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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 C23D
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 C23D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C23D
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 C23D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C23D
管理番号 1181538
審判番号 不服2005-22160  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-17 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 特願2001-129082「調理器具」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月15日出願公開、特開2002-327285〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年4月26日の出願であって、平成17年9月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年11月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年12月15日付で手続補正がなされたものである。

II.平成17年12月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月15日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.本件手続補正
本件補正の内容は、補正前の請求項1の「この第1の琺瑯層のさらに外表面に、光触媒物質が添加された第2の琺瑯層が積層状態に形成されており、この第2の琺瑯層の外表面により前記本体部の外表面が構成されてなることを特徴とする調理器具。」を、
「この第1の琺瑯層のさらに外表面に、第1の琺瑯層の外表面から突出した顔料の粒子を埋設可能であって、光触媒物質が添加された第2の琺瑯層が積層状態に形成されてなることを特徴とする調理器具。」に補正する補正事項を含むものである。

2.補正の適否について
上記補正事項による補正後の請求項1における第2の琺瑯層は、第1の琺瑯層の外表面から突出した顔料の粒子の一部のみを埋設して第1の琺瑯層の外表面に積層状態に形成されてなる場合を排除していないから、上記補正後の請求項1の調理器具は、第1の琺瑯層の外表面及び第2の琺瑯層の外表面により本体部の外表面が構成されてなるもの、又は第2の琺瑯層の外表面により本体部の外表面が構成されてなるものからなると認められるのに対し、補正前の請求項1の調理器具は、第2の琺瑯層の外表面により本体部の外表面が構成されてなるものである。
すると、上記補正事項は、特許請求の範囲を拡張するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当しないし、特許法第17条の2第4項第1、3、4号に規定する請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものにも該当せず、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

3.むすび
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定によって読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記結論のとおり決定する。

III.本願発明について
1.本願発明
平成17年12月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、出願当初の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 本体部を構成する基材における少なくとも調理面の反対面に、顔料が添加された第1の琺瑯層が形成されているとともに、この第1の琺瑯層のさらに外表面に、光触媒物質が添加された第2の琺瑯層が積層状態に形成されており、この第2の琺瑯層の外表面により前記本体部の外表面が構成されてなることを特徴とする調理器具。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に国内において頒布された特開2000-70145号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、特開2001-3183号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)引用例1:特開2000-70145号公報
(1a)「【請求項6】 調理用の容器を本体に着脱可能に設け、前記容器の外面に、親水性と油分解性の・・・両方の作用を有する薄膜を形成したことを特徴とする調理器具。」(特許請求の範囲の請求項6)
(1b)「本実施例における調理器具は炊飯器である。炊飯器・・・において・・・鍋収容部4に対し調理用の容器である鍋5が着脱可能に収容される。・・・鍋5は、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な材料からなり、その外面には、底部と側面下部に磁性金属製の鍋発熱体8が接合される。・・・鍋発熱体8を電磁誘導加熱により発熱させて、鍋5を加熱し、鍋5に収容した米や水などの調理物を炊飯加熱したり、調理後のご飯を所定の温度に保持するなどの調理加熱を行なう構成となっている。」(【0046】?【0048】)
(1c)「アナターゼ型の酸化チタン(TiO_(2))などは、光触媒活性を有する薄膜層81に形成して・・・もよい。・・・薄膜層81を光触媒膜で形成することで・・・親水性,油分解性を合理的に得ることができる。」(【0059】、【0060】)
(1d)「薄膜層81は薄膜であるため透明性が高く、着色することが困難であるため、着色したい場合には、予め・・・任意の色に着色したホーロー膜を形成したり、・・・金属材料・・・の表面に、光触媒作用で分解しない顔料を使用した塗料でコーティングし、この着色層82の表面に当該コーティング層すなわち薄膜層81を形成し、デザイン性のよい外観に仕上げることが可能となる。」(【0063】)
(1e)「容器たる鍋5の外面に親水性と油分解性の・・・両方の作用を有する薄膜層81を形成すれば、使用中に鍋5の外面に付着したご飯粒などの頑固な汚れは、本体1から鍋5を外して丸洗いするだけで、簡単に除去することが可能になり、気持ちよく清潔に使用できるようになる。」(【0080】)

