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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680154 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G06F
管理番号 1181361
審判番号 無効2005-80167  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-05-31 
確定日 2008-06-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3641271号発明「バーコード付与方法および認証方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3641271号の請求項1乃至4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
(a)特許3641271号に係る経緯は、概略、以下のとおりである。

出願日 平成16年9月15日(原出願日 平成12年5月2日)
設定登録日 平成17年1月28日

(b) 本件審判請求に係る経緯は、概略、以下のとおりである。

請求書 平成17年5月31日
答弁書 平成17年8月29日
訂正請求(第1回) 平成17年8月29日
(平成18年2月13日取り下げ)
弁ぱく書 平成17年10月14日
無効理由通知 平成18年1月10日
(発送日:1月13日)
意見書(請求人) 平成18年2月9日
意見書 (被請求人) 平成18年2月13日
訂正請求(第2回) 平成18年2月13日
(平成18年6月19日取り下げ)
弁ぱく書 平成18年4月21日
答弁指令(1回目の弁ぱく書に対して)平成18年5月15日
(発送日:5月18日)
補正許否の決定 平成18年5月15日
(発送日:5月18日)
訂正請求(第3回) 平成18年6月19日
弁ぱく書 平成18年7月31日
補正許否の決定 平成18年8月28日
(発送日:9月4日)

第2.訂正の適否について

1.訂正の内容
平成17年8月29日付け及び平成18年2月13日付けの訂正請求は取り下げられ、平成18年6月19日付けで3回目の訂正請求が為されており、特許権者が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項A-Eのとおりである。

訂正事項A
特許明細書の特許請求の範囲請求項1を次のとおり訂正する。
「【請求項1】
認証要求者の読み取り装置によって読み取られる認証用バーコードをインターネットを通して被認証者の携帯電話に付与するバーコード付与方法であって、
バーコード要求信号受信手段が、発信者番号を含むバーコード要求信号を前記被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、
検索手段が、前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいてデータベースを検索して、前記被認証者の顧客データが顧客データベースに登録済みであるか否かを判定するステップと、
前記被認証者の顧客データが登録済みであったときには、バーコード生成手段が、前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、
バーコード伝送手段が、インターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップと、を備え、
前記バーコード要求信号を受信するステップが、前記バーコード要求信号に応答して、前記認証用バーコードを用いて認証を受けることができる前記認証要求者の選択肢を前記被認証者の携帯電話に送り、前記被認証者にいずれかの認証要求者を選択させるステップを含んでいる、
ことを特徴とするバーコード付与方法。」

訂正事項B
特許明細書の特許請求の範囲請求項3を次のとおり訂正する。
「【請求項3】
携帯電話に表示されるバーコードを使用した認証方法であって、
該バーコードが、バーコード要求信号受信手段が発信者番号を含むバーコード要求信号を被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、検索手段が前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいて顧客データベースを検索して前記被認証者の顧客データが登録済みであるか否かを判定するステップと、前記被認証者の顧客データが登録済みであったときにはバーコード生成手段が前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、バーコード伝送手段がインターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップとを経て前記被認証者に付与されたバーコードであって、
バーコード受信手段が、前記被認証者によって該被認証者の携帯電話に表示させて認証要求者に提示され且つ該認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られたバーコードに対応し、認証を求める認証要求者から送信されてきたバーコード信号を通信回線を通して受信するステップと、
照合手段が、前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致するか否かを判定するステップと、
前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致したときには、バーコード送信手段が、当該被認証者を認証する旨の信号を前記認証要求者に通信回線を通して送信するステップと、を備えている、
ことを特徴とする認証方法。」

訂正事項C
特許明細書の段落【0004】を次のとおり訂正する。
「本発明によれば、認証要求者の読み取り装置によって読み取られる認証用バーコードをインターネットを通して被認証者の携帯電話に付与するバーコード付与方法であって、
バーコード要求信号受信手段が、発信者番号を含むバーコード要求信号を前記被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、 検索手段が、前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいてデータベースを検索して、前記被認証者の顧客データが顧客データベースに登録済みであるか否かを判定するステップと、 前記被認証者の顧客データが登録済みであったときには、バーコード生成手段が、前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、 バーコード伝送手段が、インターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップと、を備え、 前記バーコード要求信号を受信するステップが、前記バーコード要求信号に応答して、前記認証用バーコードを用いて認証を受けることができる前記認証要求者の選択肢を前記被認証者の携帯電話に送り、前記被認証者にいずれかの認証要求者を選択させるステップを含んでいる、ことを特徴とするバーコード付与方法が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、発信者番号が被認証者の携帯電話番号である。」

訂正事項D
特許明細書の段落【0008】を次のとおり訂正する。
「本発明の他の態様によれば、携帯電話に表示されるバーコードを使用した認証方法であって、 該バーコードが、バーコード要求信号受信手段が発信者番号を含むバーコード要求信号を被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、検索手段が前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいて顧客データベースを検索して前記被認証者の顧客データが登録済みであるか否かを判定するステップと、前記被認証者の顧客データが登録済みであったときにはバーコード生成手段が前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、バーコード伝送手段がインターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップとを経て前記被認証者に付与されたバーコードであって、 バーコード受信手段が、前記被認証者によって該被認証者の携帯電話に表示させて認証要求者に提示され且つ該認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られたバーコードに対応し、認証を求める認証要求者から送信されてきたバーコード信号を通信回線を通して受信するステップと、 照合手段が、前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致するか否かを判定するステップと、 前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致したときには、バーコード送信手段が、当該被認証者を認証する旨の信号を前記認証要求者に通信回線を通して送信するステップと、を備えている、ことを特徴とする認証方法が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、発信者番号が被認証者の携帯電話番号である、」

訂正事項E
特許明細書の段落【0001】の”付与用法”を「付与方法」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項Aは、「バーコートを付与する」態様について「認証要求者の読み取り装置によって読み取られる」認証用バーコードであって、「インターネットを通して携帯電話」に付与すると限定し、「バーコード要求信号の受信」の態様について「被認証者の携帯電話からインターネットを通して」受信すると限定し、「バーコード信号を送信する」態様を、「被認証者の携帯電話に送信して表示させる」と限定し、更に、「バーコード要求信号を受信するステップ」を「前記バーコード要求信号に応答して、前記認証用バーコードを用いて認証を受けることができる前記認証要求者の選択肢を前記被認証者の携帯電話に送り、前記被認証者にいずれかの認証要求者を選択させるステップを含んでいる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、「被認証者が登録済み」を「被認証者の顧客データが顧客データベースに登録済み」とする訂正は、平成18年1月10日付け無効理由通知における「「被認証者が登録済みであったとき」とは、どのような意味であるのか不明である。」との指摘に対応するものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
この訂正箇所に関連して、本件特許公報には「このバーコード要求信号に含まれる当該顧客の発信者番号、即ち、携帯電話番号に基づいて顧客データベース112を検索し、当該発信者番号を発見した場合にはバーコード、詳細には、バーコードに対応する信号(バーコード信号)を生成するように構成されている。」と記載されている。
これらからみて、「発信者番号に基づいて、データベースを検索して、前記被認証者の顧客データが顧客データベースに登録済みであるか否かを判定する」というのは、データベースに発信者番号、即ち、携帯電話番号を発見したときの判断の態様を「被認証者が登録済み」とするものから、「顧客データが顧客データベースに登録済み」と訂正するものであって、データベース検索の対象や態様が訂正により変更されるものではない。すなわち、データベース検索の対象はあくまで発信者番号であって、例えば、発信者番号を検索キーとして発信者番号以外の顧客データを検索するものが含まれるわけではない。
従って、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面の記載した事項の範囲内においてなされたものとみることができる。
また、本件特許は特願2000-133741号の分割出願に係るものであるが、本件特許と明細書及び図面が共通する原出願に係る特許3207192に対する無効審判(無効2005-80099)の審決においては「請求項1における『前記被認証者の顧客データが顧客データベースに記録されているか否かを判定する』というのは、発明の詳細な説明を参酌し、請求項1の全体の記載を合理的に解釈すれば、被認証者の携帯電話番号が顧客データベースに記録されているか否かを判定するものと限定的に捉えるしかない。」と判断しているが、これは同一請求項内に「該バーコードを前記被認証者の発信者番号の携帯電話に通信回線を通じて送信する」という記載があり、この記載を併せて請求項1を合理的に解釈したためであり、本件特許においては「前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信」とされているだけであり、バーコード要求信号を発信した携帯電話にバーコード信号を送信し付与するものに限定されていないから、発信者番号に対する判断が 特許3207192に対する無効審判と同一となるわけではない。
以上のとおりであるから、訂正事項Aは、特許明細書【0013】、【0022】?【0024】、【0027】、【0031】、【0038】及び図1、5に記載されるものであるから、願書に添付した明細書又は図面の記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

訂正事項Bは、バーコードの形態について「携帯電話に表示される」「被認証者の携帯電話に表示されて認証要求者に提示され」「認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られ」と限定し、「バーコード要求信号」及び「バーコード信号」が「携帯電話」と「インターネット」を介して送受信されると限定し、「データベース」を「顧客データベース」と限定し、認証要求者とバーコード受信手段及びバーコード送信手段が「通信回線を通じて」送受信するものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、「被認証者が登録済み」の態様を「被認証者の顧客データが顧客データベースに登録済み」との訂正は、平成18年1月10日付け無効理由通知における「「被認証者が登録済みであったとき」とは、どのような意味であるのか不明である。」との指摘に対応するものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、訂正事項Bは、特許明細書【0013】、【0019】?【0020】、【0022】、【0027】、【0029】に記載されるものであるから、願書に添付した明細書又は図面の記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

訂正事項Cは、特許請求の範囲請求項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、訂正事項Cは、願書に添付した明細書又は図面の記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

訂正事項Dは、特許請求の範囲請求項3の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、訂正事項Dは、願書に添付した明細書又は図面の記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

訂正事項Eは、単なる誤記の訂正である。

3.むすび
よって、上記訂正事項A-Eは、特許法第134条の2ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので当該訂正を認める。

第3.本件訂正後の特許発明
本件無効審判請求の対象となった請求項1-4に係る発明については、上記訂正を許容することができるから、本件訂正後の発明は、訂正明細書の請求項1から請求項4に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」などという。)である。

「【請求項1】
認証要求者の読み取り装置によって読み取られる認証用バーコードをインターネットを通して被認証者の携帯電話に付与するバーコード付与方法であって、
バーコード要求信号受信手段が、発信者番号を含むバーコード要求信号を前記被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、
検索手段が、前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいてデータベースを検索して、前記被認証者の顧客データが顧客データベースに登録済みであるか否かを判定するステップと、
前記被認証者の顧客データが登録済みであったときには、バーコード生成手段が、前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、
バーコード伝送手段が、インターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップと、を備え、
前記バーコード要求信号を受信するステップが、前記バーコード要求信号に応答して、前記認証用バーコードを用いて認証を受けることができる前記認証要求者の選択肢を前記被認証者の携帯電話に送り、前記被認証者にいずれかの認証要求者を選択させるステップを含んでいる、
ことを特徴とするバーコード付与方法。

【請求項2】
前記発信者番号が被認証者の携帯電話番号である、
請求項1に記載のバーコード付与方法。

【請求項3】
携帯電話に表示されるバーコードを使用した認証方法であって、
該バーコードが、バーコード要求信号受信手段が発信者番号を含むバーコード要求信号を被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、検索手段が前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいて顧客データベースを検索して前記被認証者の顧客データが登録済みであるか否かを判定するステップと、前記被認証者の顧客データが登録済みであったときにはバーコード生成手段が前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、バーコード伝送手段がインターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップとを経て前記被認証者に付与されたバーコードであって、
バーコード受信手段が、前記被認証者によって該被認証者の携帯電話に表示させて認証要求者に提示され且つ該認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られたバーコードに対応し、認証を求める認証要求者から送信されてきたバーコード信号を通信回線を通して受信するステップと、
照合手段が、前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致するか否かを判定するステップと、
前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致したときには、バーコード送信手段が、当該被認証者を認証する旨の信号を前記認証要求者に通信回線を通して送信するステップと、を備えている、
ことを特徴とする認証方法。

