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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1181524
審判番号 不服2005-7901  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 特願2000-216942「スクリーン印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月29日出願公開、特開2002- 29027〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年7月18日に出願したものであって、平成17年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月19日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年5月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年5月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲(請求項数1)についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、このマスクプレート上でスキージヘッドを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、印刷位置データに基づいて前記基板をマスクプレートに対して位置決めする工程と、スキージが印刷動作をする前に基板が位置決めされた状態のマスクプレート上でレーザ計測装置を移動させてマスクプレートをその上面側から3次元測定することによりマスクプレートの水平位置であるパターン孔若しくは開孔の位置を測定する工程と、スキージをマスクプレートに押し付けて摺動させることによりマスクプレートのパターン孔にペーストを充填した後、スキージをマスクプレートに押し付けた状態でマスクプレートの前記水平位置であるパターン孔若しくは開孔の位置をスキージング方向ごとに再び測定することにより印刷動作によるマスクプレートの位置ずれ量を測定するマスク位置ずれ測定工程と、マスク位置ずれ測定結果に基づいて補正された印刷位置データを記憶手段に記憶させる工程とを含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。」
と補正された。(下線は補正箇所を示している。)
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるマスク位置ずれ測定工程における「パターン孔若しくは開孔の位置」の測定について、「スキージング方向ごとに」と限定したものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
(a)原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-96700号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.【請求項1】位置合わせ部を有する被印刷体の下方に撮像装置を設置し、位置合わせ部に対応した基準マークを有するスクリーン版を被印刷体の上方に配置してなり、
スクリーンが変形していない状態における基準マークの位置とスキージを動作させてスクリーンが変形した状態における基準マークの位置とから、スクリーンの変形量を予め測定する工程と、
印刷前のスクリーン版の基準マークの位置を読み込む工程と、
被印刷体の位置合わせ部の位置を読み込む工程と、
被印刷体の位置合わせ部とスクリーン版の基準マークとのずれ量を算出し、かつこのずれ量を上記スクリーンの変形量によって補正する工程と、
補正されたずれ量に応じてスクリーン版および被印刷体の少なくとも一方を移動させる工程と、を含むスクリーン印刷の位置合わせ方法。
イ.【0002】
【従来の技術】従来、スクリーン印刷においては、スクリーン版の下方に被印刷体を配置するとともに、スクリーン版の上方にCCDカメラ等を配置し、スクリーンに設けた位置合わせ用の基準穴と被印刷体の上面に形成した位置合わせマークとのずれ量を測定し、スクリーン版と被印刷体との位置合わせを行っていた。ところが、この方法ではカメラがスクリーン版の上方に位置しているため、スクリーン版上を移動するスキージと干渉してずれ量を精密に測定できない欠点があった。
ウ.【0006】
