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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1181804
審判番号 不服2005-20397  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-21 
確定日 2008-07-24 
事件の表示 平成11年特許願第 64731号「プリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月19日出願公開、特開2000-255136〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年3月11日の特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成16年12月28日付けで手続補正がされたが、平成17年9月16日付けで拒絶査定がされ、これを不服として同年10月21日付けで審判請求がされたものである。

2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、平成16年12月28日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下、「本願発明」という。 )
「【請求項1】
印字ヘッド及びプラテンを有し前記印字ヘッドと前記プラテンとの間に介在する印字媒体に印字を行う印字部と、
前記印字ヘッドを前記印字媒体の幅方向にスライド自在に支持するメインシャフトと、
前記メインシャフトの軸心から偏心した位置に回転中心を有して前記メインシャフトを保持するギヤとこのギヤを回転させる駆動力を発するステッピングモータとを備えた移動機構と、
前記ステッピングモータのステップ数をカウントするステップ数カウンタと、
前記印字ヘッドが前記プラテンから充分離れた位置を基準位置として規定した場合に前記基準位置に前記印字ヘッドが位置することを検出するための基準位置規定手段と、
前記ステッピングモータに負荷がかかることによって生ずる起電力を検出して前記印字ヘッドが前記プラテン又は前記プラテン上の前記印字媒体に圧接したことを検出する逆起電圧検出回路と、
前記基準位置から前記印字ヘッドを前記プラテンに近接する方向に向かわせるように前記ステッピングモータを駆動した場合における前記ステッピングモータの単位ステップ数毎の前記印字ヘッドの移動量を示すデータが格納されたテーブルと、
前記基準位置よりも前記プラテンから離れた位置に位置する前記印字ヘッドを前記逆起電圧検出回路により逆起電圧が検出されるまで前記プラテンに近接する方向へ移動させて前記基準位置から逆起電圧が検出されるまでのステップ数を前記ステップ数カウンタによってカウントし、このカウント値に対応する前記テーブルに格納されたステップ数のデータを基準として前記印字ヘッドと前記プラテンとの間に所定の許容範囲内の印字ギャップを得るのに要するステップ数を前記テーブルのデータに基づいて算出するステップ数算出手段と、
を備えるプリンタ。」

3.引用例記載の発明

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-143884号公報(以下、「引用例」という。)には図示と共に次の記載事項がある。

記載事項1:特許請求の範囲として、第1頁左下欄第5行から第18行に
「モータなどの駆動源によって偏心シャフトを回転して用紙センサを有したキャリアをその初期位置からプラテン方向にアプローチ移動し、そのアプローチ移動中に前記用紙センサが用紙を検出したことにより前記偏心シャフトを所定量回転してキャリアをプラテンから離れる方向にエスケープ移動することによりキャリアに搭載された印字ヘッドと用紙表面とのギャップを所定値に調整する印字ヘッドと用紙間のギャップ設定方法であって、前記初期位置から前記用紙センサが用紙を検出するまでのキャリアの移動距離に応じて、前記エスケープ移動における前記偏心シャフトの回転量を変化させるようにしたことを特徴とする印字ヘッドと用紙間のギャップ設定方法。」