【請求項4】
前記発信者番号が被認証者の携帯電話番号である、
請求項3に記載のバーコード付与方法。」

第4.当事者の主張及び証拠方法
1.請求人
(a)請求の趣旨及び証拠方法
平成17年10月14日付け弁ぱく書における請求の理由の補正は許可され、平成18年7月31日付け弁ぱく書における請求の理由の補正は許可されていないので、請求人の求める請求の趣旨及び証拠方法は次のとおりである。
本件発明1から本件発明4までは、甲第1号証と、甲第2号証または甲第3号証と、甲第4号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものあり(無効理由1)、また、本件特許3及び本件特許4は、甲第4号証から甲第6号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり(無効理由2)、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、本件特許は無効とすべきものである。

(b)証拠方法
甲第1号証:特開平10-69553号公報
甲第2号証:特開2000-124988号公報
甲第3号証:特開平11-313156号公報
甲第4号証:日経ビジネス 2000年4月24日号 p.24?p.40
甲第5号証:特開2000-10927号公報
甲第6号証:特開平10-13695号公報

2.被請求人
(a)答弁の趣旨及び理由
訂正後の本件発明1から本件発明4は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に該当せず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、本件審判請求は成り立たない。

第5.請求及び答弁の理由の概要
[請求人]
審判請求書、平成17年10月14日付け弁ぱく書、平成18年2月9日付け意見書、平成18年4月21日付け弁ぱく書、平成18年7月31日付け弁ぱく書の趣旨からして、請求人の主張の要点は、概略、以下のとおりである。

1.無効理由1
(1)個人認証の意義
本件発明は、バーコードを照合して認証する段階に着目して「個人認証方法」と呼び、甲第1号証は券情報及びユーザーコード情報の発行段階に着目して「券発行システム」と呼んでいるに過ぎない。甲第1号証も券の使用を認めるか否かという照合の段階に着目すれば「認証方法」と言える。また、本件発明は生体認証のように個人を認証しているのではなく、データベースに記録されているバーコードを確認することにより認証するだけであり、本件発明ではこのことを個人認証と呼んでいるだけである。

(2)発信者番号
甲第1号証では、発券されたユーザーコード情報をユーザー装置に送信するものであるから、発券要求情報にユーザー装置の宛て先を示す発信者番号を含むのは当然である。ファクシミリ装置を用いた発券要求情報についての記載には所定のフォーマット用紙に「ファックス番号」の欄があり、この「ファックス番号」が発信者番号に相当する。
発信者番号をデータベースの検索に用いるかどうかはファックス番号が発信者番号に該当するか否かの問題とは無関係である。

(3)ユーザーコード情報生成の時期
券情報の検索とユーザーコード情報の作成は独立した処理ではなく、「券情報の検索→ユーザーコード情報の作成」の順序に行われるものである。従って、ユーザーコード情報の作成は課金可能なときに行われるのは明らかである。

2.無効理由2
甲第5号証の発明における認証用パスワードを認証用バーコードに変更することにより本件発明3、4を構成することができる。甲第4号証には、携帯電話に表示されたバーコードを個人を認証するために用いるものでり、甲第4号証と甲第5号証と甲第6号証の発明は、いずれも認証に関する発明であり、技術分野および目的が共通し、組み合わせの困難性がない。

[被請求人]
平成17年8月29日付け答弁書、平成18年2月13日付け意見書及び平成18年6月19日付け訂正請求書からして、被請求人の主張の要点は、概略、以下のとおりである。

3.無効理由1
本件発明1から本件発明4までは、甲第1号証ないし甲第4号証から容易に発明をすることができたものではない。
(1)個人認証の意義
本件発明1がバーコードを用いて個人を認証する発明であるのに対し、甲第1号証の発券システムではバーコードは提示された券が真正なものかどうかを確認するためのものであり、個人を認証するものではない。 携帯電話は一身専属性が高く他人に貸与することが通常あり得ないから、ある携帯電話に送信したバーコードを提示するのは、その携帯電話の所有者である被認証者であり、個人認証を行うことができる。
(2)発信者番号
本件発明の発信者番号はユーザー装置の宛先を特定するものではない。また、甲第1号証のファックス番号はの発信者を特定するものではないし、データベースに登録されているか否かの判断を行うために一切使用されていない。
(3)ユーザーコード情報
甲第1号証の発明では、「発券要求情報判別部201から送られた判別結果が発券可能であることを示すとき」に、「ユーザーコード情報を生成」しており、ユーザーのクレジットカード番号がデータベースに登録されていたときに、認証用バーコードを生成するものではない。

4.無効理由2
甲第5号証の発明に対し、本件発明3および本件発明4には、以下の相違点があり、甲第4号証乃至甲第6号証から容易に発明をすることができたものではない。
(相違点1)
甲第5号証の発明における認証は、ユーザIDと一時的パスワードを組み合わせて行うものである。したがって、甲第5号証の一時的パスワードをバーコード形態に変更したとしても利用者を特定する「リモート接続ID」の入力は必要であり、バーコードによって認証を行う本件発明の認証コード(バーコード)を構成することはできない。
(相違点2)
甲第5号証の発明では、一時的パスワードは文字列であり、甲第5号証の発明において、一時的パスワードとして例示されている文字列をバーコードに変更することは当業者が通常に行うことではない。
(相違点3)
甲第5号証の発明では「一時的バーコード」は利用者(ユーザ)に固有でないのに対し、本件発明の「バーコード」は「被認証者に固有」である。特開平11-338933号公報には、パスワードを固有にするとの記載があるが、これは、被申込者側のコンピュータ2による照合という特殊事情により固有のパスワードとしてものと考えられ、甲第5号証の発明における「一時的パスワード」を利用者に固有とすることはありえない。

第5.当審の判断
1.無効理由1
請求人および被請求人の上記主張を踏まえ、本件発明1-4が甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証及び甲第4号証にから容易に発明をすることができたものかどうか検討する。

(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が図面と共に記載されている。

(ア)「 【0075】
図1には、本発明に係る発券システムの概念的な構成を示す図である。
【0076】
パーソナルコンピュータ(以下、PCという)、インターネット接続用端末、インターネットテレビ、ネットPC等を利用したユーザ装置2と、券を発行する券発行装置を備える発券センタ102とは、通信回線により接続されている。」

(イ)「 【0079】
券の購入者である、いわゆるユーザーは、ユーザー装置2を使用して、所望の券の発券要求情報を、発券センタ102の券発行装置に対して送信する。これにより、発券センタ102の券発行装置では、ユーザーの発券要求情報に応じたデータを検索する。そして、券発行装置は、所望のデータを検索したならば、そのデータを券情報としてユーザー装置に送信する。このとき、券情報と共に、その券に対応するユーザーコード情報も送信する。また、発券センタ102からは、具体的には後述するように、ユーザーに対して券情報に応じた金額を課金する。」

(ウ)「 【0082】
券使用場所104では、券使用装置に接続される複数の情報読み取り装置106を備えている。例えば、券情報及びユーザーコード情報の少なくとも一方がバーコード情報として印刷されているならば、情報読み取り装置106としてはバーコードリーダー装置を用いることが可能である。券使用場所104では、情報読み取り装置106により、紙に印刷された券情報及びユーザーコード情報の少なくとも一方を読み取って、その券110が有効であるか否かを判別する。これにより、ユーザーが持参した券110が有効であると判別されるならば、ユーザーは、その券110を真の券として使用することができる。
【0083】
もちろん、券使用場所104では、ユーザーが券情報またはユーザーコード情報を記憶していたり、またはそれらが印刷してある部分を確認しながら、キーボード、マウス、操作パネル等の入力機器を使用して、券使用装置3へ券情報またはユーザーコード情報を入力するようにしてもよい。さらに、この入力機器の利用と前述のスキャナ装置、バーコードリーダー装置等を組み合わせて利用する形態であってもよい。また、券情報またはユーザーコード情報が携帯型記録媒体に記録された情報である場合は、その媒体に記憶された情報を取り出すための媒体ドライブ装置等の情報読み取り装置、またはそれが小型電子機器であれば接続ケーブル、光もしくは無線通信機器等を用いることが可能であるとともに、前述の幾つかの読み取り装置と組み合わせて利用する形態であってもよい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0085】
また、発券センタ102の券発行装置からユーザー装置2に送信される券情報は、紙に印刷する他に、フロッピーディスク、メモリカード、ICカード等の携帯可能な携帯型記録媒体に記録することも可能である。尚、詳細には後述するユーザーコード情報を券情報と共に印刷又は記録したり、ユーザーコード情報のみを印刷又は記録したりしてもよい。
【0086】
このときには、使用場所104の券使用装置として、ユーザーが持参する携帯型記録媒体の情報を読み出すことが可能なコンピュータ装置等を備え、この携帯型記録媒体に記録された券情報及びユーザーコード情報を読み出すようにする。」

(エ)「 【0094】
ここで、データ処理部11の概略的な構成を図3に示す。
【0095】
このデータ処理部11は、モデム12により受信した情報を判別する情報判別部200と、モデム12により受信した情報が、情報判別部200により発券要求情報であると判別されたときに、前記発券要求情報に応じた券情報を検索する券情報検索部204と、券情報検索部204により検索された前記券情報に対応するユーザーコード情報を作成するユーザーコード情報作成部206とを備え、モデム12により前記券情報検索部204から出力される券情報及び前記ユーザーコード情報作成部206から出力されるユーザーコード情報をユーザー装置2に送信する。
【0096】
券情報検索部204には、発行するための複数種類の券情報を記憶する券情報記憶部205が接続され、また、ユーザーコード情報作成部206には、複数のユーザーのユーザー情報を記憶するユーザー情報記憶部207が接続される。ユーザー情報は、ユーザーの名前、住所、券の代金の支払いに利用する銀行の口座番号やクレジットカード番号等を含む情報である。
【0097】
また、データ処理部11は、情報判別部200により、モデム12で受信した情報が発券要求情報であると判別されたときに、前記発券要求情報が有効であるか否かを判別する発券要求情報判別部201をさらに有し、発券要求情報判別部201により発券要求情報は有効であると判別されたときに、券情報検索部204により発券要求情報に応じた券情報の検索を開始する。
【0098】
さらに、発券要求情報判別部201により発券要求情報は有効であると判別されたときには、モデム12により受信して情報判別部200により判別された第1の課金用識別情報と、予め記憶する第2の課金用識別情報とを比較する課金用識別情報比較部202と、課金用識別情報比較部202からの比較結果が有効であるならば、前記ユーザー情報及び課金するユーザーを特定する課金用識別情報のうちの少なくともいずれか一方に応じた金額を課金する課金部208とを有している。
【0099】
情報判別部200には、モデム12、13により受信された情報が入力され、この入力情報が何の情報であるのかを判別する。入力情報が発券要求情報であると判別されたときには、この発券要求情報は、発券要求情報判別部201、券情報検索部204及び課金部208に送られる。また、入力情報がユーザー識別情報であると判別されたときには、このユーザー識別情報はユーザーコード情報作成部206に送られる。また、入力情報が課金用識別情報であると判別されたときには、この課金用識別情報は、課金用識別情報比較部202及び課金部208に送られる。
【0100】
発券要求情報判別部201は、送られた発券要求情報が有効であるか否か、具体的には、発券要求情報により要求される券情報の検索を行うことが可能であるか否かを判別する。そして、発券要求情報判別部201は、判別結果を、課金用識別情報比較部202、券情報検索部204及びユーザーコード情報作成部206に送る。
【0101】
課金用識別情報比較部202には、複数のユーザーの課金用識別情報を記憶する課金用識別情報記憶部203が接続される。この課金用識別情報記憶部203には、複数のユーザーの課金用識別情報が記憶されている。例えば、課金用識別情報比較部202に入力される課金用識別情報を第1の課金用識別情報とし、課金用識別情報記憶部203に記憶している課金用識別情報を第2の課金用識別情報とした場合に、課金用識別情報比較部202は、発券要求情報が有効であることを示す判別結果が入力されたときに、第1の課金用識別情報と第2の課金用識別情報とを比較し、この比較結果を券情報検索部204及び課金部208に送る。
【0102】
券情報検索部204は、発券要求情報判別部201から送られた判別結果が発券可能であることを示すときには、発券要求情報の内容に基づいて、券情報記憶部205に記憶される券情報から適合する券情報を検索し、出力する 尚、券情報検索部204は、課金用識別情報比較部202からの比較結果を用いて券情報の検索を開始するようにしてもよい。この場合には、券情報検索部204は、課金用識別情報比較部202から送られた比較結果が課金可能であることを示すときに、発券要求情報の内容に基づいて、券情報記憶部205に記憶される券情報から適合する券情報を検索する。
【0103】
また、ユーザーコード情報作成部206には、情報判別部200において判別されたユーザー識別情報が送られている。ユーザーコード情報作成部206は、発券要求情報判別部201から送られた判別結果が発券可能であることを示すときには、ユーザー情報記憶部207に記憶されるユーザー情報から、送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報を用いてユーザーコード情報を作成する。
【0104】
課金部208は、課金用識別情報比較部202から送られた比較結果が課金可能であることを示すときに、発券要求情報に基づく券の代金を、課金用識別情報を用いて課金する。具体的には、後述するように、課金用識別情報に含まれる銀行口座番号やクレジットカード番号等に基づく銀行等に対して券の代金の支払いを要求する。また、課金処理を行うときには、課金用識別情報の代わりに、ユーザー情報記憶部207に記憶されるユーザー情報を用いて、課金を行ってもよい。具体的には、ユーザー情報記憶部207に記憶される複数のユーザー情報から、発券要求情報に含まれるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報に含まれる銀行口座番号やクレジットカード番号に基づいて、課金を行う。」

