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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1181641
審判番号 不服2007-19706  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-13 
確定日 2008-07-16 
事件の表示 平成 9年特許願第346794号「エスカレータおよび移動歩道用の接近領域監視装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月 7日出願公開、特開平10-182050〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成9年12月16日(パリ条約による優先権主張1996年12月16日、スイス国)の出願であって、平成18年7月26日付けで拒絶理由が通知され、平成18年10月31日付けで手続補正がなされると共に意見書が提出され、平成19年4月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年7月13日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、平成19年7月25日付けの手続補正により明細書の補正がなされたものであり、その請求項1ないし6に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 駆動装置を制御するための、エスカレータ(1)および移動歩道用の接近領域監視装置であって、光バリアの通過が発生したときに、エスカレータ(1)のステップ(2)または移動歩道におけるベルトへの踏み込みが行われる前に、前記駆動装置のスイッチが入り、
単一の光センサ(12)がハンドレール湾曲部(10)領域のハンドレールエントリキャップに一体的に設けられており、前記光センサ(12)が発信部(15)と受信部(16)とからなり、エスカレータまたは移動歩道の入口領域、特に敷居板(14)の入口領域を監視することを特徴とする接近領域監視装置。」

第2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-87592号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はエスカレータあるいは動く歩道の自動運転装置に関する。」

イ.「【0003】エスカレータは上下階の乗降口間を移動する無端状に連結された踏段1と、踏段1の両側に設けられた欄干5と、この欄干上を踏段1と同期して移動する移動手すりとによって構成され、乗客を搬送する。
【0004】エスカレータの乗降口は、無端状に連結された踏段1が出入し、踏段との境界であるゴムプレートにゴム2が取付けられ、その先は乗客を案内する乗降板4が建屋床3に接続して設けてある。更に、欄干の先端はゴム2より建屋床3方向へ適当な距離を延長して乗降客を案内する欄干ニュアル部6を構成している。又この欄干ニュアル部6には一般にアナウンス用のスピーカが内蔵7されている。」(なお、「コム」及び「コムプレート」は、「ゴム」及び「ゴムプレート」の誤記。)

ウ.「【0007】
【発明が解決しようとする課題】前述のエスカレータ自動運転装置においては、エスカレータ乗降口の欄干部手前に乗客を検知する光センサを設けるため、その光センサを収納するポール等を設けなければならない。
【0008】このポール等を乗降口近くに設置するため乗客が誤ってポールに接触したり、あるいはぶつかったりする事故も発生する。又、ポールが障害となって乗降口で乗客が滞留してしまうこともある。更にポールの位置によってはポールを通らずに横からエスカレータに乗り込めるので乗客の検知ができない不都合が生じる。
【0009】本発明は、上記に鑑み、エスカレータの乗降口付近に乗客検知用のポール等の突出物を設けることを止めて、光センサ等のセンサにより乗客を見逃すことなく検知してエスカレータを自動運転させると共に乗降口での乗客の流れを円滑にすることを目的とする。」

エ.「【0013】欄干ニュアル部6の先端の各々に各一組の投受器からなる光センサ11LA、RAを埋め、夫々の光センサ11RA、LAの投射線R1、L3が略乗降板4上で交叉するようにする。このような左右で対の光センサを複数対(11LAと11RA、11LBと11RB、11LCと11RC…)を設け乗降口の検知範囲R、C、Lをカバーして、乗り込む利用客を全て検知する。
【0014】図2の図示のように、エスカレータに乗込もうとして建屋床3より乗降板4に近付く乗客を、左右の光センサ11LA、RAからの投射光R1、L3が交叉する点前後の領域Rで夫々に検知し、左右の光センサが同時に作動したときのみ乗客として検知させる。このように検知した場合はエスカレータの運転回路に連動して自動運転を起動させる。
【0015】従来のように乗客検出用の光電スイッチを収納したポール等の障害物を乗降口付近に立設することなく、乗客を事前に検出するため、乗降口における乗客の円滑な流れを阻害せずエスカレータを自動運転させることができる。又、前記ポール等突出物を設けないことにより欄干意匠を損ねることも起きない。」(なお、「エスカレーター」は「エスカレータ」の誤記。)

オ.「【0017】他の実施例として、左右欄干ニュアル部6に夫々複数個の光センサ11RA、11RB、11LA、11LBを設け、それらの投光線R1、L1及びR2、L2の交叉点を乗客の進行方向の前後に設定しておく。
【0018】このような構成で、例えば、図3に示すように乗込み口近傍で検知する光センサが動作した時はインバータ制御等により緩起動をさせ、乗降口より遠距離で検知する光センサが動作した時は通常起動を実施することにより乗客の歩行と合った起動ができ、乗客が乗りやすくなる。」

カ.「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による下階乗降口部分の斜視図である。
【図2】図1の平面図(センサの検出領域を示す図)である。
【図3】図1の平面図で他の実施例によるセンサ検出システムを示す平面図である。
【図4】従来の乗降口部分の斜視図である。
【図5】従来のエスカレータ側面図である。
【符号の説明】
1…踏段
5…欄干
4…乗降板
6…欄干ニュアル部
8…ポール
9a、9b…光センサ
11RA、RB、RC、11LA、LB、LC…光センサ」(なお、「欄干」を表す符号「2」は「5」の誤記。)