記載事項2:〔従来の技術〕に関して、第2頁左上欄第14行から同頁右下欄第12行に
「近年、プリンタの高機能化が要求されており、すなわち、プリンタの高速化に伴い、印字品質を高く確保するため、いかなる厚みの用紙を使用しても、用紙の表面と印字ヘッドとの間のギャップは、所定の一定値である必要がある。
第3図は一般のプリンタ機構の要部の平面図、第4図は第3図の矢印a-a’線における断面図、第5図は第3図を矢印b方向に見たギア機構を示す図である。これらの図において、1はフレーム2,2間に回転自在に支持されたプラテンで、その回転は図示しない例えばステッピングモータによって例えば用紙を早送りするときには連続的に、また、1行の印字が行われるごとに1行分回転するようになっている。
3はフレーム2.2間に回転自在に支持された偏心シャフトで、この偏心シャフト3に摺動自在にキャリア4が支持されており、このキャリア4の先端には用紙検出スイッチ(用紙センサ)5が取付けられているとともに、キャリア4の上面には印字ヘッド6が搭載されている。
前記キャリア4は、図示しない例えばステッピングモータで駆動されるベルト7に連結されて、前記偏心シャフト3に沿って印字命令に従って摺動する。
前記偏心シャフト3の両端の所定偏心位置に設けられた支軸3a,3a’がフレーム2,2に回転自在に支持されるとともに、一方の支軸3aに例えば欠歯ギア8(必ずしも欠歯ギアである必要はなく普通のギアにスイッチ押動部を設けてもよい)が取付けられ、この欠歯ギア8は、中間ギア9を介して、フレーム2に設けた例えばステッピングモータ10の回転軸に取付けたギア11に噛合されている。
第6図は以上説明したように構成した一般のプリンタの動作のフローチャートで、第7図は同じくキャリアの移動説明図であり、先ずプリンタの電源をオンにし(ステップ(1))、キャリア4がプラテン1から離れる方向(以下、エスケープ方向という)に移動するようにステッピングモータ10を回転させ(ステップ(2))、欠歯ギア8に設けたスイッチ押圧部8aがリミットスイッチ12を押してオンにし、キャリア4がプラテン1の方向(以下、アプローチ方向という)に移動する初期位置(以下、イニシャル位置という)を検知し、その位置で待機状態となる(ステップ(3))。印字命令が出ると(ステップ(4))、キャリア4がアプローチ方向に移動するようにステッピングモータ10を回転させ(ステップ(5))、キャリア4のアプローチ方向への移動により、キャリア4の先端に設けた用紙検出スイッチ5が用紙Pの表面に当接してオンになると(ステップ(6))、キャリア4がエスケープ方向へ所定量移動するようにステッピングモータ10をaステップ回転させ(ステップ(7))、キャリア4に搭載した印字ヘッド6とプラテンlに添接した用紙Pの表面との間に所定のギャップが設定され印字が開始される(ステップ(8))。」
(上記において、○の中に数字がある文字が表示できないので例えば「ステップ(1)」と()の中に数字がある文字で代替した部分がある。以下同様)

記載事項3:〔作用〕に関して、第3頁右下欄第7行から同欄第16行に
「この発明は、前記のように、偏心シャフトに支持された印字ヘッドを搭載したキャリアがプラテンの方向すなわちアプローチ移動する初期位置から、キャリアに設けた用紙センサが用紙に当接してそれを検出するまでの移動距離に応じて、キャリアがプラテンから離れる方向すなわちエスケープ移動における前記偏心シャフトの回転量を変化させることにより、使用する用紙の厚みが相違しても、印字ヘッドと用紙の表面とのギャップが常に一定の所定値になる。」

記載事項4:〔実施例〕に関して、第3頁右下欄第18行から第5頁左上欄第15行に
「以下、この発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。
プリンタ機構の要部は、この発明においても前記第3図、第4図、および第5図に示すものと同じであるのでその詳細な説明は省略する。第1図(A)はこの発明のギャップ設定方法の実施例を説明するための主要回路のブロック図、第1図(B)はこのプリンタの動作のフローチャートである。
第1図(A)における、13はこのプリンタの主制御を行うマイクロプロセッサユニット(MPU)で、このMPU13にバスライン14を介して以下のような各回路が接続されている。すなわち、15は入・出力回路で、これに例えばプリンタ電源オン信号S_(1)、印字命令信号S_(2)などが印加される。16はリードオンリメモリ(ROM)、17はランダムアクセスメモリ(RAM)、18はステッピングモータ10の駆動回路である。前記ROM16には第1図(B)に示すフローチャートのような動作を行わせるプログラムが記憶されている。
以下、第1図(B)に示すプリンタの動作のフローチャートおよび第2図に示す偏心シャフトの回動角に対するキャリアの移動量との関係に従って説明する。
先ず、プリンタの電源をオンにし(ステップ(1))、キャリア4がプラテン1からエスケープ方向に移動するようにステッピングモータ10を回転させ(ステップ(2))、偏心シャフト3に固定したギア8に設けたスイッチ押圧部8aがリミットスイッチ12を押してオンにしイニシャル位置を検知し、その位置で待機する(ステップ(3))。印字命令が出ると(ステップ(4))、キャリア4がアプローチ方向に移動するようにステッピングモータ10を回転させる(ステップ(5))。以上の動作は第6図に示したものと同じである。第2図に示すように、例えば用紙厚が標準の用紙を使用した場合は、ステッピングモータ10により偏心シャフト3をイニシャル位置からA角度(A°)回動させたとき、キャリア4がアプローチ方向に移動してこれに設けた用紙センサである用紙検出スイッチ5が用紙に当接してオンになった後に(ステップ(6))、ステッピングモータ10をaステップ逆回転させて(ステップ(7))、偏心シャフト3をX角度(X°)逆回転させて、キャリア4をエスケープ方向へ所定量Y移動させ、印字ヘッド6と用紙P間に所定のギャップYが設定され印字が開始される(ステップ(8))。このようなギャップが形成される偏心シャフトの回動範囲をAとする。
また、中厚の用紙を使用した場合には、偏心シャフト3をイニシャル位置から前記より小さいB角度(B°)回動させたとき、キャリア4がアプローチ方向に移動してこれに設けた用紙検出スイッチ5が用紙に当接してオンになった後に(ステップ(6)′)、ステッピングモータ10を前記よりも多いbステップ逆回転させて(ステップ(7)′)、偏心シャフト3を前記よりも大きいX+α角度(X°+α°)逆回動させると、キャリア4は前記と同じ所定量Yエスケープ方向に移動して、印字ヘッド6と用紙P間に所定のギャップYが設定され、印字が開始される(ステップ(8))。このようなギャップが形成される偏心シャフトの回動範囲をBとする。
さらにまた、最も厚い用紙を使用した場合には、偏心シャフト3をイニシャル位置から前記よりもさらに小さいC角度(C°)回動させたとき、キャリア4がアプローチ方向に移動してこれに設けた用紙検出スイッチ5が用紙に当接してオンになった後に(ステップ(6)′′)、ステッピングモータ10を前記よりもさらに多いCステップ逆回転させて(ステップ(7)′′)、偏心シャフト3を前記よりもさらに大きいX+β角度(X°+B°)逆回動させると、キャリア4は前記と同じ所定量Yエスケープ方向に移動して、印字ヘッド6と用紙P間に所定のギャップYが設定され、印字が開始される(ステップ(8))。このようなギャップが形成される偏心シャフトの回動範囲をCとする。
前記のような偏心シャフトのそれぞれの回動範囲、およびその回動範囲におけるステッピングモータのステップ逆回転数は、予め前記ROM16に記憶させであるので、用紙厚の相違によって、キャリアのプラテン方向へのアプローチ移動の初期位置から前記用紙検出スイッチ5が用紙を検出するまでのキャリアの移動距離が変わったとしても、すなわち、印字ヘッドと用紙間に所定のギャップを設定するための偏心シャフトの回動範囲が変わったとしても、印字ヘッドと用紙間に常に一定の所定ギャップが得られるように、前記ステンピングモータを回転制御する。
なお、前記偏心シャフトの回動範囲は3区分に限らず、さらに多くの区分に分けることも可能であり、それによって、あらゆる厚味の用紙を使用しても、印字ヘッドと用紙間に常に一定の所定ギャップを自動的に設定することができる。
また、前記ROM16に記憶させるプログラムの変更により、用紙の種類に対応して自在なギャップを得ることもできる。」

