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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1181704 |
審判番号 | 不服2005-6290 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-08 |
確定日 | 2008-07-25 |
事件の表示 | 特願2001-327539「アイアンのゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 7日出願公開、特開2003-126313〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年10月25日の出願であって、平成17年2月25日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月9日付で手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 2.本件補正の却下の決定 [本件補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)補正事項 本件補正は、以下の補正事項を含んでいる。 特許請求の範囲の記載を、補正前の 「【請求項1】 ヘッド本体のフェース部に、内周に受け部を有する開口部を形成し、当該受け部でフェース部材を支持し乍ら、フェース部材の周縁部をアーク溶接を除く溶接方法でヘッド本体に溶接してフェース部材を開口部に止着したアイアンのゴルフクラブヘッドであって、 上記開口部のフェース開口面積(S1)に対する受け部の受け部面積(S2)の割合(S2/S1)が、 0.6%≦S2/S1≦18.8% であることを特徴とするアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項2】 開口部のフェース開口面積(S1)が、 25.0cm^(2)≦S1≦40.0cm^(2) であることを特徴とする請求項1記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項3】 フェース部材の肉厚(t)が、 1.5mm≦t≦2.8mm であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項4】 受け部は、開口部の内周に連続的に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項5】 受け部は、開口部の内周に複数突設された小突起であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項6】 受け部とフェース部材との間に、合成樹脂層を介在させたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。」 から、補正後の 「【請求項1】 ヘッド本体のフェース部に、内周に受け部を有する開口部を形成し、当該開口部内にフェース部材を圧入してこれを受け部で支持し乍ら、フェース部材の周縁部をアーク溶接を除く溶接方法でヘッド本体に溶接してフェース部材を開口部に止着したアイアンのゴルフクラブヘッドであって、 上記開口部のフェース開口面積(S1)に対する受け部の受け部面積(S2)の割合(S2/S1)が、 0.6%≦S2/S1≦18.8% であることを特徴とするアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項2】 ヘッド本体のフェース部に、内周に受け部を有する開口部を形成し、当該受け部でフェース部材を支持し乍ら、フェース部材の周縁部をアーク溶接を除く溶接方法でヘッド本体に溶接してフェース部材を開口部に止着したアイアンのゴルフクラブヘッドであって、 上記開口部のフェース開口面積(S1)が、 25.0cm^(2)≦S1≦40.0cm^(2)で、 当該フェース開口面積(S1)に対する受け部の受け部面積(S2)の割合(S2/S1)が、 0.6%≦S2/S1≦18.8% であることを特徴とするアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項3】 フェース部材の肉厚(t)が、 1.5mm≦t≦2.8mm であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項4】 ヘッド本体のフェース部に、内周に受け部を有する開口部を形成し、当該受け部でフェース部材を支持し乍ら、フェース部材の周縁部をアーク溶接を除く溶接方法でヘッド本体に溶接してフェース部材を開口部に止着したアイアンのゴルフクラブヘッドであって、 上記開口部のフェース開口面積(S1)に対する受け部の受け部面積(S2)の割合(S2/S1)が、 0.6%≦S2/S1≦18.8%で、 フェース部材の肉厚(t)が、 1.5mm≦t≦2.8mm であることを特徴とするアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項5】 開口部のフェース開口面積(S1)が、 25.0cm^(2)≦S1≦40.0cm^(2) であることを特徴とする請求項1に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項6】 フェース部材の肉厚(t)が、 1.5mm≦t≦2.8mm であることを特徴とする請求項5に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項7】 受け部は、開口部の内周に連続的に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項8】 受け部は、開口部の内周に複数突設された小突起であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。 