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審決分類 |
審判 一部無効 発明同一 F21V |
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管理番号 | 1181369 |
審判番号 | 無効2007-800222 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-10-15 |
確定日 | 2008-06-11 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3982708号発明「直付照明器具用取付アダプタ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、各自の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.本件特許第3982708号の請求項1,2に係る発明についての出願は、平成17年8月12日に出願され、平成19年7月13日にその発明について特許権の設定登録がなされた。 2.その後、請求人は、平成19年10月15日に本件特許無効審判を請求した。 3.被請求人は、平成19年12月28日に答弁書を提出するとともに、同日付け訂正請求書を提出して明細書及び特許請求の範囲の訂正を請求した。 4.請求人に対し上記答弁書及び訂正請求書の副本を送付し、期間を指定して意見を求めたが、請求人は何ら応答しなかった。 第2 被請求人による訂正請求 平成19年12月28日付け訂正請求書による訂正の内容は、本件特許発明の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、訂正の要旨は、以下のとおりである。 1.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】 天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 ボディ側面の対称位置から直線運動により出没可能に設けられた複数の係止爪と、 ボディに回転可能に設けられ、かつ前記係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動可能に設けられた単一のハンドルと、 前記ハンドルの回転動作により前記係止爪に直線運動を与え、前記照明器具との係止または係止解除を行なう係止爪操作機構と、 前記ハンドルを前記直角方向へ移動させて該ハンドルを回転不能にする係止爪ロック機構と、を備えていることを特徴とする直付照明器具用取付アダプタ。」に訂正する。 なお、下線は、訂正箇所を示し、当審において付加した。以下同じ。 2.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を、 「【請求項2】 天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 天井面に対向する底面および該底面周縁から延びる側面を有するボディーと、 前記ボディー底面を貫通して該ボディー外部へ突設され、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに対して電気的に接続し且つ機械的に結合する栓刃と、 前記栓刃と前記照明器具とを電気的に接続するコネクタと、 前記ボディー中心を対称にして配置され、該ボディー中心からボディー側面への直線運動により該ボディー側面から出没可能に設けられていると共に、互いのボディー中心側が弾性体で押され、ボディー側面から外方へ突出するよう付勢されている複数の係止爪と、 前記係止爪を前記ボディー中心部分で連係させると共に、回転動作によって前記係止爪を前記ボディー側面から出没させる係止爪操作機能および前記係止爪の突出状態で、該係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動させる操作によって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能を持たせたハンドルと、 を備えていることを特徴とする直付照明器具用取付アダプタ。」に訂正する。 3.訂正事項3 明細書の段落【0006】を、「上記の目的を達成する為、請求項1の発明に係る直付照明器具用取付アダプタは、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 ボディ側面の対称位置から直線運動により出没可能に設けられた複数の係止爪と、 ボディに回転可能に設けられ、かつ前記係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動可能に設けられた単一のハンドルと、 前記ハンドルの回転動作により前記係止爪に直線運動を与え、前記照明器具との係止または係止解除を行なう係止爪操作機構と、 前記ハンドルを前記直角方向へ移動させて該ハンドルを回転不能にする係止爪ロック機構と、を備えていることを特徴とする。」に訂正する。 4.訂正事項4 明細書の段落【0007】を、「請求項2の発明に係る直付照明器具用取付アダプタは、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 天井面に対向する底面および該底面周縁から延びる側面を有するボディーと、 前記ボディー底面を貫通して該ボディー外部へ突設され、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに対して電気的に接続し且つ機械的に結合する栓刃と、 前記栓刃と照明器具とを電気的に接続するコネクタと、 前記ボディー中心を対称にして配置され、該ボディー中心からボディー側面への直線運動により該ボディー側面から出没可能に設けられていると共に、互いのボディー中心側が弾性体で押され、ボディー側面から外方へ突出するよう付勢されている複数の係止爪と、 前記係止爪を前記ボディー中心部分で連係させると共に、回転動作によって前記係止爪を前記ボディー側面から出没させる係止爪操作機能および前記係止爪の突出状態で、該係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動させる操作によって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能を持たせたハンドルと、 を備えていることを特徴とする。」に訂正する。 第3 訂正の可否に対する判断 1.