<ア> 記載事項1中の「初期位置」について、記載事項2には「初期位置(以下、イニシャル位置という)」とあって、引用例においては同じ位置を指すのに2つの用語「初期位置」、「イニシャル位置」が用いられているから、以後、「初期位置」に用語を統一する。

<イ> 記載事項2は、第3、4、5図等にて説明する従来技術に関するものであるが、記載事項4に「「以下、この発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。プリンタ機構の要部は、この発明においても前記第3図、第4図、および第5図に示すものと同じであるのでその詳細な説明は省略する。」とあるから、記載事項1、記載事項3、及び記載事項4に記載された発明の前提となる点については、必要に応じ、記載事項2が参照される。
例えば、記載事項1、記載事項3、記載事項4のいずれにも、「印字ヘッド6を用紙Pの幅方向に摺動自在に支持する偏心シャフト3を備える」趣旨の記載はないが、記載事項2には「前記キャリア4は、図示しない例えばステッピングモータで駆動されるベルト7に連結されて、前記偏心シャフト3に沿って印字命令に従って摺動する。」とあり、かつ、記載事項2で言及されている第3図と第4図からプラテン1上の用紙Pに印字ヘッド6が対向し、プラテン1の中心軸と偏心シャフト3が平行であることが看取できるので、印字ヘッド6を搭載するキャリア4は偏心シャフト3に支持されつつ用紙Pの幅方向に摺動し、「印字ヘッド6を用紙Pの幅方向に摺動自在に支持する偏心シャフト3を備える」ことになる。