(オ)「 【0109】
券使用装置3は、高速回線網4を介して券発行装置1と接続され、データを送受信するモデム32と、モデム32から送られる情報等を処理するデータ処理部31と、ユーザー装置1のプリンタ装置25で紙に印刷された券情報及びユーザーコード情報の少なくとも一方を読み取って入力する情報入力手段であるスキャナ装置34と、データ処理部31で処理された情報等を表示する表示部33とを備える。
【0110】
券使用装置3のスキャナ装置34は、ユーザーが持参した券の情報、即ち紙に印刷された券情報及びユーザーコード情報の少なくとも一方を読み込む。この読み込まれた券情報及びユーザーコード情報は、データ処理部31に送られる。」

(カ)「 【0121】
尚、上述したように、ユーザーコード情報の照合動作は券使用装置3のデータ処理部31で行っているが、券情報判別部302は、情報入力手段により入力した前記第1のユーザーコード情報を前記データ送受信手段により外部へ送信した後に、外部へ送信した前記第1のユーザーコード情報と外部に予め記憶されている第2のユーザーコード情報との照合結果を、前記データ送受信手段を介して外部から受信することによって、前記券情報の有効性を判別するものとし、ユーザコード情報の照合動作を、券発行装置1のデータ処理部11で行うことも可能である。
【0122】
具体的には、券使用装置3は、スキャナ装置34等から読み込まれたユーザーコード情報をデータ処理部31の処理によりモデム32から券発行装置1に送信する。
【0123】
券発行装置1に送信されたユーザーコード情報は、券発行装置1のモデム13から、図3に示すデータ処理部11の情報判別部200で判別され、ユーザーコード情報照合部210に送られる。一方、ユーザーコード情報照合部210には、ユーザーコード情報作成部206から送られるユーザーコード情報が送られている。ユーザーコード情報作成部206からのユーザーコード情報を第2のユーザーコード情報とし、また、券使用装置3から券発行装置1に送信されたユーザーコード情報を第1のユーザーコード情報とすると、ユーザーコード情報照合部210は、第1のユーザーコード情報と第2のユーザーコード情報とを照合する。この照合結果は、モデム13から高速回線網4を介して券使用装置3に送信される。
【0124】
券使用装置3は、送信された照合結果をモデム32で受信し、券情報判別部302に送る。
【0125】
券情報判別部302は、送られた照合結果に基づいて、券情報が有効であるか否かを判別する。この時、券情報が有効であるか否かの判別は、前述のように券使用装置3の券情報判別部302で行う方法以外にも、券発行装置1のユーザーコード情報照合部210でその判別を行い、その結果としての有効である、または有効でない、という情報が、券使用装置3の券情報判別部302に送られる構成でもよい。」

(キ)「【0127】次に、図5に、ユーザー装置2としてPCを用いた場合の発券処理手順のフローチャートを示す。
【0128】尚、図5のフローチャートでは、具体的には、ホテルの宿泊券を予約する場合の発券処理手順について示している。
【0129】先ず、ステップS2で、ユーザー装置2から券発行装置1に対して、発券要求情報を送信する。この発券要求情報は、例えば、ホテルの宿泊券の券情報を検索することを要求する検索要求情報、及びそのホテルを限定する複数の条件を示す条件提示情報等を含む。
【0130】ここで、券発行装置1は、例えば旅行代理店等に設置されたコンピュータ装置である。また、この券発行装置1の他の具体例としては、旅行代理店が設置しているWWWサーバーまたはホテルが設置しているWWWサーバーでもよい。この場合、ユーザーはインターネット上で、発券サービスを受けることになり、非常に便利である。
【0131】一方、ユーザー装置2の表示部23には、例えば、図6(A)に示すように、先ず、ホテルの予約のタイトルが表示される。
【0132】次に、図6(B)に示すように、ホテルを検索する際のホテルを限定する各条件の項目が表示される。ユーザーは、ユーザーインターフェイス部24を操作して、表示されている各条件について所望の情報を入力する。この入力された各条件の情報が、前記条件提示情報として券発行装置1に送信される。
【0133】券発行装置1では、ステップS4で、ユーザー装置2から送信された発券要求情報が、券情報を検索するために十分な情報であるか否かを判別する。これにより、検索に十分な情報であると判別されるならば、発券要求情報のうちの条件提示情報に基づいて適応するホテルの券情報の検索を行う。そして、この券情報の検索結果をユーザー装置2に送信する。
【0134】前記券発行装置1からユーザー装置2に送信される検索結果は、表示部23に表示される。この検索結果は、ホテルの名前情報等を含む。例えば、図6(C)に示すように、表示部23には、ユーザーが入力した各条件に適応するホテルが3件検索されたことが表示される。
【0135】検索結果が表示された後、ユーザーは、ユーザーインターフェイス部24を操作することにより、例えば、図6(D)、図6(E)、及び図6(F)にそれぞれ示すように、各ホテルの詳細な案内を示すホテル案内画面を順次表示させることができる。
【0136】この後、ステップS6で、例えば、図6(G)に示すように、前記適応するホテルから所望のホテルを選択するためのホテル選択画面が、表示部23に表示される。このホテル選択画面は、ホテル案内画面を見終わったユーザーが、ユーザーインターフェイス部24を操作して任意に切り換えてもよいし、また、所定時間後に、ホテル案内画面から自動的に切換表示されるものであってもよい。
【0137】このホテル選択画面において、ユーザーはユーザーインターフェイス部24を操作して、一つのホテルを選択する。この選択により、選択されたホテルの情報は、ホテル予約情報として、モデム22から通信回線6を介して券発行装置1のモデム12に送信される。
【0138】また、ユーザーは、予約したホテルの宿泊料金を支払うための課金用識別情報を、ユーザーインターフェース部24を操作して入力する。この課金用識別情報は、ユーザインターフェイス部24からデータ処理部21に入力され、送信用データに変換処理された後、モデム22に出力される。そして、モデム22から通信回線6を介して券発行装置1に送信される。
【0139】この課金用識別情報としては、例えば、ユーザーが利用している銀行の口座番号やクレジットカード番号を用いることができる。尚、クレジットカード番号を用いることにより、ユーザーは簡易に券の代金を支払うことができる。
【0140】また、ユーザー装置2から券発行装置1に課金用識別情報を送信するときには、この課金用識別情報が他人に盗まれることを防止し、送信時の安全性を高めるために、通常は、課金用識別情報を所定の暗号化方法により暗号化した後に、券発行装置1に送信する。
【0141】券発行装置1のデータ処理部11は、ステップS8で、受信した課金用識別情報を確認し、この課金用識別情報に基づく課金処理を行い、宿泊券の代金の支払いを確認する。
【0142】具体的には、複数のクレジットカード番号をデータベースとして記憶しておき、受信したクレジットカード番号を、データベース内の複数のクレジットカード番号と比較する。これにより、データベース内に、受信したクレジットカード番号と一致するクレジットカード番号が存在するならば、券発行装置1は、前記受信したクレジットカード番号に基づく銀行に対して、予約されたホテルの宿泊料金の支払い要求情報を送信する。
【0143】銀行は、支払い要求情報を受信する。そして、銀行は、受信した支払い要求情報に基づき、前記クレジットカード番号に応じたユーザーの口座からホテルの宿泊料金分の金額を引き落として、この宿泊料金を券使用装置3に送金する。また、銀行は、ホテルの宿泊券の発行処理を行った券発行装置1に対して、前記ユーザーの口座から前記発行処理の手数料を引き落とし、この手数料を券発行装置1に送金する。
【0144】ここで、券使用装置3は、例えば、ホテルに設置されたコンピュータ装置等であり、この券使用装置3は券発行装置1と通信回線を介して接続されている。
【0145】さらに、券発行装置1は、ユーザー装置2に対して、ユーザーを識別するためのユーザー識別情報の送信を要求するユーザー情報提示要求情報を送信する。このユーザー識別情報は、例えばユーザーの氏名等の名前情報及び暗号情報のうちの少なくともいずれか一方を含む。尚、暗号情報は、いわゆるパスワード情報である。」

(ク)「【0150】そして、ステップS14で、券発行装置1のデータ処理手段11は、券の内容やホテルの各条件等を示す券情報、及び券の発行番号を含むユーザーコード情報をコード化する。ユーザーコード情報には、ユーザー情報が含まれる。券発行装置1は、このコード化された券情報及びユーザーコード情報をユーザー装置2に送信する。
【0151】ユーザー装置2は、ステップS16で、送信された券情報及びユーザーコード情報をデコードして、プリンタ装置25により紙に印刷する。また、券情報及びユーザーコード情報は、データ記録部26により携帯型記録媒体に記録するようにしてもよい。
【0152】この後、ステップS20で、ユーザーは、印刷された宿泊券を使用する。即ち、ユーザーは、宿泊券に適応するホテルの窓口で前記宿泊券を提示する。このホテルの窓口には、上述したように、コンピュータ装置等から成る券発行装置1が設けられている。
【0153】一方、券発行装置1は、ステップS18で、ユーザー装置2に送信した券情報及びユーザーコード情報を券使用装置3にも送信する。
【0154】券使用装置3は、ステップS22で、ユーザーが印刷した宿泊券のユーザーコード情報を読み取り、このユーザーコード情報と、券発行装置1から送信されているユーザーコード情報とを照合する。この照合により、2つのユーザーコード情報が一致するならば、ユーザーが印刷した宿泊券は真の宿泊券であると判別される。これにより、ユーザーは宿泊券を使用して、ホテルに宿泊することができる。」

(2)引用発明
券発行装置の情報判別部は、発券要求情報、課金用識別情報、ユーザー識別情報、ユーザーコード情報を入力し、これらを判別仕分けして適切な箇所に送出するものであるが、上記(キ)、(ク)の記載から見ると、発券要求情報、課金用識別情報、ユーザー識別情報は発券の段階でユーザー端末から受信する情報であり、認証の段階では券使用装置から
ユーザー識別情報、ユーザーコード情報を受信するものである。

