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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1181578
審判番号 不服2006-17189  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-08 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 平成 9年特許願第 59041号「超音波探触子」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月22日出願公開、特開平10-248847〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年3月13日の出願であって、平成18年7月18日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、平成17年12月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】 振動子アレイを有し、振動子配列方向中央部分に対し超音波送受波方向に沿って設定された軸周りに90度以上回転可能にケーシングに装着されたリニア配列された超音波送受波部を有する血管撮影用超音波探触子と、前記超音波送受波部による送受波により撮影された血管に沿った断層像を表示する表示手段と、を有し、前記表示手段は、前記断層像に前記軸を示す中央線を表示することを特徴とする超音波診断装置。」


3.引用例に記載された発明について
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、平成9年2月18日に公開された特開平 9- 47452号公報(以下「引用例1」という。)には、
「【請求項1】 診断対象に挿入される超音波振動子を備え、その超音波振動子を回転させることにより診断対象の複数の断面データを得る超音波プローブにおいて、
この超音波振動子の外周に設けられ、複数極に着磁された磁性体と、
この磁性体の磁極を検出して磁極判定信号を出力する磁極判定手段とを備え、
前記磁性体は、磁性材料を含む材料が基材に塗布若しくは印刷されて構成され、前記基材が前記超音波振動子の外周に装着されていることを特徴とする超音波プローブ。」、
「【0017】
【発明の実施の形態】以下本発明の第1実施例について、図1乃至図5を参照して説明する。超音波プローブ及び超音波診断装置の全体の構成を示す図3において、超音波プローブ20は、被診断者の体内に挿入される先端部21,診断者によって操作される操作部22及び両者を接続する挿入管23によって構成されている。そして、この挿入管23は、適度な可撓性を有している。操作部22には、正逆方向に回転可能な操作ダイアル22aが設けられている。
【0018】図1に示すように、先端部21の本体ケース24の内部には、モータ例えばステッピングモータからなるアクチュエータ(駆動手段)25が配設され、そのアクチュエータ25の図示しない駆動軸の先端は、円筒形の超音波振動子(以下、振動子と称す)26の中心に取付けられている。」、
「【0023】図4(a)は、振動子26の回転に伴う磁性体29の磁極の変化を直線に展開して示したものである。左端のN極は、振動子26が正転する場合に回転位置の基準となる0度であり、右端のS極は回転位置270度となる。また、図4(b)は、(a)の磁極の変化に伴う磁気抵抗素子31の磁性判定信号(出力電圧)の変化を示すが、磁気抵抗素子31は磁極の変化を検出せずに磁性の有無だけを検出するので、磁性判定信号は、回転位置0?270度の範囲においてハイレベルとなり、それ以外の無磁極領域ではローレベルとなる。そして、図4(c)は、(a)の磁極の変化に伴うホール素子30の磁極判定信号(出力電圧)の変化を示したものである。この磁極判定信号は、無磁極領域では磁極判定信号はゼロレベルであり、N極を検出すると正側のハイレベルを示し、S極を検出すると負側のハイレベルを示す。」、
「【0025】図5は、超音波プローブ20及び画像処理装置33の電気的構成を、機能別のブロック図として示すものである。操作部22の出力端子は、画像処理装置33のCPUなどで構成された制御手段たる制御部35の入力端子に接続されており、操作ダイヤル22aの操作による信号を与えるようになっている。制御部35の出力端子は、駆動部36を介してアクチュエータ25の入力端子に接続され、アクチュエータ25に駆動信号を与えるようになっている。また、制御部35の入出力端子は、振動子26の入出力端子に接続されている。
【0026】ホール素子30及び磁気抵抗素子31の出力端子は、増幅手段たる増幅回路37を介して回転位置検出手段たる回転位置検出部38の入力端子に夫々接続されており、回転位置検出部38の出力端子は、制御部35の入力端子に接続されている。
【0027】また、制御部35の入出力端子は、DRAMなどからなる記憶部39及び画像データ処理手段たる画像処理部40の入出力端子にアドレス及びデータバス並びに制御信号線を介して接続されている。更に、制御部35の出力端子は、表示手段たるディスプレイ41に接続されており、ディスプレイ41に画像データを与えるようになっている。更にまた、制御部35の入力端子には、キーボード42の出力端子が接続されている。
【0028】これらの電気的構成部分には、商用交流電源から供給される交流電源より直流電源回路43が作成した直流電源が、ダイオード44を介して供給されるようになっている。また、この直流電源は、バックアップ用電源であるコンデンサ45を、ダイオード46を介して充電するようになっている。そして、コンデンサ45は、商用交流電源が停電した場合は、充電された電荷をダイオード47を介してを放電することにより、バックアップ用電源の供給を行う。尚、以上が超音波診断装置48を構成している。」
と記載されている。これらの記載によれば、引用例1には、
「本体ケース24の内部に0度から270度に回転する超音波振動子26を備えた超音波プローブ20と、表示手段たるディスプレイ41を備えた超音波診断装置48。」
が開示されていると認めることができる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、平成7年1月13日に公開された特開平 7- 8496号公報(以下「引用例2」という。」には、
「【0044】図10?図15は、図5に示した超音波プローブを用いた場合において、プローブの中心軸を中心として回転するコンベックス形超音波トランスデューサ23により得られる画像の表示例を示す図である。
【0045】図10に示すように、超音波プローブ1の中心軸(コンベックス形超音波トランスデューサ51の回転軸)に平行な複数の平面上の断層像81を任意の斜視角度をなす斜視平面に投影して斜視画像として再構成し、かつ各断層像81の重なり合う部分で斜視の視点から遠方に位置する領域は表示されないように処理して表示することによって、全体として3次元画像80として表示する。また、位置マーク27に対応する断層像上の位置に、マーク82を表示する。」
と記載されている。また、図10?図15には、超音波プローブの断層像にプローブの中心軸を表示することが示されている。これらの記載によれば、引用例2には、
「超音波プローブ1の中心軸に平行な複数の平面上の断層像81を処理し、断層像81に回転するコンベックス形超音波トランスデューサ23の中心軸を表示して、全体として3次元画像80とする表示例。」
が開示されていると認めることができる。