<ウ> 記載事項1には「前記初期位置から前記用紙センサが用紙を検出するまでのキャリアの移動距離に応じて」とあるが、この記載のみからは、当該移動距離を実際に測定するのか、それとも、どのような厚みの用紙を使うかが決まった段階で厚みに応じた移動距離が概ね決まるので、用紙厚選択手段なり用紙厚検知手段なりで用紙厚に応じた移動距離を指定するのか等、詳細は不明である。
記載事項4にも「用紙厚が標準の用紙を使用した場合は、ステッピングモータ10により偏心シャフト3をイニシャル位置からA角度(A°)回動させ・・・中厚の用紙を使用した場合には、偏心シャフト3をイニシャル位置から前記より小さいB角度(B°)回動させ・・・ 最も厚い用紙を使用した場合には、偏心シャフト3をイニシャル位置から前記よりもさらに小さいC角度(C°)回動させ・・・」としか記載されていないし、記載事項4で説明されている第1図(B)のフローチャートを見ると、ステップ(5)の直後でそれぞれ異なる用紙厚に対応した3つのステップ(6)、(6)′、(6)′′に分岐しているにも拘わらず、どういう条件で分岐するかのステップが存在しない。
記載事項2,記載事項3にも上記不明な点は記載されていない。
しかしながら、上記3つに分岐した以降の構成は明確であり、記載事項4には「A角度(A°)回動させたとき、・・・ステッピングモータ10をaステップ逆回転させて(ステップ(7))、・・・B角度(B°)回動させたとき、・・・bステップ逆回転させて(ステップ(7)′)、・・・C角度(C°)回動させたとき、・・・cステップ逆回転させて(ステップ(7)′′)、」と、異なる移動距離に対応して異なる逆回転ステップ数を採用することが明記され、第1図(B)のフローチャートにはそのことに対応する3つのステップ(7)、(7)′、(7)′′が記載されている。
そして、エスケープ移動における前記偏心シャフトの回転はステッピングモータの逆回転でなされるのであるから、異なる逆回転ステップ数を採用することは偏心シャフトの回転量を変化させることに他ならない。
よって、どのようにして移動距離を知るかは別として、記載事項1中の「前記初期位置から前記用紙センサが用紙を検出するまでのキャリアの移動距離に応じて、前記エスケープ移動における前記偏心シャフトの回転量を変化させるようにしたこと」に対応する構成は明確である。
そして、記載事項4には「前記のような偏心シャフトのそれぞれの回動範囲、およびその回動範囲におけるステッピングモータのステップ逆回転数は、予め前記ROM16に記憶させてあるので」とあるから、キャリアの移動距離に応じたステップ逆回転時のステップ数のデータがROM16に記憶されている。
記載事項4には「第1図(A)における、13はこのプリンタの主制御を行うマイクロプロセッサユニット(MPU)で、このMPU13にバスライン14を介して以下のような各回路が接続されている。・・・16はリードオンリメモリ(ROM)」とあるから、ROM16のデータの読み出しはマイクロプロセッサユニット(MPU)13が行う。
なお、記載事項4には「なお、前記偏心シャフトの回動範囲は3区分に限らず、さらに多くの区分に分けることも可能であり、それによって、あらゆる厚味の用紙を使用しても、印字ヘッドと用紙間に常に一定の所定ギャップを自動的に設定することができる。」とあって、用紙厚の違いは3つに限定されていない。

<エ> 記載事項3中には「使用する用紙の厚みが相違しても、印字ヘッドと用紙の表面とのギャップが常に一定の所定値になる。」とあり、記載事項4中には「印字ヘッドと用紙間に所定のギャップを設定するための偏心シャフトの回動範囲が変わったとしても、印字ヘッドと用紙間に常に一定の所定ギャップが得られるように、」とあって、印字ギャップについて、「ギャップが常に一定の所定値」、「所定のギャップ」、「常に一定の所定ギャップ」と複数の表現がされている。
これら表現のうちの「常に一定」が、用紙の厚みが相違しても同じギャップ値を得られることを意味し、所定のギャップが得られることの意義の強調に過ぎないことは自明であり、「常に一定の所定の」も「所定の」も意味内容に違いはない。
よって、上記のうち、「所定のギャップ」との表現を採用する。

そして、「所定のギャップ」はaステップ分の逆回転等で得ていて、その精度は1ステップ分に相当する移動距離以下にはなり得ないから、「所定のギャップ」は当然ある許容範囲を含んでいる。

<オ> 記載事項1中には「用紙検出センサ」、記載事項2中には「用紙検出スイッチ(用紙検出センサ)5」、記載事項4中には「用紙検出スイッチ5」とあり、同じ構成要素を指すのに2つの用語が用いられているので、「用紙検出センサ」の用語を採用する。

