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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01M |
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管理番号 | 1181565 |
審判番号 | 不服2006-9280 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-05-08 |
確定日 | 2008-07-17 |
事件の表示 | 特願2002-314101「排気処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月27日出願公開、特開2004-150864〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成14年10月29日の出願であって、平成18年3月27日付で拒絶査定がなされ(発送日:同年18年4月4日)、これに対し、同年5月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年6月7日付で手続補正がなされたものである。 II.平成18年6月7日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年6月7日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は 「【請求項1】内燃機関の試験に際して同機関から排出される排気を処理する排気処理装置において、 前記内燃機関の複数の排気ポートに対応して形成されて該排気ポートからそれぞれ排気が導入される複数の導入ポートを有した排気導入部と、 前記導入ポートを前記排気ポートに近接離間させるべく前記排気導入部を変位させる変位機構とを備える ことを特徴とする排気処理装置。」 から 「【請求項1】内燃機関の試験に際して同機関から排出される排気を処理する排気処理装置において、 前記内燃機関の複数の排気ポートに対応して形成されて該排気ポートからそれぞれ排気が導入される複数の導入ポートを有した排気導入部と、 前記導入ポートを前記排気ポートに近接離間させるべく前記排気導入部を変位させる変位機構と、 前記排気導入部の押圧を通じて、前記内燃機関の排気ポートに対する前記導入ポートの密着を実現する押圧機構とを備え、 前記排気導入部の導入ポートに、前記排気ポートと該導入ポートとの接触部をシールするシール部を設けた ことを特徴とする排気処理装置。」(下線は補正箇所を示す。) と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明に「前記排気導入部の押圧を通じて、前記内燃機関の排気ポートに対する前記導入ポートの密着を実現する押圧機構とを備え、 前記排気導入部の導入ポートに、前記排気ポートと該導入ポートとの接触部をシールするシール部を設けた」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例記載の発明 ア.原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-50141号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。 (1)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、たとえば自動車組立て工場において、車体に組み込む前の、異なるタイプの内燃機関に対して性能試験を行う際に、これら内燃機関の排気部に対して試験装置側の排気管を接続・分離させるのに採用される内燃機関試験装置の排気管接続装置に関するものである。」 (2)「【0016】・・・その上端に内燃機関1の排気部6に接続されるアダプタ17が取付けられた排気管18が固定されており・・・」 (3)「【0019】・・・このアダプタ17を内燃機関1の排気部6に接続させるために、昇降シリンダ12を上昇させる高さを検索する(ステップ-4)。・・・回転シリンダ20を駆動して、ボス16を回転し、排気管18の管路19を仕切管14の連通路15と連通し、かつ内燃機関1の排気部6にアダプタ17を対向させ(ステップ-6)、次に昇降シリンダ12を駆動して、支持板11を上記高さ分上昇させてアダプタ17を内燃機関1の排気部6に接続させる(ステップ-7)。内燃機関1の試験終了後、・・・、昇降シリンダ12を駆動して、支持板11を下降させてアダプタ17を内燃機関1の排気部6から分離し(ステップ-9)、・・・」 (4)「【0022】内燃機関1を運転しての試験時に、内燃機関1で発生し排気部6から排出される排気ガスは固定されたアダプタ17、排気管18の管路19、連通路15、仕切管14を介して回収される。・・・」 これらの記載によれば、引用例1には、 「内燃機関を運転しての試験時に内燃機関で発生し排気部から排出される排気ガスが回収される内燃機関試験装置において、内燃機関の排気部に接続されるアダプタが取付けられた排気管と、 アダプタを内燃機関の排気部に接続させるべく上昇させ、分離させるべく下降させるために駆動する昇降シリンダとを備えた内燃機関試験装置。