上記(エ)の記載によれば、発券要求情報に基づく券情報の検索は、課金用識別情報による課金が可能となった後で行われることが分かる。そして、ユーザーコード情報の作成はユーザが検索結果の中から、あるものを選択したときに行われるから、甲第1号証のものは、「課金可能」「券情報検索」「ユーザーコード情報作成」の順に処理が行われているとみるのが至当である。また、課金については、課金用識別情報を用いる代わりに、「ユーザー情報記憶部に207に記憶される複数のユーザー情報から発券要求情報に含まれるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報に含まれる銀行口座番号やクレジットカード番号に基づいて課金を行う。」と記載されている。そして、ユーザー識別情報によりユーザー情報記憶部から対応するユーザー情報を読み出すことは、ユーザー識別情報に基づいてユーザー情報記憶部を検索していることになる。

以上より、甲第1号証には、上記記載事項(ア)ー(ク)からみて、課金を課金用識別情報の代わりにユーザー情報を用いて行うものとして、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

券使用装置のバーコードリーダー装置によって読み取られるバーコードによるユーザーコード情報を通信回線を通してユーザー装置に送信して紙に印刷するバーコードによるユーザーコード情報の付与方法であって、
券発行装置の情報判別部がユーザー識別情報を含む発券要求情報をユーザー装置から通信回線を通して受信するステップと、
前記発券要求情報に基づいて条件の合致した複数のホテルをユーザー装置に表示し、ユーザーに一つのホテルを選択させるステップと、
前記受信した発券要求情報に含まれるユーザー識別情報に基づいてユーザー情報記憶部を検索し、ユーザー情報を読み出すステップと、
前記読み出したユーザー情報により課金可能であったときには券情報を検索し出力し、前記受信したユーザー識別情報に対応するユーザー情報部のユーザー情報を用いてバーコードによるユーザーコード情報を作成するステップと、
ことを特徴とするバーコードのよるユーザーコード情報付与方法

また、甲第1号証には、上記記載事項(ア)ー(ク)からみて、課金を課金用識別情報の代わりにユーザー情報を用いて行うものとして、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

紙に券情報と共に印刷されたバーコードによるユーザーコード情報を使用した認証方法であって、
該バーコードのよるユーザーコード情報が、券発行装置の情報判別部がユーザー識別情報を含む発券要求情報をユーザー装置から通信回線を通して受信するステップと、前記受信した発券要求情報に含まれるユーザー識別情報に基づいてユーザー情報記憶部を検索し、ユーザー情報を読み出すステップと、前記読み出してユーザー情報により課金可能であったときには券情報を検索し出力し、前記受信したユーザー識別情報に対応するユーザー情報部のユーザー情報を用いてバーコードによるユーザーコード情報を作成するステップと、通信回線を通して前記バーコードのよるユーザーコード情報を前記ユーザー装置に送信して紙に印刷するステップとを経て付与されたバーコードのよるユーザーコード情報であって、
券発行装置が、ユーザーによって紙に印刷されたバーコードによるユーザーコード情報を提示され、且つ券使用装置のバーコードリーダー装置で読み取られて通信回線を通じて送信されてきた前記バーコードのよるユーザーコード情報を受信するステップと、
前記券発行装置が、該受信したバーコードのよるユーザーコード情報が、前記ユーザーからの発券要求情報に応じてユーザーに対して通信回線を通じて送信されたバーコードのよるユーザーコード情報と、一致するか否かを照合するステップと、
前記券発行装置が、受信したバーコードによるユーザーコード情報が送信されたバーコードと一致したときに、当該バーコードのよるユーザーコード情報が付された券情報を有効とする判別結果を券使用装置に通信回線を通じて送信するステップと
を備えている認証方法。

(3)甲第4号証の記載事項
「携帯電話の購入者に個人を識別するためのバーコードを与え、来店時に携帯電話の画面にバーコードを呼び出してもらう。それを店員がバーコードリーダーで読めば、現金やカードを使わずに決済ができる仕組みだ。」

(4)対比
(4-1)本件発明1との対比
引用発明1における「バーコードによるユーザーコード情報」は、紙に印刷する形態では、いわゆる縦縞のバーコードであるが、通信回線を伝送する段階やバーコードを生成する段階では、縦縞バーコードの元になる電気信号の形態を取るから、本件発明1の「バーコード」「認証用バーコード」又は「バーコード信号」に相当する。また、引用発明1の「バーコードによるユーザーコード情報」の生成は、ユーザー識別情報に対応するユーザー情報を用いているので、ユーザーに固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号となっている。
引用発明1においては、券情報に付されたユーザーコード情報により券情報の有効性を判別しサービスを提供する者がおり、このサービスを提供する者は認証を要求するのであるから、本件発明1の「認証要求者」に相当し、券使用装置は「認証要求者」のものである。また、引用発明1のユーザーは、バーコードを付与される者であるから、本件発明1の被認証者に相当する。
引用発明1の「ユーザー情報」は、本件発明1の「顧客データ」に相当し、また、引用発明1の「ユーザー情報記憶部」は、本件発明1の「顧客データベース」に相当する。
引用発明1の「バーコードリーダー装置」は本件発明1の「バーコード読み取り装置」に相当する。
引用発明1の「ユーザー装置」と本件発明1の「被認証者の携帯電話」とは、要求発信装置である点で一致している。また、本件発明1において、認証に用いるバーコードを送信され、表示される携帯電話は、バーコード要求信号を送信した者のものではあるが、バーコード要求信号を送信した携帯電話と同一であるとの限定はされてなく、被認証者の所有する他の携帯電話を含むから、この面から見てバーコードの表示される携帯電話というのは単に認証に用いるバーコードを表示する装置に過ぎず、引用発明1の「紙」と本件発明1の「携帯電話」とは、認証に用いるバーコードを表示する媒体である点で一致している。
引用発明1の「発券要求信号」と本件発明1の「バーコード要求信号」とは、バーコードを生成する契機となる要求信号である点で一致し、引用発明1の「券発行装置の情報判別部」と本件発明1の「バーコード要求信号受信手段」とは、要求を受信するものであるから、引用発明1と本件発明1とは、要求受信手段を有する点で一致している。
引用発明1の「ユーザー識別情報」は、個人に特定するための情報であり、本件発明1の「発信者番号」はバーコード要求信号を携帯電話で発信する者の情報であるから、引用発明1と本件発明1とは、個人特定情報に基づいて顧客データベースを検索して顧客データが登録済みであるか否かを判別するステップを有する点で一致している。
引用発明1では、バーコードによるユーザーコード情報を生成する段階で、条件の合致した複数のホテルをユーザー装置に表示し、ユーザーに選択させている。券使用場所であるホテルでは券情報の有効性の確認を行うから、ホテルは認証要求者に該当するものである。従って、引用発明1は本件発明1の「認証用バーコードを用いて認証を受けることができる前記認証要求者の選択肢を送り、前記被認証者にいずれかの認証要求者を選択させる」構成を含んでいることになる。

よって、本件発明1と引用発明1とは、次の点で一致している。

認証要求者の読み取り装置によって読み取られる認証用バーコードを媒体に付与するバーコード付与方法であって、
要求信号受信手段が、個人特定情報を含む要求信号を要求発信装置から受信するステップと、
検索手段が、前記受信した要求信号に含まれる個人特定情報に基づいてデータベースを検索して、前記ユーザーの顧客データが顧客データベースに登録済みであるか否かを判定するステップと、
前記ユーザーの顧客データが登録済みであったときには、前記ユーザーに固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、
バーコード伝送手段が、前記バーコード信号を送信して媒体に表示させるステップと、を備え、
前記要求信号を受信するステップが、前記要求信号に応答して、前記認証用バーコードを用いて認証を受けることができる前記認証要求者の選択肢を送り、前記被認証者にいずれかの認証要求者を選択させるステップを含んでいる、
ことを特徴とするバーコード付与方法

一方、本件発明1と引用発明1とは次の点で相違している。

(相違点1)
個人特定情報を含む要求信号が、本件発明1では発信者番号を含むバーコード要求信号であるのに対し、引用発明1ではユーザー識別情報を含む発券要求情報である点

(相違点2)
要求発信装置及びバーコードを表示する媒体が、本件発明1では携帯電話であるのに対し、引用発明1ではユーザー装置であり、また、ユーザー装置で印刷した紙である点

(相違点3)
バーコード要求信号およびバーコード信号の付与が、本件発明1ではインターネットを通して行われるのに対し、引用発明1では通信回線を通して行われる点

(4-2)相違点についての検討
相違点1について
本件発明1における「発信者番号」は、携帯電話を使ってバーコード要求信号を送信する者を特定する機能を有する番号と捉えられるから、引用発明1の「ユーザー識別情報」と同等のものである。そして、引用発明1では、発券要求情報に付加されたユーザー識別情報に基づいて、所望のデータを検索したならば、その券情報と共にユーザーコード情報をユーザー装置に送信している。引用発明1では、ユーザーコード情報はバーコードの形式を取るから、券情報にはバーコード形式のユーザーコード情報が付加されていることになる。そして、本件発明1における「バーコード要求信号」には、バーコードが返送されるための契機となる信号という意味以上のものを見いだせないから、引用発明1における「発券要求信号」と本件発明1の「バーコード要求信号」の間に格別の差異があるものとは認められない。
従って、この相違点は格別のものではない。

相違点2について
甲第1号証の引用箇所(ア)には、要求発信装置の例としてパーソナルコンピュータ、インターネット接続用端末、インターネットテレビ、ネットPC等を利用した通信機能を有する装置が挙げられているから、通信機能を有する装置として携帯電話を用いることはごく自然に想到することである。また、甲第1号証の引用箇所(ウ)には、ユーザーに送信された券情報は紙に印刷して券使用装置で使用される形態の他に、フローピーディスク、メモリカード、ICカード等の携帯型記録媒体に記録し、記録媒体に応じた入力手段で券使用装置に券情報を入力する形態も示されている。そして、甲第4号証には、認証に用いるバーコードを携帯電話に表示させてバーコードリーダーに読み取らせることが記載されているから、バーコード表示媒体として紙や携帯型記録媒体の代わりに甲第4号証に記載された携帯電話を用いることは当業者が容易に為し得ることである。

相違点3について
引用発明1において、ユーザー装置、券発行装置は通信回線で結ばれており、上記記載箇所(ア)には、ユーザー装置の例としてインターネット接続用端末、インターネットテレビが挙げられているから、ユーザー装置と券発行装置がインターネットを通して要求信号やバーコード信号をやり取りすることは想定されているところであり、この相違点は格別のものではない。

(4-3)小括
従って、本件発明1は、甲第1号証および甲第4号証に基づいて容易に発明をすることができたものである。よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(5)本件発明2との対比
本件発明2は、本件発明1の「発信者番号」を「被認証者の携帯電話番号」に限定するものである。そこで、上記本件発明1との対比における相違点1は以下のようになり、また相違点2,3は本件発明1との対比の場合と同様である。

(相違点1’)
個人特定情報を含む要求信号が、本件発明2では被認証者の携帯電話番号を含むバーコード要求信号であるのに対し、引用発明1ではユーザー識別情報を含む発券要求情報である点

(5-1)相違点についての検討
相違点1’について
発信者番号が「者」を特定するための情報であるのに対し、携帯電話番号は携帯電話という「物」を特定するための情報である。電話番号は一義的には通話のために電話機を特定する番号であるが、一般社会では通話の目的以外の使い方もされている。例えば、カーナビで目的地を地図上でポインイング入力する代わりに固定電話の番号を使うことが行われている。これは固定電話番号によって電話の設置されている場所を特定しているのである。同様に、携帯電話は個人が占有するものであるから、携帯電話番号を個人を特定するための情報として使うことは容易に想到し得ることである。また、本件発明2における「バーコード要求信号」には、バーコードが返送されるための契機となる信号という意味以上のものを見いだせないから、引用発明1における「発券要求信号」と本件発明2の「バーコード要求信号」の間に格別の差異があるものとは認められない。
従って、この相違点は格別のものではない。