してみるに、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。
「キャリア4に搭載された印字ヘッド6、及びプラテン1を有し前記印字ヘッド6と前記プラテン1との間に介在する用紙Pに印字を行う、前記キャリア4に搭載された前記印字ヘッド6、及び前記プラテン1と、
前記印字ヘッド6を搭載する前記キャリア4を摺動自在に支持する偏心シャフト3と、
前記偏心シャフト3の軸心から偏心した位置に回転中心を有して前記偏心シャフト3を保持するギアとこのギアを回転させる駆動力を発するステッピングモータ10とを備えた移動機構と、
前記印字ヘッド6が前記プラテン1から離れる方向にある初期位置に前記キャリア4に搭載された前記印字ヘッド6が位置することを検出するための、ギアの回転により作動するリミットスイッチ12と、
前記印字ヘッド6が前記プラテン1上の前記用紙Pに当接したことを検出する、前記キャリア4の先端に設けた用紙センサと、
前記初期位置に位置する前記印字ヘッド6を前記用紙検出スイッチ5が用紙Pに当接するまで前記プラテン1に近接する方向へ移動させ、前記初期位置から前記用紙センサが前記用紙Pに当接するまでの前記印字ヘッド6の移動距離とそれに応じた前記印字ヘッド6と前記用紙Pの表面との間に所定の許容範囲内の印字ギャップを得るのに要するステップ数とを記憶したROM16と、
前記ROM16のデータを読み出すマイクロプロセッサユニット(MPU)13と、
を備えるプリンタ。」(以下、引用発明という。)

4.対比
本願発明と引用発明とを比較する。

(a)引用発明の「プラテン1」、「摺動自在」、「偏心シャフト3」、「ギア」、「ステッピングモータ10」、「初期位置」、「リミットスイッチ12」は、それぞれ本願発明の「プラテン」、「スライド自在」、「メインシャフト」、「ギヤ」、「ステッピングモータ」、「基準位置」、「基準位置規定手段」に相当する。

(b)引用発明の「用紙P」は、印字がなされる対象である点で、本願発明の印字媒体と共通する。

(c)引用発明の「印字ヘッド6」は、プラテン上の印字媒体に印字する手段である点で、本願発明の「印字ヘッド」と共通する。

(d)引用発明の「用紙検出スイッチ5」は、逆起電圧検出をしないものの、印字ヘッドがプラテン上の印字媒体に接したことを検出する手段である点で、本願発明の「前記ステッピングモータに負荷がかかることによって生ずる起電力を検出して前記印字ヘッドが前記プラテン又は前記プラテン上の前記印字媒体に圧接したことを検出する逆起電圧検出回路」と共通する。

(e)引用発明の「前記初期位置から前記用紙センサが前記用紙Pに当接するまでの前記印字ヘッド6の移動距離」は、移動距離をどのようにして知るか、及び、印字ヘッドがプラテン上の印字媒体に接したことを知る手段が違う点は別として、基準位置とプラテン上の印字媒体の距離に関するデータである点で、本願発明の「前記基準位置よりも前記プラテンから離れた位置に位置する前記印字ヘッドを前記逆起電圧検出回路により逆起電圧が検出されるまで前記プラテンに近接する方向へ移動させて前記基準位置から逆起電圧が検出されるまでのステップ数」と共通する。

(f)引用発明の「前記印字ヘッド6と前記用紙Pの表面との間に所定の印字ギャップを得るのに要するステップ数」は、本願発明の「前記印字ヘッドと前記プラテンとの間に所定の許容範囲内の印字ギャップを得るのに要するステップ数」に相当する。

(g)引用発明の「ROM16」は、基準位置とプラテン上の印字媒体の距離に関するデータとこのデータに対応する逆回転時のステップ数とを対応させて格納している点で、本願発明の「テーブル」に相当する。

(h)引用発明の「マイクロプロセッサユニット(MPU)13」は紙厚に対応する制御を行うものであって、現実に移動させるステップ数の算出を行っているから、本願発明の「ステップ数算出手段」に相当する。

してみるに、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。

<一致点>
「印字ヘッド及びプラテンを有し前記印字ヘッドと前記プラテンとの間に介在する印字媒体に印字を行う印字部と、
前記印字ヘッドを前記印字媒体の幅方向にスライド自在に支持するメインシャフトと、
前記メインシャフトの軸心から偏心した位置に回転中心を有して前記メインシャフトを保持するギヤとこのギヤを回転させる駆動力を発するステッピングモータとを備えた移動機構と、
基準位置に前記印字ヘッドが位置することを検出するための基準位置規定手段と、
前記印字ヘッドが前記プラテン上の前記印字媒体に接したことを検出する手段と、
基準位置とプラテン上の印字媒体の距離に関するデータを記憶したテーブルと、
前記基準位置に位置する前記印字ヘッドを前記印字ヘッドが前記プラテン上の前記印字媒体に接したことを検出する手段により前記印字ヘッドが前記プラテン上の前記印字媒体に接したことが検出されるまで前記プラテンに近接する方向へ移動させ、基準位置とプラテン上の印字媒体の距離に関するデータに対応する前記テーブルに格納されたステップ数のデータから前記印字ヘッドと前記プラテンとの間に所定の許容範囲内の印字ギャップを得るのに要するステップ数を前記テーブルのデータに基づいて算出する手段と、
を備えるプリンタ。」

