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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1181802 |
審判番号 | 不服2005-19675 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-12 |
確定日 | 2008-07-24 |
事件の表示 | 特願2002-292513「電圧帰還回路を有する半導体装置及びそれを用いた電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-128329〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年10月4日の出願であって、平成17年9月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月2日付けで手続補正がなされ、その後、前置審査において、同年12月26日付けで拒絶理由が通知され、平成18年3月3日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成18年3月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、このうち、本願の請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】出力電圧を帰還した帰還信号と入力信号とに基づいて前記出力電圧を制御する制御回路部、前記出力電圧を出力するための出力用パッド、前記帰還信号を帰還するための帰還用パッド、前記出力用パッドと前記帰還用パッドとの間に接続される保護用抵抗を内部に含むICチップと、 前記出力用パッド及び前記帰還用パッドにそれぞれ接続された出力用端子とを、有することを特徴とする半導体装置。」 第3 引用刊行物及び該引用刊行物記載の発明 1 刊行物1:特開2001-274332号公報 前置審査の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には、図3、図4とともに、 「半導体装置」(発明の名称)に関して、 「【従来の技術】従来より、外部端子から定電圧を出力する定電圧出力回路を有する半導体装置がある。上記従来の半導体装置の一例として、図3に示す低飽和型レギュレータがある。図3において、半導体装置10の外部入力端子Vinには直流電源12の正電極及び安定化用コンデンサCinの一端が接続され、直流電源12の負電極及びコンデンサCinの他端は接地される。半導体装置10の接地端子GNDは接地され、外部出力端子Voutは端子14を介して負荷に接続されると共に、位相補正用の抵抗R0とコンデンサC0を介して接地される。コンデンサC0としてはセラミックコンデンサが用いられ、抵抗R0としては抵抗値が50?100mΩ程度のものが使用される。図4は、従来の半導体装置10の一例の内部回路図を示す。同図中、破線で囲んだ部分が半導体チップ20であり、この半導体チップ20上に、出力トランジスタQ1,エラーアンプ22,基準電圧源24,分圧抵抗R1,R2それぞれが形成されている。また、出力トランジスタQ1のエミッタが接続された半導体チップ20上の入力パッド26は、外部入力端子Vinを介して直流電源12の正電極及び安定化用コンデンサCinの一端に接続されている。出力トランジスタQ1のコレクタが接続された半導体チップ20上の出力パッド28はボンディングワイヤ30によって半導体装置10のパッケージの外部出力端子である出力ピン32に接続され、抵抗R1の一端が接続された半導体チップ20上の出力パッド36はボンディングワイヤ38によって外部出力端子である出力ピン32に接続されている。出力ピン32は外付けの位相補正用の抵抗R0とコンデンサC0を介して接地されている。直列接続された抵抗R1,R2は電圧検出点である出力パッド36の電圧を分圧しており、検出電圧が抵抗R1,R2の接続点からエラーアンプ22の非反転入力端子に帰還される。エラーアンプ22の反転入力端子には基準電圧源24から基準電圧Vrefが供給されている。エラーアンプ22は基準電圧Vrefと検出電圧の偏差に応じて出力トランジスタQ1を駆動し、出力ピン32の電圧が一定になるように制御する。ボンディングワイヤ30,38それぞれは約100mΩ程度の抵抗値を有しているため、出力パッド28,36間を共通化し(半導体チップ20上で短絡)、出力パッド28と出力ピン32間をボンディングワイヤ30で接続する構成ではボンディングワイヤ30による電圧降下が大きくなり、負荷の電圧安定度つまりロードレギュレーションが悪化する。