(5-2)小括
従って、本件発明2は、甲第1号証および甲第4号証に基づいて容易に発明をすることができたものである。よって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(6)本件発明3と引用発明2との対比
引用発明2における「バーコードによるユーザーコード情報」は、紙に印刷する形態では、いわゆる縦縞のバーコードであるが、通信回線を伝送する段階やバーコードを生成する段階では、縦縞バーコードの元になる電気信号の形態を取るから、本件発明3の「バーコード」「認証用バーコード」又は「バーコード信号」に相当する。また、引用発明2の「バーコードによるユーザーコード情報」は、ユーザー識別情報に対応するユーザー情報を用いているので、ユーザーに固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号となっている。
また、引用発明2においては、券情報に付されたユーザーコード情報により券情報の有効性を判別しサービスを提供する者がおり、このサービスを提供する者は「認証要求者」であり、券使用装置は「認証要求者」のものである。また、引用発明2のユーザーと本件発明3の被認証者とは、サービスの提供を受ける者である点で一致している。
引用発明2の「ユーザー情報」は、本件発明3の「顧客データ」に相当し、また、引用発明2の「ユーザー情報記憶部」は、本件発明3の「顧客データベース」に相当する。
引用発明2の「バーコードリーダー装置」は本件発明3の「バーコード読み取り装置」に相当する。
引用発明2の「ユーザー装置」と本件発明3の「被認証者の携帯電話」とは、要求発信装置である点で一致している。また、本件発明3において、認証に用いるバーコードを送信され、表示される携帯電話は、バーコード要求信号を送信した者のものではあるが、バーコード要求信号を送信した携帯電話と同一であるとの限定はされてなく、被認証者の所有する他の携帯電話を含むから、この面から見てバーコードの表示される携帯電話というのは単に認証に用いるバーコードを表示する装置に過ぎず、引用発明2の「紙」と本件発明3の「携帯電話」とは、認証に用いるバーコードを表示する媒体である点で一致している。
引用発明2の「発券要求信号」と本件発明3の「バーコード要求信号」とは、バーコードを生成する契機となる要求信号である点で一致し、引用発明2の「券発行装置の情報判別部」と本件発明3の「バーコード要求信号受信手段」とは、要求を受信するものであるから、引用発明2と本件発明3とは、要求受信手段を有する点で一致している。また、引用発明2の「券発行装置の情報判別部」はユーザーコード情報を受信するものであるので、本件発明3の「バーコード受信手段」の機能を有している。
引用発明2の「ユーザコード照合部」は、本件発明3の「照合手段」に相当し、照合結果を券使用装置に送信するものであるから、引用発明2は本件発明3の「バーコード送信手段」に相当するものを有している。
引用発明2の「ユーザー識別情報」は、個人に特定するための情報であり、本件発明3の「発信者番号」はバーコード要求信号を携帯電話で発信する者の情報であるから、引用発明2と本件発明3とは、個人特定情報に基づいて顧客データベースを検索して顧客データが登録済みであるか否かを判別するステップを有する点で一致している。
引用発明2の「ユーザーコード情報が付された券情報を有効とする判別結果」と本件発明3の「バーコードを提示した被認証者を認証する旨の信号」は、認証対象を認証する旨の通知である点で一致している。

よって、本件発明3と引用発明2とは、次の点で一致している。

媒体に表示されるバーコードを使用した認証方法であって、
該バーコードが、要求信号受信手段が個人特定情報を含む要求信号をサービスを受ける者の要求発信装置から受信するステップと、
前記個人特定情報に基づいて顧客データベースを検索して顧客データが登録済みであるか否かを判別するステップと、
前記サービスを受ける者の顧客データが登録済みであったときには前記サービスを受ける者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、
通信回線を通して前記バーコード信号をサービスを受ける者に送信して媒体に表示させるステップを経て付与されたバーコードであって、
サービスを受ける者によって前記サービスを受ける者の媒体に表示されて認証要求者に提示され且つ認証要求者のバーコード読み取り機で読み取られたバーコードに対応し、認証を求める認証要求者から送信されてきたバーコード信号を通信回線を通して受信するステップと、
前記受信したバーコード信号が前記サービスを受ける者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致するか否かを判定するステップと、
前記受信したバーコード信号が前記サービスを受ける者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致したときには、認証対象を認証する旨の信号を前記認証要求者に通信回線を通して送信するステップと、を備えている、
ことを特徴とする認証方法。

一方、本件発明3と引用発明2とは次の点で相違している。

(相違点1)
認証の対象が、本件発明3では個人でありサービスを受ける者を対象としているのに対し、引用発明2ではサービスを受ける者の持参する券情報を対象としている点

(相違点2)
個人特定情報を含む要求信号が、本件発明3では発信者番号を含むバーコード要求信号であるのに対し、引用発明2ではユーザー識別情報を含む発券要求情報である点

(相違点3)
要求発信装置及びバーコードを表示する媒体が、本件発明3では携帯電話であるのに対し、引用発明2ではユーザー装置であり、また、ユーザー装置で印刷した紙である点

(相違点4)
バーコード要求信号およびバーコード信号の付与が、本件発明3ではインターネットを通して行われるのに対し、引用発明2では通信回線を通して行われる点

(6-1)相違点についての検討
相違点1について
個人認証技術には、指紋や声紋を個人の特定に用いる、いわゆる生体認証技術から、IDカードとパスワードで認証するもの、IDカードやクレジットカード所持(署名確認なし)により個人を特定するものまで個人を特定できる程度は異なるが、種々の認証手法がある。生体認証は、個体の有している固有の特徴を用いるので認証の確実度は高く、また、認証の手法は技術的である。これに対し、IDカードやクレジットカード提示による個人認証は、技術的にはIDカードやクレジットカードの真正性をチェックしているのであって、カードの提示者が真の所持者かどうかはカード発行者と所持者の契約(例えば、他人による使用、譲渡禁止)に基づくものである。本件発明は、携帯電話提示者の個体の特徴を識別するものではなく、携帯電話の提示者と所有者は同一である蓋然性が高いという携帯電話の一身専属性(一種の慣習)を利用するものであり、仮に、携帯電話の提示者と所有者が同一でない場合でも提示者に排除する機能はない。
この点に関して、請求人の平成18年2月13日付け意見書では「者Aの携帯電話を者Bが者Aに認証に使用した場合は、者Bが者Aの許可を得ているのであれば、者Bは者Aと一体と考えるべきであり、本願発明の範囲内である。」と主張している。この主張は、本件発明でいう個人認証が本人確認ではなく、携帯電話を持参した者に携帯電話所有者に付与したサービスと同等のサービスを提供するというものである。
認証要求者の提供するサービスの形態として、真正性が確認された媒体に記載されたサービスを媒体を持参した者に提供するもの(ホテル宿泊券や引用発明はこの種のサービスに属する)や、真正性が確認された媒体を持参した者に、持参した者の希望するサービスを提供するもの(クレジットカードや本件発明が前提とするサービス提供はこの種のサービスに属する)が広く普及している。
そして、いずれのサービスの形態においてもサービスを受ける者が提示する媒体の真正性をチェックする必要があり、媒体が真正であるとのチェック結果に基づいて提供されるサービスを媒体に記載された内容とする代わりに、媒体を持参した者の申し出る内容とすることは上述のサービス形態からみて当業者が容易に為し得ることである。そして、その場合、前者における媒体の認証は、媒体に記載された内容の認証と捉えられるし、後者における媒体の認証は媒体を持参した者の認証と捉えられるに過ぎない。
従って、この相違点を格別のものということはできない。

相違点2について
本件発明3のおける「発信者番号」は、携帯電話を使ってバーコード要求信号を送信する者を特定する機能を有する番号と捉えられるから、引用発明2の「ユーザー識別情報」と同等のものである。そして、引用発明2では、発券要求情報に付加されたユーザー識別情報に基づいて、所望のデータを検索したならば、その券情報と共にユーザーコード情報をユーザー装置に送信している。引用発明2では、ユーザーコード情報はバーコードの形式を取るから、券情報にはバーコード形式のユーザーコード情報が付加されていることになる。そして、本件発明3における「バーコード要求信号」には、バーコードが返送されるための契機となる信号という意味以上のものを見いだせないから、引用発明2における「発券要求信号」と本件発明3の「バーコード要求信号」の間に格別の差異があるものとは認められない。
従って、この相違点は格別のものではない。

相違点3について
甲第1号証の引用箇所(ア)には、要求発信装置の例としてパーソナルコンピュータ、インターネット接続用端末、インターネットテレビ、ネットPC等を利用した通信機能を有する装置が挙げられているから、通信機能を有する装置として携帯電話を用いることはごく自然に想到することである。また、甲第1号証の引用箇所(ウ)には、ユーザーに送信された券情報は紙に印刷して券使用装置で使用される形態の他に、フローピーディスク、メモリカード、ICカード等の携帯型記録媒体に記録し、記録媒体に応じた入力手段で券使用装置に券情報を入力する形態も示されている。そして、甲第4号証には、認証に用いるバーコードを携帯電話に表示させてバーコドリーダーに読み取らせることが記載されているから、バーコード表示媒体として紙や携帯型記録媒体の代わりに甲第4号証に記載された携帯電話を用いることは当業者が容易に為し得ることである。

相違点4について
引用発明2において、ユーザー装置、券発行装置は通信回線で結ばれており、上記記載箇所(ア)には、ユーザー装置の例としてインターネット接続用端末、インターネットテレビが挙げられているから、ユーザー装置と券発行装置がインターネットを通して要求信号やバーコード信号をやり取りすることは想定されているところであり、この相違点は格別のものではない。

(6-2)小括
従って、本件発明3は、甲第1号証および甲第4号証に基づいて容易に発明をすることができたものである。よって、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(7)本件発明4との対比
本件発明4は、本件発明3の「発信者番号」を「被認証者の携帯電話番号」に限定するものである。そこで、上記本件発明3との対比における相違点1は以下のようになり、また相違点2-4は本件発明3との対比の場合と同様である。

(相違点1’)
個人特定情報を含む要求信号が、本件発明4では被認証者の携帯電話番号を含むバーコード要求信号であるのに対し、引用発明3ではユーザー識別情報を含む発券要求情報である点

(7-1)相違点についての検討
相違点1’について
発信者番号が「者」を特定するための情報であるのに対し、携帯電話番号は携帯電話という「物」を特定するための情報である。電話番号は一義的には通話のために電話機を特定する番号であるが、一般社会では通話の目的以外の使い方もされている。例えば、カーナビで目的地を地図上でポインイング入力する代わりに固定電話の番号を使うことが行われている。これは固定電話番号によって電話の設置されている場所を特定しているのである。同様に、携帯電話は個人が占有するものであるから、携帯電話番号を個人を特定するための情報として使うことは容易に想到し得ることである。また、本件発明4における「バーコード要求信号」には、バーコードが返送されるための契機となる信号という意味以上のものを見いだせないから、引用発明2における「発券要求信号」と本件発明4の「バーコード要求信号」の間に格別の差異があるものとは認められない。
従って、この相違点は格別のものではない。

(7-2)小括
従って、本件発明4は、甲第1号証および甲第4号証に基づいて容易に発明をすることができたものである。よって、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(8)むすび
以上のとおりであるから、請求項1-4に係る発明は、甲第1号証および甲第4号証に基づいて容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1-4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2.無効理由2
請求人および被請求人の上記主張を踏まえ、本件発明3、4が甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証にから容易に発明をすることができたものかどうか検討する。

(1)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の事項が図面と共に記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は認証システム及び認証装置に係り、特にローカルエリアネットワーク(LAN)サービスの提供を正規の利用者に対してのみ許可する認証システム及び認証装置に関する。」