<相違点>
(i)本願発明は、印字がなされる対象が「印字媒体」と特定されているのに対して、引用発明では印字がなされる対象が「用紙P」であり、本願発明の「印字媒体」が用紙、または用紙を含むものであるか不明であるため、引用発明が当該特定を有するか定かでない点。

(ii)本願発明は、「前記ステッピングモータのステップ数をカウントするステップ数カウンタ」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点。

(iii)本願発明は「前記ステッピングモータに負荷がかかることによって生ずる起電力を検出して前記印字ヘッドが前記プラテン又は前記プラテン上の前記印字媒体に圧接したことを検出する逆起電圧検出回路」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点。

(iv)本願発明は「前記基準位置から前記印字ヘッドを前記プラテンに近接する方向に向かわせるように前記ステッピングモータを駆動した場合における前記ステッピングモータの単位ステップ数毎の前記印字ヘッドの移動量を示すデータが格納されたテーブル」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有するか定かでない点。

(v)本願発明は「前記基準位置よりも前記プラテンから離れた位置に位置する前記印字ヘッドを前記逆起電圧検出回路により逆起電圧が検出されるまで前記プラテンに近接する方向へ移動させて前記基準位置から逆起電圧が検出されるまでのステップ数を前記ステップ数カウンタによってカウントし、このカウント値に対応する前記テーブルに格納されたステップ数のデータを基準として前記印字ヘッドと前記プラテンとの間に所定の許容範囲内の印字ギャップを得るのに要するステップ数を前記テーブルのデータに基づいて算出するステップ数算出手段」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有するか定かでない点。

5.当審の判断
相違点(i)について
本願請求項1の記載のみからは、「印字媒体」が紙、または紙を含むものであるか直ちに把握できないので、本願明細書を参酌するに、本願明細書の段落【0035】に「本実施の形態では、印字媒体として、1枚の用紙から8枚綴りの用紙まで想定」とある。
よって、少なくとも、本願発明の「印字媒体」は用紙を含み、相違点(i)は実質的な相違とはいえない。

相違点(ii)について
一般に、ステッピングモータを用いた位置調整では、ステッピングモータの回転を知るロータリエンコーダや位置調整される対象の位置を知る計測手段を使わなくても、ステッピングモータに駆動電源を1パルス分加えると1ステップ回転するのでステップ数をカウントするだけでステッピングモータの回転角度を知り、それに対応して対象の移動距離を知ることができることが特長である。よって、引用発明で印字ヘッドの移動距離を知るのに、印字ヘッドの位置調整をするステッピングモータのステップ数をカウントすることで行い、そのためのカウンタを設けることは当業者ならば容易に想到し得る。
また、引用例の第2頁右下19行から第第3頁左上欄第5行には、「ステッピングモータ10をaステップ回転させたとしても、以下に説明するように、偏心シャフト3の回動範囲の相違によって、キャリア4のエスケープ方向への移動量が相違し、印字ヘッドと用紙間に所定のギャップを得ることができない。」と記載されているが、もし位置調整される印字ヘッドの位置を知る計測手段が別途あるなら、それから正確な印字ヘッドの位置がわかるので「ステッピングモータ10をaステップ回転させたとしても、以下に説明するように、偏心シャフト3の回動範囲の相違によって、キャリア4のエスケープ方向への移動量が相違し、印字ヘッドと用紙間に所定のギャップを得ることができない。」ことにはならない。
これは、ステッピングモータ10のステップ数をa個カウントすることで印字ヘッドをaステップに相当する量移動させることを示唆しているし、引用例には、ステッピングモータの回転を知るロータリエンコーダや位置調整される印字ヘッドの位置を知る計測手段を使うことは記載されていないこともこれを裏付ける。
よって、相違点(ii)に係る本願発明の構成は、引用例の記載及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。

さらに検討するに、プリンタの分野において、ステッピングモータを用いた印字ヘッドの位置調整をステッピングモータのステップ数をカウントすることで行うこと自体周知である。例えば、特開平9-52404号公報の段落【0019】から段落【0021】の記載によれば、印字ヘッドをプラテンに押し当てるときも所定ギャップ量戻すときも、印字ヘッドの位置を表すのにステッピングモータのステップ数で行っている。
よって、相違点(ii)に係る本願発明の構成は、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。

