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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1181708
審判番号 不服2005-24363  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-16 
確定日 2008-07-25 
事件の表示 特願2002- 65647「プルタブを用いたロック解除機構及びコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月17日出願公開、特開2003-297482〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件の出願(以下、「本願」という。)は、平成14年3月11日(優先権主張 平成14年2月1日)の出願であって、平成16年8月31日付けの拒絶理由通知(発送日:同年9月8日)に対して平成16年11月2日付けで手続補正がなされたが、平成17年11月11日付け(発送日:同月16日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月16日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年1月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年1月11日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年1月11日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本願補正発明
平成18年1月11日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「相手部品と係合した可動なロック機構を動かして該相手部品との係合を解除するためのロック解除機構において、前記ロック機構は、前記相手部品に係合するための係合爪が設けられ、且つ回動軸を中心として該相手部品に対向する本体部品に対して回動自在なロックレバーと、前記係合爪を前記相手部品に近付ける向きに前記ロックレバーを付勢する付勢手段とを有したものであり、前記ロックレバーには、柔軟性を有する該ロックレバーとは別部品の長尺部材から成るプルタブが接続され、更に、前記プルタブを引く力により前記ロックレバーが回動して前記係合爪と前記相手部品との係合を解除し、係合解除後に該プルタブを引く力を弛めることにより前記付勢手段が該ロックレバーを係合位置に移動させることを特徴とするロック解除機構。」

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ロックレバー」について、「回動軸を中心として該相手部品に対向する本体部品に対して回動自在な」という限定を付加し、そして、ロックレバーの動きを「回動」と限定し、また、「プルタブ」について、「柔軟性を有する該ロックレバーとは別部品の長尺部材から成る」という限定を付加し、更に、「ロック解除機構」について、「係合解除後に該プルタブを引く力を弛めることにより前記付勢手段が該ロックレバーを係合位置に移動させる」という限定を付加したことを含むものである。
したがって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭52-34257号(実開昭53-128889号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。

ア.「本案は電気コネクタ特に多極電気コネクタにおける雌雄コネクタの結合解除の容易化に関するものである。」(明細書第2頁第3-5行)

イ.「最近の電気機器の小型化の要求に伴いコネクタが小型となり、また例えばプリント配線基板用多極コネクタのように、狭い場所に取付けられる機会が多くなると、引抜きのための充分な把握力をコネクタに与えにくくなるため、コネクタ引抜きの困難さは一層増すことになる。
本案は小さい力で容易に雌雄コネクタの結合の解除を行うことができるコネクタを提供し、上記のような従来コネクタの欠点を一掃したものである。」(明細書第2頁第12行-第3頁第3行)

