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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M |
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管理番号 | 1181706 |
審判番号 | 不服2005-16560 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-30 |
確定日 | 2008-07-25 |
事件の表示 | 特願2001-184966「加速ポンプジェット」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月26日出願公開、特開2002-371915〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本願は、平成13年6月19日の出願であって、平成16年8月24日付けで拒絶の理由が通知され、平成16年10月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成17年2月28日付けで再度拒絶の理由が通知され、平成17年5月9日付けで意見書が提出されたが、平成17年7月22日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。これに対し平成17年8月30日付けで拒絶査定に対する審判が請求されるとともに平成17年9月26日付けで手続補正書が提出され明細書が補正されると同時に、同日付けで別に提出された手続補正書により審判請求の理由が補正された。 [2]平成17年9月26日付け手続補正書でした補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成17年9月26日付け手続補正書でした明細書の補正を却下する。 〔理由〕 1.本件補正の内容 平成17年9月26日付け手続補正書でなした明細書の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の請求項1の記載を下記に示す請求項1のように補正することを含むものである。 (a)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 走行車両におけるアクセル開度の上昇により、閉止状態のスロットルバルブを開成し、該スロットバルブの開成によって形成された開口部を通じて、吸気によって生じた負圧により、車両がアイドリングから高速を運行するために必要な燃料を燃焼室に供給する双胴型1ステージ式キャブレターに用いられ、車両の加速によってエンジン回転数を急激に上昇させる際に、加速力を増強するために、前記燃料とは別に前記燃焼室に供給される補助燃料を、前記アクセル開度の上昇に伴って付与された圧力を利用して、前記開口部に向けて吐出する加速ポンプジェットであって、 前記スロットルバルブは、その閉止状態においてキャブレターの内周壁に接して吸気や燃料の通路を塞ぎ、その開成状態においてキャブレターの内周壁との間に開口部を形成する端部を備えており、 前記加速ポンプジェットは、 前記補助燃料を吐出する補助燃料吐出孔が複数形成されたノズルを備え、 前記ノズルは、前記スロットルバルブの上流側に、前記複数の補助燃料吐出孔が前記スロットルバルブの端部寄りの部位に対向するように配置されており、 前記補助燃料吐出孔の直径が、0.22?0.30ミリメートルの範囲内の値とされている 加速ポンプジェット。」(下線部は補正箇所を示す。) 2.本件補正の適否 (1)本件補正により補正された請求項1及び4に係る発明 請求項1に関しては、本件補正前の請求項1における「吸気や燃料を燃焼室に供給する双胴型1ステージ式キャブレター」とされていたことを「吸気によって生じた負圧により車両がアイドリングから高速を運行するために必要な燃料を燃焼室に供給する双胴型1ステージ式キャブレター」と補正し、かつ「車両の加速によってエンジン回転数を急激に上昇させる際に、加速力を増強するために、前記燃料とは別に前記燃焼室に供給される補助燃料を」と、当該「双胴型1ステージ式キャブレター」について、その燃料供給のメカニズムを規定すると共に供給する燃料について「アイドリングから高速を運行するために必要な燃料」、及び、「車両の加速によってエンジン回転数を急激に上昇させる際に、加速力を増強するために、前記燃料とは別に前記燃焼室に供給される補助燃料を」と限定するものであり、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解される。 そこで、本件補正により補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、以下に検討する。 3.引用した刊行物に記載された発明、技術 (1)刊行物1記載の発明 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前である昭和53年3月31日に頒布された刊行物である木村隆一著『キャブレータの構造と調整』(新版第3刷)、株式会社山海堂発行(以下、「刊行物1」という。)