(イ)「 【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になる認証システムの一実施の形態のブロック図を示す。同図において、利用者のパーソナルハンディホンシステム(PHS)端末1と、利用者のパーソナルコンピュータ(PC)2と、PHS端末1とPHS公衆回線を介して接続される認証装置3と、利用者PC2と認証装置3に接続されたリモート接続装置4と、リモート接続装置4が提供するネットワークサービス5とからなる。リモートLAN接続側の構成は、認証装置3、リモート接続装置4及びネットワーク5からなる。
【0013】
認証装置3は利用者の正当性を確認する装置であり、利用者における「利用者パスワード要求/通知機能」の管理と、利用者からの接続要求に対し「一時的なパスワード」の発行と、「一時的なパスワード」を利用者パスワード要求/通知機能を持つ利用者PHS端末1と、リモート接続機能を持つリモート接続装置4への通知とを実行する。
【0014】
リモート接続装置4は、認証装置3から発行された「一時的なパスワード」を基に、利用者接続用計算機システムである利用者PC2からの接続要求を受け付け、認証装置3に対して正規ユーザか問い合わせ利用者のリモート接続を行う。利用者PHS端末1は、利用者パスワード要求/通知機能を有する一般市販の簡易型携帯電話機であり、利用者が認証装置3に対して「一時的なパスワード」を要求し、正しく認証されれば、認証装置から「一時的なパスワード」が通知される。「一時的なパスワード」は予め定められた特定のものではなく、要求の都度適宜設定されるパスワードである。
【0015】
利用者接続用計算機システムである利用者PC2は、認証装置から利用者PHS端末1に通知された「一時的なパスワード」に基づいて、リモート接続装置4に対して接続を行う。ネットワークサービス5は各利用者がサービスを受けるネットワークの資源である。
【0016】
次に、この実施の形態の動作について図2のフローチャートを併せ参照して説明する。まず、認証装置3に利用者のPHS端末1のPHS番号、認証装置パスワード及びリモート接続IDを登録する(ステップ11)。続いて、認証装置パスワード及びリモート接続IDをあらかじめ利用者に通知する(ステップ12)。続いて、利用者は利用者PHS端末1から認証装置3に対して電話(TEL)をかける(ステップ13)。電話をかける方法は、例えば「認証装置電話番号#認証装置パスワード」の数字列である。例えば0238211234#ABCDである。
【0017】
次に、認証装置3は利用者PHS端末1からの電話を受け、利用者PHS番号と認証装置パスワードを確認し(ステップ14)、それらの値がステップ11での登録情報と一致しているかどうか判断し、一致していれば利用者PHS端末1に対し、「これからパスワードを発行します。電源を切ってお待ち下さい。」等の音声メッセージで答える(ステップ15)。なお、音声メッセージ以外の文字メッセージその他の方法も可能である。
【0018】
次に、利用者は上記の音声メッセージに従い、利用者PHS端末1の電源をオフにする(ステップ16)。続いて、認証装置3は、利用者PHS端末1に対し、「一時的なパスワード」を発行し、利用者PHS端末1に文字メッセージで通知する(ステップ17)。この場合、きゃらめーる等のサービスを利用する。一時的なパスワードは、例えばVWXYZとする。
【0019】
上記の一時的なパスワード「VWXYZ」が利用者のPHS端末1に通知されると(ステップ18)、利用者はリモート接続装置4に対してネットワーク接続要求を行う(ステップ19)。すなわち、利用者PC2を使用してリモート接続装置4に対してダイヤルアップを行う。この場合、IDはステップ11で入手したID、パスワードはステップ18で入手した「一時的なパスワード」を使用する。例えば、IDは「SUZUKI」であり、一時的なパスワードは「VWXYZ」である。
【0020】
続いて、リモート接続装置4は利用者PC2から接続要求を受けると(ステップ20)、認証装置3に対してユーザID及びパスワードが正しいかどうか問い合わせる(ステップ21)。すると、認証装置3はリモート接続装置4からの問い合わせに対して利用者に発行した情報と一致するか判断する(ステップ22)。上記のステップ22で認証装置3が一致しているとの判断をした場合、その判断結果をリモート接続装置4に通知し、これによりリモート接続装置4はネットワークサービス5の利用を利用者に対して許可し、利用者PC2とネットワークサービス5との接続を行う(ステップ23)。
【0021】
これにより、利用者PC2からネットワークサービス5の資源が利用可能となる(ステップ24)。なお、認証装置3がステップ22で不一致の判断結果を得た場合、リモート接続装置4はその判断結果を受け、利用者に対するネットワークサービス5の提供を拒否する。」

以上の記載より、甲第5号証には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

一時パスワードを使用した認証方法であって、
認証装置が、利用者PHS番号を利用者PHS端末からPHS公衆回線を通じて受信するステップと、
前記受信した利用者PHS番号に基づいて前記利用者PHS番号が登録されているか否かを判断するステップと、
利用者PHS番号が登録されていたときに、一時的なパスワードを生成するステップと、該一時的なパスワードをPHS公衆回線を通じて前記利用者PHS番号の利用者PHS端末に送信して表示させると共に前記一時的パスワードとユーザIDを記憶するステップと、
前記認証装置が、利用者によって利用者PCを使用して提示された一時的パスワードとユーザIDを受け取ったリモート接続装置から問い合わせを受けるステップと、
前記リモート接続装置からの問い合わせに対して一時的パスワードとユーザIDが登録されている否かを判断するステップと、
前記問い合わせに対して一時パスワードとユーザIDが登録されていると判断したときに、その判断結果をリモード接続装置に通知するステップと、を備えている、
認証方法。

(3)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には次の事項が図面と共に記載されている。

(ウ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 書込および消去が可能な表示体と、
外部ホスト装置から送信される画像情報に基づいて、表示体上に静止画を形成するための記録手段と、
装置の使用が許可された使用者の識別情報を登録する識別情報登録手段と、
外部ホスト装置から画像情報に付随して送信される送信者の識別情報を検出する送信者識別情報検出手段とを備え、
送信者識別情報検出手段によって検出された送信者識別情報と識別情報登録手段に登録された登録識別情報とを比較して、両者が一致しない場合に画像情報の受信または静止画表示を停止することを特徴とする電子式情報表示装置。」

(エ)「 【0009】
本発明の目的は、第三者の使用を確実に制限し、正当な使用者からのアクセスだけを許可して、信頼ある画像表示を実現できる電子式情報表示装置を提供することである。」

(オ)「 【0012】
また本発明は、送信者識別情報が文字、記号、図形またはバーコード形式で記録されていることを特徴とする。
本発明に従えば、送信者識別情報が文字、記号、図形またはバーコード形式で記録されることによって、送信者識別情報検出手段は送信者識別情報を確実に識別することができる。送信者識別情報が文字、記号、図形である場合には、たとえば公知の文字認識プログラムを利用できる。また、送信者識別情報がバーコード形式である場合には、公知のバーコード読取りプログラムを利用できる。」

以上の記載より、甲第6号証には、
外部のホスト装置から送信される画像情報に基づいて画像を表示する電子式情報表示装置において、正当な使用者からの画像情報だけを表示するために画像情報に付随している送信者識別情報を用いるものであって、送信者識別情報が文字、記号、図形またはバーコード形式となっているもの
が記載されている。

(4)対比
本件発明3と引用発明3とを対比すると、
引用発明3は、利用者がネットワーク資源を利用する際に、利用者を認証する方法であり、利用者が認証されたときにリモート接続装置が接続を行い、ネットワーク資源を利用できるようにしている。従って、リモート接続装置が利用者PCをネットワークに接続するというのはネットワーク資源をサービスとして提供することである。そこで、引用発明3の「利用者」はネットワーク資源を利用する際に認証を受ける者であり、本件発明1の「被認証者」に相当する。
請求人は、平成18年2月13日付け意見書において、「本件発明における「認証要求者」は、段落【0006】に記載で定義されているように「被認証者の身元、信用度などの確認を欲するもの」である」と述べている。引用発明3は、ネットワーク資源をサービスとして提供するシステムであるから、ネットワーク資源を提供する者が存在し、この者は利用者の認証を行っていることから、利用者の身元の確認を欲しているものということができる。 従って、引用発明3には、本件発明3の「認証要求者」に相当するネットワーク資源を提供する者が存在する。そして、引用発明3の「利用者」は、ネットワーク資源提供者のサービスを受ける者であるから、ネットワーク資源提供者の顧客でもある。
引用発明3の「PHS番号」「PHS端末」「判断結果」 は、それぞれ、本件発明3の「発信者番号」「携帯電話」「被認証者を認証する旨の信号」に相当する。
引用発明3の認証装置は、利用者PHS番号を受信し、登録している利用者PHS番号との一致を判断し、一時的パスワードを生成し、一時的パスワードを利用者PHS端末に送信しているから、本件発明3の「バーコード要求信号受信手段」「検索手段」「バーコード生成手段」「バーコード伝送手段」に対応する機能を引用発明3の認証装置は有している。
また、引用発明3のPHS公衆回線と本件発明3のインターネットとは、通信回線である点で一致している。
引用発明3では、利用者PHS番号に基づいて利用者PHS番号が登録されているか否かを判断しているから、利用者PHS番号が登録されたデータベースを有し、また、登録されているか否かを判断するためにはデータベースを検索する必要があることは自明のことである。更に、利用者PHS番号は顧客データと言って良いものであるから、引用発明3の「受信した利用者PHS番号に基づいて前記利用者PHS番号が登録されているか否かを判断する」ということは、本件発明3の「前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいて顧客データベースを検索し前記被認証者の顧客データが登録済みであるか否かを判定する」と同等のものである。
引用発明3の「一時的なパスワード」と、本件発明3において認証装置で生成される「バーコード」とは、認証装置で生成され被認証者の認証に用いられる第1の認証用コードである点で一致し、更に、引用発明3においてリモート接続装置に送られ、認証装置への問い合わせに使用される「一時的なパスワードとユーザID」と、本件発明3において認証要求者から認証装置に送信される「バーコード」とは、引用発明3の「一時的なパスワードとユーザID」は利用者を特定しサービスを提供するかどうかを決定するために利用者を認証しているのであるから、被認証者に固有の第2の認証コードである点で一致している。ここで、第2の認証コードは第1の認証コードを含むものである。また、引用発明3では、利用者は一時的なパスワードの発行を受けるためにPHS端末を使って認証装置にPHS番号を通知しているので、一時的パスワードを要求する信号を有しており、本件発明3のバーコード要求信号とは、「認証コード要求信号」である点で一致している。

よって、本件発明3と引用発明3とは次の点で一致している。

認証用コードを使用した認証方法であって、
認証装置が、発信者番号を含む認証コード要求信号を被認証者の携帯電話から通信回線を通じて受信するステップと、
検索手段が前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいて顧客データベースを検索し前記被認証者の顧客データが登録済みであるか否かを判定するステップと、
前記被認証者の顧客データが登録済みであったときには第1の認証用コードを生成するステップ、
伝送手段が、通信回線と通じて該第1の認証用コードを前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップと
を経て前記被認証者に付与された認証用コードであって、
前記認証装置が、被認証者によって提示され、送信されてきた第1の認証コードを含む第2の認証用コードを受信するステップと、
前記認証装置が、受信した第2の認証用コードが、記憶されている第2の認証コードと一致するか否かを判定するステップと、
前記認証装置が、受信した第2の認証用コードが記憶されていたときに、当該第2の認証用コードを提示した被認証者を認証する旨の信号を前記認証要求者に通知するステップと、を備えている、
認証方法。

一方、本件発明3と引用発明3とは次の点で相違している。

(相違点1)
引用発明3では、第1の認証用コードが「一時的なパスワード」であり、第2の認証用コードが「一時的パスワードとユーザID」であり、第2の認証用コードが利用者PCに入力され、リモート接続装置に受け取られるものであるのに対し、本件発明3では第1の認証用コードと第2の認証用コードが共に同一の「バーコード」であり、携帯電話に表示され、認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られるものである点、

(相違点2)
本件発明3では、付与されたバーコードは「被認証者に固有」のものであり、付与されたバーコードに基づいて認証を行うものであるのに対し、引用発明3では第1の認証コードは固有のものとは言い切れず、また、第1の認証コードを含む第2の認証用コードに基づいて認証を行っている点

(相違点3)
バーコード要求信号及びバーコード信号を、本件発明3ではインターネットを通して送受信するものであるのに対し、引用発明3ではPHS公衆回線を通じて送受信するものである点

(相違点4)
認証用コードの受信及び認証する旨の信号の通知を、本件発明3では通信回線を通じて行うものであるのに対し、引用発明2では、通信回線を通じて行うかどうか明記されていない点