ウ.「第1図(a)(b)(c)はプリント配線基板用多極コネクタとして実現した本案の一実施例を示す正面図、上面図、側面図で、図では雌雄コネクタが完全に結合されている状態を示す。第1図においてAは雄コネクタ、(1)はその雄コンタクト保持部、(2a)(2b)は保持部の両端の直角方向に設けられた第1,第2の脚部、(3a)(3b)は引抜平面部、(4a)(4b)は引抜具のロック爪片収容溝、(5a)(5b)は爪片の爪係止溝、(6)は雄コンタクト端子である。Bは雌コネクタ、(7)は雌コンタクト保持部、(8)は接続導線の引出口、(9a)(9b)は引抜具軸止め用耳部、(10a)(10b)は同形の第1,第2の引抜具、(11a)(11b)はその操作アーム、(12a)(12b)は引抜角部形成面、(13a)(13b)は操作アームの端部に設けられた引抜角部で、その軸着点からの長さは操作アームの他端との長さより短かい。(14a)(14b)はロック爪片、(15a)(15b)はその爪部で、第1,第2の引抜具(10a)(10b)は雌雄コネクタの完全結合時において、その引抜角部形成面(12a)(12b)が引抜平面(3a)(3b)に接し、かつ操作アーム(11a)(11b)を回転したとき引抜角部(13a)(13b)が引抜平面(3a)(3b)を押しうるように、引抜具軸止め用耳部(9a)(9b)にそれぞれ軸止め(16a)(16b)される。(17)は操作連結バー(例えば金属、合成樹脂などの弾性材製)で、雌雄コネクタの完全結合時において、上記引抜角部形成面(12a)(12b)が引抜平面(3a)(3b)に接し、かつロック爪片の爪部(14a)(14b)が、雄コネクタA側に設けた爪係止溝(5a)(5b)内に入るように長さが選定され操作アーム(11a)(11b)の端部に軸着(18a)(18b)される。
このように構成すれば操作連結バーを引くことによつて、小さい力で簡単に雌コネクタを雄コネクタから引抜くことができる。次に引抜要領を第1図、第2図を参照して説明する。操作連結バー(17)を第1図中の矢印Aの方向に引くと、これに軸止めされた操作アーム(11a)(11b)の端部は図中矢印Bの方向にそれぞれ引かれる。この結果ロック爪片(14a)(14b)は図中矢印Cの方向にそれぞれ動いて、その爪部(15a)(15b)による雌コネクタBのロックを解除し、これと同時に引抜角部(13a)(13b)が図中矢印Dの方向に回転して、引抜平面(3a)(3b)を押す。ここで雄コネクタAの固定により引抜平面(3a)(3b)は固定されているので、引抜角部(13a)(13b)の回転に対応して、引抜具(10a)(10b)が軸着された雌コネクタBは抜け始め、第2図のように引抜角部(13a)(13b)が真下に来ると引抜が行われる。しかもこの場合引抜具の軸着部と操作アームの端部までの長さは、軸着部から引抜角部の先端までの長さより遙かに長い。従つて引抜は梃子作用を利用して行われることになり少ない力で引抜が行われることになる。」(明細書第3頁第4行-第5頁第15行)

エ.「以上本案を一実施例により説明したが、部品点数の削減、製作の容易化を考慮して、例えば合成樹脂材の成型により、第4図(一方のみを示す)のように第1,第2の引抜具(10a)と操作連結バー(17)とを一体に作ることができる。」(明細書第6頁第16行-第7頁第4行)

オ.「本案によれば小さい力でコネクタの結合解除を行えるもので、引抜きが困難な狭い場所に使用される多極コネクタ、小型多極コネクタとして実用上の効果は大きい。」(明細書第7頁第18行-第8頁第2行)

また、第1図及び第2図の記載内容、並びに、上記「ウ.」の記載事項からみて、引用例の引抜具軸止め用耳部(9a)(9b)及び引抜具(10a)(10b)が雄コネクタ(A)とロックした可動なロック機構を構成していること、そして、引用例の雌コネクタ(B)には、操作連結バー(17)の引く動作により、爪部(15a)(15b)と雄コネクタ(A)とのロックを解除するロック解除機構が設けられていることは、明らかである。
さらに、第1図及び第2図の記載内容、並びに、上記「ウ.」及び「エ.」の記載事項からみて、引用例の操作連結バー(17)が、柔軟性を有し、引抜具(10a)(10b)とは別部材の長尺部材から成ることは、明らかである。

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。

「雄コネクタとロックした可動なロック機構を動かして雄コネクタとのロックを解除するためのロック解除機構において、ロック機構は、雄コネクタとのロックのための爪部が設けられ、且つ軸着点を中心として雄コネクタに対向する雌コネクタに対して回転自在な引抜具を有したものであり、引抜具には、柔軟性を有し、引抜具とは別部材の長尺部材から成る操作連結バーが軸止めされ、更に、操作連結バーを引く力により引抜具が回転して爪部と雄コネクタとのロックを解除するロック解除機構。」

(3)対比
本願補正発明と上記引用例発明とを対比する。

引用例発明の「雄コネクタ」は、本願補正発明の「相手部品」に相当し、同様に、「ロック」は「係合」に、「爪部」は「係合爪」に、「軸着点」は「回動軸」に、「雌コネクタ」は「本体部品」に、「回転」は「回動」に、「引抜具」は「ロックレバー」に、「操作連結バー」は「プルタブ」に、「軸止め」は「接続」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、