これに対し、図4のように、出力パッド28,36を設け、ボンディングワイヤ30,38で出力ピン32に接続することで、電圧検出点である出力パッド36と出力ピン32間の電位差を低減してロードレギュレーションを改善している。」(第2頁左欄第21行?同頁右欄第18行)が、記載されている。 以上の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「電圧検出点である出力パッド36からの検出電圧が非反転入力端子に帰還され、反転入力端子には基準電圧源24からの基準電圧Vrefが供給されているエラーアンプ22と、前記基準電圧Vrefと前記検出電圧の偏差に応じて前記エラーアンプ22により駆動される出力トランジスタQ1と、前記出力トランジスタQ1のコレクタが接続された出力パッド28と、前記電圧検出点であり前記検出電圧を帰還するための出力パッド36とを含む半導体チップ20と、前記出力パッド28及び前記出力パッド36と接続された半導体装置10のパッケージの外部出力端子である出力ピン32とを、有することを特徴とする定電圧出力回路を有する半導体装置。」 2 刊行物2:特開昭49-135151号公報 前置審査の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2には、第1図、第2図とともに、 「直流安定化電源の保護方式」(発明の名称)に関して、 「配線による負荷電流の降下を補償するために外部にそれぞれ一対の出力端子と一対の出力電圧検出端子を備えた直流安定化電源において、前記直流安定化電源の内部に出力電圧の分圧を電圧検出端子に加えるような分圧器を備えたことを特徴とする直流安定化電源の保護方式。」(特許請求の範囲)、 「本発明は直流安定化電源、さらに詳しく述べると負荷電流降下を補償する端子を備えた電源回路の保護方式に関するものである。 直流安定化電源において、負荷低抗の配線低抗による電圧降下の補償を可能とするため、一般に出力端子と出力電圧の検出端子とは分離されている。 第1図はその従来例を示したものであつて、1は直流安定化電源、2は負荷、3は6と一対をなす出力端子、4は5と一対をなす出力電圧検出端子を示す。 また、直流安定化電源1には直流電源7、出力トランジスター8、制御増幅器9、基準電圧源10を備えており、出力電圧を検出して基準電源10との偏差により制御増幅器9が動作し、出力トランジスター8の入力電圧を制御して出力電圧を所定値に保つ。 同図において、検出端子4および5を負荷2の両端からとることにより、出力端子3および6から負荷2の間の配線低抗による電圧降下分を補償できる。しかし、このような構成においては、長い配線の途中で検出端子4または5と負荷2との間で断線等が生じると、電圧制御系は無帰還となり過大な電圧を発生する。」(第1頁左下欄第10行?同頁右下欄第14行)、 「第2図は本発明による直流安定化電源回路の一実施例を示すものである。 本発明においては、同図に示すように外部のための配線とは別に出力端子および出力電圧検出端子間に低抗11,12,13で構成された分圧器を有しており、出力電圧検出部には出力端子電圧よりもわずかに小さい値に分圧された低抗12の両端の電圧が加えられている。しかし、通常の動作時においては、分圧器の低抗11および13は外部配線によつて短絡された状態になつており、実際の検出電圧は負荷端の電圧が加えられている。いま、何らかの原因により端子4または5と負荷2の間に断線事故等が生じた場合、電圧帰還系には内部の分圧器によつて加えられるため出力端子電圧は分圧比の逆数によつて定まるわずかに高い値に上昇するに留まる。」(第2頁左上欄第13行?同頁右上欄第8行)、 「以上、述べた如く、本発明によれば出力電圧検出端子以降の端子接触不良や断線等によつて発生する異常電圧を防止することができ、その回路も極めて簡単であるから廉価に実施することができる。また本発明においては、運用上不利になるような制限条件がなに一つないという長所があり、直流安定化電源の保護方式として誠に有益である。」(第2頁左下欄第17行?同頁右下欄第3行)が、記載されている。 なお、刊行物2における「低抗」は、「抵抗」の誤記なので、以後は「抵抗」と記載する。 第4 対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物発明」という。)とを対比する。 (a)刊行物発明の「電圧検出点である出力パッド36からの検出電圧が非反転入力端子に帰還され、反転入力端子には基準電圧源24からの基準電圧Vrefが供給されているエラーアンプ22と、前記基準電圧Vrefと前記検出電圧の偏差に応じて前記エラーアンプ22により駆動される出力トランジスタQ1」において、刊行物発明の「電圧検出点である出力パッド36からの」「帰還され」た「検出電圧」は、本願発明の「出力電圧を帰還した帰還信号」に相当し、刊行物発明の「基準電圧源24からの基準電圧Vref」は、本願発明の「入力信号」に相当し、刊行物発明の「エラーアンプ22」と「出力トランジスタQ1」は、両方で、本願発明の「制御回路部」に相当するので、刊行物発明の「電圧検出点である出力パッド36からの検出電圧が非反転入力端子に帰還され、反転入力端子には基準電圧源24からの基準電圧Vrefが供給されているエラーアンプ22と、前記基準電圧Vrefと前記検出電圧の偏差に応じて前記エラーアンプ22により駆動される出力トランジスタQ1」は、本願発明の「出力電圧を帰還した帰還信号と入力信号とに基づいて前記出力電圧を制御する制御回路部」に相当する。 (b)刊行物発明の「前記出力トランジスタQ1のコレクタが接続された出力パッド28」と「前記電圧検出点であり前記検出電圧を帰還するための出力パッド36」は、それぞれ、本願発明の「前記出力電圧を出力するための出力用パッド」と「前記帰還信号を帰還するための帰還用パッド」に相当し、刊行物発明の「半導体チップ」は、本願発明の「ICチップ」に相当する。 (c)刊行物発明の「前記出力パッド28及び前記出力パッド36と接続された半導体装置10のパッケージの外部出力端子である出力ピン32」は、本願発明の「前記出力用パッド及び前記帰還用パッドにそれぞれ接続された出力用端子」に相当する。 (d)刊行物発明の「定電圧出力回路を有する半導体装置」は、本願発明の「半導体装置」に相当する。 すると、本願発明と刊行物発明とは、 「出力電圧を帰還した帰還信号と入力信号とに基づいて前記出力電圧を制御する制御回路部、前記出力電圧を出力するための出力用パッド、前記帰還信号を帰還するための帰還用パッドを含むICチップと、前記出力用パッド及び前記帰還用パッドにそれぞれ接続された出力用端子とを、有することを特徴とする半導体装置。」である点で一致し、 本願発明は、「前記出力用パッドと前記帰還用パッドとの間に接続される保護用抵抗を内部に含むICチップ」を備えているのに対して、刊行物発明は、「半導体チップ」を備えてはいるが、「前記出力用パッドと前記帰還用パッドとの間に接続される保護用抵抗」を備えていない点(以下、「相違点1」という。)、で相違している。 そこで、上記相違点1について検討する。 (1)刊行物2には、「配線による負荷電流の降下を補償するために外部にそれぞれ一対の出力端子と一対の出力電圧検出端子を備えた直流安定化電源において、前記直流安定化電源の内部に出力電圧の分圧を電圧検出端子に加えるような分圧器を備えたことを特徴とする直流安定化電源の保護方式。」(特許請求の範囲)が記載されており、「何らかの原因により」出力電圧検出「端子4または5と負荷2の間に断線事故等が生じた場合、電圧帰還系には内部の分圧器によつて加えられるため出力端子電圧は分圧比の逆数によつて定まるわずかに高い値に上昇するに留まる。」(第2頁右上欄第4?8行)ことも、記載されている。 そして、刊行物発明の「定電圧出力回路を有する半導体装置」は、「定電圧出力回路を有する」ものであり、刊行物2に記載の「直流安定化電源」と同等の直流安定化の機能を有する装置であるから、刊行物2に記載の「何らかの原因により」出力電圧検出「端子4または5と負荷2の間に断線事故等が生じた場合」(第2頁右上欄第4?5行)に対応する、刊行物1に記載の「前記電圧検出点であり前記検出電圧を帰還するための出力パッド36」と「前記出力パッド36と接続された半導体装置10のパッケージの外部出力端子である出力ピン32」の間に断線や端子接触不良が生ずる可能性がある場合には、刊行物2に記載の「出力端子および出力電圧検出端子間に抵抗11,12,13で構成された分圧器」(第2頁左上欄第16?17行)を適用することにより、「電圧制御系」が「無帰還となり過大な電圧を発生する」(第1頁右下欄第13?14行)ことを防止して、刊行物発明の「定電圧出力回路を有する半導体装置」を保護するようになすことは、当業者が容易になしえたことと認められる。 (2)ところで、刊行物2に記載の「出力端子および出力電圧検出端子間」の「抵抗11,12,13で構成された分圧器」を、刊行物発明に適用するにあたり、刊行物2の「出力端子」は、刊行物発明の「前記出力トランジスタQ1のコレクタが接続された出力パッド28」に対応し、刊行物2の「出力電圧検出端子」は、刊行物発明の「前記電圧検出点であり前記検出電圧を帰還するための出力パッド36」に対応するものである。 