【作用】まず、スクリーン版を所定位置にセットするとともに、その下方に撮像装置をセットし、段取り工程を行う。つまり、印刷前(スクリーンが伸びていない状態)におけるスクリーンの基準マークの位置を撮像装置によって撮像し、続いてスキージをスクリーン上で移動させ、スクリーンが伸びた状態における基準マークの位置を撮像装置で撮像する。撮像装置としては、CCDカメラのように高精度にかつデジタル信号で認識できるものが望ましい。撮像装置からの信号はマイクロコンピュータ等のコントローラに入力されて演算され、スクリーンの伸びによる基準マークのずれ量、つまりスクリーンの変形量を計算する。つぎに、位置合わせ工程に移る。まず、印刷前のスクリーン版の基準マークの位置を撮像装置によって読み込み、続いて被印刷体の位置合わせ部の位置を読み込む。これら読み込まれたデータにより、被印刷体の位置合わせ部とスクリーン版の基準マークとのずれ量を算出する。そして、このずれ量を段取り工程で計算したスクリーンの変形量によって補正する。例えば、位置合わせ部と基準マークとのx軸方向のずれ量をx、スクリーンのx軸方向の変形量をΔxとすれば、補正されたずれ量はx+Δxとなる。このようにして求めたずれ量が解消する方向にスクリーン版または被印刷体を移動させることにより、スクリーンの伸びを考慮した高精度な位置合わせを行うことができる。
エ.【0007】本発明において、被印刷体の位置合わせ部としては、単なる貫通穴のほか、切欠や被印刷体のエッジでもよく、撮像装置に明暗像を形成できるものであればよい。また、スクリーン版の基準マークはスクリーンに形成されているパターンの一部を兼用してもよく、スクリーンに光を透過しない部分を形成してもよいし、光透過部を設けてもよい。上記位置合わせ部および基準マークの個数は1個に限らず、複数個設けてもよく、またその形状も限定されない。なお、撮像装置で位置合わせ部および基準マークの位置を明瞭を認識できるように、被印刷体の下方あるいはスクリーン版の上方に光源を配置するのが望ましい。スクリーン版あるいは被印刷体を平面上で任意の方向に移動させるため、3軸(x,y,θ)の駆動機構を設けるのが望ましい。
オ.【0009】
【実施例】図1は本発明にかかる位置合わせ装置の一例を示す。撮像装置の一例であるCCDカメラ1は水平な印刷テーブル2に、そのレンズ部1aを上方に向けて固定されている。印刷テーブル2にはプリント基板などの被印刷体3が1枚ずつ搬入されるようになっており、搬入時に被印刷体3の先端面を出没自在なストッパピン4で位置決めし、かつ両側面をガイド板5で案内することにより、被印刷体3は印刷テーブル2の一定位置に必ず位置決めされる。この位置決めされた状態において、被印刷体3に形成された位置合わせ部である基準穴3aはカメラ1のレンズ部1aの上方に位置している。
カ.【0012】ここで、本発明にかかる位置合わせ方法について図2に示すフローチャートに従って説明する。まず最初に、被印刷体3と全く同一形状の透明板16を印刷テーブル2に搬入し、ストッパピン4とガイド板5とで位置決めする(ステップ20)。そして、図3(a)のようにスキージ9をスクリーン8の初期位置に位置させ(ステップ21)、スクリーン8が伸びていない状態における基準マーク8aの位置を透明板16を通してカメラ1で撮像し、その位置を読み込む(ステップ22)。ついでスキージ9を基準マーク8aの位置まで動作させ(ステップ23)、図3(b)のようにスクリーン8が伸びた状態における基準マーク8aの位置を透明板16を通してカメラ1で撮像し、その位置を読み込み(ステップ24)、両方の位置のずれ量からスクリーン8の変形量(伸び量)を測定する(ステップ25)。なお、上記説明では被印刷体3と同一形状の透明板16を使用したが、被印刷体3にスクリーン8を透視可能な基準穴3aが設けられている場合には、スキージ9の動作中の基準マーク8aの位置をカメラ1で撮像できるので、被印刷体3を使用してもよい。いずれにしても、実際の印刷工程におけるスクリーン8の変形と同様な条件で行うことが必要である。以上が段取り工程であり、スクリーン8に印刷用インクを供給しないで行う。
キ.【0013】次に、位置合わせ工程に移る。まずスキージ9をスクリーン8の初期位置に位置させ(ステップ26)、印刷前のスクリーン8の基準マーク8aをカメラ1で撮像し、その位置を読み込む(ステップ27)。その後、印刷テーブル2に被印刷体3を搬入してストッパピン4とガイド板5とで位置決めし、被印刷体3の基準穴3aをカメラ1で撮像し、その位置を読み込む(ステップ28)。そして、両者の位置から3軸(x,y,θ)方向のずれ量を演算する(ステップ29)。なお、被印刷体3に基準穴3aを設けた場合には、基準穴3aを介して基準マーク8aを撮像できるので、印刷テーブル2に被印刷体3を搬入した後に基準マーク8aと基準穴3aとの位置を同時に読み込むこともできる。この場合には、図4のように基準マーク8aと基準穴3aとのずれ量を直接測定できるので、カメラ1で2回測定する場合に比べて測定誤差を解消できるとともに、カメラ1の基準点に対する基準マーク8aおよび基準穴3aのずれ量を演算する必要がなく、演算処理が簡素化される。