「相手部品と係合した可動なロック機構を動かして該相手部品との係合を解除するためのロック解除機構において、前記ロック機構は、前記相手部品に係合するための係合爪が設けられ、且つ回動軸を中心として該相手部品に対向する本体部品に対して回動自在なロックレバーを有したものであり、前記ロックレバーには、柔軟性を有する該ロックレバーとは別部品の長尺部材から成るプルタブが接続され、更に、前記プルタブを引く力により前記ロックレバーが回動して前記係合爪と前記相手部品との係合を解除するロック解除機構。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
ロック機構において、本願補正発明は、「前記係合爪を前記相手部品に近付ける向きに前記ロックレバーを付勢する付勢手段」を有し、係合爪と前記相手部品との「係合解除後に該プルタブを引く力を弛めることにより前記付勢手段が該ロックレバーを係合位置に移動させる」ように構成しているのに対し、引用例発明では、そのような付勢手段を有しているか明らかでない点。

(4)判断
本願補正発明の、係合解除後の「係合位置」という事項は、本願の願書に最初に添付された明細書又は図面にはその意味する内容が明示されておらず、必ずしも明確ではないため、審判請求書を参酌するに、その「3.4)本願発明と引用例との対比」に、「ロックレバーを係合位置に移動させて初期状態を維持する」と記載されており、上記記載を勘案すると、係合解除後の「係合位置」とは「初期状態の位置」と同義であると解することができる。

また、ロック機構において、係合爪を相手部品に近付ける向きにロックレバーを付勢する付勢手段を設けることは、当業者にとって従来周知の技術的事項(例えば、特開2001-85108号公報、特開平10-241787号公報、特開平6-337735号公報を参照。)である。

そして、引用例発明において、上記周知の技術的事項に基づき、ロック機構に付勢手段を設けた場合、ロック解除後に操作連結レバーを引く力を弛めると、付勢手段の作用により、引抜具が初期状態の位置(係合位置)に移動することは、当然に起こり得たことである。

したがって、引用例発明において、ロック機構に付勢手段を設けて、上記相違点に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

しかも、本願補正発明により、引用例発明及び周知の技術的事項から予測される以上の格別な効果がもたらされるということもできない。

したがって、本願補正発明は、引用例発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年11月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「相手部品と係合した可動なロック機構を動かして前記相手部品との係合を解除するためのロック解除機構において、前記ロック機構は、前記相手部品に係合するための係合爪を設けたロックレバーと、前記係合爪を前記相手部品に近づける向きに前記ロックレバーを付勢した付勢手段とを有したものであり、前記ロック解除機構は、前記ロックレバーに接続されたプルタブを有し、前記プルタブを引く力により前記ロックレバーを動かして前記係合爪と前記相手部品との係合を解除するようにしたことを特徴とするロック解除機構。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明から「ロックレバー」の限定事項である「回動軸を中心として該相手部品に対向する本体部品に対して回動自在な」という事項を省き、そして、ロックレバーの動きの限定事項である「回動」という事項を省き、また、「プルタブ」の限定事項である「柔軟性を有する該ロックレバーとは別部品の長尺部材から成る」という事項を省き、更に、「ロック解除機構」の限定事項である「係合解除後に該プルタブを引く力を弛めることにより前記付勢手段が該ロックレバーを係合位置に移動させる」という事項を省いたものである。

そうしてみると、本願発明の構成を全て含み、さらに、上記限定事項を付加した本願補正発明が、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用例発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-23 
結審通知日 2008-05-28 
審決日 2008-06-12 
出願番号 特願2002-65647(P2002-65647)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
関口 哲生
発明の名称 プルタブを用いたロック解除機構及びコネクタ  
代理人 池田 憲保  
代理人 福田 修一  
代理人 山本 格介  

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