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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1181529
審判番号 不服2005-17163  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-07 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 特願2001-335249「情報提示方法とこの方法を利用可能な携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月16日出願公開、特開2003-140582〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月31日に出願したものであって、平成17年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年9月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年9月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲(請求項数13)についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、
「ユーザが乗車する車両において車内広告に関連する補足広告を取得するために必要な管理情報を、その車内の携帯情報端末に発信する情報提示部と、
前記情報提示部から発信された情報を受信して前記ユーザに提示する前記携帯情報端末を介し、前記ユーザから補足広告の選択指示を受信する指示受付部と、
前記指示受付部によって受信される前記指示により選択された補足広告を前記携帯情報端末に発信する広告提示部と、を有し、
前記指示受付部は、前記車両の現在位置と関連のある補足広告を受信するか否かの選択を前記携帯情報端末を介して前記ユーザに提示し、前記ユーザによる当該選択の結果を前記携帯情報端末を介して取得し、
前記広告提示部は、前記指示受付部によって取得された前記選択の結果に応じた補足広告を発信し、前記指示受付部によって取得された前記選択の結果が前記車両の現在位置と関連のある補足広告を受信する旨の選択である場合には、路線の時刻表データと時間をもって割り出された前記車両の現在位置を取得してこの現在位置と関連のある情報を地域に応じて分類された情報の中から選択して補足広告として発信し、
前記車両に設置されていることを特徴とする情報提示装置。」
と補正された。