(5)相違点についての検討
相違点1について
引用発明3の「一時的なパスワード」は、文字メッセージとして利用者PHS端末に表示されるものであるが、甲第6号証には識別情報として、文字、記号、またはバーコードのようなコード形式のものが示されており、第1の認証用コード又は第2の認証用コードとしてどのようなコードを用いるかは適宜決定すべきものである。
甲第4号証には、携帯電話を認証に用いる場合に、認証用コードとしてバーコードを表示するものが示されているから、認証用コードとしてバーコードを用いることは容易に為し得ることである。
そして、認証用コードとして、バーコードを用いた場合、入力装置としてバーコード読み取り装置を用いることもバーコードを用いたときの当然に帰結に過ぎない。
例えば、特開平10-69553号公報(甲第1号証)には、
「【0113】
すなわち、情報入力手段としては、ユーザーコード情報が、紙に記録された情報であるときは、スキャナ装置等のOCR装置、バーコードリーダー装置等の光学的読み取り装置を用いることが可能であり、ユーザーコード情報がユーザーの記憶による情報の場合及び前述の紙に記録された情報(数字、文字または記号で表記してある場合)である場合は、キーボード、マウス、操作パネル等の入力機器を用いることが可能であり、また、ユーザーコード情報が携帯型記録媒体に記録された情報である場合は、その媒体に記憶された情報を取り出すための媒体ドライブ装置等の情報読み取り装置、またはそれが小型電子機器であれば接続ケーブル、光もしくは無線通信機器等を用いることが可能である。」
と記載されているように、(イ)紙に書かれた文字情報ならユーザがキーボート等の入力機器を用いたり、OCR装置を用いる手法、(ロ)紙に書かれたバーコードならバーコードリーダー装置を用いる手法、(ハ)携帯型記録媒体に記録された情報なら、媒体ドライブ装置等の情報読み取り装置を用いる手法が示されており、入力すべき情報の表示形態、情報の保持手段に応じて適宜な入力装置を用いることは当然に為されることである。
また、引用発明3ではリモート接続装置は認証要求者側に属するが、認証用コードを入力するために用いる利用者PCは利用者側に属するものである。しかしながら、認証のために使用する装置が被認証者側に属するか認証要求者側に属するかは構築するサービスの形態によって自ずと定まる程度のことである。例えば、店舗でクレジットサービスを受ける際には、クレジット番号等は店舗の装置に入力されるが、自宅でオンラインショッピングのサービスを受けるときには利用者のパソコンにクレジット番号等の入力を行いクレジット処理を行うことになる。従って、バーコードが認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られることは格別のことではない。
なお、引用発明3の「一時的パスワード」は、パスワードによるセキュリティ機能を強化するためにパスワードの変更を容易にしたものであり、通常のパスワードと本質的に変わるところはない。

相違点2について
認証コードとして、パスワードだけを用いて認証と行う例(特開平11-338933号公報)があり、また、本件明細書においても、その【0034】段落に「また、上記実施形態は、バーコードと発信者番号(携帯電話番号)の組み合わせで本人確認を行い認証を行うように構成されているが、バーコード生成手段が生成したバーコード(バーコード信号)のみに基づいて、または、バーコード信号とパスワード等の他の暗号或いは信号とを組み合わせて、確認、認証を行うように構成してもよい。」と記載しているようにどのような情報項目を認証コードして用いるかは適宜為し得る程度のことである。
引用発明3において、第2の認証用コードは被認証者に固有となっているのに対し、一時的なパスワード自身については、ユーザに固有とまでは言い切れないが、特開平11-338933号公報には、コンピュータ間で申込者を認証するためにパスワードを用いる技術が示されており、ここにおいてパスワードは申込者固有のものとされている。従って、引用発明3において認証のために用いる一時的なパスワードを被認証者に固有のものとすることは容易に想到し得ることである。
また仮に、一時的なパスワードを被認証者に固有のものとすることが容易に想到し得ないとしても、引用発明3において、利用者の認証に必要となるのはユーザIDと一時的なパスワードを組み合わせた情報であり、認証に必要となる一部の情報である一時的なパスワードを認証装置で作成し、利用者側でユーザIDと組み合わせて利用者を特定し認証できる情報としているのであるから、入力の合理性を考慮し、ユーザIDと一時的なパスワードを別のコード体系としたり別の装置で別個に作成するのではなく、ユーザIDと一時的なパスワードを一体として認証装置で作成することはごく自然に想到されることである。

相違点3について
公衆回線をインターネット用に用いることは普通に為されていることであり、携帯電話との信号のやり取りにインターネットを用いることは格別のことではない。

相違点4について
引用発明3では、リモート接続装置が認証装置に問い合わせを行い、認証装置は問い合わせに対する判断結果を返しており、両装置間で信号のやり取りを行っている。装置間の信号のやり取りを通信回線を通じて行う形態は通常のものであるから、この点を格別の相違ということはできない。

