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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1181491
審判番号 不服2006-11544  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-07 
確定日 2008-07-14 
事件の表示 平成10年特許願第279480号「熱収縮性樹脂フィルムを用いた炭素繊維パッケージ包装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月28日出願公開、特開2000-85724号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年9月14日の出願であって、平成18年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年6月30日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成18年6月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成18年6月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1.本件補正
本件補正は、平成18年2月1日付けで補正された明細書をさらに補正するものであり、その特許請求の範囲に、
「【請求項1】 ピッチ系の炭素繊維を円筒状の紙管に巻いてなる炭素繊維パッケージを、筒状の熱収縮樹脂フィルム内に入れ、加熱、収縮せしめ、パッケージの外面にフィルムを密着させる熱収縮樹脂フィルムにおいて、筒状の熱収縮樹脂フィルムの外径がパッケージの外径の110?120%であることを特徴とした炭素繊維パッケージの包装方法。
【請求項2】 ピッチ系の炭素繊維を円筒状の紙管に巻いてなる炭素繊維パッケージを、筒状の熱収縮樹脂フィルム内に入れ、加熱、収縮せしめ、パッケージの外面にフィルムを密着させる熱収縮樹脂フィルムにおいて、筒状の熱収縮樹脂フィルムの外径がパッケージの外径の110?120%であることを特徴とした炭素繊維パッケージ包装体の製造方法。」とあるのを、
「【請求項1】 ピッチ系の炭素繊維を円筒状の紙管に巻いてなる炭素繊維パッケージを、筒状の熱収縮樹脂フィルム内に入れ、加熱、収縮せしめることにより、該炭素繊維パッケージの外面及び紙管にフィルムを密着させる包装方法において、筒状の熱収縮樹脂フィルムの外径がパッケージの外径の110?120%であることを特徴とした炭素繊維パッケージの包装方法。
【請求項2】 ピッチ系の炭素繊維を円筒状の紙管に巻いてなる炭素繊維パッケージを、筒状の熱収縮樹脂フィルム内に入れ、加熱、収縮せしめることにより、該炭素繊維パッケージの外面及び紙管にフィルムを密着させる炭素繊維パッケージ包装体の製造方法おいて、筒状の熱収縮樹脂フィルムの外径がパッケージの外径の110?120%であることを特徴とした炭素繊維パッケージ包装体の製造方法。」とする補正を含むものある。
(下線は補正箇所を明示するため当審が付与したものである。)

この補正は、具体的には、「パッケージの外面にフィルムを密着させる熱収縮樹脂フィルムにおいて」の記載を、「該炭素繊維パッケージの外面及び紙管にフィルムを密着させる包装方法において」とする補正を含んでおり、補正前の請求項1に記載された包装方法において、熱収縮性フィルムが、加熱収縮されることによって、パッケージ外面に密着するとされていたものを、炭素繊維パッケージの外面に加え、さらに紙管にも密着することにより、密着の態様を限定して特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。

2.本願補正発明
補正後の本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記「1.本件補正」に記載した補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-111349号(実開昭59-16882号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、「炭素繊維包装パッケージ」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「ボビンにスクウエアエンド巻きされた炭素繊維のボビン両端を含めて収縮フィルムにより包装されたパッケージにおいて、巻端面とボビン外周面との接点から収縮フィルムまでの最も近接した距離を10mm以内に密着収縮してなる炭素繊維包装パッケージ。」(実用新案登録請求の範囲)
(b)「本考案のかかる包装パッケージは、第3図に示す如くポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等よりなる熱収縮性フィルムを円筒状に形成し、該円筒状フィルムにパッケージを嵌挿し、フィルム両端解放部をボビン端中空部にねじ込み、熱風の循環しているトンネル型オーブンなどで熱処理することにより収縮密着させるわけであるが、そのままではボビン端と、巻かれた糸条の外表面との中間部は円錐状を形成し、充分な密着状態は得られない。本考案の目的は、熱処理後フィルムが温かいうちにボビン外径よりやや大きい内径の中空円筒体を両ボビン端部に嵌挿して密着を図ることによって達成できる。また収縮フィルムで包んだパッケージを、ボビン両端部にその外径よりやや大きい内径を有する中空内筒体6をセットしスプリング圧または機械的圧力を掛けた状態で熱処理してもよい。」(第4頁第7行?第5頁第4行)

以上の記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「炭素繊維をボビンに巻いてなる炭素繊維パッケージを、円筒状の熱収縮性樹脂フィルム内に入れ、加熱、収縮せしめることにより、巻かれた糸条の外表面とボビン端にフィルムを密着させる包装方法。」

また、同じく引用された実願平1-141426号(実開平3-81851号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、ガラスロービングシュリンク包装体として、直径400mmの巻回体に対して、円周1400mmのシュリンク袋を用いて包装することが実施例に記載されており、この場合の、シュリンク袋の外径は、1400/3.14≒445.8mmで、パッケージの外径の111%程度となる。