上記補正は、当該補正後の請求項2に対応する補正前の請求項4に記載した発明を特定するために必要な事項である
「前記情報提示部から発信された情報を受信して前記ユーザに提示する前記携帯情報端末を介し、前記ユーザから補足広告の選択指示を受信する指示受付部」について、
「前記車両の現在位置と関連のある補足広告を受信するか否かの選択を前記携帯情報端末を介して前記ユーザに提示」すること、及び「前記ユーザによる当該選択の結果を前記携帯情報端末を介して取得」することを追加限定すると共に、
「前記指示受付部によって受信される前記指示により選択された補足広告を前記携帯情報端末に発信する広告提示部」について、
「前記指示受付部によって取得された前記選択の結果に応じた補足広告を発信」すること、及び「前記指示受付部によって取得された前記選択の結果が前記車両の現在位置と関連のある補足広告を受信する旨の選択である場合には、路線の時刻表データと時間をもって割り出された前記車両の現在位置を取得してこの現在位置と関連のある情報を地域に応じて分類された情報の中から選択して補足広告として発信」することを追加限定するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-65494号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.【特許請求の範囲】
「【請求項5】 中吊り広告、看板、ビデオ広告等の広告媒体を利用した広告情報の提供サービスにおいて、
光通信等の無線通信を介して携帯情報端末に接続される通信手段を有し、上記携帯情報端末との間で上記広告媒体で表された広告に関する情報の情報通信を行う広告掲示手段よりなる情報提供装置。
【請求項6】 上記広告媒体で表された広告に関する情報を蓄積する情報蓄積手段を更に有し、
上記広告掲示手段は、上記情報蓄積手段に蓄積された広告に関する情報の中で、上記携帯情報端末から受けた情報取得要求に対応した情報を上記携帯情報端末に送ることを特徴とする請求項5記載の情報提供装置。
【請求項7】 上記広告掲示手段に接続され、上記広告掲示手段から上記情報取得要求を受け、上記情報取得要求に対応した情報を上記情報蓄積手段に蓄積された広告に関する情報の中から取り出し、取り出された情報を上記広告掲示手段に返す情報制御手段を更に有し、
上記広告掲示手段は、上記情報取得要求を上記情報制御手段に供給し、上記情報制御手段から上記情報取得要求に対応した情報を取得することを特徴とする請求項6記載の情報提供装置。
【請求項8】 上記広告掲示手段は、上記広告媒体で表された広告の種別を判別する種別判別手段を更に有する請求項5乃至7のうちいずれか1項記載の情報提供装置。
【請求項9】 中吊り広告、看板、ビデオ広告等の広告媒体を利用した広告情報サービスにおいて、
光通信等の無線通信を介して携帯情報端末に接続される通信手段を有し、上記携帯情報端末との間で上記広告媒体で表された広告に関する情報の情報通信を行う広告掲示装置。
【請求項10】 上記広告媒体で表された広告の種別を判別する種別判別手段を更に有する請求項9記載の広告掲示装置。」
イ.段落【0008】
「【課題を解決するための手段】本発明は、中吊り広告、看板、ビデオ広告等の広告媒体を利用した広告情報の提供サービスにおける情報提供方法であって、光通信機能等の無線通信機能を有した携帯情報端末と、上記広告媒体に関連し光通信機能等の無線通信機能を有した広告掲示部との間で、光通信等の無線通信を介して上記広告媒体で表される広告情報の種別に応じた情報通信を行う。」
ウ.段落【0009】
「従って、本発明によれば、情報受領者は広告媒体に掲示されている広告に興味、関心を抱いたその場で広告掲示部からその広告についての情報を取得することが可能である。上記本発明の情報提供方法において、上記広告情報の種別を上記広告掲示部で判別してもよい。」
エ.段落【0010】
「図1は本発明の原理を説明するための図である。同図に示す如く、本発明の情報提供方法は、広告媒体により表される広告に関する情報を登録する段階(ステップ101)と、携帯情報端末から、光通信等の無線通信を介して、掲示された上記広告媒体により表される広告に関する情報の取得要求を受信する段階(ステップ102)と、上記登録された広告に関する情報の中から、上記情報の取得要求に応じて広告に関する情報を取得する段階(ステップ103)と、上記情報の取得要求に応じた広告に関する情報を、光通信等の無線通信を介して、上記携帯情報端末に送信する段階(ステップ104)とからなる。」
オ.段落【0011】
「上記情報を取得する段階(ステップ103)は、上記掲示された広告媒体に表された広告の種別を判別し、上記広告の種別に基づいて、上記登録された広告の中から対応する広告に関する情報を取得してもよい。図2は、中吊り広告、看板、ビデオ広告等の広告媒体を利用した広告情報の提供サービスにおいて利用される、本発明の情報提供装置の原理構成図である。」
カ.段落【0012】
「本発明の情報提供装置2は、光通信等の無線通信を介して携帯情報端末4に接続される通信手段12を有し、上記携帯情報端末4との間で広告媒体6で表された広告に関する情報の情報通信を行う広告掲示手段10よりなる。本発明の情報提供装置2は、上記広告媒体6で表された広告に関する情報を蓄積する情報蓄積手段20を更に有する点が有利である。この場合に、上記広告掲示手段10は、上記情報蓄積手段20に蓄積された広告に関する情報の中で、上記携帯情報端末4から受けた情報取得要求に対応した情報を上記携帯情報端末4に送る。」
キ.段落【0013】
「本発明の情報提供装置2は、上記広告掲示手段10に接続され、上記広告掲示手段10から上記情報取得要求を受け、上記情報取得要求に対応した情報を上記情報蓄積手段20に蓄積された広告に関する情報の中から取り出し、取り出された情報を上記広告掲示手段10に返す情報制御手段30を更に有する点が有利である。上記広告掲示手段10は、上記情報取得要求を上記情報制御手段30に供給し、上記情報制御手段30から上記情報取得要求に対応した情報を取得する。」
ク.段落【0014】
「更に、上記広告掲示手段10は、上記広告媒体6で表された広告の種別を判別する種別判別手段14を有する点が有利である。本発明は、更に、中吊り広告、看板、ビデオ広告等の広告媒体を利用した広告情報サービスにおいて利用され、光通信等の無線通信を介して携帯情報端末に接続される通信手段12を有し、上記携帯情報端末との間で上記広告媒体で表された広告に関する情報の情報通信を行う広告掲示装置10である。」
ケ.段落【0032】
「【発明の効果】上述のように、本発明の情報提供方法及び情報提供装置によれば、利用者が広告を見て、興味を惹かれた広告の更なる情報を求めた場合に、光通信機能等の無線通信機能を有した携帯情報端末を利用することによって、その場で直ぐにより詳しい情報の提供を受けることが可能になる。」