(2)引用例2:特開2001-3183号公報
(2a)「【請求項5】 金属基材表面に着色性の第一の釉薬層が形成されており、さらに前記第一の釉薬層の表面には粒子状の物質が含有されていない第二の釉薬層が形成されているホーロー製品であって、前記第二の釉薬層表面の表面粗さRaが・・・0.06μm未満であることを特徴とするホーロー製品。」(特許請求の範囲の請求項5)
(2b)「従来のホーロー製品において、表面粗さRaで0.06μm以上の大きな凹凸を形成する主原因の1つに・・・顔料粒子が影響していることが電子顕微鏡により確認した。従って、釉薬層にかかる粒子状の物質が含有されていないようにすれば、ホーロー製品表面に従来にない平滑性を持たせることが容易になり、より再現性良く前記層表面の表面粗さRaが0.06μm未満・・・であるホーロー製品を提供可能となる。」(【0009】)
(2c)「ホーロー製品表面に従来にない平滑性を持たせることにより、汚れが強固に付着しにくくなり、その結果、たとえ付着しても水との接触により浮き上がらせることができ、浮き上がった汚れが流水程度で除去されるようになる。」(【0010】)
(2d)「釉薬層中に、釉薬以外の添加物を添加することにより付加機能を持たせるようにしてもよい。例えば・・・酸化チタン・・・等の光触媒を添加すると・・・親水性が助長される。」(【0020】)

3.当審の判断
3-1.引用例1に記載の発明
引用例1の摘記事項(1a)によれば、調理用の容器の外面に、親水性と油分解性の両方の作用を有する薄膜を形成した調理器具が記載されている。そして、摘記事項(1b)によれば、実施例における調理器具は炊飯器であることが記載され、また、摘記事項(1b)の「調理用の容器である鍋5」、「鍋5に収容した米や水などの調理物」、「鍋5は、アルミニウムなどの・・・材料からなり、その外面には、底部と側面下部に磁性金属製の鍋発熱体8が接合される。」という記載によれば、調理用の容器である鍋の内面が調理面であって、鍋は、アルミニウム及び磁性金属の金属材料により構成されることが理解できる。そうすると、薄膜は、鍋を構成する金属材料における調理面の反対面に形成されるといえる。
さらに、摘記事項(1c)によれば、光触媒膜で形成された薄膜(薄膜層81)は、親水性と油分解性の両方の作用を有する薄膜であることが、摘記事項(1d)によれば、着色したい場合には、金属材料の表面に着色した琺瑯膜を形成し、この着色した琺瑯膜(着色膜)の表面に薄膜(薄膜層81)を形成することが、それぞれ記載されている。そして、着色した琺瑯膜は、顔料が添加された琺瑯膜といえるものである。
そこで、引用例1の摘記事項(1a)?(1d)の記載を、炊飯器の鍋の観点で総合すれば、引用例1には、「鍋を構成する金属材料における調理面の反対面に、顔料が添加された琺瑯膜が形成されているとともに、この琺瑯膜のさらに外表面に、光触媒膜で形成された薄膜が積層状態に形成されてなる炊飯器の鍋。」(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていることになる。

3-2.対比・判断
本願発明1と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「鍋を構成する金属材料」、「琺瑯膜」は、それぞれ本願発明1の「本体部を構成する基材」、「第1の琺瑯層」に相当する。さらに、引用例1発明の「光触媒膜で形成された薄膜」と、本願発明1の「光触媒物質が添加された第2の琺瑯層」は、「光触媒物質を含有する第2の層」で共通するし、引用例1発明の「炊飯器の鍋」は、「調理器具」といえるものであるから、両者は、
「本体部を構成する基材における調理面の反対面に、顔料が添加された第1の琺瑯層が形成されているとともに、この第1の琺瑯層のさらに外表面に、光触媒物質を含有する第2の層が積層状態に形成されてなる調理器具。」で一致し、次の点で相違する。