相違点(iii)について
プリンタにおいて、印字ヘッドがプラテン又はプラテン上の印字媒体に接したことの検出を、印字ヘッドを移動させるステッピングモータに負荷がかかることによって生ずる起電力を検出する逆起電圧検出回路にて行うことは、特開平9-240104号公報、特開平4-251772号公報等で周知である。(必要なら、前者の段落【0002】「【従来の技術】ドットプリンタ、例えばワイヤドットプリンタやサーマルプリンタでは、印字ヘッドと用紙の印字面との間の距離又は接触( 押圧 )状態( ここでは、ヘッドギャップと称する )が、印字品質に大きく影響を与える。一方、用紙は、材質、種類によって厚さが異なり、印字に使用する用紙の厚さに応じてヘッドギャップを調整する必要がある。そこで、従来のドットプリンタでは、印字前に用紙の厚さを自動的に測定して、自動的にヘッドギャップを調整するものが知られている。用紙の厚さを測定する方法も各種方法があるが、例えば、印字ヘッドをプラテンに対して離間・接近( 接触 )移動させる機構をモータにより駆動する場合に、モータ( ステッピングモータ )の励磁コイルに発生する逆起電圧を利用して用紙の厚さを測定するものがある。」、及び段落【0003】「これは、モータの駆動により印字ヘッドをプラテンの表面又は用紙の表面に当接するように移動させたときに、その移動中の逆起電圧を監視すると、印字ヘッドがプラテンの表面又は用紙の表面に当接した瞬間にモータが脱調するため、その逆起電圧の波形が、印字ヘッドがプラテンの表面又は用紙の表面に当接した瞬間に変化する。従って、この逆起電圧の波形の変化の検出タイミングに基づいて、プラテンの表面位置と用紙の表面位置を測定し、その差を算出すれば用紙の厚さとなる。この用紙の厚さから、最適なヘッドギャップを算出して、そのヘッドギャップとなるように印字ヘッドの高さを調節すれば、高品位の印字品質を得ることができる。」との記載を参照されたい。)
よって、引用発明における「印字ヘッドがプラテン又はプラテン上の印字媒体に圧接したことを検出する手段」として、「ステッピングモータに負荷がかかることによって生ずる起電力を検出して印字ヘッドがプラテン又はプラテン上の印字媒体に圧接したことを検出する逆起電圧検出回路」を用いることは、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。

相違点(iv)について
記載事項4には、3つの用紙厚に対応する実施例が記載されているが、記載事項4の末尾には「なお、前記偏心シャフトの回動範囲は3区分に限らず、さらに多くの区分に分けることも可能であり、それによって、あらゆる厚味の用紙を使用しても、印字ヘッドと用紙間に常に一定の所定ギャップを自動的に設定することができる。」とある。
この末尾の記載の示唆に応じて前記実施例を3より多い区分数に対応するものに設計変更する場合、区分を充分多く増やす極限では、設計変更した結果のものは、ステッピングモータの回転を制御できる最小単位である単位ステップ数に対応するものとなる。

一方、前記「相違点(ii)について」の最初で述べたように、「一般に、ステッピングモータを用いた位置調整では、ステッピングモータの回転を知るロータリエンコーダや位置調整される対象の位置を知る計測手段を使わなくても、ステッピングモータに駆動電源を1パルス分加えると1ステップ回転するのでステップ数をカウントするだけでステッピングモータの回転角度を知り、それに対応して対象の移動距離を知ることができることが特長である。
よって、引用発明で印字ヘッドの移動距離を知るのに、印字ヘッドの位置調整をするステッピングモータのステップ数をカウントすることで行い、そのためのカウンタを設けることは当業者ならば容易に想到し得る。」のであって、基準位置でステップ数0とし、その位置からステッピングモータに1ステップずつパルス電圧を加えて偏心シャフトの回転を介して印字ヘッドをプラテンに当接するまで移動させ、その間にカウントしたステップ数から基準位置とプラテンのステップ数から移動距離を知ることができる。
その際、偏心シャフトを使うことから、偏心シャフトの回転角度はステップ数に比例するものの、印字ヘッドの移動距離とステップ数とは比例関係からずれているので、基準位置から累計Nパルス加えて累計ステップ数Nとなったときの印字ヘッドの実際の位置の値Xの対応関係(関数X=f(N))のデータが必要となる。
この際、NとXを直接対応させるデータとしておいてステップ数Mのときの位置をf(M)として知るようにすることも、Nから次の1ステップ分先のN+1までで移動する量ΔNを対応させるデータとしておいて、ステップ数Mのときの位置をΔ0+Δ1+Δ2+Δ3+・・・+Δ(M-1)として知るようにすることもできることは自明である。両方式は単に数学的アルゴリズムの違いに過ぎない。
引用発明では、各区分に対応する移動距離をROM16に記憶しているから、前者の方式を採用していることになる。

よって、相違点(iv)に係る本願発明の構成は、引用例の記載(特に、区分をふやしあらゆる厚味の用紙に対応させる趣旨の記載)及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。