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、本願補正発明の「紙管」は、引用発明でいう「ボビン」に含まれ、引用文献の図面には、本願出願前より広く用いられる円筒状の管が図示されており、また、引用発明の「巻かれた糸条の外表面」は、本願補正発明でいう「炭素繊維パッケージの外面」であるといえる。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「炭素繊維を円筒状のボビンに巻いてなる炭素繊維パッケージを、筒状の熱収縮樹脂フィルム内に入れ、加熱、収縮せしめることにより、該炭素繊維パッケージの外面及びボビンにフィルムを密着させる包装方法。」
〈相違点1〉
本願補正発明においては、炭素繊維が「ピッチ系の炭素繊維」であるのに対し、引用発明においては、そのような特定がなされていない点。
〈相違点2〉
本願補正発明においては、炭素繊維を「紙管」に巻くとしているのに対し、引用発明においては、ボビンが「紙管」であるとは特定されていない点。
〈相違点3〉
本願補正発明においては、「筒状の熱収縮樹脂フィルムの外径がパッケージの外径の110?120%である」のに対し、引用発明においては、炭素繊維パッケージに対する円筒状の熱収縮性樹脂フィルムの外径が特定されていない点。

5.判断
上記の各相違点について検討する。
(1)相違点1及び相違点2について
炭素繊維には、その原材料から、主としてピッチ系とアクリルニトリル系があることは、本願出願前より周知であって、いずれも、他の繊維と同様にボビンに巻き取られたパッケージ状態で取り扱われること、そして巻き取り用のボビンとして紙管を使用することも、例えば、特開昭62-171871号公報、特開平5-331761号公報等にみられるように、周知の技術であり、引用発明における炭素繊維を「ピッチ系の炭素繊維」とし、また、ボビンを「紙管」とすることは、当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎないものである。

(2)相違点3について
本件補正により補正された明細書(以下「補正明細書」という。)段落【0002】?【0004】、【0008】には、本願補正発明の相違点3に係る構成の技術的意義に関連して、次のように記載されている。
「【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は通常、中空の円筒状の紙管に巻き取られ、搬送中或いは取り扱い中に繊維が傷つかぬようパッケージ外側部を熱収縮フィルムによって包装している。
従来、パッケージを熱収縮フィルムで包装する方法としては、先ずパッケージの外径より約105%寸法の大きい円筒状フィルムで覆い仮包装されたパッケージを熱風トンネル内を通過させ、フィルムの温度が上昇し、フィルムの収縮する力が働き、パッケージの形状にそってフィルムの収縮が起こり包装が完成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の技術では、パッケージ両端面から紙管にかけての部分については、パッケージの形状にそってフィルムは収縮せずパッケージの端面から紙管まで直接フィルムで覆い、パッケージの両端面はフィルムで引っ張られた状態になりパッケージ形状が崩れてしまう。特に紙管からパッケージの外周面までの厚みが20mm以上のパッケージでは、フィルムの張力により、パッケージの形状が崩れてしまう問題が顕著である。
【0004】
【問題を解決する為の手段】
本発明者らは上記の問題を解決すべく鋭意検討の結果、パッケージに対するフィルムの寸法を規定することにより、パッケージ端面から紙管にかけての範囲がパッケージの形状にそって包装でき、外径が大きくなっても、パッケージの端部が型崩れしない包装方法を見いだした。」
「【0008】
このようにして得られたパッケージは、パッケージの外径よりも110?120% 好ましくは 112?115%大きい寸法のフィルムを使用することに、パッケージの形状にそってフィルムは収縮し良好の包装形態が得られる。一方従来のパッケージの外径に対して110%より寸法の小さいフィルムを使用すると、パッケージ両端面は、パッケージの形状にそってフィルムは収縮せず、パッケージの端面から紙管まで直接覆われパッケージの両端部がフィルムで引っ張られた状態になり、端面の形状が崩れてしまう。パッケージの外径に対して120%より大きいフィルムを使用すると、フィルムの収縮が不均一になり一部フィルムが重なり合って包装され、外観が著しく悪くなり又、フィルムが重なり合って収縮した部分が、製品に触れて製品を傷めてしまう。」

