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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1181793 |
審判番号 | 不服2005-11474 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-16 |
確定日 | 2008-07-24 |
事件の表示 | 特願2001- 25629「ハンドオーバ制御方法、移動局及び通信制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月16日出願公開、特開2002-232929〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成13年2月1日の特許出願であって、平成17年5月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年6月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに平成17年6月29日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年6月29日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 平成17年6月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正するものである。 【請求項1】基地局の機能を有する通信装置と、移動局と、これら通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置とを有する移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法において、 前記移動局は、 通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求し、 通信相手の通信装置との間の通信品質が通信可能な限界よりも良好な第1の閾値を下回った場合に、選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位にしたがって、通信相手の通信装置を切り替え、 前記通信制御装置は、 前記移動局と該移動局の通信相手の通信装置との間の通信品質が前記第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、該移動局の通信相手の通信装置の周辺に位置する通信装置の中から、前記移動局の移動履歴、およびハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴に基づいて、ハンドオーバ先の候補の通信装置を選定し、 前記選定したハンドオーバ先の候補の通信装置における無線資源を確保するハンドオーバ制御方法。 本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「通信制御装置」について、「前記移動局と該移動局の通信相手の通信装置との間の通信品質が前記第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、該移動局の通信相手の通信装置の周辺に位置する通信装置の中から、前記移動局の移動履歴、およびハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴に基づいて、ハンドオーバ先の候補の通信装置を選定し、前記選定したハンドオーバ先の候補の通信装置における無線資源を確保する」との限定を付加するものであって、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合し、同条第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.独立特許要件 (1)刊行物の記載 (1-1)刊行物1記載発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-224275号公報(平成9年(1997)8月26日出願公開、以下、「刊行物1」という。)には、ハンドオーバ制御方法について、次のような記載がある。 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、移動通信システムにおいて、通話中の移動局が他の無線ゾーンに移動したときに、移動先の無線ゾーンの通話チャネルを捕捉して通信を継続するハンドオーバ制御方法に関する。 【0015】 【発明の実施の形態】図1は、本発明を適用したハンドオーバ制御方法の一例を説明する図であって、数字符号1?4はそれぞれ無線基地局、5は移動局、11?14はそれぞれ無線ゾーンを表わしている。移動局5は図中のA地点において発呼し、矢印方向へ移動していく。通信中の無線基地局である無線基地局1からの信号の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方が所定値以下になるB地点から、周辺の他の受信可能な全ての無線基地局の送信波の受信レベルと通信品質の測定を開始する。 【0016】図中の斜線を施した部分が無線基地局1からの信号の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方が所定値以下である領域を表わしている。さらに、移動局5が移動して、通信中の無線基地局である無線基地局1からの信号の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以下になるC地点に到達すると、 【0017】移動局は、C地点における周辺無線基地局の送信波の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以上であり、かつ、B地点からC地点に至までの周辺無線基地局の受信レベルまたは通信品質の変動検出結果が最大であり、かつ、C地点における周辺無線基地局からの送信波の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方が最低である無線基地局へハンドオーバする。 【0029】すなわち、移動局は移動中に現在通信中の無線基地局からの信号の受信レベルと通信品質を測定している。(S-1) そして、受信レベルまたは通信品質の内の少なくとも一方が予め定めた所定の値以上であるか否かを調べ、それが所定の値以上である間は、現在通信中の無線基地局との間で通信を続ける。(S-2) 【0030】もし、受信レベルまたは通信品質の内の少なくとも一方が所定値より低下したときには、他の受信可能な全ての無線基地局から送出されている制御信号の受信レベルと通信品質の変化の割合を調べる。(S-3) そして、通信中の無線基地局の受信レベルと通信品質の内、少なくとも一方が、予め定めたハンドオーバしきい値より低下したら、(S-4) 【0031】通信中以外の無線基地局で、受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以上であり、かつ、先の(S-3)で調べた受信レベルあるいは通信品質の変化の割合が最も大であり、かつ、受信レベルと通信品質の内の少なくとも一方が各無線基地局中最低である無線基地局へハンドオーバする。