4.対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「本体ケース24」は、本願発明の「ケーシング」に相当する。また、引用例1に記載された発明の「ディスプレイ41」は診断対象の断面データを表示するものであるから、本願発明の「断層像を表示する表示手段」に相当する。さらに、引用例1に記載された発明の「超音波振動子26」は、本願発明の「振動子」に相当し、超音波送受波部を有する超音波探触子を形成しているものと認められる。ここで、引用例1に記載された発明の「超音波振動子26」は、「0度から270度に回転する」するように本体ケース24の内部に備えられていることから、本願発明と同様に「振動子」の「中央部分に対し超音波送受波方向に沿って設定された軸周りに90度以上回転可能にケーシングに装着され」ているものと認められる。
したがって、両者は「振動子を有し、振動子中央部分に対し超音波送受波方向に沿って設定された軸周りに90度以上回転可能にケーシングに装着された超音波送受波部を有する超音波探触子と、前記超音波送受波部による送受波により撮影された断層像を表示する表示手段とを有する超音波診断装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願発明では振動子がアレイであり、リニア配列された超音波送受波部を有するのに対し、引用例1に記載された発明の超音波振動子26がリニアアレイであるか不明である点。
[相違点2]超音波探触子が、本願発明では血管撮影用であり、表示手段が血管に沿った断層像を表示するのに対し、引用例1に記載された発明では撮影対象が限定されていない点。
[相違点3]表示手段が、本願発明では断層像に軸を示す中央線を表示するのに対し、引用例1には中央線を表示することが記載されていない点。

5.判断
[相違点1]について
超音波探触子として、リニアアレイに配列された探触子は広く一般に用いられている(例えば、(社)日本電子機械工業会編「改訂 医用超音波機器ハンドブック」コロナ社、平成9年1月20日発行、第74?77頁、3.2.2欄「探触子の構成」を参照。)。振動子としてどのようなものを採用するかは、公知の構成から当業者が適宜選択しうることであるから、引用例1に記載された発明において、その超音波振動子26としてリニア配列された振動子アレイを採用することは、当業者が容易に想到しうることである。

[相違点2]について
超音波探触子は、様々な生体器官の撮像に用いられており、血管に沿った断層像を撮像の撮影に用いることも、一般に行われていることである(必要ならば、特開昭63-171544号公報および特開平 8-294487号公報を参照されたい。)。超音波探触子をどのような用途に用いるかは、当業者が目的に応じて適宜選択しうることであるから、引用例1に記載された発明を、血管に沿った断層像を撮像するために用いることは、当業者が容易に想到しうることである。

[相違点3]について
引用例2に示されるように、超音波プローブの断層像にプローブの中心軸を表示することは従来より行われていることである。引用例1に記載された発明と引用例2に記載された発明は、どちらも断層像を表示する超音波診断装置に関するものであり、どちらも超音波振動子を回転させて得られた断層像を表示するためのものである。断層像の表示を行うにあたり、同様の断層像の表示に従来より用いられていた表示手法を採用することは、通常適宜行われることであるから、引用例1に記載された発明において断層像を表示するに際し、当該分野において回転する超音波振動子の断層像表示に従来用いられていた回転軸を示す中央線の表示を採用することは、当業者が容易に想到しうることである。
また、中央線を用いたことによる効果について検討すると、引用例2に記載された発明における、回転するプローブの中心軸の表示は、複数の断層像同士の位置関係を明確にすることにより、全体として3次元画像として把握するために設けられるものである。出願人は、引用例2に示された発明では回転軸は単に参考のためのみに示されるものであるとし、本願発明では「撮影された血管方向に沿った断層像上に探触子の回転軸として示された中央線は、次に超音波探触子を回転させることで得るべき血管断層像の位置関係を明確に把握することを可能とし、撮影された血管に沿った断層像上で、血管の狭窄部の疑いのある箇所を発見した場合などにおいて、探触子を回転させた場合に血管の断層像が得られる箇所を中央線で認識できるため、疑わしい箇所を特定し、特定した箇所の血管断層像を確実に得ることができるという作用効果を奏します。」と主張している。しかしながら、断層像同士の位置関係を明確にするという作用効果は、回転軸を示す中央線を表示することにより当然得られる効果である。そして、撮像対象を特定することにより格別な効果の差異が生じるものでもない。


6.結び
したがって、本願発明は、引用例1および引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-15 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-03 
出願番号 特願平9-59041
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 順也  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 宮澤 浩
信田 昌男
発明の名称 超音波探触子  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  

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