上記イの記載にある「中吊り広告」は、「電車やバスの車両内に天井から吊り下げる広告」をいうものであるから、当該記載からは、電車やバスの車両内に掲示された広告媒体と関連した広告掲示部が車両内に設けられていること、当該広告掲示部と携帯型情報端末が情報交換可能に構成されていることが把握できる。
上記ウ?オの記載から、当該刊行物に記載されている情報提供装置は、乗客が電車やバスの車両内に掲示された中吊り広告に掲示されている広告に興味、関心を抱いたその場で広告掲示部からその広告についての情報を取得できるものとして構成されていることが把握できる。
上記カ?クの記載によれば、当該刊行物記載の情報提供装置2は、光通信等の無線通信を介して携帯情報端末4に接続される通信手段12を有し、上記携帯情報端末4との間で広告媒体6で表された広告に関する情報の情報通信を行う広告掲示手段10、更に、上記広告媒体6で表された広告に関する情報を蓄積する情報蓄積手段20とを有しており、上記携帯情報端末4からの情報取得要求に対応した情報を上記情報蓄積手段20に蓄積された広告に関する情報の中から取り出し、取り出された情報を上記広告掲示手段10に返す情報制御手段30を更に有したものとされることが把握でき、上記広告提示手段10は、上記携帯情報端末4との間で上記広告媒体で表された広告に関する情報の情報通信を行う装置として機能するものとされていることが把握できる。
上記ケの記載からは、当該刊行物記載の情報提供装置によれば、携帯情報端末を携帯して電車やバスに乗車した利用者が、広告を見て、興味を惹かれた広告の更なる情報を求めた場合に、光通信機能等の無線通信機能を有した携帯情報端末を利用することによって、その場で直ぐにより詳しい情報の提供を受けることが可能になることが把握できる。

してみるに、当該刊行物からは以下の情報提供装置が記載されているといえる。
「利用者が乗車する電車やバスにおける中吊り広告を見て、興味を惹かれた広告の更なる情報を求めるために、携帯情報端末から、上記掲示された中吊り広告により表された広告に関する情報の取得要求を発信すると、当該携帯情報端末と情報通信を行う広告掲示手段を備え、
前記広告掲示手段は前記携帯情報端末から情報の取得要求を受信すると、中吊り広告で表された広告に関する情報を蓄積する情報蓄積手段から上記携帯情報端末からの情報取得要求に対応した情報を取り出し、取り出された情報を前記携帯情報端末に通信するように構成された情報提供装置。」
以下、「刊行物記載発明」という。

(3)対比
本願補正発明と刊行物記載発明とを対比する。
刊行物記載発明の「利用者」、「電車やバス」、「中吊り広告」及び「携帯情報端末」は、それぞれ本願補正発明の「ユーザ」、「車両」、「車内広告」及び「携帯情報端末」に相当する。
そして、刊行物記載発明の「情報提供装置」が「電車やバス」の中に設けられているものであることは明らかであり、本願補正発明の「車両に設置されている」「情報提示装置」に相当する。
刊行物記載発明の「利用者が乗車する電車やバスにおける中吊り広告を見て、興味を惹かれた広告の更なる情報」とは、「中吊り広告」に関連する「更なる情報」であるから、本願補正発明における「車内広告に関連する補足広告」に相当するものといえる。
そして、刊行物記載発明の「携帯情報端末」から発信される「情報の取得要求」は、「利用者」からの「車内広告に関連する補足広告」を要求するものであるから、本願補正発明の「ユーザ」から「補足広告」を求めるための「選択指示」にひとまず相当する。
また、刊行物記載発明の「広告提示手段」は、「携帯情報端末」と情報通信を行うものであることから、本願補正発明の「携帯情報端末」と情報通信を行う「広告提示部」の機能を有しており、更に、当該「広告提示手段」は、「携帯情報端末」から「情報の取得要求」を受信するものであることから、本願補正発明の「指示受付部」の機能も有しているといえる。

してみるに、本願補正発明と刊行物記載発明とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。

《一致点》
「ユーザが乗車する車両において車内広告に関連する補足広告を取得するために発信する補足広告の選択指示を受信する指示受付部と、
受信された前記補足広告の選択指示により選択された補足広告を前記携帯端末に発信する広告提示部と、車両に設置されている情報提示装置。」