(S-5) 【0032】図3は、本発明のハンドオーバ制御方法を採った場合と従来の方法を採った場合の無線基地局密度とハンドオーバ回数の関係を示す図である。同図では、判定式f(i)中のa,bの値は、それぞれ、a=1/20,b=1とした。この図から全ての前記無線基地局密度においてハンドオーバ回数が低減されることが分かる。また、前記無線基地局密度が増加すると、より効果が増大することが分かる。 【0033】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のハンドオーバ制御方法では、ハンドオーバ対象となる無線ゾーンが複数存在する場合に、各無線基地局の送信波の受信レベル、または、通信品質が、しきい値の条件を満たすと共に、一定区間における、その変化の割合が最大である無線基地局の内の、移動局での受信レベルまたは通信品質が最低である無線ゾーンへハンドオーバ先を決定する。 【0034】これにより、同一無線ゾーン内で移動できる距離が増加し、ハンドオーバ回数が低減するので、通信品質を向上させることができると共にハンドオーバに伴う制御信号のトラヒックの増加を防ぐことができる利点がある。 以上の記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されているものと認められる。 無線基地局1?4、移動局5、無線ゾーン11?14とを有する移動通信システムにおける、通話中の移動局が他の無線ゾーンに移動したときに、移動先の無線ゾーンの通話チャネルを捕捉して通信を継続するハンドオーバ制御方法において、 移動局5は、A地点において発呼し、通信中の無線基地局である無線基地局1からの信号の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方が所定の値以下になるB地点から、周辺の他の受信可能な全ての無線基地局の送信波の受信レベルと通信品質の測定を開始し、さらに、移動して、通信中の無線基地局である無線基地局1からの信号の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以下になるC地点に到達すると、C地点における周辺無線基地局の送信波の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以上であり、かつ、B地点からC地点に至までの周辺無線基地局の受信レベルまたは通信品質の変動検出結果が最大であり、かつ、C地点における周辺無線基地局からの送信波の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方が最低である無線基地局へハンドオーバするハンドオーバ制御方法、 すなわち、移動局は移動中に現在通信中の無線基地局からの信号の受信レベルと通信品質を測定し(S-1)、受信レベルまたは通信品質の内の少なくとも一方が予め定めた所定の値以上であるか否かを調べ、それが所定の値以上である間は、現在通信中の無線基地局との間で通信を続け(S-2)、受信レベルまたは通信品質の内の少なくとも一方が所定値より低下したときには、他の受信可能な全ての無線基地局から送出されている制御信号の受信レベルと通信品質の変化の割合を調べ(S-3)、通信中の無線基地局の受信レベルと通信品質の内の少なくとも一方が、予め定めたハンドオーバしきい値より低下したら(S-4)、通信中以外の無線基地局で、受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以上であり、かつ、先の(S-3)で調べた受信レベルあるいは通信品質の変化の割合が最も大であり、かつ、受信レベルと通信品質の内の少なくとも一方が各無線基地局中最低である無線基地局へハンドオーバする(S-5)ことにより、同一無線ゾーン内で移動できる距離が増加し、ハンドオーバ回数が低減するので、通信品質を向上させることができると共にハンドオーバに伴う制御信号のトラヒックの増加を防ぐことができる利点があるハンドオーバ制御方法。 (1-2)刊行物2記載発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-290475号公報(平成10年(1998)10月27日出願公開、以下、「刊行物2」という。)には、移動通信システムについて、次のような記載がある。 【請求項3】 小ゾーン構成あるいはセクタ構成の複数の無線ゾーンの何れかに位置し得る移動局と、 前記複数の無線ゾーンを形成し、前記移動局がこれらの無線ゾーンの何れかに位置するときにその移動局に生起した呼について、通話中チャネル切り替えを含む無線チャネル設定制御を行う無線基地局と、 通信リンクを介して前記無線基地局に対向し、その無線基地局によって行われる無線チャネル設定制御と連係して前記呼の呼処理を行う交換局とを備えた移動通信システムにおいて、 前記呼が完了呼となった後にその完了呼の移行先の候補である候補無線ゾーンを選択し、その候補無線ゾーンを前記移動局に通知する候補ゾーン通知手段と、 前記移動局によって要求が与えられたときに前記候補ゾーン通知手段によって選択された候補無線ゾーンの空いている無線チャネルを捕捉し、かつ前記通信リンクにその無線チャネルに接続されたパスを形成する候補ゾーン選択手段とを備え、 前記移動局は、 前記完了呼の通話中チャネル切り替えに先行して、前記複数の無線ゾーンの内、その移動局が位置する無線ゾーンに隣接した何れかの隣接無線ゾーンに自局が移行することを予測し、その予測の結果が前記候補ゾーン通知手段によって通知された候補無線ゾーンに含まれるときに、同様の結果を前記要求として前記候補ゾーン選択手段に与える契機予測手段を備えたことを特徴とする移動通信システム。 【請求項4】 小ゾーン構成あるいはセクタ構成の複数の無線ゾーンの何れかに位置し得る移動局と、 前記複数の無線ゾーンを形成し、前記移動局がこれらの無線ゾーンの何れかに位置するときにその移動局に生起した呼について、通話中チャネル切り替えを含む無線チャネル設定制御を行う無線基地局と、 通信リンクを介して前記無線基地局に対向し、その無線基地局によって行われる無線チャネル設定制御と連係して前記呼の呼処理を行う交換局とを備えた移動通信システムにおいて、 前記呼が完了呼となった後にその完了呼の移行先の候補である候補無線ゾーンを選択し、その候補無線ゾーンを前記移動局に通知する候補ゾーン通知手段と、 前記移動局によって要求が与えられたときに前記候補ゾーン通知手段によって選択された候補無線ゾーンを選択し、かつ前記通信リンクにその移行先に対応したパスを形成する候補ゾーン選択手段とを備え、 前記移動局は、 前記完了呼の通話中チャネル切り替えに先行して、前記複数の無線ゾーンの内、その移動局が位置する無線ゾーンに隣接した何れかの隣接無線ゾーンに自局が移行することを予測し、その予測の結果が前記候補ゾーン通知手段によって通知された候補無線ゾーンに含まれるときに、同様の結果を前記要求として前記候補ゾーン選択手段に与える契機予測手段を備え、 前記無線基地局は、 前記完了呼の通話中チャネル切り替えの過程で前記移行先が前記候補無線ゾーンに該当するか否かを判別し、その判別の結果が真であるときに、その候補無線ゾーンの空いている無線チャネルを捕捉すると共に、前記候補ゾーン選択手段によって形成された通信リンクとその無線チャネルとを接続する手段を有することを特徴とする移動通信システム。 