相違点:本願発明1は、第2の層が、「光触媒物質が添加された第2の琺瑯層」であって、「この第2の琺瑯層の外表面により本体部の外表面が構成されて」なるのに対し、引用例1発明は、第2の層が、光触媒膜で形成された薄膜であることしか記載されていない点

上記相違点について検討する。
引用例1の摘記事項(1e)によれば、光触媒膜で形成された薄膜(親水性と油分解性の両方の作用を有する薄膜)を形成することにより、丸洗いするだけで、付着した頑固な汚れを簡単に除去できることが記載されているから、引用例1発明の光触媒膜で形成された薄膜(第2の層)は、丸洗いするだけで付着した汚れを除去する作用を備えたものであることが理解できる。
これに対し、引用例2の摘記事項(2a)によれば、金属基材表面に着色性の第一の琺瑯層(釉薬層)が形成されているとともに、この第一の琺瑯層の外表面に、粒子が含有されていない表面粗さRaが0.06μm未満である第二の琺瑯層(釉薬層)が形成された琺瑯製品が記載されている。
そして、摘記事項(2b)の「表面粗さRaで0.06μm以上の大きな凹凸を形成する主原因の1つに・・・顔料粒子が影響している」、「釉薬層にかかる粒子状の物質が含有されていないようにすれば、ホーロー製品表面に従来にない平滑性を持たせることが容易になり・・・前記層表面の表面粗さRaが0.06未満・・・であるホーロー製品を提供可能となる。」という記載によれば、顔料(粒子)が添加された琺瑯層は、その外表面の表面粗さが大きく、顔料(粒子)が添加されない琺瑯層は、その外表面が平滑であることが理解できるところ、摘記事項(2c)によれば、琺瑯製品表面に平滑性を持たせることにより、汚れが強固に付着しにくくなり、その結果、たとえ付着しても、流水程度で除去されることが記載されている。
そうすると、上記琺瑯製品の粒子が含有されていない第二の琺瑯層は、着色性の第一の琺瑯層、すなわち、顔料が添加された第一の琺瑯層の外表面に積層状態に形成されることにより、琺瑯製品の外表面に平滑性を持たせること、及び、外表面が平滑な第二の琺瑯層は、丸洗いの流水程度で付着した汚れを除去する作用を備えることが理解できるし、上記第二の琺瑯層は、顔料が添加された第一の琺瑯層の外表面の凹凸を覆って、この第二の琺瑯層の外表面により琺瑯製品の外表面が構成されることも理解できる。そして、丸洗いの流水を適用するには、第二の琺瑯層が親水性に優れることが好ましいことは明らかであるところ、摘記事項(2d)によれば、光触媒物質を添加して親水性を助長した琺瑯層も適用し得ることが記載されている。
そうであれば、引用例2には、顔料が添加された第一の琺瑯層のさらに外表面に、光触媒物質が添加された第二の琺瑯層が積層状態に形成されており、この第二の琺瑯層の外表面により琺瑯製品の外表面が構成されてなる琺瑯製品の構造が開示されているといえる。すると、丸洗いするだけで付着した汚れを除去する作用を備えた引用例1発明の光触媒膜で形成された薄膜(第2の層)として、引用例2に記載された第二の琺瑯層を適用することにより、本願発明1の相違点に係る特定事項を備えたものとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

そして、本願発明1の奏する効果も引用例1、2の記載から予測される範囲のものであって、格別顕著なものとは認められない。

したがって、本願発明1は、引用例1発明、及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-15 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-03 
出願番号 特願2001-129082(P2001-129082)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C23D)
P 1 8・ 571- Z (C23D)
P 1 8・ 574- Z (C23D)
P 1 8・ 572- Z (C23D)
P 1 8・ 573- Z (C23D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大畑 通隆小柳 健悟  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 市川 裕司
國方 康伸
発明の名称 調理器具  
代理人 重信 和男  
代理人 日高 一樹  
代理人 渡邉 知子  

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