 (7)したがって、イ号工法は本件特許発明の技術的範囲に属する。 2.被請求人の主張 被請求人は、判定請求答弁書において、イ号工法は、少なくとも本件特許発明の構成要件Cを充足していない旨主張し、その理由を次のように述べている。 (1)イ号図面中の図8,図9及びイ号説明書におけるイ号工法を特定する技術的構成(c-5)は不適切な特定であり、イ号工法にあって、仮蓋(3)の周囲で舗装(4)の表面から切削溝(11)を切削するのは、舗装版(6)を剪断して撤去した後の舗装版(6)の残存部分の筒状上端部内面を滑面にすることを目的として行われるのであって、切削溝(11)は舗装版(6)の剪断には何らの寄与もしていない。 (3)イ号工法にあっては、切削溝(11)は舗装版(6)の撤去に不可欠のものではなく、切削溝(11)がなくても剪断により舗装版(6)を「撤去」できるものであるから、イ号工法の技術的構成(c-1)ないし(c-4)は本件特許発明の構成要件Cを充足するものでない。 第5 対比・判断 請求人がイ号工法であるとする被請求人等の「MR^(2)AB工法」(甲第3号証-2)が、実施あるいは実施の予定がされているか不明であるが、判定制度の趣旨に鑑み、イ号工法が実施された場合を仮定して、以下判断する。 本件特許発明とイ号工法とを対比する。 (1)イ号工法の構成(a)は、本件特許発明の構成要件Aを充足している。 (2)イ号工法の構成(b-1)の「仮蓋」は、マンホール基壁上に仮置きされる蓋であるから、本件特許発明の「支持蓋」に相当し、イ号工法の構成(b-2)の「仮復旧材(7)」は、本件特許発明の「舗装材」に相当するから、構成(b-1)及び(b-2)は、本件特許発明の構成要件Bを充足している。 (3)イ号工法の構成(c-1)ないし(c-4)と、本件特許発明の構成要件Cを対比する。 ア.本件特許発明の構成要件Cは、「マンホール枠の設置予定域周囲の舗装が筒状に切断される」工程と、「切断舗装版及び支持蓋が撤去される工程」からなる。 そして、本件特許明細書には、構成要件Cについて次のように記載されている。 「工程(b)において、マンホール枠周囲の舗装を四角形に切断する旧来の舗装工法、或は特公昭61-25844号公報や特公昭61-33938号公報に開示されるように、マンホール枠周囲の舗装を円形状に切断する改良された舗装工法等における前段の工程に従って、マンホール枠の設置予定域周囲の舗装が筒状に切断されると共に切断舗装版及び支持蓋が撤去される。」(段落【0006】)、 「マンホール枠の設置予定域周囲の舗装の切断等に際して、その切断手段に特別の制限はない。円筒状切断の場合に、例えば特公昭61-52283号公報に開示されるような円筒状ビットを備えた路面円形切断機を好適に利用でき、また舗装表面から切断中心を特定するために金属探知機等の公知の探知手段を使用して内部の支持蓋の位置を確認してもよい。」(段落【0007】)。 「次に、図1(b)に示すように、マンホール枠5の設置予定域周囲の舗装4が公知の路面円形切断機(図示を省略する)で円筒状にマンホール基壁2上面の深さまで切断されると共に切断舗装版6及び支持蓋3がアンカーボルト等の支持部材を介して一体的に或は順次撤去され、必要に応じてブレーカー等による切断舗装版6の破砕が行われる。…さらに、図1(c)に示すように、マンホール基壁2上に…マンホール枠5の据え付け基礎7が所要高さに構築されると共に据え付け基礎7上にマンホール枠5がその上面を舗装4の高さに合わせて設置され、…」(段落【0008】) これらの記載によれば、構成要件Cの技術的意義は、マンホール枠の据え付け基礎及びマンホール枠を設置するために、マンホール基壁を露出させることであると認められる。 そうすると、構成要件Cの「筒状に切断」とは、その深さは限定されていないものの、切断部の内側の切断舗装版と支持蓋を撤去することにより、マンホール基壁が露出される深さ、すなわちマンホール基壁2上面あるいは、支持蓋上面の近傍まで切断されることと解される。 イ.一方、イ号工法の構成(c-1)では、舗装版の表面に円環状の切削溝(11)が設けられている。