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。 イ.原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-178803号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。 (1)「【0006】【課題を解決するための手段】・・・内燃機関試験装置の排気管接続装置は、内燃機関を支持自在な支持部側に基端が取り付けられた可撓性のホースを設けるとともに、このホースの遊端にアダプタを設け、このアダプタを、・・・基板と、この基板に内嵌されかつ外端に前記ホースの遊端が接続するとともに内端が内燃機関の排気部に連通自在な排気管と、この排気管の内端側に設けたシール板とにより構成する・・・。」 (2)「【0011】この後、内燃機関の運転により所期の試験に移ると、内燃機関で発生し排気部から排出される排気ガスを排気管やホースを介して回収し得、その際にシール板の内面が排気部の外面に強く密着されていることで、この当接部からの排気ガス漏れは生じない。・・・」 これらの記載によれば、引用例2には、 「内燃機関の排気部との接触部をシールするシール板を設けたアダプタを有する内燃機関試験装置。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認めることができる。 3.対比 本願補正発明を、引用発明1と対比する。 引用発明1の(a)「排気ガス」、(b)「排気部」、(c)「アダプタ」、(d)「内燃機関を運転しての試験時に」、(e)「内燃機関で発生し排気部から排出される」は、それぞれ本願補正発明の (a)「排気」、(b)「排気ポート」、(c)「導入ポート」、(d)「内燃機関の試験に際して」、(e)「同機関から排出される」に相当することが明らかである。 また、引用発明1の(f)「排気ガスが回収される内燃機関試験装置」は、回収が処理の一形態であるから、本願補正発明の(f)「排気を処理する排気処理装置」に相当する。 また、引用発明1の(g)「内燃機関の排気部に接続されるアダプタが取付けられた排気管」と、本願補正発明の (g)「内燃機関の複数の排気ポートに対応して形成されて該排気ポートからそれぞれ排気が導入される複数の導入ポートを有した排気導入部」は、「内燃機関の排気ポートに対応して形成されて該排気ポートから排気が導入される導入ポートを有した排気導入部」で共通する。 また、引用発明1の(h)「アダプタを内燃機関の排気部に接続させるべく上昇させ、分離させるべく下降させるために駆動する昇降シリンダ」と、本願補正発明の (h)「導入ポートを前記排気ポートに近接離間させるべく前記排気導入部を変位させる変位機構と、 前記排気導入部の押圧を通じて、前記内燃機関の排気ポートに対する前記導入ポートの密着を実現する押圧機構」は、「導入ポートを排気ポートへ密着・分離させるための機構」で共通する。 よって両者は、 (一致点) 「内燃機関の試験に際して同機関から排出される排気を処理する排気処理装置において、前記内燃機関の排気ポートに対応して形成されて該排気ポートから排気が導入される導入ポートを有した排気導入部と、 前記導入ポートを排気ポートへ密着・分離させるための機構とを備えた排気処理装置。」 の点で一致し、次の相違点で相違する。 (相違点1) 内燃機関の排気ポートに対応して形成されて該排気ポートから排気が導入される導入ポートを有した排気導入部ついて、排気ポートの数とそれに対応して形成された導入ポートの数が、本願補正発明では、それぞれ複数であるのに対して、引用発明1ではそれぞれ一つである点、 (相違点2) 導入ポートを排気ポートへ密着・分離させるための機構について、本願補正発明では、導入ポートを前記排気ポートに近接離間させるべく前記排気導入部を変位させる変位機構と、前記排気導入部の押圧を通じて、前記内燃機関の排気ポートに対する前記導入ポートの密着を実現する押圧機構の2つの機構であるに対して、引用発明1では、アダプタを内燃機関の排気部に接続させるべく上昇させ、分離させるべく下降させるために駆動する昇降シリンダ1つの機構である点、 (相違点3) 排気導入部の導入ポートについて、本願補正発明では、排気ポートとの接触部をシールするシール部を設けたのに対して、引用発明1ではシール部を有しない点。 4.判断 (1)相違点1について 内燃機関が複数の排気ポートを有し、それに対応して形成されて該排気ポートからそれぞれ排気が導入される複数の導入ポートを有した排気導入部を有する排気のための構成が、内燃機関試験装置の分野において従来周知である(例えば、特開平4-252932号公報には【0023】・・・図7に示すように操作レバー36を下方に揺動してカム体34を立設状態にすることで両本体31を互いに接近し得る。この状態で、アダプタ10を排気部16に対向させる。次いでアダプタ10を排気部16に接近させ、図8に示すように両本体31の環状凸部38を凹入段部39に嵌入させ、両排気路18にそれぞれ流路30を連通させる。・・・」と記載され、図7を参照すると、2つの排気部とそれに対応して形成された2つのアダプタを有する内燃機関試験装置用のパレット装置が記載されている。)