ク.【0014】その後、上記のように演算したずれ量を、段取り工程で求めたスクリーン8の変形量で補正する(ステップ30)。例えば、基準マーク8aと基準穴3aとのずれ量を(x,y,θ)とし、スクリーン8の変形量を(Δx,Δy,Δθ)とすると、補正されたずれ量は(x+Δx,y+Δy,θ+Δθ)となる。そして、上記ずれ量が解消される方向にアクチュエータ10?12を作動させ、スクリーン版6の位置合わせを行う(ステップ31)。位置合わせ終了後、スクリーン版6に印刷用インクを供給し、スキージ9を移動させると(ステップ32)、被印刷体3の予め決められた位置に精密にスクリーン印刷を行うことができる。
ケ.【0016】ところで、スクリーン印刷においては、スキージ9の移動に伴うスクリーン8の伸びだけでなく、印刷用インクの粘性やスクリーン8の劣化などによってインクの乗り移り時のずれが生じることがある。そこで、被印刷体3の代わりに透明または半透明のシートまたはプレートを用意し、このシート上に予備印刷すれば、スクリーン8からシートへの印刷用インクの乗り移り時のずれを観測できる。これにより、インクの粘性やスクリーン8の劣化状況を管理できるとともに、乗り移りに伴う位置ずれを補正することもできる。

上記刊行物は、スクリーン印刷の位置合わせ方法に係るものであるが、上記オ.に「プリント基板などの被印刷体3が」と、被印刷体3としてプリント基板が例示され、上記ク.に「位置合わせ終了後、スクリーン版6に印刷用インクを供給し、スキージ9を移動させると(ステップ32)、被印刷体3の予め決められた位置に精密にスクリーン印刷を行うことができる。」と、位置合わせ終了後の実際の印刷方法が記載され、スクリーン版6には、スクリーン8が設けられているから、「スクリーン8をプリント基板に当接させ、スキージ9を移動させることにより、プリント基板に印刷するスクリーン印刷方法」を認識でき、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「スクリーン8をプリント基板に当接させ、スキージ9を移動させることにより、プリント基板に印刷するスクリーン印刷方法であって、
プリント基板と全く同一形状の透明板16を印刷テーブル2に搬入し、ストッパピン4とガイド板5とで位置決めする工程と、
スキージ9をスクリーン8の初期位置に位置させ、スクリーン8が伸びていない状態における基準マーク8aの位置を透明板16を通してカメラ1で撮像し、その位置を読み込む工程と、
スキージ9を基準マーク8aの位置まで動作させ、スクリーン8が伸びた状態における基準マーク8aの位置を透明板16を通してカメラ1で撮像し、その位置を読み込み、両方の位置のずれ量からスクリーン8の変形量を測定する工程と、
印刷前のスクリーン8の基準マーク8aの位置を読み込む工程と、
プリント基板の位置合わせ部の位置を読み込む工程と、
プリント基板の位置合わせ部とスクリーン8の基準マーク8aとのずれ量を算出し、かつこのずれ量を上記スクリーン8の変形量によって補正する工程
とを含むスクリーン印刷方法。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「スクリーン8」に、パターン孔が設けられていることは技術常識であるから、引用発明の「スクリーン8」は、本願補正発明の「パターン孔が設けられたマスクプレート」に相当し、引用発明の「プリント基板」は、本願補正発明の「基板」に相当し、引用発明のスキージ9を保持する部分、即ち、スキージヘッドが存在することは明らかであるから、引用発明の「スキージ9を移動させる」ことは、本願補正発明の「マスクプレート上でスキージヘッドを摺動させる」ことに相当し、本願補正発明の「ペースト」は、「印刷材料」の一種である。よって、引用発明の「スクリーン8をプリント基板に当接させ、スキージ9を移動させることにより、プリント基板に印刷するスクリーン印刷方法」と、本願補正発明の「パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、このマスクプレート上でスキージヘッドを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法」とは、「パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、このマスクプレート上でスキージヘッドを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板に印刷材料を印刷するスクリーン印刷方法」の点で共通する。
引用発明の「プリント基板と全く同一形状の透明板16」と、本願補正発明の各工程中の「基板」とは、「測定用被印刷体」の点で共通する。よって、引用発明の「プリント基板と全く同一形状の透明板16を印刷テーブル2に搬入し、ストッパピン4とガイド板5とで位置決めする工程」と、本願補正発明の「印刷位置データに基づいて前記基板をマスクプレートに対して位置決めする工程」は、「測定用被印刷体を位置決めする工程」で共通する。