すると、「抵抗11,12,13で構成された分圧器」のうちの「抵抗11」が、刊行物発明の「前記出力トランジスタQ1のコレクタが接続された出力パッド28(本願発明の「出力用パッド」に相当)」と「前記電圧検出点であり前記検出電圧を帰還するための出力パッド36(本願発明の「帰還用パッド」に相当)」の間に設けられることになるので、本願発明の「保護用抵抗」に相当しており、刊行物2に記載の「抵抗11,12,13で構成された分圧器」のうちの「抵抗12」が、刊行物発明の「前記電圧検出点であり前記検出電圧を帰還するための出力パッド36(本願発明の「帰還用パッド」に相当)」と接地間に設けられることになり、刊行物2に記載の「抵抗11,12,13で構成された分圧器」のうちの「抵抗13」は、刊行物発明では、その両端が接地されるために、設ける必要がないことになる。 なお、本願発明では、帰還用パッドと接地間に設けられた抵抗の有無についての明示はないが、少なくとも、帰還用パッドと接地間に抵抗を設けたものも本願発明に含まれることは、明らかである。 (3)また、刊行物2に記載の「抵抗11,12,13で構成された分圧器」を、刊行物発明に適用すると、「抵抗11,12,13で構成された分圧器」のうちの「抵抗11」と「抵抗12」は、刊行物発明の「半導体チップ20」の内部に設けられるか、あるいは、「半導体チップ20」を「内部回路」とする「半導体装置10」の内の「半導体チップ20」の外側に設けられるかのいずれかとなるが、刊行物2に記載の「何らかの原因により」出力電圧検出「端子4または5と負荷2の間に断線事故等が生じた場合」(第2頁右上欄第4?5行)に対応する、刊行物1に記載の「前記電圧検出点であり前記検出電圧を帰還するための出力パッド36」と「前記出力パッド36と接続された半導体装置10のパッケージの外部出力端子である出力ピン32」の間に断線や端子接触不良が生ずる可能性がある場合に、刊行物2に記載の「抵抗11,12,13で構成された分圧器」のうちの「抵抗11」と「抵抗12」により、断線や端子接触不良が保護できる配線区間は、設けられた「抵抗11」と「抵抗12」の外側、すなわち、負荷側であることは、自明のことであり、また、断線や端子接触不良が保護できる配線区間をより長くすることは、当然の要求であるから、「抵抗11,12,13で構成された分圧器」のうちの「抵抗11」と「抵抗12」を、刊行物発明の「半導体チップ20」を「内部回路」とする「半導体装置10」の内の「半導体チップ20」の外側に設けるのではなく、断線や端子接触不良が保護できる配線区間がより長い、「半導体チップ20」の内部に設けることは、当業者が適宜なしえた程度のことと認められる。 また、一般に、集積化する要請がある任意の回路は、半導体チップ化することができるので、刊行物2の第2図に記載の「直流安定化電源1」部分は、必要に応じて半導体チップ化することができるものであり、半導体チップ化した刊行物2の第2図に記載の「直流安定化電源1」は、本願発明の「保護用抵抗」に相当する「抵抗11」を含む「抵抗11,12,13で構成された分圧器」を半導体チップの内部に有することは、好適な条件の一つを選択した程度のことであり、格別の困難を要するものではない。 (4)したがって、刊行物2に記載の「抵抗11,12,13で構成された分圧器」のうちの「抵抗11」と「抵抗12」を、刊行物発明に適用するにあたり、刊行物発明の「半導体チップ20」の内部に「抵抗11」と「抵抗12」を設けることにより、本願発明のごとく、「前記出力用パッドと前記帰還用パッドとの間に接続される保護用抵抗を内部に含むICチップ」を備えるものとすることは、当業者が容易になしえたものと認められる。 よって、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された上記刊行物1及び2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-22 |
結審通知日 | 2008-05-27 |
審決日 | 2008-06-10 |
出願番号 | 特願2002-292513(P2002-292513) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 棚田 一也 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
松田 成正 橋本 武 |
発明の名称 | 電圧帰還回路を有する半導体装置及びそれを用いた電子装置 |
代理人 | 紋田 誠 |
代理人 | 逸見 輝雄 |