ので、引用発明1の一つの排気ポートに対応して形成された一つの導入ポートを複数の排気ポートに対応して形成された複数の導入ポートとして構成することは、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。 (2)相違点2について 一般に、部材を基体へ密着させる場合に、まず部材を基体近くまで大きく移動させ、その後、部材を基体にゆっくりと押圧して密着させることは、速く正確な密着のための周知の技術事項であり、内燃機関の試験の分野においても、内燃機関側の部材への試験装置側の部材の密着・分離のための機構として、大きく移動させる変位機構とゆっくりと押圧する押圧機構の2つの機構で行うことが従来周知である(例えば、特開2001-33346号公報には「【0018】次いで、それまで上方に待機していた後面シールユニット3の昇降部材7が、昇降シリンダユニット8の作動によって、図2に示す位置から図3に示す位置まで降下し、・・・昇降部材7の位置が基台5にしっかりと固定される。【0019】次いで、昇降部材7の押圧用シリンダユニット8を作動させ、後面シール機構9をワークWの後面に押し付けて同部をシールする。・・・」と記載されている、また、実公平7-25654号公報には「【0011】・・・スライド枠2の駆動シリンダを作動させて位置決め手段3をホース開口端Waに向けて前進させる。・・・この挿入が光電管スイッチ18で確認されたとき、位置決め手段3の前進を停止する・・・図3に示すように、封栓手段5のプッシュロッド12を前進させて封止部材13を開口端Waに嵌合させ、・・・プッシュロッドの所定の封止位置への前進が確認されたところで該ロッド12の前進を停止する。」と記載されている。)ので、引用発明1の導入ポートを排気ポートへ密着・分離させるための機構として、変位機構のみで行っている構成に換えて、上記周知の変位機構と押圧機構の2つの機構で行う構成を採用することは、何れも内燃機関の試験に関する技術事項であるから、当業者が容易に想到するものと認められる。 (3)相違点3について 排気管の導入ポートに排気部と導入ポートとの接触部をシールするシール部を設けることは、引用発明2にも見られるように慣用技術であるので、引用発明1の排気管のアダプタに上記慣用技術を適用して、排気ポートとの接触部をシールするシール部を設けた本願補正発明の構成とすることは、何れも内燃機関の試験に関する技術事項であるから、当業者が容易に想到するものと認められる。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1、2および上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 平成18年6月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年12月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】内燃機関の試験に際して同機関から排出される排気を処理する排気処理装置において、 前記内燃機関の複数の排気ポートに対応して形成されて該排気ポートからそれぞれ排気が導入される複数の導入ポートを有した排気導入部と、 前記導入ポートを前記排気ポートに近接離間させるべく前記排気導入部を変位させる変位機構とを備える ことを特徴とする排気処理装置。」 2.引用例記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「II.2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記II.で検討した本願補正発明から「排気処理装置」の限定事項である「排気導入部の押圧を通じて、前記内燃機関の排気ポートに対する前記導入ポートの密着を実現する押圧機構を備える」との構成を省き、「排気導入部の導入ポート」の限定事項である「排気ポートと該導入ポートとの接触部をシールするシール部を設けた」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「II.4.」に記載したとおり、引用例1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項2乃至8に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-13 |
結審通知日 | 2008-05-20 |
審決日 | 2008-06-03 |
出願番号 | 特願2002-314101(P2002-314101) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01M)
P 1 8・ 121- Z (G01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小山 茂、小原 博生 |
特許庁審判長 |
後藤 時男 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 門田 宏 |
発明の名称 | 排気処理装置 |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 恩田 博宣 |