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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1181480 |
審判番号 | 不服2005-9130 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-16 |
確定日 | 2008-07-14 |
事件の表示 | 特願2002-356940「ショッピングワゴンを媒体とする広告方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月 8日出願公開、特開2004-191494〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年12月9日の出願であって、平成17年4月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月16日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 2.平成17年5月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成17年5月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正により、本件補正前の平成17年1月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲が、 「【請求項1】 自己の経営する店舗内で使用するためのショッピングワゴンとして、当該ショッピングワゴンの製造時に、そのネスティング機能を阻害しない位置にパネル(2)を予め固設するように構成したショッピングワゴン(1)を用い、当該パネル(2)には、広告主の注文に応じた広告シート(3)を取付けることが出来るような構成を施すと共に、当該広告シート(3)の取付けは、広告主との契約に基づく所定期間経過後は今までの広告表示を除去すると共に新たな広告主の広告表示に取り替えることが出来るように着脱自在な取付けとするように構成し、このような構成を具えた自店舗の備品であるショッピングワゴン (1)を広告媒体として利用することを特徴とするショッピングワゴンを媒体とする広告方法。 【請求項2】 ショッピングワゴン(1)の両側面に広告表示貼着用パネル(2)を、ネスティング機能を阻害しないように固設し、セパレーター(3a)で覆われた接着剤層(3b)を裏面に設けかつ表面には所定の広告表示が成された広告シート(3)を、当該パネル(2)に対して剥離可能に貼着するように構成したショッピングワゴン(1)を用いて成る請求項1に記載のショッピングワゴンを媒体とする広告方法。」から 「【請求項1】ショッピングワゴン(1)の両側面に対して広告表示貼着用パネル(2)を、ネスティング機能を阻害しないように固設すると共に、当該パネル(2)には、セパレーター(3a)で覆われた接着剤層(3b)を裏面に設けかつ表面には所定の広告表示が成された広告シート(3)を剥離可能に貼着することができるよう構成したショッピングワゴン(1)を用い、当該広告表示貼着用パネル(2)を具えたショッピングワゴン(1)自体は、当該ショッピングワゴンの製造メーカーにおいて製造し、上記した広告シート(3)は広告主自身または広告主の依頼に基づきスーパーマーケット等の店舗自身で製造し、当該広告表示貼着用パネル(2)に対する広告シート(3)の貼り着は、当該ショッピングワゴン(1)を購入したスーパーマーケット側で行うことを特徴とするショッピングワゴンを媒体とする広告方法。」と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項1を引用した補正前の請求項2の表現を改めるとともに、補正前の請求項1の「ショッピングワゴン」が「製造メーカーにおいて製造」されることを、「広告シート」が、「広告主自身または広告主の依頼に基づきスーパーマーケット等の店舗自身で製造」されることを、「広告シートの取付け」が「貼り着(当審注:「貼着」の誤記と認める)」であるとともに、「ショッピングワゴンを購入したスーパーマーケット側で行う」ことをそれぞれ限定したものである。 したがって、本件補正は、いずれも平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)補正発明の独立特許要件の判断 以下、本願補正発明は、特許法第2条にいう発明に相当するか否かについて検討する。 特許法は、「発明」について、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義し(特許法第2条第1項)、また、「産業上利用することができる発明」に対して、所定の要件を充足した場合に、特許を受けることができると規定する(同法第29条第1項)。 