訂正事項1について この訂正は、請求項1に係る発明の発明特定事項である「移動可能に設けられた単一のハンドル」について、係止爪の直線運動に対して、「直角方向に」移動可能としていたものを、「前記天井面に平行な直角方向へ」移動可能と、その移動方向をさらに限定したものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、明細書の発明の詳細な説明の段落【0020】には「本実施例の作用を、図7に示す照明器具取付状態、及び図15に示す照明器具の天井取付を参照しながら説明する」と記載され、【0023】には「ハンドル8が係止爪動作方向に対して直角な方向へ可動な状態となる」、「この状態でハンドル20を移動させる」と記載され、図面の図7及び15には天井面への取付アダプタの取付態様が、図2及び12にはハンドルが平行移動する態様が図示されていることから、訂正事項1により限定した事項は、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項から自明なものと認められるから、当該訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。 2.訂正事項2について この訂正は、請求項2に係る発明の発明特定事項である「操作によって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能を持たせたハンドル」について、係止爪の直線運動に対して、「直角な移動操作」としていたものを、「前記天井面に平行な直角方向へ移動させる操作」と、その操作をさらに限定したものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項2により限定した事項は、前述した訂正事項1と同様に、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項から自明なものと認められるから、当該訂正事項2は、新規事項の追加に該当しない。 3.訂正事項3,4について これらの訂正は、上記訂正事項1,2に応じて、発明の詳細な説明と特許請求の範囲との整合を図るためのものと認められるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、かつ、これらの訂正により、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもなく、新規事項の追加に該当するものでもない。 4.請求項3について 請求項2を引用する請求項3は、訂正事項2の請求項2の訂正に伴い、実質的に訂正されることとなったものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。当該訂正は特許無効審判が請求されていない請求項についての訂正であるから、当該訂正後の請求項3に係る発明の独立特許要件について検討する必要があるが、訂正後の請求項2に係る発明は後述と同様に、無効とすべき理由もないのであるから、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項3に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 5.むすび したがって、平成19年12月28日付け訂正請求書による訂正は、特許法第134条の2第1項の規定及び同条第5項の規定において準用する同法第126条第3項乃至第5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 請求人の主張 請求人は、本件特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、大略以下の1.及び2.の主張をし、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。 1.本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件特許出願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された甲第1号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから特許法第29条の2の規定により特許を受けることができず、その発明についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。(以下「無効理由1」という。) 2.本件特許の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、本件特許出願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された甲第1号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明に、甲第2号証、同第3号証、同第4号証として例示される周知技術を適用したに過ぎず、実質的に甲第1号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから特許法第29条の2の規定により特許を受けることができず、その発明についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。(以下「無効理由2」という。) 第4 被請求人の主張 一方、被請求人は、大略以下のように主張し、無効理由1及び2は妥当性を欠き、理由がないとしている。 1.無効理由1について 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載されておらず、甲第1号証に記載された発明と同一でない。 2.無効理由2について 請求項2に係る発明は、実質的に甲第1号証に記載されておらず、甲第1号証に記載された発明と同一でない。 第5 本件特許発明 前述のとおり訂正が認められるから、本件の無効審判請求に係る特許発明(以下「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、訂正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1,2に記載された、以下とおりの事項により特定されるものと認める。 「【請求項1】 天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 ボディ側面の対称位置から直線運動により出没可能に設けられた複数の係止爪と、 ボディに回転可能に設けられ、かつ前記係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向に移動可能に設けられた単一のハンドルと、 前記ハンドルの回転動作により前記係止爪に直線運動を与え、前記照明器具との係止または係止解除を行なう係止爪操作機構と、 前記ハンドルを前記直角方向へ移動させて該ハンドルを回転不能にする係止爪ロック機構と、を備えていることを特徴とする直付照明器具用取付アダプタ。 