、第136頁第15行?第137頁第2行、図2.31及び図2.32、には、次のことが記載されているといえる。 「走行車両におけるアクセル開度の上昇により、閉止状態のスロットル・バルブを開成し、該スロットル・バルブの開成によって形成された開口部を通じて、吸気によって生じた負圧により、車両がアイドリングから高速を運行するために必要な燃料を燃焼室に供給する双胴型キャブレータに用いられ、車両の加速によってエンジン回転数を上昇させる際に、加速力を増強するために、主燃料系とは別に前記燃焼室に供給される補助燃料を、前記アクセル開度の上昇にともなって付与されたプランジャ・スプリングの力を利用して前記開口部に向けて吐出する加速ポンプ系であって、 前記スロットル・バルブは、その閉止状態においてキャブレータの内周壁に接して吸気や燃料の通路を塞ぎ、その開成状態においてキャブレータの内周壁との間に開口部を形成する端部を備えており、 前記加速ポンプ系は、 前記補助燃料を吐出する補助燃料吐出口が形成されたをポンプ・ジェットを備え、 前記ポンプ・ジェットは、前記スロットル・バルブの上流側に、吐出孔がスロットル・バルブの端部寄りの部位に対向するように配置されている 加速ポンプ系。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) なお、刊行物1には、「走行車両によるアクセル開度の上昇により、閉止状態のスロットル・バルブを開成し」なること、「車両の加速によってエンジン回転数を上昇させる際に」なること、及び「車両がアイドリングから高速を運行するために必要な燃料を燃焼室に供給する」ことのような、具体的動作態様について明示の記載はないが、刊行物1記載の発明が前提としている、所謂「ウェーバーキャブレータ」が通常使用される状況を考慮すると、当該「ウェーバーキャブレータ」が装着された車両に設けられたアクセルの開度の上昇によりスロットル・バルブが開成することは当然であり、また、車両を加速させる場合エンジンの回転数を上昇させるのもエンジンの技術として自明のことであり、さらに、この種のキャブレータは、車両がアイドリングから高速までというような、あらゆる状況において車両若しくはエンジンを運行するために必要な燃料を燃焼室に供給するものであること、等を参酌の上、刊行物1記載の発明を上記の通り認定した。 (2)刊行物2記載の技術 原査定において拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である実願昭50-103701号(実開昭52-18328号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、エンジンの気化器(キャブレター)に使用される燃料供給ノズルにおいて、「燃料供給ノズル先端の燃料供給口(2a)を多数孔に分割構成し、燃料の霧化を向上し、滴状燃料のない均等混合状態のガスにより不完全燃焼を防止するようにしたこと。」(明細書第3頁第6行?同第4頁第5行、第1図?第3図)が記載されている(以下、「刊行物2記載の技術」という。)。 4.本願補正発明と刊行物記載の発明との対比 本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の備える「スロットル・バルブ」、「キャブレータ」、「ポンプ・ジェット」及び「加速ポンプ系」は、それぞれ本願補正発明の備える「スロットルバルブ(スロットバルブ)」、「キャブレター」、「ノズル」及び「加速ポンプジェット」に相当し、また刊行物1記載の発明の備える「プランジャ・スプリングの力」は、本願補正発明の「圧力」に相当するので、両者は、 「走行車両におけるアクセル開度の上昇により、閉止状態のスロットルバルブを開成し、該スロットバルブの開成によって形成された開口部を通じて、吸気によって生じた負圧により、車両がアイドリングから高速を運行するために必要な燃料を燃焼室に供給する双胴型キャブレターに用いられ、車両の加速によってエンジン回転数を急激に上昇させる際に、加速力を増強するために、前記燃料とは別に前記燃焼室に供給される補助燃料を、前記アクセル開度の上昇に伴って付与された圧力を利用して、前記開口部に向けて吐出する加速ポンプジェットであって、 前記スロットルバルブは、その閉止状態においてキャブレターの内周壁に接して吸気や燃料の通路を塞ぎ、その開成状態においてキャブレターの内周壁との間に開口部を形成する端部を備えており、 前記加速ポンプジェットは、 前記補助燃料を吐出する補助燃料吐出孔が形成されたノズルを備え、 前記ノズルは、前記スロットルバルブの上流側に、前記補助燃料吐出孔が前記スロットルバルブの端部寄りの部位に対向するように配置されている 加速ポンプジェット。」である点で一致し、以下の相違点を有するものである。 (1)相違点1 本願補正発明は「双胴型1ステージ式キャブレター」に用いられるものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、双胴型のキャブレ-タではあるが1ステージ式かどうか明らかではない点。 (2)相違点2 本願補正発明のノズルは「補助燃料吐出孔が複数形成された」もので、かつ「補助燃料吐出孔の直径が、0.22?0.30ミリメートルの範囲内の値」とされているのに対し、刊行物1記載の発明のノズルであるポンプ・ジェットは、その吐出孔の数も直径も明らかではない点。 5.当審の判断 以下、上記各相違点について検討する。 (1)相違点1について 走行車両に使用される双胴型1ステージ式キャブレター自体は、本願出願前周知のものであり、刊行物1記載の発明の用途として従前周知である「双胴型1ステージ式キャブレター」(以下、「周知技術」という。)とし、上記相違点に係る本願補正発明のようにすることは、当業者にとり、ごく普通に想到する程度のことにすぎない。 (2)相違点2について エンジンのキャブレターに使用される燃料供給ノズルにおいて、吐出孔を複数形成するようにして霧化状態を改善し燃焼状態を向上したこと、は刊行物2記載の技術の通りであり、また、霧化状態の改善若しくは気化効率の向上を図り、エンジンの燃焼状態を改善するということは、キャブレターの技術分野において従前より周知の課題である。これらのことを参酌すると、刊行物2記載の技術を刊行物1記載の発明の備えるノズルの吐出孔部に採用することは、当業者にとり普通に想到することであり、また、その際、各吐出孔の径をどの程度の値とするかは、刊行物2記載の技術が示唆するところに従い、装着されるキャブレター若しくはエンジンの寸法、燃料の性状、等の状況に応じ、当業者が設計上適宜に決定する程度のことにすぎないので、刊行物1記載の発明のノズル部について刊行物2記載の技術を採用し相違点2に係る本願補正発明のようにすることは、当業者にとり、通常の創作力の範囲でなしうる程度のことにすぎない。 また、本願補正発明を全体としてみても、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術並びに周知技術と比べ、格別顕著な効果が生じたものとも認められない。 したがって、本願補正発明は刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、本願出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 [3]本願発明について 1.本願発明 平成17年9月26日付け手続補正書によりなした補正は上記の通り却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成16年10月26日付け手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の、請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 走行車両におけるアクセル開度の上昇により、閉止状態のスロットルバルブを開成し、該スロットバルブの開成によって形成された開口部を通じて吸気や燃料を燃焼室に供給する双胴型1ステージ式キャブレターに用いられ、前記アクセル開度の上昇に伴って付与された圧力を利用して、前記開口部に向けて、加速力を増強するための補助燃料を吐出する加速ポンプジェットであって、 前記スロットルバルブは、その閉止状態においてキャブレターの内周壁に接して吸気や燃料の通路を塞ぎ、その開成状態においてキャブレターの内周壁との間に開口部を形成する端部を備えており、 前記加速ポンプジェットは、 前記補助燃料を吐出する補助燃料吐出孔が複数形成されたノズルを備え、 前記ノズルは、前記スロットルバルブの上流側に、前記複数の補助燃料吐出孔が前記スロットルバルブの端部寄りの部位に対向するように配置されており、 各補助燃料吐出孔の直径が、0.22?0.30ミリメートルの範囲内の値とされている 加速ポンプジェット。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用した刊行物に記載された発明、技術 刊行物1及び刊行物2には、それぞれ、上記[2]、3、(1)及び(2)に指摘した通りの発明及び技術が記載されている。 3.対比、判断 本願補正発明は本願発明をさらに限定するものであるから、本願補正発明が上記のとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび、 以上の通り、本願発明は、本願出願前日本国内において頒布された刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、上記結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-13 |
結審通知日 | 2008-05-20 |
審決日 | 2008-06-02 |
出願番号 | 特願2001-184966(P2001-184966) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02M)
P 1 8・ 575- Z (F02M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 近藤 泰、佐藤 正浩 |
特許庁審判長 |
早野 公惠 |
特許庁審判官 |
荘司 英史 深澤 幹朗 |
発明の名称 | 加速ポンプジェット |