【請求項7】 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の移動通信システムにおいて、 複数の無線ゾーンの内、これらの無線ゾーンに位置する個々の移動局について位置する無線ゾーンの履歴をとり、これらの移動局との対応をとることなくその履歴を無線ゾーンの識別情報の列として順次記録する移動パターン履歴手段を備え、 候補ゾーン選択手段は、 前記移動パターン履歴手段に記録された移動パターンの内、完了呼が生起した移動局について、在圏する無線ゾーンの識別情報またはその無線ゾーンに先行して在圏した無線ゾーンの識別情報の列との相関をとり、両者の相関性が高い移動パターンに含まれる後続する無線ゾーンを候補無線ゾーンとして選択することを特徴とする移動通信システム。 【請求項8】 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の移動通信システムにおいて、 複数の無線ゾーンの内、これらの無線ゾーンに位置する個々の移動局について位置する無線ゾーンの履歴をとり、その履歴をこれらの移動局との対応をとりつつ無線ゾーンの識別情報の列として順次記録する移動パターン履歴手段を備え、 候補ゾーン選択手段は、 前記移動パターン履歴手段に記録された移動パターンの内、完了呼が生起した移動局について、在圏する無線ゾーンの識別情報またはその無線ゾーンに先行して在圏した無線ゾーンの識別情報の列との相関をとり、両者の相関性が高い移動パターンに含まれる後続する無線ゾーンを候補無線ゾーンとして選択することを特徴とする移動通信システム。 【請求項9】 請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載の移動通信システムにおいて、 複数の無線ゾーンについて、道路と軌道との双方あるいは一方の分布とこれらの双方あるいは一方における移動局のトラヒックの分布とに基づいて予め実測または模擬に基づいて個別に求められ、かつ通話中チャネル切り替えの移行先となる確率が予め登録された移行確率記憶手段を備え、 候補ゾーン選択手段は、 選択された候補無線ゾーンの内、前記移行確率記憶手段に登録された確率が予め決められた下限値を下回る候補無線ゾーンを除外し、あるいはその確率が高いほど優先する手段を有することを特徴とする移動通信システム。 【0096】 【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。図3は、請求項1?32に記載の発明に対応した実施形態を示す図である。図において、移動局231が位置し得る複数のセル232-1?232-Nを個別に形成する無線基地局233-1?233-Nは、伝送路234-1?234-Nを介して移動体交換局235の対応する方路に接続され、その移動体交換局235は公衆網に接続される。 【0097】移動体交換局235は、伝送路234-1?234-Nを介して個別に無線基地局233-1?233-Nに接続される無線トランク236-1?236-Nと、上述した公衆網との間に回線毎に対応して設けられたトランク237-1?237-Nと、これらの無線トランク236-1?236-Nおよびトランク237-1?237-Nに個別に接続されたポートを有するスイッチ238と、無線トランク236-1?236-N,トランク237-1?237-Nおよびスイッチ238に通信リンク239を介して接続され、かつ局情報が蓄積されたデータベース(DB)240を有するプロセッサ241とから構成される。 【0102】…(中略)… また、プロセッサ241は、図7に示すように、全ての完了呼について、個々の完了呼を示すユニークな呼管理番号と、ハンドオーバの開始に先行して移行先の候補として後述する手順に基づいて割り付けられるセル(以下、「候補セル」という。)を示す候補セル番号、そのセルを形成する無線基地局を配下とする移動体交換局(以下、「候補交換局」という。)を示す候補交換局番号と、これらの候補交換局と候補セルとを結ぶパスの内、後述する手順に基づいて割り付けられるパス(以下、「候補パス」という。)を示す候補パス番号と、その候補パスの状態を示す候補パス状態情報との格納に供されるパス状態管理テーブル250を局情報として有する。 【0103】さらに、データベース240は図8に示すように、移動局231が鉄道や道路(ここでは、簡単のため主要なものに限定されると仮定する。)に沿って移動し得る個々の経路について、その経路を示すユニークな経路番号に対して同様の経路に沿って形成された個々のセルを示す「セル番号」と、そのセルを形成する無線基地局を配下とする移動体交換局を示す「交換局番号」との組み合わせの順列が予め登録された移動パターンテーブル251を局情報として有する。移動局231は、例えば、セル232-1において自局に生起した呼が完了呼となった状態では、そのセル232-1とこのセルに隣接するセル232-2?232-7とについて予め決められた周期で電界強度を計測し、これらの電界強度の値を含む「伝送品質通知信号」を無線基地局233-1に向けて送信する。 【0104】一方、移動体交換局235では、プロセッサ241は、既述の呼処理の手順に基づいて移動局231に上述した完了呼を認識すると、その呼について通話路を形成する(図4(1))と共に、移動局231が位置するセル(以下、「移行元セル」という。)を識別する(図4(2))。さらに、プロセッサ241は、上述したように移動局231によって送信された伝送品質通知信号を認識すると、移行元セルの識別情報をキーとして移動パターンテーブル251に対して検索処理を施し(図4(3))、そのキーに整合する経路番号が何ら得られなかった場合には従来例と同様の手順(ここでは、簡単のため、説明を省略する。)に基づいて移行先セルを求める(図4(4))。 【0105】しかし、何らかの経路番号が得られた場合には、プロセッサ241は、その経路番号に対応して移動パターンテーブル251に登録された経路(図6の点線枠に拡大して示される。)に沿って形成された候補セル(ここでは、簡単のため、隣接するセル232-2であると仮定する。)を求め、このような候補セルのセル番号と交換局番号とを求める(図4(5))。 【0106】さらに、プロセッサ241は、無線基地局233-2が行う無線チャネル設定制御と連係することにより、これらのセル番号と交換局番号とで示されるセルの空いているパス(以下、「候補パス」という。)を該当する呼について割り付けて設定した(図4(6))後に、パス状態管理テーブル250の空いている領域に、同様のセル番号および交換局番号と、その候補パスの候補パス番号と候補パス状態情報(ここでは、簡単のため、該当する候補パスが設定されたことと、そのために占有する帯域とを示すと仮定する。)とに併せて、呼処理の過程で該当する完了呼に割り付けられた呼管理番号を格納する(図4(7))。 【0107】また、プロセッサ241は、ハンドオーバ要求が与えられるまで待機した後に、無線区間のパス(チャネル)を設定する(図4(8))。なお、上述した候補パスについては、ここでは、簡単のため、単一であると仮定する。さらに、このようにしてパスを設定するために無線基地局233-2およびプロセッサ241が行う処理の手順については、従来例におけるハンドオーバの過程において移行先のセルのパスを設定する処理の手順と同じであるので、ここではその説明を省略する。 