【請求項2】 天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 天井面に対向する底面および該底面周縁から延びる側面を有するボディーと、 前記ボディー底面を貫通して該ボディー外部へ突設され、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに対して電気的に接続し且つ機械的に結合する栓刃と、 前記栓刃と前記照明器具とを電気的に接続するコネクタと、 前記ボディー中心を対称にして配置され、該ボディー中心からボディー側面への直線運動により該ボディー側面から出没可能に設けられていると共に、互いのボディー中心側が弾性体で押され、ボディー側面から外方へ突出するよう付勢されている複数の係止爪と、 前記係止爪を前記ボディー中心部分で連係させると共に、回転動作によって前記係止爪を前記ボディー側面から出没させる係止爪操作機能および前記係止爪の突出状態で、該係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動させる操作によって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能を持たせたハンドルと、 を備えていることを特徴とする直付照明器具用取付アダプタ。」 第6 無効理由の検討 1.証拠に記載の事項 請求人の提示した甲第1号証乃至甲第4号証に記載の事項は以下のとおりである。 (1)甲第1号証:特願2004-172596号(特開2005-353405号公報) 甲第1号証に係る出願(特願2004-172596号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願当初明細書等」という。)には、「天井直付け型照明器具の取付け装置」に関し、図1?11とともに、以下の記載がある。 (ア)「【0001】 本発明は、天井に設けられている引掛シーリングに天井直付け型照明器具を直接に取り付けることができる天井直付け型照明器具の取付け装置に関するものである。」 (イ)「【0014】・・・(中略)・・・この取付け装置11の略円柱形の筐体12内に、一対の係止部材13、係合部材14、連結部材15、及び嵌合部材16が配置されており、筐体12外に、圧縮コイルばね17及び摘み18が配置されている。筐体12は、本体21とこの本体にビス(図示せず)で固定されている底板22とを有している。本体21の直径部にはトンネル部23が設けられており、底板22によってトンネル部23の底面が閉塞され、筐体12の側面24におけるトンネル部23の終端が開口部25になっている。トンネル部23と底板22とによって、筐体12の直径方向へ係止部材13を案内する案内部が形成されている。 【0015】 係止部材13には上下二段の係止爪26が設けられており、筐体12内への係止部材13の後退及び筐体12外への係止部材13の前進に伴って係止爪26が開口部25から没入及び突出する。」 (ウ)「【0019】・・・(中略)・・・この取付け装置11には一対の栓刃56・・・(中略)・・・が設けられており、照明器具用の電源コネクタ61が栓刃56に電気的に接続されている。そして、図10、11に示されている様に、引掛シーリング62の一対の栓刃挿入口63内に取付け装置11の栓刃56を差し込み、・・・(中略)・・・取付け装置11が引掛シーリング62に機械的に取り付けられると共に電気的に接続される。」 (エ)「【0021】・・・(中略)・・・筐体12の底板22に固定されている嵌合部材16に対して連結部材15を回転させることができる。一方、上述の様に係合部材14、連結部材15及び摘み18がビス54及びナット55で互いに固定されているので、これらの係合部材14、連結部材15及び摘み18は一体的に回転する。このため、床側から見て摘み18を右回転させると、係合部材14及び連結部材15も摘み18と一体的に床側から見て右回転する。」 (オ)「【0023】 この状態から連結部材15及び摘み18と一体的に係合部材14を床側から見て右回転させると、長孔27のうちで係合部材14の短軸側における終端から長軸側における終端へ向かって、係止部材13のピン28が長孔27内を相対的に移動する。この相対的な移動に伴ってピン28が係合部材14の中心部である孔31から離隔していき、係止部材13もトンネル部23に案内されつつ筐体12の軸心から離隔していって、係止部材13の係止爪26が筐体12の開口部25から突出していく。床側から見て摘み18を90°右回転させると、図5?7に示されている様に、トンネル部23が延びている方向と係合部材14の長軸方向とが一致し、係止爪26が開口部25から最も突出して、開口部25に対する没入状態から突出状態への係止部材13の移行が完了する。・・・(中略)・・・ 【0024】 この時点で一方の手による照明器具の支持を停止しても、照明器具の内周縁部65が係止部材13の係止爪26に係止される・・・(中略)・・・。一方、圧縮コイルばね17の弾性反発力によって、係合部材14、連結部材15及び摘み18は床側へ付勢されている。このため、板部33と溝42とが互いに平行になると、ピン28が長孔27内に挿通されているままで、図6に示されている様に溝42外に位置していた板部33が、図7に示されている様に溝42内に自動的に嵌まり込む。 【0025】 嵌合部材16は筐体12の底板22に固定されているので、板部33が溝42内に嵌まり込むと、連結部材15は回転できない。このため、床側から見て左回転させる外力が摘み18の壁状部46に印加されても、連結部材15に固定されている摘み18は左回転しない。・・・(中略)・・・つまり、係止爪26が開口部25から突出している状態から没入している状態へ係止部材13を移行させることができず、係止部材13はロック状態になっている。」 (カ)「【0026】 取付け装置11に取り付けられている照明器具を取付け装置11から取り外す場合、または、取付け装置11に照明器具を取り付ける場合において係止部材13の係止爪26が筐体12の開口部25から突出しているときは、摘み18の壁状部46を親指と人指し指とで摘み、まず、圧縮コイルばね17による付勢に抗して摘み18を天井側へ押圧する。この押圧によって、図7に示されている様に嵌合部材16の溝42内に嵌まり込んでいた連結部材15の板部33を、図6に示されている様に溝42外へ抜け出させる。板部33が溝42外へ抜け出ると、係止部材13のロック状態が解除されて、筐体12の底板22に固定されている嵌合部材16に対して連結部材15を回転させることができる。 【0027】 圧縮コイルばね17による付勢に抗して摘み18を天井側へ押圧したまま、床側から見て摘み18を左回転させることによって、係合部材14及び連結部材15も摘み18と一体的に床側から見て左回転させる。係合部材14を床側から見て左回転させると、長孔27のうちで係合部材14の長軸側における終端から短軸側における終端へ向かって、係止部材13のピン28が長孔27内を相対的に移動する。この相対的な移動に伴ってピン28が係合部材14の中心部である孔31へ接近していき、係止部材13もトンネル部23に案内されつつ筐体12の軸心へ接近していって、係止部材13の係止爪26が筐体12の開口部25内へ没入していく。床側から見て摘み18を90°左回転させると、図3、4に示されている様に、トンネル部23が延びている方向と係合部材14の短軸方向とが一致して、係止爪26が開口部25内へ完全に没入する。 