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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61H
管理番号 1181561
審判番号 不服2006-7427  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-19 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 特願2001- 15781号「貼付治療具」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月30日出願公開、特開2002-209973号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成13年1月24日の出願であって、平成18年3月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成18年4月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成18年4月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「純金等の粉体から成る金属固形材と石英成分75%以上含有する鉱石材とから成る重合粒状物の直径を2mm以下に,厚さを1mm以下に構成し、この重合粒状物を構成する金属固形材を外側に鉱石材を内側にして粘着シートの中心部に固着して成ることを特徴とする貼付治療具。」(下線部が補正箇所である。)

2.補正の目的の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「鉱石材」の成分を、「石英成分75%以上含有する鉱石材」とし、「重合粒状物」の大きさを、「直径を2mm以下に、厚さを1mm以下」にするものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-47138号公報(以下、「引用例1」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「本発明は、金属、特にアルミニウムの持つ高い保温作用はもとより、生体電流調整作用を強化するためにアルミニウム以外の他の金属とアルミニウムとのよる2個以上の刺激盤との組み合わせ使用による異種金属間に誘引されるイオン化微弱電流による生体電流調整作用により、より優れた治療効果を発揮し、さらに、前記刺激盤との複合体としての磁石又はセラミックスからなる基盤からの磁気又は遠赤外線の輻射の通路として役立つ中空部を突起のない平坦な刺激盤に備えた健康用皮膚当て接具を提供することを目的とする。」(段落【0008】)

イ.「一方、刺激盤表層部を除く部分を構成する下地材料としては、金属、ガラス、ゴム、プラスチックのほか、永久磁石、セラミックスなどを用いることができる。永久磁石の場合は磁気作用による、セラミックスの場合は遠赤外線輻射作用による血行促進などの相乗効果がある。」(段落【0018】)

ウ.「セラミックス材料に関しては、Al_(2)O_(3)、MgO、SiO_(2)、TiO_(2)、ZrO_(2)、LiO_(2)、Fe_(2)O_(3)、MnO_(3)、SnO_(2)、Sb_(2)O3、BeO、Y2O_(3)、CuO、CoO、NiO、Si_(3)N、SiC等の単体もしくは混合物を適用することができる」(段落【0020】)

エ.「本発明の健康用皮膚当て接具は前述の刺激盤を、皮膚面に装着するための手段と組み合わせて構成される。 例えば、粘着シートを用い、粘着シートの粘着面上に刺激盤1個または2個以上配置し、シートの粘着力で皮膚上に貼付する。 シートの面積及び粘着力は刺激盤の大きさに応じて圧入深さを調整する。・・・(略)・・・。」(段落【0027】)

オ.「[作用]本発明の健康用皮膚当て接具は中空型金属刺激盤と磁石あるいは遠赤外線を放射するセラミックスとの複合体からなり、アルミニウムの保温作用はもとより、アルミニウム成型体と組み合わせて用いられるその他の金属又は合金との両異種金属刺激盤の間のイオン化微弱電流による生体電流調整作用により優れた治療効果を示す。さらに、中空部は各種の刺激盤の複合体である磁石あるいはフェライト磁石の磁気やセラミックスからの遠赤外線放射の通路として役立っている。・・・(中略)・・・またセラミックスからのこれらの中空部を通過して遠赤外線の輻射により、自律神経の正常化作用が得られる。要するに、これらの作用の相乗効果が得られる。」(段落【0028】-【0029】)

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理するすると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。
「金属の成型体と石英成分を含有する遠赤外線輻射作用を有するセラミックスから成る複合体と、この複合体を構成する金属の成型体を外側に石英成分を含有する遠赤外線輻射作用を有するセラミックスをを内側にして粘着シートに固着して成る健康用皮膚当て接具。」

原査定の拒絶の理由に引用された、(特開平11-19173号)(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。
ア.「セラミック基板に白金族元素または金により形成される金属層を積層した積層体からなるRLエネルギ-増幅器。」(【請求項1】)