【請求項9】 受け部とフェース部材との間に、合成樹脂層を介在させたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のアイアンのゴルフクラブヘッド。」 と補正する(補正箇所にアンダーラインを引いた。)。 (2)補正目的の適否 補正前後の請求項を比較すると、補正前請求項4?6と、補正後請求項7?9は引用している請求項の記載のみが変更されており、その他の記載は変更されていないから、補正前請求項4?6は、補正後請求項7?9に対応している。 また、補正後請求項1は、補正前請求項1において、「開口部内にフェース部材を圧入し」との事項を追加したもの、換言すると、補正前請求項1の「受け部でフェース部材を支持し」との特定事項を「開口部内にフェース部材を圧入し」と限定したものであるから、補正前請求項1は補正後の請求項1に対応している。 さらに、補正後請求項2は、補正前の請求項2の補正前請求項1引用部分を独立請求項としたものであるから、補正後の請求項2は、補正前の請求項2に対応している。 さらにまた、補正後の請求項3はフェース部材の肉厚(t)に関するものであるから、同じくフェース部材の肉厚(t)に関する補正前請求項3に対応している。 そうすると、補正後の請求項4?6は、対応すべき補正前の請求項は存在しないことになり、新設された請求項である。 ところで、平成18年改正前特許法第17条の2第4項は、審判請求時の補正目的について、請求項削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明のみと規定しており、請求項の新設や1つの請求項を複数の請求項に分割することは、特別の例外を除いて認めていない(東京高判平成15年(行ケ)230号又は知財高判平成17年(行ケ)10192号を参照されたい。)。特別の例外とは、多数項引用形式で記載されていた請求項を個別の請求項に変更する場合であって、補正前後の請求項の対応関係が明確である場合である。 そうすると、本件補正に係る請求項4?6の補正は、請求項の新設及び増項するものであって、上記特別の例外に該当するものでもないから、「特許請求の範囲の減縮」(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号)を目的とするものとはいえず、また、「請求項の削除」(同法同条同項第1号)、「誤記の訂正」(同法同条同項第3号)、「明りようでない記載の釈明」(同条同項第4号)のいずれを目的とするものでもない。 (3)補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反しているので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 3.本件審判請求についての判断 (1)本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1?6に係る発明は、平成17年1月27日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる(上記2.(1)参照。本願の請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。)。 (2)引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-204864号公報(以下「引用例」という。)には、次のア?エの記載が図示とともにある。 ア.「 ヘッド本体(2)に、打球面側(10)から背面側(11)に貫通する打球面開口部(12)を設け、打球面開口部(12)にヘッド本体(2)とは異素材のフェイス部材(3)を嵌着し、肉厚のソール部(5)に凹部(6)を設け、凹部(6)にヘッド本体(2)よりも比重の大きいソールウエイト部材(4)を嵌着したアイアンゴルフクラブヘッド(1)において、該ソールウエイト部材(4)のフェイス部材(3)に最も近い部分の角部(4a)を落としたことを特徴とするアイアンゴルフクラブヘッド(1)。」(【請求項1】) イ.「ヘッド本体とフェイス部材およびソールウエイト部材との接合は、溶接や接着することもできる」(段落【0012】参照) ウ.「図3に示すように、ヘッド本体2には打球面側10から背面側11に貫通する打球面開口部12を形成している。該打球面開口部12は、打球面からフェイス部材3の厚み分凹んだ位置に、フェイス部材3の面積に対し約75%の開口面を形成し、打球面開口部12に環状に段7を形成している。この打球面開口部12に、フェイス部材3を挿入し、外周をかしめて接合している。」(段落【0015】参照) エ.図1?3から、ヘッド本体2の打球面側10にフェイス部材3の厚み分凹んでいて内方に連続的に突設される段7を有し、フェイス部材3のフェイス面の面積と同じ大きさの面積の開口面積を持ち、背面側11に上記段7の内周縁により打球面開口部12が形成されている、フェイス部材3の嵌合部(以下、「フェイス部材3の開口嵌合部」という。)が設けられていることが看取できる。 [引用発明の認定] ヘッド本体とフェイス部材との接合は、溶接することもでき(記載イ参照)、ヘッド本体2のフェイス部材3の厚み分凹んでいて内方に連続的に突設される段7を有する、フェイス部材3の開口嵌合部にフェイス部材3を溶接により接合(止着)するに当たり、段7でフェイス部材3を支持し乍らフェイス部材3の周縁部をヘッド本体2に溶接することは、通常の溶接方法をとる限り、当然のことである。 また、記載エから、記載ウの「打球面開口部12は、フェイス部材3の面積に対し約75%の開口面を形成し」ていることは、フェイス部材3の開口嵌合部の打球面側10の、フェイス部材3のフェイス面の面積と同じ大きさの面積の開口面積(以下、「フェイス部材3の開口嵌合部のフェイス開口面積」という。)