【0108】また、移動局231がセル232-Nの領域に移動した状態では、その移動局231と無線基地局233-1?233-Nとは、連係してハンドオーバにかかわる無線チャネル設定制御を行う。このような無線チャネル設定制御の過程では、プロセッサ241は、その無線チャネル設定制御の手順に基づいて移行先セルが候補セル(セル232-2)であるか否かを判別し、その結果が偽である場合には従来例と同様の呼処理の手順に基づいて移行先セルの空いているパスをあらためて設定する(図5(1))が、反対に真である場合にはこのようなパスの設定を省略する。 【0109】なお、これらのパスに接続されてべき無線区間のパスについては、従来例と同様の無線チャネル設定制御の手順に基づいて無線基地局233-2によって設定されているが、このような処理の手順(図5(2))については、従来例と同じであるから、ここではその説明を省略する。このように本実施形態によれば、通話状態で移動する移動局が在圏するセルの隣接セルの圏内に移動する時点に先行して、その移動局の通話に供されるパスが確保され、かつ設定されるので、このような時点においてハンドオーバを達成するために起動される無線チャネル設定制御および呼処理の所要時間は、従来例に比べて大幅に短縮される。 【0114】以下、請求項3,4に記載の発明に対応した実施形態について説明する。本実施形態と請求項1,2,5,6,23に記載の発明に対応した実施形態との相違点は、移動局231,無線基地局233-1?233-Nおよびプロセッサ241に適用された後述する機能分散の形態にある。以下、図3を参照して本実施形態の動作を説明する。 【0115】データベース240は、請求項1,5,6,23に記載の発明に対応した実施形態と同様にして、パス状態管理テーブル250と移動パターンテーブル251とを局情報として有する。移動体交換局235では、プロセッサ241は、呼処理の手順に基づいて移動局231の完了呼を認識すると、その移動局231が位置する移行元セルを識別し、その移行元セルの識別情報をキーとして移動パターンテーブル251に対して検索処理を施すと共に、そのキーに整合する経路番号が何ら得られなかった場合にはその方法(例えば、加入者対応移動パターンテーブル253など)によって候補セルが検出されてもよい。その他の方法によっても候補セルが得られなかった場合には、従来例と同様の手順(例えば、電界強度の閾値を用いて移行先となるセルを求める。)に基づいてハンドオーバを行う。 【0116】しかし、何らかの経路番号が得られた場合には、プロセッサ241は、この経路番号に対応して移動パターンテーブル251に登録された経路を求め、その経路に沿って隣接する候補セルを求める。さらに、プロセッサ241は、このようにして求めた全ての候補セルを無線基地局233-1を介して移動局231に向けて通知する。 【0117】一方、移動局231は、例えば、セル232-1において自局に生起した呼が完了呼となったことを認識した場合には、そのセル232-1とこれに隣接するセル232-2?232-7とについて予め決められた周期で電界強度の計測を行い、かつ上述したように移動体交換局235によって候補セルが通知されると、これらの候補セルの全てを保持する。 【0118】さらに、移動局231は、自局のハンドオーバの移行先として要求されるべき電界強度の基準値が予め与えられ、上述した電界強度の計測の過程において先行して保持された候補セルの何れにも該当しないセルの電界強度がその基準値を上回った場合には、従来例と同様にして無線基地局233-1に向けてハンドオーバ要求を送出する。 【0119】しかし、自局のハンドオーバの移行先になると予想されるために要求されるべき電界強度の基準値が予め与えられ、この基準値以上の電界強度が計測されたセルが上述した候補セルの何れかに該当する場合には、移動局231は、そのセルの識別情報を含むパス設定要求をハンドオーバ要求に先立って送出する。一方、移動体交換局235では、プロセッサ241は、上述したハンドオーバ要求を認識すると、従来例と同様の手順に基づいてハンドオーバの処理を行う。 【0122】なお、本実施形態では、プロセッサ241が呼処理の手順に基づいて完了呼を認識した時点で候補セルを選択してもよい。また、完了呼となる前、すなわち呼設定手順の過程において候補セルが選択され、その候補セルの識別情報が呼設定信号に付加されて移動局に送出されてもよい。以下、請求項7,8に記載の発明に対応した実施形態について説明する。 【0123】本実施形態と請求項1?6,23に記載の発明に対応した実施形態との相違点は、移動パターンテーブル251の内容が後述する処理に基づいて動的に更新される点にある。図10は、請求項7,8に記載の発明に対応した本実施形態の動作フローチャートである。 【0124】以下、図3,図8?図10を参照して請求項7,8に記載の発明に対応した本実施形態の動作を説明する。移動パターンテーブル251には、予め決められたデフォルトの情報が登録される。移動体交換局235では、プロセッサ241は、全ての完了呼についてハンドオーバが完了する度に、移行先セルとそのハンドオーバに先行して通話に供されていた単一または複数の移行元セルとの列からなる移動パターンの履歴をとる(図10(1))。さらに、プロセッサ241は、このような履歴として得られた移動パターンの内、頻度が予め決められた閾値より大きい移動パターンを移動パターンテーブル251に格納する(図10(2))。 【0127】以下、請求項9に記載の発明に対応した実施形態について説明する。本実施形態と請求項8に記載の発明に対応した実施形態との相違点は、図11に示す移動パターンテーブル254が図9に示す加入者対応移動パターンテーブル253に代えて適用され、かつプロセッサ241がその移動パターンテーブル254に基づいて候補セルを特定する点にある。 【0128】図12は、請求項9に記載の発明に対応した本実施形態の動作フローチャートである。以下、図3,図11および図12を参照して本実施形態の動作を説明する。移動パターンテーブル254は、図11に示すように、個々の移動パターンについて、移動局が移動し得る経路と、これらの経路における移動局との分布に基づいて予め求められ、かつ実際に候補セルの選択の基準として適用されえる確率(以下、「移動確率」という。)とが、加入者対応移動パターンテーブル253と同様に該当する移動パターンを示すセル番号の列に対応付けられて予め格納される。 【0129】プロセッサ241は、既述の各実施形態と同様にして候補セルを選択する際には移動パターンテーブル254を参照し、その移動パターンテーブル254に格納された移動パターンの内、該当する完了呼が生起した移動局が在圏する移行元セル(またはその移行元セルの履歴)との相関をとる(図12(1))ことにより、候補セルの選択に供され得る単一または複数の移動パターンを特定する(図12(2))。 【0130】さらに、プロセッサ241は、このようにして特定された移動パターンの内、移動パターンテーブル254に格納された移動確率が予め与えられた下限値を上回るものを検索する(図12(3))ことにより何らかの移動パターンが得られた場合には、その移動パターン(単一であっても複数であってもよい。)に基づいて候補セルを求める(図12(4))。 