引用発明の「スキージ9をスクリーン8の初期位置に位置させ、スクリーン8が伸びていない状態」は、印刷動作と同じ動きである摺動動作をスキージ9がする前の状態であることは明らかであり、引用発明の「位置決めする工程」において、既に透明板16が位置決めされた状態である。引用発明の「基準マーク8a」がスクリーン8の水平位置を測定するための測定対象であるから、引用発明の「基準マーク8a」と、本願補正発明の「マスクプレートの水平位置であるパターン孔若しくは開孔」とは、「マスクプレートの水平位置である測定対象」で共通する。よって、引用発明の「スキージ9をスクリーン8の初期位置に位置させ、スクリーン8が伸びていない状態における基準マーク8aの位置を透明板16を通してカメラ1で撮像し、その位置を読み込む工程」と、本願補正発明の「スキージが印刷動作をする前に基板が位置決めされた状態のマスクプレート上でレーザ計測装置を移動させてマスクプレートをその上面側から3次元測定することによりマスクプレートの水平位置であるパターン孔若しくは開孔の位置を測定する工程」とは、「スキージが摺動動作をする前に測定用被印刷体が位置決めされた状態のマスクプレートの水平位置である測定対象の位置を測定する工程」で共通する。
引用発明の「スキージ9を基準マーク8aの位置まで動作させ」る際、スキージ9をスクリーン8に押し付けて摺動させていることは明らかであり、引用発明は、「スクリーン8が伸びた状態における基準マーク8aの位置」を撮像し、読み込んでいるから、スキージ9をスクリーン8に押し付けた状態でスクリーン8の水平位置である基準マーク8aの位置を再び測定しているものといえる。引用発明の「スキージ9を基準マーク8aの位置まで動作させ」る動きと、本願補正発明の「印刷動作」とは、「スキージ摺動動作」で共通し、引用発明の「変形量」が、本願補正発明の「位置ずれ量」に相当する。よって、引用発明の「スキージ9を基準マーク8aの位置まで動作させ、スクリーン8が伸びた状態における基準マーク8aの位置を透明板16を通してカメラ1で撮像し、その位置を読み込み、両方の位置のずれ量からスクリーン8の変形量を測定する工程」と、本願補正発明の「スキージをマスクプレートに押し付けて摺動させることによりマスクプレートのパターン孔にペーストを充填した後、スキージをマスクプレートに押し付けた状態でマスクプレートの前記水平位置であるパターン孔若しくは開孔の位置をスキージング方向ごとに再び測定することにより印刷動作によるマスクプレートの位置ずれ量を測定するマスク位置ずれ測定工程」とは、「スキージをマスクプレートに押し付けて摺動させた後、スキージをマスクプレートに押し付けた状態でマスクプレートの前記水平位置である測定対象の位置を再び測定することによりスキージ摺動動作によるマスクプレートの位置ずれ量を測定するマスク位置ずれ測定工程」の点で共通する。
引用発明の「上記スクリーン8の変形量」は、本願補正発明の「マスク位置ずれ測定結果」に相当し、引用発明が「このずれ量を上記スクリーン8の変形量によって補正する」以上、「ずれ量」、「変形量」や補正されたずれ量を記憶する記憶手段を有し、各データを記憶手段に記憶させる工程を有していることは技術常識である。引用発明の「プリント基板の位置合わせ部とスクリーン8の基準マーク8aとのずれ量」と、本願補正発明の「印刷位置データ」は、「位置合わせに使用するデータ」で共通する。よって、引用発明の「印刷前のスクリーン8の基準マーク8aの位置を読み込む工程と、プリント基板の位置合わせ部の位置を読み込む工程と、プリント基板の位置合わせ部とスクリーン8の基準マーク8aとのずれ量を算出し、かつこのずれ量を上記スクリーン8の変形量によって補正する工程」と、本願補正発明の「マスク位置ずれ測定結果に基づいて補正された印刷位置データを記憶手段に記憶させる工程」とは、「マスク位置ずれ測定結果に基づいて補正された位置合わせに使用するデータを記憶手段に記憶させる工程」の点で共通する。
したがって、両者は、
「パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、このマスクプレート上でスキージヘッドを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板に印刷材料を印刷するスクリーン印刷方法であって、
測定用被印刷体を位置決めする工程と、
スキージが摺動動作をする前に測定用被印刷体が位置決めされた状態のマスクプレートの水平位置である測定対象の位置を測定する工程と、
スキージをマスクプレートに押し付けて摺動させた後、スキージをマスクプレートに押し付けた状態でマスクプレートの前記水平位置である測定対象の位置を再び測定することによりスキージ摺動動作によるマスクプレートの位置ずれ量を測定するマスク位置ずれ測定工程と、
マスク位置ずれ測定結果に基づいて補正された位置合わせに使用するデータを記憶手段に記憶させる工程とを含むスクリーン印刷方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]印刷材料に関し、本願補正発明は、ペーストと特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がなされていない点。