(6)むすび
以上のとおり、本件発明3は、甲第4,5,6号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明4は、本件発明3の発信者番号を携帯電話番号とするものであり、本件発明3と引用発明3との対比において何ら異なる相違点が生ずるものではないから、本件発明3におけると同様の理由により容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、請求項1-4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
バーコード付与方法および認証方法
【技術分野】
【0001】
本発明はバーコード付与方法および認証方法に関し、より詳細には、認証用のバーコード付与方法およびバーコードを利用した認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個人の身元確認等の認証は、印鑑、付与されたパスワード、カードに設けられたエンボスまたは磁気テープ等を照合することによって行われていた。
本発明はこのような技術を背景になされたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに対し、本発明は、従来とは全く異なった方式で個人の身元確認等の認証を行うことができる認証方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、認証要求者の読み取り装置によって読み取られる認証用バーコードをインターネットを通して被認証者の携帯電話に付与するバーコード付与方法であって、バーコード要求信号受信手段が、発信者番号を含むバーコード要求信号を前記被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、検索手段が、前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいてデータベースを検索して、前記被認証者の顧客データが顧客データベースに登録済みであるか否かを判定するステップと、前記被認証者の顧客データが登録済みであったときには、バーコード生成手段が、前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、バーコード伝送手段が、インターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップと、を備え、前記バーコード要求信号を受信するステップが、前記バーコード要求信号に応答して、前記認証用バーコードを用いて認証を受けることができる前記認証要求者の選択肢を前記被認証者の携帯電話に送り、前記被認証者にいずれかの認証要求者を選択させるステップを含んでいる、ことを特徴とするバーコード付与方法が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、発信者番号が被認証者の携帯電話番号である。
【0005】
このような構成を備えた本発明によれば、データベースでの身元確認の後に、認証用のバーコードが被認証者に付与される。
【0006】
ここで、被認証者とは、認証により自らの身元、信用度等を明らかにすることを欲するものを指し、例えば、買い物をする顧客、クレジットカード使用者等である。又、認証要求者とは、被認証者の身元、信用度などの確認を欲するものを指し、例えば、店舗、クレジットカード会社、銀行等がある。
【0007】
又、本件出願において「バーコード」とは、図2に示されているような横方向に並べられた複数の縦線によるパターンである一般的なバーコードに限定されるものではなく、光学的に読み取り判別可能な他の識別標識をも含むものである。
【0008】
本発明の他の態様によれば、携帯電話に表示されるバーコードを使用した認証方法であって、該バーコードが、バーコード要求信号受信手段が発信者番号を含むバーコード要求信号を被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、検索手段が前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいて顧客データベースを検索して前記被認証者の顧客データが登録済みであるか否かを判定するステップと、前記被認証者の顧客データが登録済みであったときにはバーコード生成手段が前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、バーコード伝送手段がインターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップとを経て前記被認証者に付与されたバーコードであって、バーコード受信手段が、前記被認証者によって該被認証者の携帯電話に表示されて認証要求者に提示され且つ該認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られたバーコードに対応し、認証を求める認証要求者から送信されてきたバーコード信号を通信回線を通して受信するステップと、照合手段が、前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致するか否かを判定するステップと、前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致したときには、バーコード送信手段が、当該被認証者を認証する旨の信号を前記認証要求者に通信回線を通して送信するステップと、を備えている、ことを特徴とする認証方法が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、発信者番号が被認証者の携帯電話番号である、
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、従来とは全く異なった方式で個人の身元確認等の認証を行うことができる認証方法等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面に沿って本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態である認証装置100を備えている認証システムを示すブロック図であり、図2は、バーコードの表示例を示す図面であり、図3は、この認証装置100が識別標識となるバーコードを付与する際の処理動作を示すフローチャートであり、図4は、この認証装置100がバーコードの判定を行って顧客の認証を行う際の処理動作を示すフローチャートである。
【0012】
まず、図1に沿って、認証装置100の構成を説明する。認証装置100は、顧客管理用サーバであり、被認証者である顧客から要求に応じてこの顧客に認証用(身元確認用)バーコードを付与するバーコード付与手段110を備えている。バーコード付与手段110は、顧客データベース(DB)112と、バーコード生成手段114と、バーコード伝送手段116とを備えている。
【0013】
顧客データベース(顧客DB)112には、登録済み顧客の氏名と、携帯電話番号とを含む顧客情報が収容されている。また、バーコード生成手段114は、バーコード送受信端末である顧客の携帯電話200の発信装置(バーコード要求手段)202から電話回線(通信回線)を通してバーコード要求信号を受け、このバーコード要求信号に含まれる当該顧客の発信者番号、即ち、携帯電話番号に基づいて顧客データベース112を検索し、当該発信者番号を発見した場合にはバーコード、詳細には、バーコードに対応する信号(バーコード信号)を生成するように構成されている。このバーコードは、当該顧客が特定の店舗300で使用するためのものであり、顧客および店舗に対して一意的に生成される。即ち、バーコードは、当該顧客が、特定の店舗でしか使用できない固有のバーコードとなる。
【0014】
さらに、バーコード伝送手段116は、バーコード生成手段114が生成したバーコード、詳細には、バーコード信号を顧客およびバーコードデータベース122に伝送するように構成されている。この顧客へのバーコードの伝送は、通信回線を介して、顧客の携帯電話200の受信装置(バーコード受信手段)204にバーコード、詳細には、バーコード信号を伝送することによって行われる。バーコード信号は、例えば、GIF形式、JPEG形式に圧縮した画像フォーマットとして伝送されるのが好ましい。
【0015】
この実施形態では、携帯電話200は、伝送されたバーコード信号を記憶し、これに対応したバーコード400を、その場であるいはその後の呼び出しに応じて、液晶表示画面などの表示部206に表示できるように構成されている(図2)。携帯電話の所有者である顧客は、この認証システムの加盟者(店舗等)で買い物等を行う際、付与されたバーコード400を携帯電話の表示部206に表示させ、このバーコード400と自らが所有する携帯電話の番号(発信者番号)との組み合わせを、身元を確認させる手段(ID)として使用する。尚、表示部206には、バーコード400に加えて、登録の有効期限402や他のメッセージ404等を表示させるて利便性を向上させてもよい。
【0016】
尚、バーコードデータベース122には、バーコード信号と共に、当該バーコードを付与された顧客の発信者番号(携帯電話番号)も伝送され、両者が組み合わせて(対応付けられて)収容されるように構成されている。
【0017】
認証装置100は、さらに、顧客が買い物等をした店舗から送られてきた顧客のバーコード、詳細には、バーコード信号等に基づいて、当該顧客に認証を付与する即ち顧客の身元確認を行うバーコード判定装置120を備えている。
【0018】
バーコード判定装置120は、バーコードデータベース122と、バーコード照合手段124とを備えている。上述したように、バーコードデータベース122には、バーコード伝送手段116から伝送されたバーコード、詳細には、バーコード信号が、このバーコードが付与された顧客の発信者番号(携帯電話番号)と組み合わせて記憶されている。
【0019】
また、バーコード照合手段124は、認証要求者である店舗300のバーコード読取り装置302で読みとられバーコード確認手段304から送られてきたバーコード信号と携帯電話番号との組み合わせを、バーコードデータベース122に記憶されているバーコード信号とこのバーコードが付与された顧客の発信者番号(携帯電話番号)と組み合わせと照合して、店舗300から送られてきたバーコード信号と携帯電話番号との組み合わせが、適正であるか否かを判定するように構成されている。
【0020】
詳細には、店舗300から通信回線を介して送られてきたバーコード信号と携帯電話番号との組み合わせと同一の組み合わせが、バーコードデータベース122中に存在しているときには、店舗300から送られてきたバーコード信号と携帯電話番号との組み合わせが適正、即ち、当該店舗で買い物等をした顧客(バーコード使用者)は、顧客データベース112に登録された適正な使用者であると判定するように構成されている。そして、バーコード照合手段124は、店舗300のバーコード確認手段304に、当該店舗で買い物等をした顧客(バーコード使用者)が、適正な使用者である旨の信号、又は、適正な使用者でない旨の信号を伝送するように構成されている。
【0021】
次に、図3に沿って、認証装置100が認証用のバーコードを付与する際の作動(認証付与方法)を説明する。図3において、「S」は、認証装置100が実行する各処理のステップを示している。
【0022】
まず、この認証装置100による認証用のバーコードの付与を求める顧客が、認証装置100に対して通信回線を介してバーコード要求信号を発する。この実施形態では、顧客が携帯電話200から認証装置100に対して、電話をかけることにより、バーコード要求信号が、認証装置100に伝送されるように構成されている。顧客の携帯電話200のバーコード要求手段(発信装置)202からのバーコード要求信号には、当該携帯電話200の発信者番号(携帯電話番号)を示す信号が含まれているので、認証装置100に設けられたバーコード付与手段110のバーコード生成手段114が、顧客からのバーコード要求信号を受信することにより、発信者番号を受信することになる(S1)。
【0023】
次に、認証装置100では、バーコード生成手段114が、受信した顧客の発信者番号が顧客データベース112内に存在しているか否かを判定する(S2)ことによって、バーコードの付与を求める顧客が会員登録済みの顧客であるか否かをチェックする。受信した顧客の発信者番号が顧客データベース112内に存在していない場合には、登録済み顧客ではないので、作動を終了する。このとき、登録済みでは無い旨の、または、登録を促すメッセージを顧客側に返送するように構成してもよい。
【0024】
受信した顧客の発信者番号が顧客データベース112内に存在していた場合には、バーコード生成手段114が、当該顧客の特定の店舗300用のバーコード信号を生成し、バーコード伝送手段116に出力する(S3)。バーコード伝送手段116は、バーコード信号を、通信回線を介して、顧客の携帯電話200の受信装置(バーコード受信手段)204に伝送するとともに、バーコード判定手段120のバーコードデータベース122にも送る(S4)。このとき、バーコードデータベース122には、バーコード信号と共に、当該バーコードを発行された顧客の発信者番号(携帯電話番号)も伝送され、両者が組み合わせとして記録される(S4)。
【0025】
この実施形態の認証システムでは、携帯電話200は、伝送されたバーコード信号を記憶し、これに対応したバーコード400を、その場であるいはその後の呼び出しに応じて、表示部206に表示できるように構成されているので、携帯電話200の所有者である顧客は、この認証システムの加盟者(店舗300等)で買い物等を行う際、受信した(付与された)バーコード400を携帯電話の表示部206に表示させ、このバーコード400と自らが所有する携帯電話200の番号(発信者番号)とを組み合わせて、身元を確認させる手段(ID)として使用することになる。
【0026】
次に、図4に沿って、認証装置100が付与されたバーコードに基づいて認証を行う際の作動(認証方法)を説明する。図4において、「S」は、認証装置100が実行する各処理のステップを示している。
【0027】
この認証装置100による認証を求める顧客は、この認証システムの加入店300で買い物をする際、上述のようにして予め取得したバーコード400を、自らの携帯電話200の表示部206に表示させ(図3)、店舗300側のバーコード読取装置302に読取らせてバーコード確認手段304に入力させる。さらに、顧客は、当該携帯電話200の番号(発信者番号)を、バーコード確認手段304に、例えば、これに接続されたキーボードなど(図示せず)を介して、入力する。このようにして店舗300側で入力されたバーコード400に対応するバーコード信号と発信者番号との組み合わせが、認証装置100に送られ、顧客の身元確認、即ち、認証に使用される。
【0028】
認証装置100のバーコード照合手段124は、店舗300のバーコード読取り装置302で読みとられ、バーコード確認手段304から送られてきたバーコード、詳細には、バーコード信号と発信者番号との組み合わせを受信する(S10)。このときもバーコード信号は、例えば、GIF形式、JPEG形式に圧縮した画像フォーマットとして伝送されるのが好ましいが、他の方法で伝送されてもよい。
【0029】
バーコード照合手段124は、バーコードデータベース122に記憶されているバーコード信号とこのバーコードが付与された顧客の発信者番号(携帯電話番号)と組み合わせを検索して、店舗300から送られてきたバーコード信号と携帯電話番号との組み合わせが、バーコードデータベース122に存在しているか否かを判定する(S12)。存在していない場合には、正当な使用ではないと判断し、当該顧客は認証されていない旨の信号を確認手段304に送信する(S14)。又、存在している場合には、正当な使用である判断し、当該顧客が認証されている旨の認証信号をバーコード確認手段304に送信することによって、当該顧客の認証を行う(S16)。
【0030】
この認証システムは、例えば、買い物額に応じてキャッシュバック等を行う会員サービスのための顧客認証や、レンタルビデオ店の会員認証などの顧客管理に利用できるが、認証が必要とされるの他の種々の用途にも利用できる。
【0031】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲に内で種々の変更、変形が可能である。例えば、上記認証システムでは、認証が行われる店舗300が1つである場合を例に本発明を説明したが、このような店舗は複数であってもよい。この場合には、バーコード要求信号に、どの店舗で用いるバーコードの認証付与を要求するかを示す信号を含めるのがよい。また、バーコード要求信号に応答して、例えば図5に示すような、このシステムで認証を受けることができる店舗の選択肢A106、B108、C410、D412、E414を表示する画面を、顧客の携帯電話200の表示部206に送り、顧客に選択をさせるようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、顧客データベース112は、登録済みの顧客名簿であったが、認証システムの利用形態によっては、電話会社の全ての加入者を含むもの、即ち、電話帳をデータベース化したものであってもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、バーコード送受信端末が単一の携帯電話200である場合を例にしたが、バーコード装置受信端末が、電話回線に接続されたパソコン等であってもよい。この場合、発信者信号は、パソコンが接続された固定電話の電話番号となる。さらに、この態様では、認証装置からダウンロードしたバーコード信号を、一旦、パソコンで受信し、バーコードを表示可能な表示部を備えた携帯電話または他の携帯端末に入力することになる。また、この態様においては、パソコンからのバーコード要求信号に、顧客が所有する携帯電話の電話番号を示す信号を含ませることにより、バーコード信号を顧客の所有する携帯電話で直接ダウンロードさせ、パソコンをバーコード要求手段として、携帯電話をバーコード受信手段として使用することもできる。
【0034】
また、上記実施形態は、バーコードと発信者番号(携帯電話番号)の組み合わせで本人確認を行い認証を行うように構成されているが、バーコード生成手段が生成したバーコード(バーコード信号)のみに基づいて、または、バーコード信号とパスワード等の他の暗号或いは信号とを組み合わせて、確認、認証を行うように構成してもよい。
【0035】
さらに、顧客データベース112に、顧客の信用情報も記憶させる等などしておき、バーコード照合手段が、店舗からの確認要請に応答して、バーコード等の照合を行う際にこの信用情報も併せて確認して店舗側に通知するように構成してもよい。このように構成すると、本発明の認証システムに、例えば、クレジットカードのような機能を持たせることもできる。
【0036】
さらに、上記実施形態では、店舗300が顧客に提示されたバーコードを認証装置100側に照会しているが、店舗300側に、バーコードデータベースと連動するデータベースを設けておく構成としてもよい。このような構成により、店舗300は、バーコードの照会を行うたびに、認証装置100との間で信号の送受信を行う必要がなく、自店舗内での照会が可能となる。
【0037】
更に、上記実施形態は、認証を求める顧客が携帯電話にバーコード表示し、これを店舗で読取らせるものであるが、認証を求める顧客(被認証者)が通信回線を使って、付与されたバーコード(バーコード信号)等を店舗(認証要求者)側に送り、店舗がバーコードとしてこれを読み取って、認証装置に対して照会を行う構成としてもよい。このような構成は、店舗が、銀行、クレジット会社等であり、これら銀行等で顧客が決済や発注を行う場合に対応できる。
【0038】
又、バーコード要求信号、および、バーコード信号等は、インターネットなどのネットワークを介して、伝送されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態である認証装置を備えている認証システムを示すブロック図である。
【図2】バーコードの表示例を示す図面である。
【図3】認証装置が被認証者にバーコードを付与する際の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】認証装置がバーコードの判定を行って被認証者を認証する際の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態で用いる表示部の図である。
【符号の説明】
【0040】
100:認証装置
110:バーコード付与手段
112:顧客データベース(DB)
114:バーコード生成手段
116:バーコード伝送手段
120:バーコード判定装置
122:バーコードデータベース
124:バーコード照合手段
200:バーコード送受信端末(携帯電話機)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証要求者の読み取り装置によって読み取られる認証用バーコードをインターネットを通して被認証者の携帯電話に付与するバーコード付与方法であって、
バーコード要求信号受信手段が、発信者番号を含むバーコード要求信号を前記被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、
検索手段が、前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいてデータベースを検索して、前記被認証者の顧客データが顧客データベースに登録済みであるか否かを判定するステップと、
前記被認証者の顧客データが登録済みであったときには、バーコード生成手段が、前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、
バーコード伝送手段が、インターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップと、を備え、
前記バーコード要求信号を受信するステップが、前記バーコード要求信号に応答して、前記認証用バーコードを用いて認証を受けることができる前記認証要求者の選択肢を前記被認証者の携帯電話に送り、前記被認証者にいずれかの認証要求者を選択させるステップを含んでいる、
ことを特徴とするバーコード付与方法。
【請求項2】
前記発信者番号が被認証者の携帯電話番号である、
請求項1に記載のバーコード付与方法。
【請求項3】
携帯電話に表示されるバーコードを使用した認証方法であって、
該バーコードが、バーコード要求信号受信手段が発信者番号を含むバーコード要求信号を被認証者の携帯電話からインターネットを通して受信するステップと、検索手段が前記受信したバーコード要求信号に含まれる発信者番号に基づいて顧客データベースを検索して前記被認証者の顧客データが登録済みであるか否かを判定するステップと、前記被認証者の顧客データが登録済みであったときにはバーコード生成手段が前記被認証者に固有の認証用バーコードに対応するバーコード信号を生成するステップと、バーコード伝送手段がインターネットを通して前記バーコード信号を前記被認証者の携帯電話に送信して表示させるステップとを経て前記被認証者に付与されたバーコードであって、
バーコード受信手段が、前記被認証者によって該被認証者の携帯電話に表示されて認証要求者に提示され且つ該認証要求者のバーコード読み取り装置で読み取られたバーコードに対応し、認証を求める認証要求者から送信されてきたバーコード信号を通信回線を通して受信するステップと、
照合手段が、前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致するか否かを判定するステップと、
前記受信したバーコード信号が前記被認証者に付与されたバーコードに対応するバーコード信号と一致したときには、バーコード送信手段が、当該被認証者を認証する旨の信号を前記認証要求者に通信回線を通して送信するステップと、を備えている、
ことを特徴とする認証方法。
【請求項4】
前記発信者番号が被認証者の携帯電話番号である、
請求項3に記載の認証方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-08-25 
結審通知日 2006-08-30 
審決日 2006-09-12 
出願番号 特願2004-268433(P2004-268433)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 青木 重徳
林 毅
登録日 2005-01-28 
登録番号 特許第3641271号(P3641271)
発明の名称 バーコード付与方法および認証方法  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 森下 賢樹  
代理人 弟子丸 健  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 青木 武司  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 熊倉 禎男  

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