【0131】しかし、このような移動パターンが得られなかった場合には、プロセッサ241は、上述したように特定された移動パターンを移動確率の降順にその移動確率の和が同様の下限値を上回る移動パターンの組み合わせを得る(図12(5))。さらに、プロセッサ241は、その組み合わせに含まれる個々の移動パターンに基づいて候補セルを求める(図12(6))。 【0132】このように本実施形態によれば、移動確率が高い移動パターンが優先して候補セルの選択に供されるので、このような移動確率の如何にかかわらず候補セルの選択に供されるべき移動パターンが特定される場合に比べて、候補セルの何れかが移行先セルに一致する確率が高められる。なお、本実施形態では、移動パターンテーブル254に格納された情報が何ら更新されていないが、例えば、請求項7,8に記載の発明に対応した実施形態と同様にして移動局の実際の移動に適応した履歴に基づいて更新されてもよい。 以上の記載によれば、刊行物2には、請求項3、4に記載の発明に対応した実施形態である移動通信システムにおいて、請求項9に記載の発明に対応した実施形態と同様にして、移動パターンテーブル254は、個々の移動パターンについて、移動局が移動し得る経路と、これらの経路における移動局との分布に基づいて予め求められ、かつ実際に候補セルの選択の基準として適用されえる確率(以下、「移動確率」という。)とが、該当する移動パターンを示すセル番号の列に対応付けられて予め格納され、請求項7,8に記載の発明に対応した実施形態と同様にして移動パターンテーブル254に格納された情報が、移動局の実際の移動に適応した履歴に基づいて更新される発明(以下、「刊行物2記載発明」という。)が記載され、それは次のようなものと認められる。 移動局231が位置し得る複数のセル232-1?232-Nを個別に形成する無線基地局233-1?233-Nは、伝送路234-1?234-Nを介して移動体交換局235の対応する方路に接続され、その移動体交換局235は公衆網に接続される移動通信システムにおいて、 移動体交換局235は、局情報が蓄積されたデータベース(DB)240を有するプロセッサ241から構成され、 プロセッサ241は、全ての完了呼について、個々の完了呼を示すユニークな呼管理番号と、ハンドオーバの開始に先行して移行先の候補として後述する手順に基づいて割り付けられるセル(以下、「候補セル」という。)を示す候補セル番号、そのセルを形成する無線基地局を配下とする移動体交換局(以下、「候補交換局」という。)を示す候補交換局番号と、これらの候補交換局と候補セルとを結ぶパスの内、後述する手順に基づいて割り付けられるパス(以下、「候補パス」という。)を示す候補パス番号と、その候補パスの状態を示す候補パス状態情報との格納に供されるパス状態管理テーブル250を局情報として有し、 データベース240は、個々の移動パターンについて、移動局が移動し得る経路と、これらの経路における移動局との分布に基づいて予め実測または模擬に基づいて個別に求められ、かつ実際に候補セルの選択の基準として適用される確率(以下、「移動確率」という。)とが、該当する移動パターンを示すセル番号の列に対応付けられて予め格納される移動パターンテーブル254を局情報として有し、移動パターンテーブル254に格納された情報が移動局の実際の移動に適応した履歴に基づいて更新され、 移動局231は、例えば、セル232-1において自局に生起した呼が完了呼となった状態では、そのセル232-1とこのセルに隣接するセル232-2?232-7とについて予め決められた周期で電界強度を計測し、これらの電界強度の値を含む「伝送品質通知信号」を無線基地局233-1に向けて送信し、 移動体交換局235では、プロセッサ241は、伝送品質通知信号を認識して候補セルを選択する際には移動パターンテーブル254を参照し、その移動パターンテーブル254に格納された移動パターンの内、該当する完了呼が生起した移動局が在圏する移行元セル(またはその移行元セルの履歴)との相関をとることにより、候補セルの選択に供され得る単一または複数の移動パターンを特定し、このようにして特定された移動パターンの内、移動パターンテーブル254に格納された移動確率が予め与えられた下限値を上回るものを検索することにより何らかの移動パターンが得られた場合には、その移動パターン(単一であっても複数であってもよい。)に基づいて候補セルを求め、このような候補セルのセル番号と交換局番号とを求め、無線基地局233-2が行う無線チャネル設定制御と連係することにより、これらのセル番号と交換局番号とで示されるセルの空いているパス(以下、「候補パス」という。)を該当する呼について割り付けて設定した後に、パス状態管理テーブル250の空いている領域に、同様のセル番号および交換局番号と、その候補パスの候補パス番号と候補パス状態情報とに併せて、呼処理の過程で該当する完了呼に割り付けられた呼管理番号を格納し、このようにして求めた全ての候補セルを無線基地局233-1を介して移動局231に向けて通知し、 移動局231は、上述したように移動体交換局235によって候補セルが通知されると、これらの候補セルの全てを保持し、自局のハンドオーバの移行先になると予想されるために要求されるべき電界強度の基準値が予め与えられ、この基準値以上の電界強度が計測されたセルが上述した候補セルの何れかに該当する場合には、そのセルの識別情報を含むパス設定要求をハンドオーバ要求に先立って送出し、移動体交換局235では、プロセッサ241は、上述したハンドオーバ要求を認識すると、そのパス設定要求に含まれる候補セルに無線区間のパス(チャネル)を設定することにより、 通話状態で移動する移動局が在圏するセルの隣接セルの圏内に移動する時点に先行して、その移動局の通話に供されるパスが確保され、かつ設定されるので、このような時点においてハンドオーバを達成するために起動される無線チャネル設定制御および呼処理の所要時間は、従来例に比べて大幅に短縮される移動通信システム。 (2)本願補正発明と刊行物1記載発明との対比 刊行物1記載発明の「無線基地局1?4」、「現在通信中の無線基地局からの信号の受信レベルと通信品質の内の少なくとも一方」は、それぞれ、本願補正発明の「基地局の機能を有する通信装置」、「通信相手の通信装置との間の通信品質」に相当する。 また、刊行物1記載発明において、移動局5は、A地点において発呼し、通信中の無線基地局である無線基地局1からの信号の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方が所定の値以下になるB地点から、周辺の他の受信可能な全ての無線基地局の送信波の受信レベルと通信品質の測定を開始し、さらに、移動して、通信中の無線基地局である無線基地局1からの信号の受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以下になるC地点に到達すると、ハンドオーバするから、刊行物1記載発明の「ハンドオーバしきい値」、「所定の値」は、それぞれ、本願補正発明の「通信可能な限界よりも良好な第1の閾値」、「通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値」に相当する。 