(2)ここで、上記記載事項(1)ア.ないしカ.及び図面から、引用文献に記載されたものについて、次のことが分かる。

上記ア.、カ.及び図面の記載より、エスカレータあるいは動く歩道におけるセンサ検出システムを備えた自動運転装置に関するものであることが分かる。

上記ウ.の記載より、エスカレータ等自動運転装置における光センサを収容するポール等の設置を不必要とすることを目的としていることが分かる。

上記イ.、カ.及び図1の記載より、エスカレータの乗降口には乗降板4が設けられていることが分かる。

上記エ.、カ.及び図1?3の記載より、各一組の投受器からなる光センサ11LA、RAが、欄干ニュアル部6の先端を埋められ、一体的に設けられていることが分かる。また、左右の光センサ11LA、RAからの投射光R1?3、L1?3が交叉する点前後の領域R、C、Lにおいて、エスカレータに乗り込む利用客を事前に検知していることが分かる。更に、該領域R、C、Lは、乗降口、特に、乗降板4の乗降口に設定されていることが分かる。加えて、該検知が発生したときに、エスカレータの踏段1への踏み込みが行われる前に、自動運転装置が起動されていることが分かる。

上記オ.、カ.及び図3の記載より、光センサ11RA、11RB、11LA、11LBの個数が2対である実施例が記載されていることが分かる。
(3)引用文献記載の発明
上記記載事項(1)、(2)より、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。
「自動運転装置を制御するための、エスカレータのセンサ検出システムであって、領域R、C、Lで検知したときに、エスカレータの踏段1への踏み込みが行われる前に、前記自動運転装置を起動させ、
複数の光センサ11RA、11RB、11LA、11LBが欄干ニュアル部6の先端に一体的に設けられており、前記光センサ11RA、11RB、11LA、11LBが一組の投受器とからなり、エスカレータの乗降口、特に乗降板4の乗降口を検知するセンサ検出システム。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

第3.本願発明と引用文献記載の発明との対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「自動運転装置」、「エスカレータ」、「センサ検出システム」、「領域R、C、Lで検知」、「踏段1」、「自動運転装置を起動させ」、「光センサ11RA、11RB、11LA、11LB」、「欄干ニュアル部6の先端」、「一組の投受器」、「乗降口」、「乗降板4」及び「検知」は、本願発明における「駆動装置」、「エスカレータ」、「接近領域監視装置」、「光バリアの通過が発生」、「ステップ」、「駆動装置のスイッチが入り」、「光センサ」、「ハンドレール湾曲部領域」、「発信部と受信部」、「入口領域」、「敷居板」及び「監視」にそれぞれ相当する。

してみると、本願発明と引用文献記載の発明とは、
「駆動装置を制御するための、エスカレータの接近領域監視装置であって、光バリアの通過が発生したときに、エスカレータのステップへの踏み込みが行われる前に、前記駆動装置のスイッチが入り、
光センサがハンドレール湾曲部領域に一体的に設けられており、前記光センサが発信部と受信部とからなり、エスカレータの入口領域、特に敷居板の入口領域を監視する接近領域監視装置。」で一致し、次の点において相違している。

[相違点1]
「光センサ」の個数に関して、本願発明においては、「単一」であるのに対し、引用発明1に記載の発明においては、「複数」である点。

[相違点2]
「ハンドレール湾曲部領域」に一体的に設けられた「光センサ」の設置に関して、本願発明においては、該「光センサ」が「ハンドレールエントリキャップ」に設けられているのに対し、引用文献記載の発明においては、その点明らかでない点。

第4.当審の判断
まず、上記[相違点1]について検討する。
引用文献記載の発明においても、上記第2.(1)オ.の記載に見られるように、別実施例として「光センサ」の個数をより少なくしている点が開示されていることから、該センサ個数を任意に設定し得ることが示唆されているといえる。
また、エスカレータにおける乗客検出装置の設置個数を単一とすることは、検知精度及び経済性を考慮し、当業者が適宜設計し得る事項にすぎない(例えば、実願昭56-160770号(実開昭58-64679号)のマイクロフィルムにおける明細書第8頁第9行?同第12行の記載、特開平5-17093号公報の第3図等を参照されたい。)。

したがって、上記引用文献記載の発明における「光センサ」を単一とし、上記[相違点1]に係る本願発明の構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

次に、上記[相違点2]について検討する。
「ハンドレール湾曲部」領域に「光センサ」を如何に設置するかは、取付性を加味して、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
なお、「ハンドレールエントリキャップ」に乗客検知用の「光センサ」を設置することは、従来周知の技術(例えば、特開平2-300089号公報の第1図、第2図等参照されたい。)である。

したがって、上記引用文献記載の発明における「光センサ」の設置に関し、上記従来周知の技術を考慮して、上記[相違点2]に係る本願発明の構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

なお、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び従来周知の技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

第5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献記載の発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-14 
結審通知日 2008-02-19 
審決日 2008-03-03 
出願番号 特願平9-346794
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 金澤 俊郎
西本 浩司
発明の名称 エスカレータおよび移動歩道用の接近領域監視装置  
代理人 川口 義雄  
代理人 小野 誠  
代理人 大崎 勝真  
代理人 坪倉 道明  

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