以上の記載からみて、本願補正発明の相違点3に係る構成の技術的意義は、パッケージに対するフィルムの寸法を選定することにより、「パッケージ端面から紙管にかけての範囲」をパッケージの形状にそって包装可能にし、外径が大きくなっても、パッケージの端部が型崩れしないようにすることにあると解することができる。
しかしながら、そもそも熱収縮性フィルムを用いた、いわゆるシュリンク包装は、加熱収縮によるフィルムの寸法変化により被包装物に密着させるものであり、このフィルムの加熱による収縮性が、フィルムを構成する樹脂の種類や物性、熱処理条件等によって異なることは明白である。
したがって、使用するフィルムの被包装物に対する寸法は、上記の樹脂の物性や熱処理条件に応じた寸法変化を予測し、さらに被包装物の外形等も考慮して、求められる密着の度合いに応じて選択決定すべきものであることは当業者にとって当然の課題といえる。
しかも、引用文献2に、パッケージ外径の111%程度の外径を有するシュリンク袋を用いて包装することが記載されており、さらに、シュリンク包装において、被包装物に対するフィルムの寸法として、周長を被包装物の周長の110%以上とすることは、例えば、特開平9-216956号公報(チューブ状のフィルムを用いたシュリンク包装において、フィルムの横方向の長さを被包装物に対して10?50%長くすることで種々の形状の被包装物に密着した包装体が得られることが記載されており、これを円筒形の被包装物に適用すれば、チューブ状フィルムの径が被包装物の径の110?150%となることは明らかである。)、あるいは実願昭53-40211号(実開昭54-143380号)のマイクロフィルム(熱収縮性チューブの内周が円筒形の被包装物の外周より1?15%大きい、すなわち、被包装物の外径の101?115%の内径のチューブを用いることが示されている。)にみられるように本願出願前より周知の技術である。
したがって、引用発明において、円筒状の熱収縮性樹脂フィルムの外径をパッケージの外径の110?120%とすることにより本願補正発明の相違点3に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項にすぎないものというべきである。
なお、請求人は、審判請求書において、引用発明は、熱収縮フィルムとして炭素繊維パッケージの外径より約105%大きい円筒状フィルムを用いているから、パッケージ両端面から巻かれた糸条の端部にかけての部分においてパッケージ両端面がフィルムで引っ張られる現象が発生し、かかる現象を抑制するための手段を必要とするのに対し、本願補正発明は、熱収縮樹脂フィルムの熱収縮のみで、パッケージの外面及び紙管に熱収縮樹脂フィルムを良好に密着することができる旨主張し、また当審の審尋に対する平成19年12月27日付けの回答書において、「熱収縮樹脂フィルムの外径をパッケージの外径の110?120%とする」ことの技術的意義について、従来の技術水準から必然的に決まってくる、代表的な熱収縮フィルムの材料、紙管の外径、パッケージの外経を採用すれば、炭素繊維パッケージの外面及び紙管に必ずフィルムが密着することは可能であることが、当業者に理解できる旨を主張している。
しかしながら、本願補正後の請求項1には、フィルム材料、紙管及びパッケージの寸法等について何ら特定されておらず、また、これらが特定のものであると限定的に解釈すべき特段の事情も見当たらないから、請求人の上記主張を採用することはできない。
仮に請求人の主張のとおりであるとしても、前述のとおり、本願出願前周知の、被包装物の周長に対して110%以上の周長の収縮性フィルの使用を引用発明に適用して、円筒状の熱収縮性樹脂フィルムの外径をパッケージの外径の110?120%とすることが当業者が適宜なし得る事項であるから、引用発明における、フィルム材料、ボビン及びパッケージの寸法等が請求人の主張する技術常識により特定されるものであるとすれば、請求人の主張する効果は、当然の結果として奏されるものと解すべきであって、当業者であれば十分に予測し得る程度の事項にすぎないものである。
したがって、本願補正発明は、上述した周知の技術を考慮すれば、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることのできないものであるので、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
平成18年6月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成18年2月1日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は次のとおりのものである。
「ピッチ系の炭素繊維を円筒状の紙管に巻いてなる炭素繊維パッケージを、筒状の熱収縮樹脂フィルム内に入れ、加熱、収縮せしめ、パッケージの外面にフィルムを密着させる熱収縮樹脂フィルムにおいて、筒状の熱収縮樹脂フィルムの外径がパッケージの外径の110?120%であることを特徴とした炭素繊維パッケージの包装方法。」

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載は、上記第2【理由】の「3.引用文献」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
上記第2【理由】の「1.本件補正」で検討したとおり、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本願補正発明の構成である「・・・加熱、収縮せしめることにより、該炭素繊維パッケージの外面及び紙管にフィルムを密着させる包装方法において」を、「・・・加熱、収縮せしめ、パッケージの外面にフィルムを密着させる熱収縮樹脂フィルムにおいて」とするものであって、実質的には、本願補正発明の「紙管にフィルムを密着される」という特定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2【理由】の「4.対比」及び「5.判断」で検討したとおり、本願出願前より周知の技術を考慮すれば、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前より周知の技術を考慮すれば、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-27 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-05-30 
出願番号 特願平10-279480
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65B)
P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白川 敬寛  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 関 信之
関口 勇
発明の名称 熱収縮性樹脂フィルムを用いた炭素繊維パッケージ包装方法  

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