また、刊行物1記載発明の「受信レベルまたは通信品質の内の少なくとも一方が所定値より低下したときには、他の受信可能な全ての無線基地局から送出されている制御信号の受信レベルと通信品質の変化の割合を調べ(S-3)」と、本願補正発明の「通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求し」とは、いずれも「通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、ハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を」する点で一致する。 また、刊行物1記載発明において、通信中の無線基地局の受信レベルと通信品質の内の少なくとも一方が、予め定めたハンドオーバしきい値より低下したら(S-4)、通信中以外の無線基地局で、受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以上であり、かつ、先の(S-3)で調べた受信レベルあるいは通信品質の変化の割合が最も大であり、かつ、受信レベルと通信品質の内の少なくとも一方が各無線基地局中最低である無線基地局へハンドオーバする(S-5)から、刊行物1記載発明の「通信中以外の無線基地局で、受信レベルまたは通信品質の少なくとも一方がハンドオーバしきい値以上」のものが、本願補正発明の「選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置」に相当し、刊行物1記載発明の「先の(S-3)で調べた受信レベルあるいは通信品質の変化の割合が最も大であり、かつ、受信レベルと通信品質の内の少なくとも一方が各無線基地局中最低である」ことがその候補としての「優先順位」が最も高いことを意味し、刊行物1記載発明の「ハンドオーバする(S-5)」は、本願補正発明の「通信相手の通信装置との間の通信品質が通信可能な限界よりも良好な第1の閾値を下回った場合に、選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位にしたがって、通信装置に通信相手の通信装置を切り替える」に相当する。 したがって、本願補正発明と刊行物1記載発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 [一致点] 「基地局の機能を有する通信装置と、移動局とを有する移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法において、 前記移動局は、 通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、ハンドオーバ先の候補の通信装置の選定をし、 通信相手の通信装置との間の通信品質が通信可能な限界よりも良好な第1の閾値を下回った場合に、選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位にしたがって、通信相手の通信装置を切り替えるハンドオーバ制御方法。」である点。 [相違点] 本願補正発明の移動通信システムでは、 基地局の機能を有する通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置を有し、 前記移動局は、 通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求し、 前記通信制御装置は、 前記移動局と該移動局の通信相手の通信装置との間の通信品質が前記第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、該移動局の通信相手の通信装置の周辺に位置する通信装置の中から、前記移動局の移動履歴、およびハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴に基づいて、ハンドオーバ先の候補の通信装置を選定し、 前記選定したハンドオーバ先の候補の通信装置における無線資源を確保するのに対して、 刊行物1記載発明の移動通信システムでは、通信制御装置を有することが明らかでなく、移動局は、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求せず、通信制御装置が、前記移動局と該移動局の通信相手の通信装置との間の通信品質が前記第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、該移動局の通信相手の通信装置の周辺に位置する通信装置の中から、前記移動局の移動履歴、およびハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴に基づいて、ハンドオーバ先の候補の通信装置を選定することもしていないが、移動局自ら、ハンドオーバ先の候補の通信装置の選定をしている点。 (3)判断 [相違点]について 刊行物2記載発明の「無線基地局233-1?233-N」、「移動体交換局235」、「該当する完了呼が生起した移動局が在圏する移行元セル(またはその移行元セルの履歴)」、「候補セルを形成する無線基地局」、「移行元セルを形成する無線基地局」は、それぞれ、本願補正発明の「基地局の機能を有する通信装置」、「これら通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置」、「前記移動局の移動履歴」(本願明細書の【0040】の記載によると「ハンドオーバ履歴又は在圏履歴」である。)、「選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置」、「ハンドオーバ元の通信装置」に対応する。 また、刊行物2記載発明において、移動局231は、例えば、セル232-1において自局に生起した呼が完了呼となった状態では、そのセル232-1とこのセルに隣接するセル232-2?232-7とについて予め決められた周期で電界強度を計測し、これらの電界強度の値を含む「伝送品質通知信号」を無線基地局233-1に向けて送信し、移動体交換局235では、伝送品質通知信号を認識して候補セルを選択するから、刊行物2記載発明の「伝送品質通知信号」が本願補正発明の「通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求し」ているといえる。 また、刊行物2記載発明において、個々の移動パターンについて、移動局が移動し得る経路と、これらの経路における移動局との分布に基づいて予め実測または模擬に基づいて個別に求められ、かつ実際に候補セルの選択の基準として適用される確率(以下、「移動確率」という。)とが、該当する移動パターンを示すセル番号の列に対応付けられて予め格納される移動パターンテーブル254を局情報として有し、移動パターンテーブル254に格納された情報が移動局の実際の移動に適応した履歴に基づいて更新されるから、「移動パターンテーブル254に格納された情報」が、本願補正発明の「ハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴」に対応し、刊行物2記載発明において、「該移動局の通信相手の通信装置の周辺に位置する通信装置の中から、前記移動局の移動履歴、およびハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴に基づいて、ハンドオーバ先の候補の通信装置を選定」しているといえる。 また、刊行物2記載発明において、移動体交換局235では、プロセッサ241は、ハンドオーバの開始に先行して移行先の候補として候補セルを求め、このような候補セルのセル番号と交換局番号とを求め、これらのセル番号と交換局番号とで示されるセルの空いているパス(以下、「候補パス」という。)