したがって、たとえ技術的思想の創作であったとしても、その思想が、専ら、人間の精神的活動を介在させた原理や法則、社会科学上の原理や法則、人為的な取り決めを利用したものである場合には特許を受けることができない。この点は、技術的思想の創作中に、自然法則を利用した部分が全く含まれない場合はいうまでもないが、仮に、自然法則を利用した部分が含まれていても、ごく些細な部分のみに含まれているだけで、技術的な意味を持たないような場合も、同様に特許を受けることができない。 そこで、補正発明について検討する。 補正発明は、「ショッピングワゴンを媒体とする広告方法」に係るものであり、当該ショッピングワゴンは、「ショッピングワゴンの両側面に対して広告表示貼着用パネルを固設すると共に、当該パネルには、セパレーターで覆われた接着剤層を裏面に設けかつ表面には所定の広告表示が成された広告シートを剥離可能に貼着することができるよう構成したショッピングワゴン」である。 ショッピングワゴンに広告等の表示を貼着することは特開平9-11909号公報、特開平9-106255号公報等に示されるように周知であり、ショッピングワゴンの両側面に対して広告表示用パネルを固設すると共に、当該パネルには、表面には所定の広告表示が成された広告シートを着脱可能に装着することができるよう構成したショッピングワゴンそのものは公知である(例えば実願昭59-50326号(実開昭60-161667号)のマイクロフィルム参照)。また、接着剤層の裏面を剥離紙等のセパレーターで覆うことは、例を示すまでもなく周知である。 したがって、補正発明の特徴とするところは、広告表示貼着用パネルを「ネスティング機能を阻害しないように」固設すること、及び「ショッピングワゴン自体は、当該ショッピングワゴンの製造メーカーにおいて製造し、上記した広告シートは広告主自身または広告主の依頼に基づきスーパーマーケット等の店舗自身で製造し、当該広告表示貼着用パネルに対する広告シートの貼着は、当該ショッピングワゴンを購入したスーパーマーケット側で行う」ことである。 広告表示貼着用パネルを「ネスティング機能を阻害しないように」固設する点は、広告表示貼着用パネルの取り付け位置を選択したものである。また、「広告表示貼着用パネルを具えたショッピングワゴン自体は、当該ショッピングワゴンの製造メーカーにおいて製造し、」については、ショッピングワゴンの製造方法について限定したものではなく、単に、ショッピングワゴン自体が、当該ショッピングワゴンの製造メーカーにおいて製造されることを記載したにすぎない。同様に、「広告シートは広告主自身または広告主の依頼に基づきスーパーマーケット等の店舗自身で製造し、」も、広告シートの製造方法について限定したものではなく、単に、広告シートが、広告主自身または広告主の依頼に基づきスーパーマーケット等の店舗自身で製造されることを記載したにすぎない。また、「当該広告表示貼着用パネルに対する広告シートの貼着は、当該ショッピングワゴンを購入したスーパーマーケット側で行う」も、当該広告表示貼着用パネルに対する広告シートの貼着は、当該ショッピングワゴンを購入したスーパーマーケット側によって行われることを記載したものである。 補正発明は「ショッピングワゴンを媒体とする広告方法」に係るものであるが、広告を付したきわめて一般的なショッピングワゴンを用いているに過ぎず、専ら、どこに広告表示貼着用パネルを取り付けるか、いずれの者がショッピングワゴン自体及び広告シートを製造するか、いずれの者が広告シートの貼着を行うかという人為的取り決めを特徴とするものであって、広告方法として格別なものではなく、自然法則を利用した技術的思想であるとはいえない。また、ショッピングワゴンに広告を付すこと自体も人為的取り決めを特徴とするものである。 補正発明のうち、「ショッピングワゴン」そのものは自然法則を利用した技術により創作されたものということができる。しかし、補正発明は「ショッピングワゴン」そのものに創作的特徴はなく、上記人為的取り決めの部分に創作的特徴があるものであって、単に既存の自然法則を利用した技術により創作されたものが一部利用されているだけにすぎない。 よって、本願補正発明に記載された事項は、特許法第2条第1項に規定される「発明」に該当せず、同法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しないから、同項の規定により特許を受けることができない。 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月11日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定された次のとおりのものと認める。 