さらに、上記相違点(ii)の検討で引用した特開平9-52404号公報には、段落【0019】及び【表1】として、モータ角度を表す「モータ角度(パルス数)」と各モータ角度に対する印字ヘッドの位置を表すテーブル値(AcosX+B)を対応させて記憶したテーブルを備えることが記載されている。これは上記「前者」の場合に相当する。特開平10-244729号公報の図2も同様なテーブルである。
このように、対応値を直接記憶するか差分を累計する演算を経て所望の対応値を得るようにするかの数学的アルゴリズムの違いはあっても、3等の粗い区分でなく単位ステップに対応する印字ヘッド位置データをテーブルに保持することは周知である。
よって、相違点(iv)に係る本願発明の構成は、引用例の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。

相違点(v)について
相違点(v)のうち、上記「相違点(iii)について」で既に検討し「周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のこと」とした逆起電圧検出回路に係わる点を除くと、残る相違点は以下の2点に要約される。

相違点I
プラテンに向かって移動する印字ヘッドの始発位置が、本願発明では、「前記基準位置よりも前記プラテンから離れた位置」であるのに対して、引用発明では基準位置である点。

相違点II
(A)印字ギャップを調整するのに必要な印字ヘッドが基準位置からプラテンに接するまでの移動距離を知るために、本願発明では、ステップ数をステップ数カウンタによってカウントして得るのに対して、引用発明では、「前記初期位置から前記用紙センサが前記用紙Pに当接するまでの前記印字ヘッド6の移動距離」とあるのみで、どのようにして移動距離を知るかは不明である点。
及び、
(B)上記(A)での移動距離に対応した、所定の許容範囲内の印字ギャップを得るのに要するステップ数を、本願発明では、テーブルに格納されたステップ数のデータ(前記基準位置から前記印字ヘッドを前記プラテンに近接する方向に向かわせるように前記ステッピングモータを駆動した場合における前記ステッピングモータの単位ステップ数毎の前記印字ヘッドの移動量を示すデータ)を基準として、ステップ数算出手段にて算出する、と特定されるのに対して、引用発明は前記特定を有しない点。

相違点Iについて
印字ギャップ調整に必要な印字ヘッドの移動距離は基準位置から測るのだから、測る前に基準位置以外に印字ヘッドを位置させるかどうかは、該移動距離に基づいて印字ギャップを調整することとは無関係であり、単なる設計事項に過ぎない。

相違点IIについて
まず、(A)について検討する。
上記「相違点(ii)について」で述べたとおり、印字ヘッドの移動距離を知るのに、印字ヘッドの位置調整をするステッピングモータのステップ数をカウントすることで行い、そのためのカウンタを設けることは、引用例の記載及び技術常識、或いは周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。
そして、引用発明は、印字ヘッドが基準位置にあることを知る手段としてのリミットスイッチ12も、印字ヘッドがプラテンに接したことを知る手段としての用紙センサも(つまりカウント開始時期特定手段もカウント終了時期特定手段も)備えているのである。
よって、印字ヘッドが基準位置からプラテンに接するまでの移動距離を知る必要があれば、印字ヘッドの位置調整をするステッピングモータのステップ数のカウントを基準位置からプラテンに接するまでの期間行うことで実行することも、引用例の記載及び技術常識、或いは周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。

次に、(B)について検討する。
上記「相違点(iv)について」で述べたように、本願発明では、ステップ数のデータを累計しなければ偏心シャフト回転位置に対応するステップ数が求まらないような方式を採用したから累計演算のための算出手段が必要なのであって、偏心シャフト回転位置に対応するステップ数そのものを記憶する方式なら単にそれを読み出すだけであり、算出手段は不要である。
そして、どちらの方式を採用するかは数学的アルゴリズムの違いに過ぎない。引用発明でもマイクロプロセッサユニット(MPU)13が使われているように、プリンタで制御をCPU使用のデジタル制御で行うことはありふれた構成であって、その場合、累計等の演算を実行することはCPUにそのためのプログラムを実行させることにより容易に実現できるから、算出手段として格別の構成も必要でない。
よって、(B)の点に係る本願発明の構成も、引用例の記載及び技術常識、或いは周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。

したがって、相違点IIに係る本願発明の構成は、引用例の記載及び技術常識、或いは周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得た程度のことである。

結局、引用発明において、相違点(i)?(v)に係る本願発明の構成を備えることは、引用例の記載及び技術常識、或いは周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できることであって、その作用効果も格別のものでない。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例の記載及び技術常識、或いは周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-28 
結審通知日 2008-05-29 
審決日 2008-06-10 
出願番号 特願平11-64731
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 湯本 照基  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 江成 克己
名取 乾治
発明の名称 プリンタ  
代理人 柏木 慎史  

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