【0028】・・・(中略)・・・係止爪26が開口部25内へ完全に没入すると、取付け装置11に取り付けられている照明器具の円形開孔64を筐体12の側面24の周囲から床側へ抜き出したり、照明器具の円形開孔64を筐体12の側面24の周囲に床側から天井へ向けて外挿したりすることができる。」 上記記載事項(ア)?(ウ)の記載、図4,6?11の図示内容から、取付け装置11は、天井面に固定された引掛シーリング62に取り付ける天井直付け型照明器具用のものといえ、筐体12は、天井面に対向する本体21の上面および該上面の縁部から延びる本体21の側面24を有するものといえ、栓刃56は、筐体21の外部へ突設され、天井面に固定された引掛シーリング62に対して電気的に接続され且つ機械的に取り付けられるものといえ、電源コネクタ61は、前記栓刃56と照明器具とを電気的に接続するものといえる。 図1?10の図示内容、上記記載事項(イ),(オ),(カ)の記載事項から、一対の係止爪26は、筐体12の本体21の側面24の対称位置から直線運動により出没可能に設けられているといえ、また、一対の係止爪26は、筐体12の中心を対称にして配置され、筐体12の中心から筐体12の本体21の側面24への直線運動により該筐体12の本体21の側面24から出没可能に設けられているといえる。 図6に図示された摘み18の位置と図7に図示された摘み18の位置とを比較すれば、摘み18は、天井面に垂直な方向へ移動可能であるといえ、図1?11の図示内容、上記記載事項(イ),(エ)?(カ)の記載事項から、摘み18は、筐体12に回転可能に設けられ、かつ係止爪26の直線運動に対して天井面に垂直な直角方向へ移動可能に設けられた単一のものであって、圧縮コイルばね17の弾性反発力によって、前記直角方向へ移動されるものといえ、また、摘み18は、連結部材16,係合部材14,長孔27,ピン28,係止部材13等を介して、筐体12の中心部分で係止爪26を連係させるものであって、圧縮コイルばね17の弾性反発力によって、係止爪26の直線運動に対して天井面に垂直な直角方向へ移動させるものであるといえる。 上記記載事項(ア)?(カ)、図1?11の図示内容、検討した事項を総合すると、甲第1号証に係る先願当初明細書等には、「天井面に固定された引掛シーリング62に取り付ける天井直付け型照明器具用取付け装置11であって、 筐体12の本体21の側面24の対称位置から直線運動により出没可能に設けられた一対の係止爪26と、 筐体12に回転可能に設けられ、かつ係止爪26の直線運動に対して天井面に垂直な直角方向へ移動可能に設けられた単一の摘み18と、 摘み18を90°右回転させると、係止爪26が直線運動により突出し、照明器具の内周縁部65が係止爪26に係止され、摘み18を90°左回転させることによって、係止爪26が直線運動により没入し、照明器具を筐体12から抜き出しすることができる機構と、 圧縮コイルばね17の弾性反発力によって、摘み18を前記直角方向へ移動させ、左回転させる外力が摘み18に印加されても摘み18は左回転せず、ロック状態となる機構と、を備えている天井直付け型照明器具の取付け装置11。」との発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されている。 また、上記記載事項(ア)?(カ)、図1?11の図示内容、検討した事項を総合すると、甲第1号証に係る先願当初明細書等には、「天井面に固定された引掛シーリング62に取り付ける天井直付け型照明器具用取付け装置11であって、 天井面に対向する本体21の上面および該上面の縁部から延びる本体21の側面24を有する筐体12と、 筐体21の外部へ突設され、天井面に固定された引掛シーリング62に対して電気的に接続され且つ機械的に取り付けられる栓刃56と、 前記栓刃56と照明器具とを電気的に接続する電源コネクタ61と、 筐体12の中心を対称にして配置され、筐体12の中心から筐体12の本体21の側面24への直線運動により該筐体12の本体21の側面24から出没可能に設けられている一対の係止爪26と、 筐体12の中心部分で係止爪26を連係させると共に、 摘み18を90°右回転させると、係止爪26が筐体12の本体21の側面24から突出し、摘み18を左回転させることによって、係止爪26が筐体12の本体21の側面24から没入する機能、 および係止爪26が最も突出している状態で、圧縮コイルばね17の弾性反発力によって、係止爪26の直線運動に対して天井面に垂直な直角方向へ移動させ、係止爪26が突出している状態から没入している状態へ移行させることができないようにし、ロック状態とする機能を持たせた摘み18と、を備えている天井直付け型照明器具の取付け装置11。」 との発明(以下「先願発明2」という。)が記載されている。 (2)甲第2号証:特開平8-111111号公報 甲第2号証には、「天井直付け照明器具の取付装置」に関し、図1?13とともに、以下の記載がある。 (キ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、天井直付け照明器具の取付装置に関する。」 (ク)「【0022】図13は第3の実施例を示す。本実施例に於ては、段部17bが下アダプター9bの円形孔20bの周面に、また係止爪10bが上アダプター4bの外周面にそれぞれ設けられている。 【0023】上アダプター4bの内部に径方向に沿って図示しないバネが配置され、常態においては、このバネに押されて係止爪10bの段部係止部23bが上アダプター4bの外周面から突出している。段部係止部23bの先端側面は段部17bが接近する側すなわち下側が奥向き(円心の方向)に傾斜されている。」 (3)甲第3号証:特開平9-92020号公報 甲第3号証には、「天井直付け照明器具取付装置における上アダプタ」に関し、図1?13とともに、以下の記載がある。 (ケ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、天井の引掛シーリングに照明器具を取り付けるための天井直付け照明器具取付装置に関するものである。」 (コ)「【0025】上アダプタベース17の裏面左右の収納凹部21,21には、図5に示すように、それぞれ係止部材14,14がその先端の係止爪13,13を外側に向けて上アダプタ4の径方向に摺動自在に設けられている。係止部材14の係止爪13は、円弧凸状に形成されると共に、図4に示すように、下面にテーパ部32が設けられ、上面に平坦な係止部33が設けられている。また、係止部材14の下面には、幅方向に一体に解除突片15が設けられ、図6に示すように、上アダプタ4の中心側に向く解除突片15の内側面には、略円弧状の係合凹部34が設けられている。 【0026】図5に示すように、左右の収納凹部21,21における上アダプタベース17の中央寄りの内壁35,35と係止部材14,14の後端間には、上アダプタベース17の周壁20に設けられた左右の爪出入用切欠部22,22からそれぞれ左右の係止部材14,14の各係止爪13,13を突出した状態に付勢する付勢バネ36,36がそれぞれ設けられている。」 (サ)「【0028】端子板23は、上アダプタベース17の裏面側から栓刃通孔37に端子板23の栓刃3が挿通されて栓刃3の脚部39の中途から先端が上アダプタベース12の上面から突出され(図4参照)、端子板配設凹部23の取付用ネジ孔38に端子板23に挿通されたネジ41によってねじ止めされて端子板配設凹部23に固定されている(図5参照)。」 (4)甲第4号証:特開平10-228816号公報 甲第4号証には、「天井直付け照明器具の取付装置」に関し、図1?8とともに、以下の記載がある。 (シ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、天井直付け照明器具の取付装置に関する。」 (ス)「【0013】上アダプター4の外周面には、その直径の両端部にそれぞれ係止爪10が出没自在に設けられ、図5に示すように、その内側において、上アダプター4の内部には径方向に沿ってバネ22が配置されている。係止爪10は径方向に摺動自在に配設され、その外周側端部に設けられた段部係止部23と、下面に突設されたレバー11とを有する。段部係止部23の先端面は、下側内向きに傾斜されており、常態においては、バネに押されて係止爪10の段部係止部23が上アダプター4の外周面から突出している。」 2.無効理由1について (1)本件特許発明1と先願発明1との対比 先願発明1の「引掛シーリング62」は、その機能、作用からみて、本件特許発明1の「引掛シーリングコンセント」に相当し、以下同様に、「天井直付け型照明器具」は「直付照明器具」に、「取付け装置11」は「取付アダプタ」に、「筐体12」は「ボディ」に、「本体21の側面24」は「側面」に、「係止爪26」は「係止爪」に、「摘み18」は「ハンドル」に、それぞれ相当する。 先願発明1の「筐体12に回転可能に設けられ、かつ係止爪26の直線運動に対して天井面に垂直な直角方向へ移動可能に設けられた単一の摘み18」との事項は、本件特許発明1の「ボディに回転可能に設けられ、かつ前記係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向に移動可能に設けられた単一のハンドル」との事項と、「ボディに回転可能に設けられ、かつ前記係止爪の直線運動に対して直角方向に移動可能に設けられた単一のハンドル」との事項の限りにおいて共通する。 先願発明1の「摘み18を90°右回転させると、係止爪26が直線運動により突出し、照明器具の内周縁部65が係止爪26に係止され、摘み18を90°左回転させることによって、係止爪26が直線運動により没入し、照明器具を筐体12から抜き出しすることができる機構」は、本件特許発明1の「前記ハンドルの回転動作により前記係止爪に直線運動を与え、前記照明器具との係止または係止解除を行なう係止爪操作機構」に相当し、先願発明1の「圧縮コイルばね17の弾性反発力によって、摘み18を前記直角方向へ移動させ、左回転させる外力が摘み18に印加されても摘み18は左回転せず、ロック状態となる機構」は、本件特許発明1の「前記ハンドルを前記直角方向へ移動させて該ハンドルを回転不能にする係止爪ロック機構」に相当する。 すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりとなる。 [両者の一致点] 「天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 ボディ側面の対称位置から直線運動により出没可能に設けられた複数の係止爪と、 ボディに回転可能に設けられ、かつ前記係止爪の直線運動に対して直角方向に移動可能に設けられた単一のハンドルと、 前記ハンドルの回転動作により前記係止爪に直線運動を与え、前記照明器具との係止または係止解除を行なう係止爪操作機構と、 前記ハンドルを前記直角方向へ移動させて該ハンドルを回転不能にする係止爪ロック機構と、を備えていることを特徴とする直付照明器具用取付アダプタ。」 [相違点] ハンドル(摘み)に関し、本件特許発明1では、ハンドルは係止爪の直線運動に対して「前記天井面に平行な直角方向」に移動可能に設けられたものであって、ハンドルを前記直角方向へ移動させるのに対し、先願発明1では、摘み18は係止爪26の直線運動に対して「前記天井面に垂直な直角方向」に移動可能に設けられたものであって、摘み18を前記直角方向へ移動させる点。 (2)相違点についての判断 ハンドル(摘み)を、係止爪の直線運動に対して天井面に平行な直角方向に移動可能に設ける構成は、先願発明1には何ら示唆するところがなく、かつ直付照明器具用取付アダプタにおいて、周知慣用の構成とも認められない。 そして、この構成を備えることにより、本件特許発明1は、「前記ハンドルを前記直角方向へ移動させて該ハンドルを回転不能にする」ものとなって、「【0011】・・・(中略)・・・天井等に設置された天井直付型照明器具を取り外す時に、ロック解除と係止爪解除を一連の操作で行えるようになる。」との明細書に記載のとおりの効果が得られ、さらに、ハンドルをロック解除位置に移動させて手をはなしてもその状態が維持されるという効果も得られるものである。 (3)まとめ 以上のとおり、実質的な[相違点]が存在するために、本件特許発明1は先願発明1と同一とは認められないから、請求人の提示した証拠方法によっては、本件特許を、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとすることができない。 3.無効理由2について (1)本件特許発明2と先願発明2との対比 先願発明2の「引掛シーリング62」は、その機能、作用からみて、本件特許発明2の「引掛シーリングコンセント」に相当し、以下同様に、「天井直付け型照明器具」は「直付照明器具」に、「取付け装置11」は「取付アダプタ」に、「本体21の上面」は「底面」に、「本体21の側面24」は「側面」に、「筐体12」は「ボディー」に、「栓刃56」は「栓刃」に、「電源コネクタ61」は「コネクタ」に、「係止爪26」は「係止爪」に、「摘み18」は「ハンドル」に、それぞれ相当する。 先願発明2の「摘み18を90°右回転させると、係止爪26が筐体12の本体21の側面24から突出し、摘み18を左回転させることによって、係止爪26が筐体12の本体21の側面24から没入する機能」は、本件特許発明2の「回転動作によって前記係止爪を前記ボディー側面から出没させる係止爪操作機能」に相当する。 先願発明2の「係止爪26が最も突出している状態で、圧縮コイルばね17の弾性反発力によって、板部33が溝42内に嵌まり込むと、係止爪26の直線運動に対して天井面に垂直な直角方向へ移動させ、係止爪26が突出している状態から没入している状態へ移行させることができないようにし、ロック状態とする機能」は、本件特許発明2の「前記係止爪の突出状態で、該係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動させる操作によって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能」と、「前記係止爪の突出状態で、該係止爪の直線運動に対して直角方向へ移動させることによって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能」の限りにおいて共通する。 すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりとなる。 [両者の一致点] 「天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 天井面に対向する底面および該底面周縁から延びる側面を有するボディーと、 該ボディー外部へ突設され、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに対して電気的に接続し且つ機械的に結合する栓刃と、 前記栓刃と前記照明器具とを電気的に接続するコネクタと、 前記ボディー中心を対称にして配置され、該ボディー中心からボディー側面への直線運動により該ボディー側面から出没可能に設けられている複数の係止爪と、 前記係止爪を前記ボディー中心部分で連係させると共に、回転動作によって前記係止爪を前記ボディー側面から出没させる係止爪操作機能および前記係止爪の突出状態で、該係止爪の直線運動に対して直角方向へ移動させることによって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能を持たせたハンドルと、 を備えていることを特徴とする直付照明器具用取付アダプタ。」 [相違点1] 栓刃に関し、本件特許発明2では、ボディー底面を貫通するのに対し、先願発明2では、筐体12の本体21の上面を貫通するのか否かが明確ではない点。 [相違点2] 複数の係止爪に関し、本件特許発明2では、互いのボディー中心側が弾性体で押され、ボディー側面から外方へ突出するよう付勢されているのに対し、先願発明2では、互いの筐体12中心側が弾性体で押され、筐体12の本体21の側面24から外方へ突出するよう付勢されているものではない点。 [相違点3] 係止爪ロック機能に関し、本件特許発明2では、係止爪の直線運動に対して「天井面に平行な直角方向」へ移動させる「操作」によって該係止爪の突出を保持するのに対し、先願発明2では、圧縮コイルばね17の弾性反発力によって、係止爪26の直線運動に対して天井面に垂直な直角方向へ移動させ、係止爪26が突出している状態から没入している状態へ移行することができないようにする点。 (2)相違点についての判断 [相違点1] 直付照明器具用取付アダプタにおいて、栓刃がボディー底面を貫通することは、例えば甲第3号証(上記記載事項(ケ),(サ)、図4,5を参照。)に記載されており、周知慣用技術であって、格別な効果を奏するものとは認められないので、[相違点1]に係る本件特許発明2の発明特定事項は、単に先願発明2に周知慣用技術を付加したものであり、実質的な相違点ではない。 [相違点2] 直付照明器具用取付アダプタにおいて、複数の係止爪が、互いのボディー中心側が弾性体で押され、ボディー側面から外方へ突出するよう付勢されていることは、例えば、甲第2号証(上記記載事項(キ),(ク),図13を参照。)や甲第3号証(上記記載事項(ケ),(コ),図5を参照。)、甲第4号証(上記記載事項(シ),(ス),図5を参照。)に記載されており、周知慣用技術であって、格別な効果を奏するものとは認められないので、[相違点2]に係る本件特許発明2の発明特定事項は、単に先願発明2に周知慣用技術を付加したものであり、実質的な相違点ではない。 [相違点3] 係止爪ロック機能において、係止爪の直線運動に対して「天井面に平行な直角方向」へ移動させる「操作」によって該係止爪の突出を保持する構成は、先願発明2には何ら示唆するところがなく、かつ直付照明器具用取付アダプタにおいて、周知慣用の構成とも認められない。 そして、この構成を備えることにより、本件特許発明1は、ハンドルに「係止爪ロック機能を持たせた」ものとなって、「【0011】・・・(中略)・・・天井等に設置された天井直付型照明器具を取り外す時に、ロック解除と係止爪解除を一連の操作で行えるようになる。」との明細書に記載のとおりの効果が得られ、さらにハンドルをロック解除位置に移動させて手をはなしてもその状態が維持されるという効果も得られるものである。 したがって、[相違点3]に係る本件特許発明2の発明特定事項は、単なる設計上の微差であるといえない。 (3)まとめ 以上のとおり、[相違点1],[相違点2]は実質的なものとはいえないものの、[相違点3]が存在するために、本件特許発明2は先願発明2と同一とは認められないから、請求人の提示した証拠方法によっては、本件特許を、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとすることがきでない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、請求人の提示した証拠方法によっては、本件の特許請求の範囲の請求項1,2に係る発明の特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61,62条の規定により、本件審理の経緯にかんがみ、各自が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 直付照明器具用取付アダプタ 【技術分野】 【0001】 本発明は、主に住宅の天井に設置される照明器具の落下に対する安全性を向上させ、照明器具着脱の操作性を向上させる照明器具取付装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来の照明器具取付装置は引掛シーリングアダプタに係止爪を有するタイプでは複数の係止爪が独立して可動であり、照明器具を天井面と水平でない状態で装着した場合、複数の係止爪のうちの一つしか係止せず、照明器具が傾き脱落する危険性があった。 【0003】 また、照明器具を装着した状態で係止爪をロックするタイプの引掛シーリングアダプタは係止爪操作機構と係止爪ロック機構が独立しており、照明器具を取り外す時には先ずロック機構部を操作しロックを解除し、次に係止爪操作部分を操作し照明器具を取り外す操作が必要で操作性に難点があり、しかも複数の部材を必要とし、コストアップに繋がった。 【0004】 【特許文献1】特開平11-25740号公報 【特許文献2】特開2005-216522公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の目的は、操作が簡単且つ確実で、コストを抑制でき、係止状態を確実に保持できる、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記の目的を達成する為、請求項1の発明に係る直付照明器具用取付アダプタは、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 ボディ側面の対称位置から直線運動により出没可能に設けられた複数の係止爪と、 ボディに回転可能に設けられ、かつ前記係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動可能に設けられた単一のハンドルと、 前記ハンドルの回転動作により前記係止爪に直線運動を与え、前記照明器具との係止または係止解除を行なう係止爪操作機構と、 前記ハンドルを前記直角方向へ移動させて該ハンドルを回転不能にする係止爪ロック機構と、を備えていることを特徴とする。 