「自己の経営する店舗内で使用するためのショッピングワゴンとして、当該ショッピングワゴンの製造時に、そのネスティング機能を阻害しない位置にパネル(2)を予め固設するように構成したショッピングワゴン(1)を用い、当該パネル(2)には、広告主の注文に応じた広告シート(3)を取付けることが出来るような構成を施すと共に、当該広告シート(3)の取付けは、広告主との契約に基づく所定期間経過後は今までの広告表示を除去すると共に新たな広告主の広告表示に取り替えることが出来るように着脱自在な取付けとするように構成し、このような構成を具えた自店舗の備品であるショッピングワゴン (1)を広告媒体として利用することを特徴とするショッピングワゴンを媒体とする広告方法。」 以下、本願発明は、特許法第2条にいう発明に相当するか否かについて検討する。 本願発明は、「ショッピングワゴンを媒体とする広告方法」に係るものであり、当該ショッピングワゴンは、「ショッピングワゴンの製造時に、パネルを予め固設するように構成したショッピングワゴンであって、当該パネルには、広告シートを取付けることが出来るような構成を施すと共に、当該広告シートの取付けは、着脱自在な取付けとするように構成したショッピングワゴン」である。 「ショッピングワゴンの製造時に、パネルを予め固設するように構成したショッピングワゴンであって、当該パネルには、広告シートを取付けることが出来るような構成を施すと共に、当該広告シートの取付けは、着脱自在な取付けとするように構成したショッピングワゴン」そのものは、上記に示したように公知である。 したがって、本願発明の特徴とするところは、「自己の経営する店舗内で使用するための」ショッピングワゴンであること、広告表示貼着用パネルを「ネスティング機能を阻害しない」位置に固設すること、パネルには、「広告主の注文に応じた」広告シートが取付けられ、「広告シートの取付けは、広告主との契約に基づく所定期間経過後は今までの広告表示を除去すると共に新たな広告主の広告表示に取り替えることが出来るように」着脱自在な取付けとするようになし、「自店舗の備品である」ショッピングワゴンを広告媒体として利用することである。 「自己の経営する店舗内で使用するための」、「自店舗の備品である」は、ショッピングワゴンの使用場所について記載したものであり、広告表示貼着用パネルを「ネスティング機能を阻害しない」位置に固設する点は、広告表示貼着用パネルの取り付け位置を選択したものである。「広告主の注文に応じた」、「広告シートの取付けは、広告主との契約に基づく所定期間経過後は今までの広告表示を除去すると共に新たな広告主の広告表示に取り替えることが出来るように」は、広告シートの内容や表示方法についての記載である。 本願発明は「ショッピングワゴンを媒体とする広告方法」に係るものであるが、広告を付したきわめて一般的なショッピングワゴンを用いているに過ぎず、専ら、どこでショッピングワゴンを使用するか、どこに広告表示貼着用パネルを取り付けるか、どのような内容の広告シートとするか、どのような広告シートの表示方法にするかという人為的取り決めを特徴とするものであって、広告方法として格別なものではなく、自然法則を利用した技術的思想であるとはいえない。また、ショッピングワゴンに広告を付すこと自体も人為的取り決めを特徴とするものである。 本願発明のうち、「ショッピングワゴン」そのものは自然法則を利用した技術により創作されたものということができる。しかし、本願発明は「ショッピングワゴン」そのものに創作的特徴はなく、上記人為的取り決めの部分に創作的特徴があるものであって、単に既存の自然法則を利用した技術により創作されたものが一部利用されているだけにすぎない。 よって、本願発明は、特許法第2条第1項に規定される「発明」に該当せず、同法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しないから、同項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、「産業上利用することができる発明」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書きの規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-14 |
結審通知日 | 2008-05-19 |
審決日 | 2008-05-30 |
出願番号 | 特願2002-356940(P2002-356940) |
審決分類 |
P
1
8・
14-
Z
(G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 史郎、櫻井 茂樹 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
七字 ひろみ 江成 克己 |
発明の名称 | ショッピングワゴンを媒体とする広告方法 |
代理人 | 須田 孝一郎 |