《相違点1》
本願補正発明における「情報提示装置」は、「ユーザが乗車する車両において車内広告に関連する補足広告を取得するために必要な管理情報を、その車内の携帯情報端末に発信する情報提示部」を有し、同「指示受付部」が、「前記情報提示部から発信された情報を受信して前記ユーザに提示する前記携帯情報端末を介し、前記ユーザから補足広告の選択指示を受信する」ものであって、同「広告提示部」が「前記指示受付部によって受信される前記指示により選択された補足広告を前記携帯情報端末に発信する」ものであることが特定されており、「情報提示部」から「管理情報」が発信されること、「携帯情報端末」からの「選択指示」は当該「管理情報」を受信した上で行われるものであることとされているのに対して、
刊行物記載発明においては、当該特定を有するか定かでない点。

《相違点2》
本願補正発明における「指示受付部」は、「前記車両の現在位置と関連のある補足広告を受信するか否かの選択を前記携帯情報端末を介して前記ユーザに提示し、前記ユーザによる当該選択の結果を前記携帯情報端末を介して取得」すると特定されているのに対して、
刊行物記載発明は当該特定を有しない点。

《相違点3》
本願補正発明における「広告提示部」は、「前記指示受付部によって取得された前記選択の結果に応じた補足広告を発信し、前記指示受付部によって取得された前記選択の結果が前記車両の現在位置と関連のある補足広告を受信する旨の選択である場合には、路線の時刻表データと時間をもって割り出された前記車両の現在位置を取得してこの現在位置と関連のある情報を地域に応じて分類された情報の中から選択して補足広告として発信」すると特定されているのに対して、
刊行物記載発明は当該特定を有しない点。

(4)判断
(4-1)相違点1について
情報提示装置の技術分野に限られず、情報端末間で情報通信を行うに際して、必要なデータ転送に先立ち、両者間の通信を確立するために必要な管理情報の受け渡しを行うことは、データを円滑・確実に転送するためにきわめて周知の手法であって、格別なものではない。
よって、刊行物から認定した刊行物記載発明において当該管理情報の受け渡しを明記していないとしても、情報通信を行うに際して通常行われている周知の手法が採用されることを想定することは格別困難なこととはいえない。
したがって、相違点1に係る構成を採用することは当業者であれば適宜になし得た程度のことである。

(4-2)相違点2及び相違点3について
列車内におけるサービス提供システムには、列車の乗車案内に係り経路・発着時刻を乗客に知らせるもの(特開2000-228784号公報)、インターネットサーバに接続して乗客の要求に係る情報を取得させるもの(特開2001-222603号公報)、或いは列車内での商品販売を行うもの(特開2000-339376号公報)など、本願出願前において各種のものが存在している。
そして、いずれのシステムにおいても、列車の現在位置或いは経由地における他列車の発着時刻を参照するに際して、列車の時刻表データが利用されている。
してみるに、乗車している車両の現在位置を知るために、列車の時刻表データを利用することは、列車内におけるサービス提供システムではきわめて一般的である。

また、前記に挙げた列車内での商品販売を行うもの(特開2000-339376号公報)においては、販売商品入手が列車の現在位置と関連して可能か否かをも提示して乗客が商品購入を選択するか否かを検討できるようにすることが以下に摘示する段落等において提言されている。

段落【0027】
「図3において、図1,2に示す販売管理装置3の処理動作を電算機処理としてフローチャートで表している。この図3に示すように、旅行者(乗客)は、図2の乗客サービス端末1のメニュー画面を用いて購入希望する商品の注文登録を行なう(まる付数字の1)。その際使用する車内販売メニュー画面が図4である。」
段落【0028】
「この図4で示すように、図2の乗客サービス端末1の車内販売メニュー画面1aには、すぐに購入可能な商品と、所定の途中停車駅で搭載するまで購入できない商品を在庫状況に応じ分けて表示されている。この車内販売メニュー画面1aで希望商品が入力されると、オーダー内容表示(注文確認)画面1bに切り替わる。」
段落【0029】
「このオーダー内容表示(注文確認)画面1bには、注文商品名や注文個数、金額の他に、待ち時間の情報などを表示する。例えば、列車積込み済商品がオーダー指定された場合は、商品が乗客に届くまでの平均待ち時間を、全注文数と、サービス員人数等に基づき自動計算して表示する。」
段落【0030】
「また途中停車駅で積込む商品がオーダー入力された場合は、該当仕入駅名と予定到着時刻を表示し、さらに、予め乗客サービス端末1で乗車券から読込んでいた乗客の降車予定駅を表示する。この時、LANで接続された販売管理用装置3において、乗客の降車駅が注文品の仕入駅より「以遠」であることをチェックし、そうでない場合は、降車駅の変更を行なわないと、「確認OK」のメニューボタンの操作が行なえないように制御する。」

してみるに、相違点2に係る「指示受付部」において、「前記車両の現在位置と関連のある補足広告を受信するか否かの選択を前記携帯情報端末を介して前記ユーザに提示し、前記ユーザによる当該選択の結果を前記携帯情報端末を介して取得」するように構成することは、当業者であれば、当該手法に照らして適宜に採用可能なことである。
よって、相違点2に係る構成を採用することは、当業者であれば容易想到である。

また、相違点3に係る「広告提示部」において、「前記指示受付部によって取得された前記選択の結果に応じた補足広告を発信し、前記指示受付部によって取得された前記選択の結果が前記車両の現在位置と関連のある補足広告を受信する旨の選択である場合には、路線の時刻表データと時間をもって割り出された前記車両の現在位置を取得してこの現在位置と関連のある情報を地域に応じて分類された情報の中から選択して補足広告として発信」するよう構成するためには、「広告提示部」から発進する「補足広告」を予め車両が経由する位置と関連付けて情報を分類しておく必要があると共に、車両の現在位置を取得する必要がある。
しかしながら、前記に挙げた列車内での商品販売を行うもの(特開2000-339376号公報)においては、列車の現在位置と関連して列車に積み込まれていない商品の入手が、購入を希望する乗客の乗車区間・時間との関係において可能か否かを提示して、該乗客が商品購入を検討できるようにしていることからすれば、商品に係る情報以外の情報も含まれる「広告」について、列車の現在位置と関連付けた情報を用意しておき、これを乗客の好みで入手選択をさせるようになすことは、当業者であれば容易に想到可能なことといわざるを得ない。

(4-3)まとめ
以上のとおりに、相違点1乃至3に係る構成は、いずれも当業者であれば適宜に採用し得たことであると共に、それらを備えたことによる作用効果も当業者が容易に想到可能なものでしかない。
よって、本願補正発明は、刊行物記載発明、刊行物の記載内容、周知の事項、及び列車内におけるサービス提供システムに係る従来手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年9月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至13に係る発明は、平成16年7月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載された事項により特定されるものである。
そして、前記で検討した本件補正に係る請求項2に対応する請求項であるところの、平成16年7月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「ユーザが乗車する車両において車内広告に関連する補足広告を取得するために必要な管理情報を、その車内の携帯情報端末に発信する情報提示部と、
前記情報提示部から発信された情報を受信して前記ユーザに提示する前記携帯情報端末を介し、前記ユーザから補足広告の選択指示を受信する指示受付部と、
前記指示受付部によって受信される前記指示により選択された補足広告を前記携帯情報端末に発信する広告提示部と、を有し、
前記車両に設置されていることを特徴とする情報提示装置。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「指示受付部」及び「広告提示部」についての限定事項を一部省いたものである。
そして、当該限定事項を省いた本願発明と刊行物記載発明とは前記「2.(3)」に記載したと同じ一致点を有する一方、相違点1に係る相違を有している。
しかしながら、前記のように相違点1に係る構成を採用することが当業者であれば容易になし得ることは、前記「2.(4)」で検討したとおりである。
そうすると、本願発明は、刊行物記載発明、刊行物の記載内容、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載発明、刊行物の記載内容、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-14 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-02 
出願番号 特願2001-335249(P2001-335249)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 坂田 誠
江成 克己
発明の名称 情報提示方法とこの方法を利用可能な携帯情報端末  
代理人 森下 賢樹  
代理人 村田 雄祐  

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