しかしながら、切削溝(11)の底部からマンホール基壁(2)に至る舗装版(6)は切断されておらず、切削溝の内側の舗装版を撤去しただけでは、マンホール基壁(2)上面あるいは支持蓋を露出させることができないから、構成(c-1)の「円環状の切削溝(11)を切削形成する」は、構成要件Cの「筒状に切断」に相当しない。 また、構成(c-4)において、切削溝(11)の底部からマンホール基壁(2)に至る舗装版(6)の撤去は、マンホールリムーバ(13)による仮蓋(3)の引き上げに伴って剪断され撤去されるものであり「切断舗装版が撤去される」には相当しないから、構成(c-4)の「切削溝(11)から舗装版(6)を剪断し、仮蓋(3)と舗装版(6)を一挙に引き上げ撤去する」、構成(c-3)の「マンホールリムーバ(13)により、前記切削溝(11)で囲まれた舗装版(6)と仮蓋(3)を引き上げ撤去する」は、構成要件Cの「切断舗装版及び支持蓋が撤去される」に相当しない。 なお、構成要件Cの「切断舗装版が撤去される」には、請求人が主張するように、切断溝の内側の舗装版を破砕撤去する場合も含まれるが、切断されていない舗装版を撤去することまでが含まれるものではない。 したがって、イ号工法の構成(c-1)ないし(c-4)は本件特許発明の構成要件Cを充足していない。 ウ.請求人は、構成要件Cの「筒状に切断」の要件を充足するかどうかは、その「切断」がなければその後の「撤去」が可能でないかどうかに基づいて判断すべきであり、イ号工法は、切削溝(11)により、舗装版(6)の剪断と撤去を可能にするものであるから、本件特許発明の構成要件Cを充足している旨主張している。 しかし、構成要件Cは「筒状に切断」された「切断舗装版」と「支持蓋」を撤去するものであり、「切断」がなければ「切断舗装版の撤去」が可能でないことは当然であるが、切断されていない舗装版を撤去することまでも含むものではないから、イ号工法が、切削溝(11)形成後、舗装版(6)の剪断と撤去を行っているとしても、筒状に切断された切断舗装版が撤去されるものとはいえない。 また、「イ号工法は、切削溝(11)により、舗装版(6)の剪断と撤去を可能にするもの」といえないことは、上記第3で述べたとおりである。 (4)イ号工法の構成(d-1)は、本件特許発明の構成要件Dのうち「マンホール基壁上にマンホール枠の据え付け基礎が構築される」に相当し、構成(d-2)は、構成要件Dのうち「据え付け基礎上にマンホール枠がその上面を舗装表面の高さに合わせて設置される」に相当するから、イ号工法の構成(d-1)及び(d-2)は、本件特許発明の構成要件Dを充足している。 (5)イ号工法の構成(e)における「モルタル(8a)」と「復旧材(8b)」は、本件特許発明の構成要件Eの「舗装材」に相当するから、構成(e)は構成要件Eを充足している。 (6)イ号工法の構成(f)は、本件特許発明の構成要件Fを充足している。 (7)したがって、イ号工法は、本件特許発明の構成要件Cを充足していないから、本件特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。 第6 むすび 以上のとおり、イ号工法は、本件特許発明の技術的範囲に属さない。 |
別掲 |
![]() イ号説明書 <名称> 舗装工法(通称MR^(2)AB工法) <技術的構成の説明> (A)マンホール枠の設置を含む舗装工法であり、 (B-1)非舗装道路の路盤(1)に設置されたマンホール基壁(2)の上に、中心部に連結手段(9a)を有する仮蓋(3)を仮設することにより、マンホール基壁(2)の開口を塞ぐ工程(図2)、 (B-2)前記路盤(1)に前記仮蓋(3)を含めて舗装(4)を施工する工程(図3)、 (C-1)カッター(10)により、仮蓋(3)の周囲で舗装(4)の表面から円環状の切削溝(11)を切削形成する工程(図4)、 (C-2)舗装(4)の表面から仮蓋(3)の中心部に至る穴(12)を穿孔し、連結手段(9a)を露出させる工程(図4)、 (C-3)マンホールリムーバ(13)により、前記切削溝(11)で囲まれた舗装版(6)と仮蓋(3)を引き上げ撤去する工程(図5)、 (C-4)前記マンホールリムーバ(13)は、建機のブームに取付けられており、前記切削溝(11)の外周に合わせて舗装(4)の表面に接地されるリング状の押さえ枠(14)と、穴(12)に挿入された状態で仮蓋(3)の連結手段(9a)に連結される連結手段(9b)と、該連結手段(9b)をリフト用ロッド(15)を介して昇降させる油圧シリンダ(16)を備えており、前記連結手段(9a)(9b)を連結した状態で、油圧シリンダ(16)によりリフト用ロッド(15)を介して仮蓋(3)を引き上げ、その反力で押さえ枠(12)を舗装(4)の表面に押し付け、切削溝(11)から舗装版(6)を剪断し、仮蓋(3)と舗装版(6)を一挙に引き上げ撤去する(図5)。 (C-5)前記円環状の切削溝(11)は、前記マンホールリムーバ(13)で仮蓋(3)を引き上げたとき該切削溝(11)から舗装版(6)を剪断できる深さと形状を有するように形成されている。換言すれば、このような切削溝(11)を有しない状態で仮蓋(3)を引き上げるときは、リフト用ロッド(15)の上昇可能な上死点まで仮蓋(3)を引き上げたとき舗装版(6)が隆起するように持ち上げられ(図8)、更に、建機のブームによりマンホールリムーバ(13)の全体を引き上げることにより仮蓋(3)を引き上げたとき、舗装版(6)が周囲の舗装(4)と共に持ち上げられ(図9)、舗装版(6)が剪断されないのに対して、前記(C-1)で形成した切削溝(11)により、前記(C-4)における舗装版(6)の剪断と撤去を可能にする。 (D-1)前記引き上げ撤去により形成された空洞部(S)の底部に位置するマンホール基壁(2)の上に、調整ブロック(7)を設置する工程(図6)、 (D-2)調整ブロック(7)の上にマンホール枠(5)の上面が舗装(4)の表面の高さに合わせられるように設置し、マンホール枠(5)を固定ボルト(図示省略)で固定する工程(図6)、 (E)マンホール枠(5)の周囲の空洞部(S)にモルタル(8a)を打設し、該モルタル(8a)の上方に復旧材(8b)を舗装(4)の表面の高さまで舗装施工する工程から成る (F)舗装工法。 <図面の説明> 【図1】は、非舗装道路の路盤とマンホール基壁を示す断面図である。 【図2】は、非舗装道路のマンホール基壁の上に仮蓋を設置した状態を示す断面図である。 【図3】は、仮蓋を含めて非舗装道路に舗装を施工した状態を示す断面図である。 【図4】は、仮蓋の周囲で舗装の表面から円環状の切削溝を切削形成し、舗装の表面から仮蓋の中心部に至る穴を穿孔した状態を示す断面図である。 【図5】は、マンホールリムーバにより舗装版と仮蓋を引き上げ撤去した状態を示す断面図である。 【図6】は、前記引き上げ撤去により形成された空洞部の内部でマンホール基壁の上に 調整ブロックを設置し、該調整ブロックの上にマンホール枠を設置した状態を示す断面図である。 【図7】は、マンホール枠の周囲の空洞部にモルタルを打設し、該モルタルの上方に復旧材を舗装施工した状態を示す断面図である。 【図8】は、図5に対応するが切削溝を形成しない比較例に関してマンホールリムーバにより舗装版と仮蓋を引き上げた状態を示す断面図である。 【図9】は、前記比較例に関してマンホールリムーバの全体を引き上げることにより仮蓋を更に引き上げた状態を示す断面図である。 <符号の説明> 1 非舗装道路の路盤 2 マンホール基壁 3 仮蓋 4 舗装 5 マンホール枠 6 舗装版 7 調整ブロック 8a モルタル 8b 復旧材 9a 連結手段 9b 連結手段 10 カッター 11 切削溝 12 穴 13 マンホールリムーバ 14 押さえ枠 15 リフト用ロッド 16 油圧シリンダ 17 マンホール蓋 |
判定日 | 2008-06-26 |
出願番号 | 特願平3-359363 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(E01C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 恒明 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
砂川 充 伊波 猛 |
登録日 | 1997-04-11 |
登録番号 | 特許第2623492号(P2623492) |
発明の名称 | 舗装工法 |
代理人 | 大塚 明博 |
代理人 | 大塚 明博 |
代理人 | 中野 収二 |