[相違点2]各測定工程における測定に関し、本願補正発明は、「パターン孔若しくは開孔の位置」を「マスクプレート上でレーザ計測装置を移動させてマスクプレートをその上面側から3次元測定する」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がなされていない点。
[相違点3]各測定工程における測定用被印刷体に関し、本願補正発明は、基板と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がなされていない点。
[相違点4]マスク位置ずれ測定工程において、本願補正発明は、「パターン孔にペーストを充填」する「印刷動作」によると特定され、「スキージング方向ごとに」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がなされていない点。
[相違点5]位置決めする工程において、本願補正発明は、「印刷位置データに基づいて前記基板をマスクプレートに対して」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がなされていない点。
[相違点6]位置合わせに使用するデータに関し、本願補正発明は、「印刷位置データ」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がなされていない点。

(4)判断
上記相違点1について検討する。
基板に対するスクリーン印刷において、印刷材料をペーストとすることは、周知技術(例えば、特開平8-34111号公報)であり、該周知技術を採用し、本願補正発明の上記相違点1に係る特定とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
刊行物の上記イ.に「従来、スクリーン印刷においては、スクリーン版の下方に被印刷体を配置するとともに、スクリーン版の上方にCCDカメラ等を配置し、スクリーンに設けた位置合わせ用の基準穴と被印刷体の上面に形成した位置合わせマークとのずれ量を測定し、スクリーン版と被印刷体との位置合わせを行っていた。」と記載され、刊行物の上記エ.に「スクリーン版の基準マークはスクリーンに形成されているパターンの一部を兼用してもよく」と記載され、3次元の形状を有する測定対象をレーザ計測装置を移動させて3次元測定することは、周知技術(例えば、特開平11-132734号公報)であるから、引用発明の測定工程において、基準マーク8aに代えてパターン孔(3次元の形状を有している。)を採用し、計測装置としてレーザ計測装置を採用し、マスクプレート上でレーザ計測装置を移動させてマスクプレートをその上面側から3次元測定し、本願補正発明の上記相違点2に係る特定とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点3について検討する。
引用発明は、カメラとスキージとが干渉しないようにカメラを配置したため、測定工程でプリント基板と全く同一形状の透明板16を採用しているものである。しかしながら、相違点2で既に述べたように、計測装置であるレーザ計測装置でマスクプレートの上面側から計測することが容易である以上、わざわざ透明板16を採用する必然性はなく、刊行物の上記カ.に「上記説明では被印刷体3と同一形状の透明板16を使用したが、被印刷体3にスクリーン8を透視可能な基準穴3aが設けられている場合には、スキージ9の動作中の基準マーク8aの位置をカメラ1で撮像できるので、被印刷体3を使用してもよい。いずれにしても、実際の印刷工程におけるスクリーン8の変形と同様な条件で行うことが必要である。」と記載されているように、実際の印刷工程に使用される被印刷体3を用いることが記載されており、測定工程において、実際の印刷工程と同様な条件とすることは当然の要求であるから、引用発明の透明板16に代えて、実際の印刷工程で使用されるプリント基板(本願補正発明の「基板」)を採用し、本願補正発明の上記相違点3に係る特定とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点4について検討する。
刊行物の上記ケ.には、「スクリーン印刷においては、スキージ9の移動に伴うスクリーン8の伸びだけでなく、印刷用インクの粘性やスクリーン8の劣化などによってインクの乗り移り時のずれが生じることがある。そこで、被印刷体3の代わりに透明または半透明のシートまたはプレートを用意し、このシート上に予備印刷すれば、スクリーン8からシートへの印刷用インクの乗り移り時のずれを観測できる。これにより、インクの粘性やスクリーン8の劣化状況を管理できるとともに、乗り移りに伴う位置ずれを補正することもできる。」と記載され、印刷用インクを用いて予備印刷することが記載され、測定工程において、実際の印刷工程と同様な条件とすることは当然の要求であるから、引用発明の変形量を測定する工程(本願補正発明の「マスク位置ずれ測定工程」)におけるスキージ9の動作に際し、実際の印刷工程で行うようにパターン孔にペースト(ペーストを採用することについては既に相違点1で検討している。)を充填する印刷動作とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