【0007】 請求項2の発明に係る直付照明器具用取付アダプタは、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 天井面に対向する底面および該底面周縁から延びる側面を有するボディーと、 前記ボディー底面を貫通して該ボディー外部へ突設され、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに対して電気的に接続し且つ機械的に結合する栓刃と、 前記栓刃と照明器具とを電気的に接続するコネクタと、 前記ボディー中心を対称にして配置され、該ボディー中心からボディー側面への直線運動により該ボディー側面から出没可能に設けられていると共に、互いのボディー中心側が弾性体で押され、ボディー側面から外方へ突出するよう付勢されている複数の係止爪と、 前記係止爪を前記ボディー中心部分で連係させると共に、回転動作によって前記係止爪を前記ボディー側面から出没させる係止爪操作機能および前記係止爪の突出状態で、該係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動させる操作によって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能を持たせたハンドルと、 を備えていることを特徴とする。 【0008】 請求項3の発明は、請求項2に記載の直付照明器具用取付アダプタおいて、係止爪毎に一体化されたアームを備え、各アームの一部がボディー中心からオフセットされ、その先端に前記係止爪の直線運動の方向に対して直角方向に延びた長穴を有し、ハンドルの回転中心から等しい距離の対称な位置に柱が設けられ、該柱を前記長穴に移動可能に挿入し、前記柱が長穴のほぼ中央に位置させたとき前記ハンドルの回転動作を可能にして前記係止爪をボディー側面から内方へ引っ込める機能を働かせ、前記ハンドルをその回転中心位置から係止爪の運動方向に対して直角方向に動かして前記柱を長穴の一方側に位置させたときハンドルの回転操作を不能にするロック機能を働かせることを特徴とする。 【0010】 上記の構成により、引掛シーリングアダプタの複数の係止爪を同時に動作させ、照明器具を天井面と水平な状態でのみ装着可能にし、複数の係止爪が全て確実に係止される。 また、引掛シーリングアダプタの係止爪操作機構と係止爪ロック機構を一機構化し部品点数を削減し、照明器具を取り外す時にロック解除と係止爪解除を一連の操作できる。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、天井直付型照明器具を天井等に設置するとき、引掛シーリングアダプタの複数の係止爪を同時に動作させ、照明器具を天井面と水平な状態でのみ装着可能にし、複数の係止爪が全て確実に係止するようになるため安全性が向上する。 また、天井等に設置された天井直付型照明器具を取り外す時に、ロック解除と係止爪解除を一連の操作で行えるようになる。 また、引掛シーリングアダプタの係止爪操作機構と係止爪ロック機構を一機構化するため部品点数が削減され、コストダウンとなる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 本発明の課題は、単一のハンドルの回転動作で係止爪の出没を可能にし、かつ同じハンドルを回転中心位置からずらして該ハンドルの回転操作を不能にし係止爪の突出状態をロックする機構を備えたことで実現した。 【実施例1】 【0013】 図面を参照しながら実施例を詳しく説明する。図1は直付照明器具用取付アダプタの斜視図、図2は直付照明器具用取付アダプタの底面図、図3は直付照明器具用取付アダプタの正面図である。 【0014】 直付照明器具用取付アダプタ13は、主要部として天井面1に固定された引掛シーリングコンセント2に取り付けられるボディー6、ボディー側面7から外方へ突出して照明器具本体14に係止される一対の係止爪8、この係止爪8をボディー側面に対して出没させる係止爪操作機構と係止爪8の突出状態を維持させる係止爪ロック機構とを単一のハンドル20によって操作可能に構成されている。 【0015】 図4から図8を参照しながら各部を詳しく説明する。 ボディー6は、円筒形を成しており、天井面1(図7参照)に対向するボディ底面18および底面周縁から側面7(図6参照)が形成されている。ボディー底面18には天井面1に固定された引掛シーリングコンセント2に対して電気的に接続し且つ機械的に結合する栓刃3が貫通してボディー外部へ突設されており、この栓刃3と照明器具本体14がコネクタ4により電気的に接続される。 【0016】 複数の係止爪8は傾斜面9を有し、アーム16にタッピングネジ31によって一体化され、天井面1と水平、かつボディー中心に対称に配置されている。一体化された係止爪8とアーム16はボディー中心からボディー側面7への直線運動によりボディー側面7から突出させ、または突出状態からボディー6側に引っ込める出没可能に設けられている。アーム16は複数の枝状で一端がボディー中心方向に延び、他の一端がボディー中心からオフセットされた方向に延びその先端に延長方向と直角に長穴15が形成されている。各アーム16のボディー中心方向に延びた枝状部分の先端(アーム先端)間には弾性体5が挟み込まれ、係止爪8をボディー側面7から外方へ突出するよう付勢している(図5参照)。 【0017】 一体化された係止爪8とアーム16をボディー6に組み付ける為、ボディー側面7には対称位置に形成された切り込み17、ボディー底面18より内方へ突出形成された柱19が設けられている。各アーム16のボディー中心方向に延びた枝状部分には係止爪8の運動方向に延びた長穴16aが形成されており、この長穴16aに柱19が挿入されている。 【0018】 ボディー底面18に対向するハンドル20の面にはハンドル回転中心からオフセットされて柱21、22が配置されており、この柱21、22はハンドル回転中心に対称となる位置に設けられている。柱21,22にはアーム16の長穴15が挿入されている。 【0019】 ボディー6の開放側は小ねじ36とタッピングねじ31によって固定されるカバー23で塞がれる。カバー23の中心には円形の穴24および該穴24の外方向かつ係止爪8の動作方向と直角方向に切り込み25が形成されている。ハンドル20には穴24より少し小形で該切り込み25を貫通する形状の段部26、および段部26の端に切り込み25より少し小形の段部27を有する。アーム16の長穴15の長手方向とカバー23の切り込み25の切込み方向は一致する(図5及び図8参照)。 【0020】 次に本実施例の作用を、図7に示す照明器具取付状態、及び図15に示す照明器具の天井取付を参照しながら説明する。 