に対する段7のフェイス部材3を受ける面積の割合が約25(=100-75)%であることと同義であると認められる。 そして上記割合は、フェイス部材3の開口嵌合部への止着方法がかしめ接合である場合に限らず溶接である場合にも採用可能であることも自明である。 以上のことから上記記載ア?エを含む引用例には、以下の発明が記載されているといえる。 「ヘッド本体2の打球面側10に、フェイス部材3の厚み分凹んでいて内方に連続的に突設される段7を有する、フェイス部材3の開口嵌合部を形成し、当該段7でフェイス部材3を支持し乍ら、フェイス部材3の周縁部をヘッド本体に溶接してフェイス部材3をフェイス部材3の開口嵌合部に止着したアイアンゴルフクラブヘッド1であって、 上記フェイス部材3の開口嵌合部のフェイス開口面積に対する段7のフェイス部材3を受ける面積の割合が、約25%であるアイアンゴルフクラブヘッド1。」(以下、「引用発明」という。) (3)対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「ヘッド本体2」、「フェイス部材3」、「段7」及び「アイアンゴルフクラブヘッド1」は、それぞれ、本願発明の「ヘッド本体」、「フェース部材」、「受け部」及び「アイアンのゴルフクラブヘッド」に相当している。 b.引用発明の「ヘッド本体2の打球面側10に、フェイス部材3の厚み分凹んでいて内方に連続的に突設される段7を有する、フェイス部材3の開口嵌合部を形成し」ていることは、「ヘッド本体のフェース部に、内周に受け部を有する開口部を形成し」ていることと異ならないから、引用発明の「フェイス部材3の開口嵌合部」及び「フェイス部材3の開口嵌合部のフェイス開口面積」は、本願発明の「開口部」及び「開口部のフェース開口面積(S1)」に相当している。 c.引用発明の「段7のフェイス部材3を受ける面積」は、本願発明の「受け部の受け部面積(S2)」に相当している。 以上のことから、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「ヘッド本体のフェース部に、内周に受け部を有する開口部を形成し、当該受け部でフェース部材を支持し乍ら、フェース部材の周縁部をヘッド本体に溶接してフェース部材を開口部に止着したアイアンのゴルフクラブヘッド。」 [相違点] A.フェース部材の周縁部のヘッド本体への溶接について、本願発明では「アーク溶接を除く溶接方法で」と特定しているのに対して、引用発明では、溶接方法が定かでない点。 B.開口部のフェース開口面積(S1)に対する受け部の受け部面積(S2)の割合(S2/S1)が、本願発明では、0.6%≦S2/S1≦18.8%と特定しているのに対して、引用発明では、約25%であって、上記の特定を有しない点。 [相違点の判断] 相違点Aについて 本願発明の出願当時、フェース部材の周縁部のヘッド本体への溶接に「アーク溶接を除く溶接方法」であるレーザ溶接を採用することは、例えば、特開2001-293115号公報(原審の拒絶理由に引用)、特開2000-334071号公報等にみられるように周知であるから、引用発明において、相違点Aに係る本願発明の構成である、フェース部材の周縁部のヘッド本体への溶接について「アーク溶接を除く溶接方法で」と特定する構成を具備することは、当業者が想到容易である。 相違点Bについて 本願発明の出願当時、ヘッド本体のフェース部にフェース部材をフェース部材の開口嵌合部(開口部)で止着したアイアンのゴルフクラブヘッドに関して、フェース部材の反発性が向上してボールの飛距離を増大すると共に十分な耐久強度を得られるようにする課題があることはよく知られていたことであり、また、そして通常、フェース部材の反発性と耐久強度は、フェース部材の全体の面積に対するフェース部材のフェース面の変形できる部分(引用例の記載を使えば「打球面開口部12」)の面積の割合に依存している。換言すると、フェース部材の反発性と耐久強度は、フェース部材の止着部である開口嵌合部(開口部)のフェース開口面積(S1)に対する、変形できない部分である受け部の受け部面積(S2)の割合(S2/S1)に依存している。当該割合(S2/S1)が減少すれば、フェース部材の反発性が増大するが耐久強度は減少し、逆に、割合(S2/S1)が増大すれば、フェース部材の反発性が減少するが耐久強度は増大する関係にあることも技術常識である。 ゆえに、引用発明において、割合(S2/S1)は、25%と定まっていて変更できない事項でなく、フェース部材の反発性と耐久強度のバランスを考えて、当業者が適宜変更可能な事項といえる。 そして、本願発明の割合(S2/S1)の「0.6%≦S2/S1≦18.8%」との具体的数値(範囲)の意義についてみるに、本願の明細書の記載(特に表1)を参酌しても、割合(S2/S1)に対する反発性、耐久強度の関係は、0.6%から25%の範囲で連続的に推移しており、本願発明の「0.6%≦S2/S1≦18.8%」との具体的数値(範囲)が、格別の臨界的意義を持っているものといえず、引用発明の約25%に比べて格別の数値(範囲)ということもできない。 そうすると、引用発明に相違点Bに係る本願発明の構成を備えることは、当業者が適宜なす範囲内のことと認める。 以上のとおり、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-22 |
結審通知日 | 2008-05-27 |
審決日 | 2008-06-10 |
出願番号 | 特願2001-327539(P2001-327539) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 尚 |
特許庁審判長 |
番場 得造 |
特許庁審判官 |
長島 和子 佐藤 宙子 |
発明の名称 | アイアンのゴルフクラブヘッド |
代理人 | 古谷 史旺 |