「スキージング方向ごとに」と特定されている点に関し、スキージを移動する方向は、一方向に限られているものではなく(例えば、特開平9-309198号公報の段落【0016】参照。)、スキージを移動する方向が異なればそれに伴うマスクプレートの変形が異なるから、スキージング方向ごとにマスクプレートの位置ずれ量を測定するのは当然のことである。
よって、本願補正発明の上記相違点4に係る特定とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点5、6について検討する。
引用発明は、「印刷前のスクリーン8の基準マーク8aの位置を読み込む工程と、プリント基板の位置合わせ部の位置を読み込む工程と、プリント基板の位置合わせ部とスクリーン8の基準マーク8aとのずれ量を算出」する工程を有している。即ち、「ずれ量」が一定でないことを前提にして、前記工程が設けられているものである。しかしながら、「ずれ量」一定で、「ずれ量」の情報を有するスクリーン印刷方法、換言すると、基板をマスクプレートに対して位置決めするのに必要なデータである印刷位置データに基づいて、基板をマスクプレートに対して位置決めする工程を備えるスクリーン印刷方法は周知技術であるから、引用発明において、当該周知技術を採用して、ずれ量を算出する工程を省略することは当業者が想到容易である。そうすると、引用発明の「位置決めする工程」においても、印刷位置データに基づいて透明板16(測定工程において基板を採用することについては既に相違点3で検討している。)をスクリーン8(本願補正発明の「マスクプレート」)に対して位置決めすることは、当然のことである。
よって、本願補正発明の上記相違点5、6に係る特定とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年5月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年3月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「パターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、このマスクプレート上でスキージヘッドを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、印刷位置データに基づいて前記基板をマスクプレートに対して位置決めする工程と、スキージが印刷動作をする前に基板が位置決めされた状態のマスクプレート上でレーザ計測装置を移動させてマスクプレートをその上面側から3次元測定することによりマスクプレートの水平位置であるパターン孔若しくは開孔の位置を測定する工程と、スキージをマスクプレートに押し付けて摺動させることによりマスクプレートのパターン孔にペーストを充填した後、スキージをマスクプレートに押し付けた状態でマスクプレートの前記水平位置であるパターン孔若しくは開孔の位置を再び測定することにより印刷動作によるマスクプレートの位置ずれ量を測定するマスク位置ずれ測定工程と、マスク位置ずれ測定結果に基づいて補正された印刷位置データを記憶手段に記憶させる工程とを含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明からマスク位置ずれ測定工程における「パターン孔若しくは開孔の位置」の測定についての限定事項である「スキージング方向ごとに」との特定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-15 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-02 
出願番号 特願2000-216942(P2000-216942)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41F)
P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大仲 雅人  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 番場 得造
上田 正樹
発明の名称 スクリーン印刷方法  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 永野 大介  

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