引掛シーリングコンセント2の栓刃導入口32に栓刃3を挿入し、引掛シーリングアダプタ13を回転させ電気的かつ機械的に接続すると同時にロック片33が栓刃導入穴に入って引っかかり、機械的接続が不意に解除されることを抑制する。 【0021】 シーリングコンセント中心から対称に配置され、かつ弾性体5により外側方向に押されボディー6の側面7より突出する係止爪8の傾斜面9が照明器具10の貫通穴11を通り抜けようとするときに貫通穴11の縁12と接触してボディー内部に引っ込み、貫通穴11を通過した後、係止爪8が突出し照明器具10に係止する。 【0022】 ハンドル20が穴24の円縁に沿って回転すると一対の係止爪8がボディー中心方向に同時に引っ込み(図9?11の状態)、照明器具10への係止が解除される。前述のハンドル20への操作力を解くと弾性体5の反発力によって係止爪8がボディー側面7の外方(アダプタ外側方向)に突出すると同時にハンドル20が上記係止爪8の引っ込み時の回転とは反対方向に逆回転する(図1?5の状態)。 【0023】 アダプタ中心からオフセットされた方向に延びその先端に延長方向と直角に長穴15の長手方向と、カバー23の係止爪8の動作方向に対して直角方向に形成された切り込み25の方向は一致し、係止爪8が完全に突出した状態でのみハンドル8が係止爪動作方向に対して直角な方向へ可動な状態となる。この状態でハンドル20を移動させることにより、係止爪8に作用するボディー中心に向かう力はアーム16を介してハンドル20を回転させようとするが、切り込み25の縁と接触して回転が阻止され、同時に係止爪8がアダプタ中心方向に引っ込むことを防止する(図12?14の状態)。 【図面の簡単な説明】 【0024】 【図1】直付照明器具用取付アダプタの斜視図である。 【図2】直付照明器具用取付アダプタの底面図である。 【図3】直付照明器具用取付アダプタの正面である。 【図4】直付照明器具用取付アダプタの縦断面図である。 【図5】直付照明器具用取付アダプタの内部機構の天面図である。 【図6】直付照明器具用取付アダプタの分解斜視図である。 【図7】照明器具取付状態の縦断面図である。 【図8】直付照明器具用取付アダプタの内部機構の斜視図である。 【図9】直付照明器具用取付アダプタの照明器具取り外し操作状態の底面図である。 【図10】直付照明器具用取付アダプタの照明器具取り外し操作状態の縦断面図である。 【図11】直付照明器具用取付アダプタの照明器具取り外し操作状態の内部機構の天面図である。 【図12】直付照明器具用取付アダプタの係止爪ロック状態の底面図である。 【図13】直付照明器具用取付アダプタの係止爪ロック状態の内部機構の天面図である。 【図14】直付照明器具用取付アダプタの係止爪ロック状態の内部機構の斜視図である。 【図15】照明器具の天井取り付け状態の分解斜視図である。 【符号の説明】 【0025】 1 天井面 2 シーリングコンセント 3 栓刃 4 コネクタ 5 弾性体 6 ボディー 7 ボディーの側面 8 係止爪 9 傾斜面 10 天井直付型照明器具 11 貫通穴 12 貫通穴の縁 13 引掛シーリングアダプタ 14 照明器具本体 15 長穴 16 アーム 17 ボディ側面の切り込み 18 ボディー底面 19 柱 20 ハンドル 21 柱 22 柱 23 カバー 24 円形の穴 25 切り込み 26 段部 27 段部 28 セード 29 ランプホルダー 30 ランプ 31 タッピンねじ 32 栓刃導入口 33 ロック片 34 電線 35 ナット 36 小ねじ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 ボディ側面の対称位置から直線運動により出没可能に設けられた複数の係止爪と、 ボディに回転可能に設けられ、かつ前記係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動可能に設けられた単一のハンドルと、 前記ハンドルの回転動作により前記係止爪に直線運動を与え、前記照明器具との係止または係止解除を行なう係止爪操作機構と、 前記ハンドルを前記直角方向へ移動させて該ハンドルを回転不能にする係止爪ロック機構と、を備えていることを特徴とする直付照明器具用取付アダプタ。 【請求項2】天井面に固定された引掛シーリングコンセントに取り付ける直付照明器具用取付アダプタであって、 天井面に対向する底面および該底面周縁から延びる側面を有するボディーと、 前記ボディー底面を貫通して該ボディー外部へ突設され、天井面に固定された引掛シーリングコンセントに対して電気的に接続し且つ機械的に結合する栓刃と、 前記栓刃と前記照明器具とを電気的に接続するコネクタと、 前記ボディー中心を対称にして配置され、該ボディー中心からボディー側面への直線運動により該ボディー側面から出没可能に設けられていると共に、互いのボディー中心側が弾性体で押され、ボディー側面から外方へ突出するよう付勢されている複数の係止爪と、 前記係止爪を前記ボディー中心部分で連係させると共に、回転動作によって前記係止爪を前記ボディー側面から出没させる係止爪操作機能および前記係止爪の突出状態で、該係止爪の直線運動に対して前記天井面に平行な直角方向へ移動させる操作によって該係止爪の突出を保持する係止爪ロック機能を持たせたハンドルと、 を備えていることを特徴とする直付照明器具用取付アダプタ。 【請求項3】前記係止爪毎に一体化されたアームを備え、各アームの一部がボディー中心からオフセットされ、その先端に前記係止爪の直線運動の方向に対して直角方向に延びた長穴を有し、ハンドルの回転中心から等しい距離の対称な位置に柱が設けられ、該柱を前記長穴に移動可能に挿入し、前記柱を長穴のほぼ中央に位置させたとき前記ハンドルの回転操作を可能にして前記係止爪をボディー側面から内方へ引っ込める機能を働かせ、前記ハンドルをその回転中心位置から係止爪の運動方向に対して直角方向に動かして前記柱を長穴の一方側に位置させたときハンドルの回転操作を不能にするロック機能を働かせることを特徴とする請求項2に記載の直付照明器具用取付アダプタ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2008-04-14 |
結審通知日 | 2008-04-17 |
審決日 | 2008-04-30 |
出願番号 | 特願2005-259858(P2005-259858) |
審決分類 |
P
1
123・
161-
YA
(F21V)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 正志、柿崎 拓 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
平上 悦司 岸 智章 |
登録日 | 2007-07-13 |
登録番号 | 特許第3982708号(P3982708) |
発明の名称 | 直付照明器具用取付アダプタ |
代理人 | 中野 佳直 |
代理人 | 手島 直彦 |
代理人 | 杉山 秀雄 |
代理人 | 白石 光男 |
代理人 | 竹本 松司 |
代理人 | 魚住 高博 |
代理人 | 中野 佳直 |
代理人 | 湯田 浩一 |