を該当する呼について割り付けて設定した後に、ハンドオーバ要求を認識すると、そのパス設定要求に含まれる候補セルに無線区間のパス(チャネル)を設定しているから、この設定される「無線区間のパス(チャネル)」、「候補パスを該当する呼について割り付けて設定」は、それぞれ、本願補正発明の「前記選定したハンドオーバ先の候補の通信装置における無線資源」、「前記選定したハンドオーバ先の候補の通信装置における無線資源を確保」に対応する。 したがって、刊行物2記載発明は、本願補正発明の対応する表現を用いると、次のようなものと認められる。 基地局の機能を有する通信装置と、移動局と、これら通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置とを有する移動通信システムにおいて、 前記移動局は、 通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求し、 前記通信制御装置は、 該移動局の通信相手の通信装置の周辺に位置する通信装置の中から、前記移動局の移動履歴、およびハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴に基づいて、ハンドオーバ先の候補の通信装置を選定し、 前記選定したハンドオーバ先の候補の通信装置における無線資源を確保する移動通信システム。 そうすると、刊行物1記載発明において、移動局自ら、ハンドオーバ先の候補の通信装置の選定をする代わりに、刊行物2記載発明のように、基地局の機能を有する通信装置と、移動局と、これら通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置とを有する移動通信システムにおいて、移動局が、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求し、前記通信制御装置は、該移動局の通信相手の通信装置の周辺に位置する通信装置の中から、前記移動局の移動履歴、およびハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴に基づいて、ハンドオーバ先の候補の通信装置を選定し、前記選定したハンドオーバ先の候補の通信装置における無線資源を確保することは、当業者が容易になし得ることである。 また、刊行物1記載発明において、移動局の行うハンドオーバ先の候補の通信装置の選定は、通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に行われていたのであるから、「通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求」することや「通信制御装置の行うハンドオーバ先の候補の通信装置の選定」を、前記移動局と該移動局の通信相手の通信装置との間の通信品質が前記第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に行うことは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 なお、本願補正発明の「選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位」は、「移動局」と「通信制御装置」のいずれが決定したものでもよいと解釈できるが、本件明細書の実施例に関する記載を参酌して仮に「通信制御装置」が決定したものと解釈したとしても、「通信制御装置」が選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位を決定することは、特開平9-261717号公報(平成9年(1997)10月3日出願公開、以下、「周知例1」という。)(【0013】の「交換機1は…(中略)…登録要求子機PSが次に移動する確率の高い基地局の順に第1優先BS-ID,第2優先BS-ID,第3優先BS-ID,・・・として、図示しないメモリにテーブル化して登録する。」参照)、特開平9-271058号公報(平成9年(1997)10月14日出願公開、以下、「周知例2」という。)(【0040】の「チャネル情報信号を受信した基地局1は、その受信したチャネル情報信号に基づいて、複数の選択先候補のゾーンおよびチャネルについてそれぞれ優先順位を付与する(S738)」参照)等にみられるように周知技術であるから、本願補正発明に進歩性は認められない。 また、審判請求書の【請求の理由】【本願発明が特許されるべき理由】の項において、請求人は、本願補正発明の作用効果について、次のように主張している。 「ハンドオーバ動作が実行される前に予めハンドオーバ先の通信装置における無線資源を確保しておくことができ、通信装置に対しハンドオーバの要求があった場合に、無線資源の不足によりその要求が拒否され、その結果、通信が強制切断されてしまうことがなく、ハンドオーバの成功率を向上させることができます。また、ハンドオーバ先の通信装置を選定し易いように保持することができます。」(平成17年6月29日付け手続補正書の第2頁第8行?同頁第12行) しかし、このような作用効果は、ハンドオーバ動作が実行される前に予めハンドオーバ先の通信装置における無線資源を確保しておくという特徴に基づくものであるが、「通話状態で移動する移動局が在圏するセルの隣接セルの圏内に移動する時点に先行して、その移動局の通話に供されるパスが確保され、かつ設定される」刊行物2記載発明も、同様の特徴を有しているから、本願補正発明の作用効果は、刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記周知技術に基づき、当業者が予測できる範囲のものにすぎない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成17年6月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年4月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。 【請求項1】基地局の機能を有する通信装置と、移動局と、これら通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置とを有する移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法において、 前記移動局は、 通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求し、 通信相手の通信装置との間の通信品質が通信可能な限界よりも良好な第1の閾値を下回った場合に、選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位にしたがって、通信相手の通信装置を切り替えるハンドオーバ制御方法。 2.刊行物記載発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載は、上記「第2.補正却下の決定[理由]2.独立特許要件(1)刊行物の記載」の項で認定したとおりである。 3.本願発明と刊行物1記載発明との対比・判断 (1)対比 本願発明は、上記「第2.