イ.「・・・(略)・・・図1において、1は、合成樹脂等で円形の形状に形成された貼着用シ-トであり、人の皮膚へ貼付ける側には接着剤2が固着されている。この貼着用シ-ト1の形状は、円形に限定されず種々の形状が可能である。接着剤2上の中央位置には、例えばAl2 O3 等により形成されたセラミック基板4にルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ等の白金族元素により形成される金属層5が積層され、断面がほぼ円形に形成された積層体が、セラミック基板4が接着剤2と接着するように配設されている。セラミック基板4、金属層5の厚さは適宜変更可能である。・・・(略)・・・」(段落【0005】)

これら記載事項を総合して整理すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。
「セラミック基板に金属層が積層された積層体を粘着シートの中心部に固着して成るRLエネルギー増幅器。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明1の「健康用皮膚当て接具」は、本願補正発明の「貼付治療具」に相当する。
引用発明1の「複合体」と、本願補正発明の「重合粒状物」は、「複合体」である点で共通する。
また、「純金等の粉体から成る金属固形材」の「純金等」という記載からは、金属の種類は限定されていないといえるので、引用発明1の「金属の成型体」は、本願補正発明の「金属固形材」に相当する。
そして、引用発明1の「石英成分を含有する遠赤外線輻射作用を有するセラミックス」と本願補正発明の「石英成分75%以上含有する鉱石材」は「石英成分を含有する物質」である点で共通する。

そうすると、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「金属から成る金属固形材と石英成分を含有する物質から成る複合体を構成し、重合粒状物を構成する金属固形材を外側に石英成分を含有する物質を内側にして粘着シートに固着して成ることを特徴とする貼付治療具。」

そして、両者は次の相違点で相違する。
(相違点1)
複合体の構成に関し、本願補正発明は、金属固形材が粉体から成り、また、石英成分を有する物質が、石英成分75%以上含有する鉱石材から成る重合粒状物であるのに対し、引用発明1は、金属固形材、石英成分を含有する物質がそのようなものから成っていない点。

(相違点2)
本願補正発明は、複合体の大きさを直径が2mm以下、厚さが1mm以下とするのに対し、引用発明1は、複合体の大きさが明らかではない点。

(相違点3)
本願補正発明は、複合体を粘着シートの中心部に固着するのに対し、、引用発明1は、複合体を粘着紙シートのどこにの固着するのか明らかではない点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
金属の成形体を作成する場合に、粉末から成形することは周知技術である(例えば、特開昭63-60265号公報等参照)。
また、石英成分を含有する石英斑岩が遠赤外線及びマイナスイオンを放出し、これを身につけるものとして使用することは周知技術であり(例えば特開平11-200242号公報等参照)、まして、石英成分を75%以上とすることに臨界的意義は認められないから、特に石英成分を75%以上とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。

よって、引用発明1の重合粒状物の金属固形材の作成手段として、周知の技術を採用し、石英成分を含有するセラミックスに換えて、周知の鉱石材を採用し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
ツボを刺激するために、粒状物を粘着テープによって貼付する場合、固形材の大きさを直径が2mm以下、厚さが1mm以下とすることは周知技術である(例えば、実願平4-15397号(実開平5-76433号)のCD-ROM等参照)。

よって、引用発明1の複合体の大きさに関し、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
引用発明2は、セラミック基板に金属層が積層された積層体重合粒状物を粘着シートの中心に固着したものである。

よって、引用発明1の複合体を粘着シートの中心に固着して、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用発明1及び引用発明2から当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成14年11月14日付け手続補正書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「純金等の粉体から成る金属固形材と石英を主成分とする鉱石材とから成る重合粒状物を前者を外側に後者を内側にして粘着シートの中心部に固着して成る貼付治療具。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「石英を主成分とする鉱石材」の石英の含有率を、「75%以上」とする構成と「重合粒状物」の大きさを、「直径を2mm以下に、厚さを1mm以下」とする構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-19 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-05 
出願番号 特願2001-15781(P2001-15781)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 豊永 茂弘
村山 睦
発明の名称 貼付治療具  
代理人 牛木 理一  

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