補正却下の決定[理由]」の項で検討した本願補正発明から「通信制御装置」の限定事項である「前記移動局と該移動局の通信相手の通信装置との間の通信品質が前記第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、該移動局の通信相手の通信装置の周辺に位置する通信装置の中から、前記移動局の移動履歴、およびハンドオーバ元の通信装置とハンドオーバ先の通信装置との組み合わせ毎に保持する移動局情報の履歴に基づいて、ハンドオーバ先の候補の通信装置を選定し、前記選定したハンドオーバ先の候補の通信装置における無線資源を確保する」という事項を省いたものである。 そうすると、本願補正発明と刊行物1記載発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 [一致点] 「基地局の機能を有する通信装置と、移動局とを有する移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法において、 前記移動局は、 通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、ハンドオーバ先の候補の通信装置の選定をし、 通信相手の通信装置との間の通信品質が通信可能な限界よりも良好な第1の閾値を下回った場合に、選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位にしたがって、通信装置に通信相手の通信装置を切り替えるハンドオーバ制御方法。」である点。 [相違点] 本願発明の移動通信システムでは、 基地局の機能を有する通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置を有し、 前記移動局は、 通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求するのに対して、 刊行物1記載発明の移動通信システムでは、通信制御装置を有することが明らかでなく、移動局が、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求していないが、移動局自ら、ハンドオーバ先の候補の通信装置の選定をしている点。 (2)判断 [相違点]について 刊行物2(【0104】?【0105】の「移動体交換局235では…(中略)…移動局231によって送信された伝送品質通知信号を認識すると、移行元セルの識別情報をキーとして移動パターンテーブル251に対して検索処理を施し(図4(3))…(中略)…何らかの経路番号が得られた場合には、プロセッサ241は、その経路番号に対応して移動パターンテーブル251に登録された経路(図6の点線枠に拡大して示される。)に沿って形成された候補セル(ここでは、簡単のため、隣接するセル232-2であると仮定する。)を求め、このような候補セルのセル番号と交換局番号とを求める(図4(5))。」参照)、周知例1(【0012】?【0014】の「子機PSが次にどの基地局のエリアに移動するかの情報を取得する次BS-ID要求を基地局BSを経由して交換機1に送信する。ところで、交換機1では子機PSが各基地局間を移動する状況を管理しており…(中略)…周辺各基地局BSのそれぞれのIDを、登録要求子機PSが次に移動する確率の高い基地局の順に第1優先BS-ID,第2優先BS-ID,第3優先BS-ID,・・・として、図示しないメモリにテーブル化して登録する。交換機1では、子機PSから次BS-ID要求を受信した場合、そのテーブルを読み出して子機PSへ次BS-ID要求応答として返送する。」参照)、周知例2(【0037】?【0038】の「まず、移動局700は、無線ゾーンを移行するときに、周辺にある複数の無線ゾーンについての各代表無線チャネルの受信レベルを測定する(S720)。…(中略)…次に、移動局700は、選択した切替先候補の無線ゾーン番号を含むチャネル情報要求信号を現在通信している基地局1に送出する(S722)…(中略)…基地局1における決定手段702aは、受信したチャネル情報要求信号で指定された無線ゾーンのうちで受信レベルの高い予め定められた数の無線ゾーンを選択する(S724)。」参照)等にみられるように、次のような技術が周知であると認められる。 基地局の機能を有する通信装置と、移動局と、これら通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置とを有する移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法において、 前記移動局は、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求するハンドオーバ制御方法。 そうすると、刊行物1記載発明において、移動局自ら、ハンドオーバ先の候補の通信装置の選定をする代わりに、上記周知のハンドオーバ制御方法のように、基地局の機能を有する通信装置と、移動局と、これら通信装置と移動局との間の通信路の接続を制御する通信制御装置とを有する移動通信システムにおいて、移動局が、通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求することは、当業者が容易になし得ることである。 そして、刊行物1記載発明において、移動局の行うハンドオーバ先の候補の通信装置の選定は、通信相手の通信装置との間の通信品質が、通信可能な限界よりも良好な第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に行われていたのであるから、「通信制御装置に対してハンドオーバ先の候補の通信装置の選定を要求」することを、前記移動局と該移動局の通信相手の通信装置との間の通信品質が前記第1の閾値よりも良好な第2の閾値を下回った場合に行うことは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 なお、本願発明の「選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位」は、「移動局」と「通信制御装置」のいずれが決定したものでもよいと解釈できるが、本件明細書の実施例に関する記載を参酌して仮に「通信制御装置」が決定したものと解釈したとしても、上記「第2.補正却下の決定[理由]2.独立特許要件(3)判断」の項で述べたとおり、「通信制御装置」が選定されたハンドオーバ先の候補の通信装置の優先順位を決定することは、周知例1、2等にみられるように周知技術であるから、本願発明に進歩性は認められない。 したがって、本願発明は、刊行物1記載発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-14 |
結審通知日 | 2008-05-20 |
審決日 | 2008-06-11 |
出願番号 | 特願2001-25629(P2001-25629) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高木 進、山本 春樹、前田 仁 |
特許庁審判長 |
大日方 和幸 |
特許庁審判官 |
桑原 清 山本 章裕 |
発明の名称 | ハンドオーバ制御方法、移動局及び通信制御装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |