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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K |
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管理番号 | 1181845 |
審判番号 | 不服2006-21620 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-27 |
確定日 | 2008-07-24 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第181911号「検査孔付きガス栓」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月15日出願公開、特開平10-332001〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願の発明 本件出願(以下「本願」という。)は、平成9年6月4日を出願日とする出願であって、平成18年8月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がされ、さらに、平成20年1月28日付けの当審拒絶理由通知書が通知されたものである。本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年3月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「内部に、弁収納孔と、この弁収納孔の内周面に周方向に互いに離れてそれぞれ開口する流入孔、流出孔及び検査孔とが形成された栓本体と、内部に一側部外周面から他側部外周面まで貫通するガス孔が形成され、上記栓本体の弁収納孔に、上記流入孔と上記流出孔との間を遮断する閉位置と、上記流入孔と上記流出孔とを上記ガス孔を介して連通させる開位置との間を回動可能に挿入された弁体とを備え、開時には上記流入孔、上記ガス孔及び上記流出孔が軸線を互いに一致させて一列に並び、上記弁体が上記流入孔と上記流出孔との間を遮断した状態を維持しつつ上記閉位置から上記開位置に向かって若干回動した半閉位置に位置しているとき、及び上記弁体が上記流入孔と上記流出孔とを上記ガス孔を介して連通させた状態を維持しつつ上記開位置から上記閉位置に向かって若干回動した半開位置に位置しているときには、上記検査孔が上記流入孔と上記ガス孔の上記流入孔側に位置する一端部を介して連通するよう、上記弁収納孔の周方向における上記ガス孔の幅が同方向における上記流入孔と上記検査孔との間の距離より広く設定されている検査孔付きガス栓において、 上記ガス孔の上記一端部内周面の両側部と弁体の外周面との各交差部に切欠き部をそれぞれ形成し、上記検査孔を、閉時及び開時には上記弁体により上記流入孔及び上記流出孔に対して遮断され、半開時には上記ガス孔の上記一端部及び上記二つの切欠き部のうちの一方を介して上記流入孔と連通し、半閉時には上記ガス孔の上記一端部及び他方の切欠き部を介して上記流入孔と連通するように配置し、上記弁収納孔の周方向における上記ガス孔の幅を同方向における上記流入孔及び上記流出孔の各幅より広くしたことを特徴とする検査孔付きガス栓。」 2.引用例 (1)これに対して、当審の拒絶の理由に引用された実願昭62-133910号(実開昭64-38369号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、「ガスコック」と題して、図面と共に次の事項が記載されている。 イ)「2.実用新案登録請求の範囲 内部にガスの流入路および流出路が形成されるとともに、・・・(中略)・・・空気抜き孔を形成したことを特徴とするガスコック。」(明細書1頁4行?2頁3行) ロ)「この先の出願に係るガスコックは、・・・(中略)・・・ガス通路21の中心線を流入路11および流出路12の中心線と一致させた連通面積が最大の全開状態から、・・・(中略)・・・全閉状態まで切り換えられるようになっている。」(同書3頁2?18行) ハ)「第3図(A),(B),(C)に示すガスコックは、ガス通路21の一方の開口部の栓体2の回動方向における一端部に切欠き23を形成したものである。 このガスコックにおいては、栓体2を前述した実施例と同様にエアパージ可能な半開状態に位置させることにより、空気抜き孔15から空気抜きを行うことができるのは勿論のこと、その状態から栓体2をさらに閉方向へ回動させると、第3図(B)に示すように、空気抜き孔15と流出路12との間を遮断し、空気抜き孔15を流入路11に対してのみ連通させることができる。この状態にすれば、空気抜き孔15に圧力計を接続することにより、ガスコックより上流側にガス漏れが有るか否かを検出することができる。逆に、第3図(C)に示すように、空気抜き孔15を流入路11に対して遮断し、流出路12に対してのみ連通させれば、ガスコックより下流側のガスもれの有無を検出することができる。」(同書9頁14行?10頁11行)) ニ)第3図(A)には、内部に、栓挿入孔13と、この栓挿入孔13の内周面に周方向に互いに離れてそれぞれ開口する流入路11、流出路12及び空気抜き孔15とが形成されたコック本体1と、内部に一側部外周面から他側部外周面まで貫通するガス通路21が形成され、上記コック本体1の栓挿入孔13に、上記流入路11と上記流出路12との間を遮断する閉位置と、上記流入路11と上記流出路12とを上記ガス通路21を介して連通させる開位置との間を回動可能に挿入された栓体2とを備えた空気抜き孔付きガスコックにおいて、空気抜き孔15を、閉時及び開時には栓体2により流入路11及び流出路12に対して遮断するようにした構成が示されている。 ホ)第3図(B)には、栓体2が流入路11と流出路12との間を遮断した状態を維持しつつ閉位置から開位置に向かって若干回動した半閉位置に位置しているときには、空気抜き孔15が上記流入路11とガス通路21の上記流入路11側に位置する一端部を介して連通する構成、及び、 空気抜き孔15を、半閉時にはガス通路21の一端部及び切欠き23を介して流入路11と連通するようにした配置構成が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「内部に、栓挿入孔13と、この栓挿入孔13の内周面に周方向に互いに離れてそれぞれ開口する流入路11、流出路12及び圧力計を接続する空気抜き孔15とが形成されたコック本体1と、内部に一側部外周面から他側部外周面まで貫通するガス通路21が形成され、上記コック本体1の栓挿入孔13に、上記流入路11と上記流出路12との間を遮断する閉位置と、上記流入路11と上記流出路12とを上記ガス通路21を介して連通させる開位置との間を回動可能に挿入された栓体2とを備え、開位置ではガス通路21の中心線を流入路11および流出路12の中心線と一致させ、上記栓体2が上記流入路11と上記流出路12との間を遮断した状態を維持しつつ上記閉位置から上記開位置に向かって若干回動した半閉位置に位置しているときには、上記空気抜き孔15が上記流入路11と上記ガス通路21の上記流入路11側に位置する一端部を介して連通する空気抜き孔付きガスコックにおいて、 上記ガス通路21の一方の開口部の上記栓体2の回動方向における一端部に切欠き23を形成し、上記空気抜き孔15を、閉時及び開時には上記栓体2により上記流入路11及び上記流出路12に対して遮断され、半閉時には上記ガス通路21の上記一端部及び切欠き23を介して上記流入路11と連通するように配置した空気抜き孔付きガスコック。」 また、引用例には図面と共に次の事項(以下「引用例記載の事項」という。)が記載されている。 ヘ)「すなわち、空気抜き孔15の栓挿入孔13における開口部は、栓挿入孔13における流入路11および流出路12の各開口部から等しく離れて位置せしめられており、空気抜き孔15と流入路11との各開口部間の距離および空気抜き孔15と流出路12との各開口部間の距離は、いずれもW_(1)に設定されている。また、ガス通路21の両端開口部の幅(栓体2の回動方向における幅)はいずれもW_(2)に設定されている。そして、これらの幅W_(1)とW_(2)とは、W_(1)<W_(2)に設定されている。 上記構成のガスコックにおいて、エアパージを行う場合には、栓体2を第1図(A)に示す全開位置から全閉位置へ向かって回動させる。すると、幅W_(2)が幅W_(1)よりも広くなっているから、適宜の半開位置において、第1図(B)に示すように、ガス流路21の一方の開口部のうち、栓体2の回動方向における一端部が流入路11と対向するとともに、他端部が空気抜き孔15と対向する。また、ガス通路21の他方の開口部の一端部が流出路12と対向する。したがって、空気抜き孔15はガス通路21を介して流入路11および流出路12と連通し、この半開状態とすることにより、容易にエアパージを行うことができる。また、その状態において、突出部14に嵌め込まれたガス管を介して圧力計を空気抜き孔15に接続するとともに、ガスメータ側の元栓を閉じ、ガス圧が低下するか否かを検出することにより、漏洩検査を行うことができる。」(同書6頁16行?8頁3行) ト)第1図(B)には、栓体2が流入路11と流出路12とをガス通路21を介して連通させた状態を維持しつつ開位置から閉位置に向かって若干回動した半開位置に位置しているときには、空気抜き孔15が上記流入路11と上記ガス通路21の上記流入路11側に位置する一端部を介して連通することが示されている。 3.対比 本願発明と引用発明を対比すると、その機能・作用からみて、後者の「栓挿入孔13」が前者の「弁収納孔」に相当し、以下同様に、「流入路11」が「流入孔」に、「流出路12」が「流出孔」に、「圧力計を接続する空気抜き孔15」が「検査孔」に、「コック本体1」が「栓本体」に、「ガス通路21」が「ガス孔」に、「栓体2」が「弁体」に、「空気抜き孔付きガスコック」が「検査孔付きガス栓」に、「切欠き23」が「切欠き部」に、それぞれ相当している。 そして、後者の「開位置ではガス通路21の中心線を流入路11および流出路12の中心線と一致させ」る態様は、前者の「開時には流入孔、ガス孔及び流出孔が軸線を互いに一致させて一列に並」ぶ態様に相当する。 さらに、後者の「ガス通路21の一方の開口部の栓体2の回動方向における一端部に切欠き23を形成し」た態様と前者の「ガス孔の一端部内周面の両側部と弁体の外周面との各交差部に切欠き部をそれぞれ形成し」た態様とは、「ガス孔の一端部内周面の側部と弁体の外周面との交差部に切欠き部を形成し」たとの概念で共通する。 また、後者の「半閉時にはガス通路21の一端部及び切欠き23を介して流入路11と連通するように配置した」態様と前者の「半閉時にはガス孔の一端部及び他方の切欠き部を介して流入孔と連通するように配置し」た態様とは、「半閉時にはガス孔の一端部及び切欠き部を介して流入孔と連通するように配置し」たとの概念で共通する。 したがって、両者は、 「内部に、弁収納孔と、この弁収納孔の内周面に周方向に互いに離れてそれぞれ開口する流入孔、流出孔及び検査孔とが形成された栓本体と、内部に一側部外周面から他側部外周面まで貫通するガス孔が形成され、上記栓本体の弁収納孔に、上記流入孔と上記流出孔との間を遮断する閉位置と、上記流入孔と上記流出孔とを上記ガス孔を介して連通させる開位置との間を回動可能に挿入された弁体とを備え、開時には上記流入孔、上記ガス孔及び上記流出孔が軸線を互いに一致させて一列に並び、上記弁体が上記流入孔と上記流出孔との間を遮断した状態を維持しつつ上記閉位置から上記開位置に向かって若干回動した半閉位置に位置しているときには、上記検査孔が上記流入孔と上記ガス孔の上記流入孔側に位置する一端部を介して連通する検査孔付きガス栓において、 上記ガス孔の上記一端部内周面の側部と弁体の外周面との交差部に切欠き部を形成し、上記検査孔を、閉時及び開時には上記弁体により上記流入孔及び上記流出孔に対して遮断され、半閉時には上記ガス孔の上記一端部及び切欠き部を介して上記流入孔と連通するように配置し(た)検査孔付きガス栓。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では、「弁体が流入孔と流出孔とをガス孔を介して連通させた状態を維持しつつ開位置から閉位置に向かって若干回動した半開位置に位置しているとき」にも検査孔が上記流入孔と上記ガス孔の上記流入孔側に位置する一端部を介して連通するのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。 [相違点2] 本願発明では、「弁収納孔の周方向におけるガス孔の幅が同方向における流入孔と検査孔との間の距離より広く設定されている」のに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。 [相違点3] 本願発明では、ガス孔の一端部内周面の「両」側部と弁体の外周面との「各」交差部に切欠き部を「それぞれ」形成しているのに対し、引用発明では、「ガス通路21の一方の開口部の栓体2の回動方向における一端部に切欠き23を形成し」ているところから、「1つの」側部と「1つの」交差部に切欠き部が形成されているにすぎない点。 [相違点4] 本願発明では、検査孔を、「半開時にはガス孔の一端部及び二つの切欠き部のうちの一方を介して流入孔と連通し」ているのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。 [相違点5] 本願発明では、検査孔を、半閉時にはガス孔の一端部及び「他方の」切欠き部を介して流入孔と連通するように配置しているのに対し、引用発明では、「他方の」切欠きとの特定はされていない点。 [相違点6] 本願発明では、「弁収納孔の周方向におけるガス孔の幅を同方向における流入孔及び流出孔の各幅より広くした」のに対し、引用発明ではかかる特定はされていない点。 4.判断 上記相違点1ないし相違点6について以下検討する。 (1)相違点1について 引用例には、「このガスコックにおいては、栓体2を前述した実施例と同様にエアパージ可能な半開状態に位置させることにより、空気抜き孔15から空気抜きを行うことができるのは勿論のこと」(上記記載事項ハ)参照。)との記載、つまり、半開位置に位置するという示唆があり、かつ、上記記載事項ト)には、「弁体が流入孔と流出孔とをガス孔を介して連通させた状態を維持しつつ開位置から閉位置に向かって若干回動した半開位置に位置しているときには、検査孔が上記流入孔と上記ガス孔の上記流入孔側に位置する一端部を介して連通する」との構成が示されているから、この構成を引用発明に適用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 (2)相違点2について 引用例の記載事項ヘ)には、「弁収納孔の周方向におけるガス孔の幅(「ガス通路21の両端開口部の幅(栓体2の回動方向における幅)W_(2)」が相当。)が同方向における流入孔と検査孔との間の距離(「空気抜き孔15と流入路11との開口部間の距離W_(1)」が相当。)より広く設定されている」実施例が示されている。そして、引用発明も引用例の記載事項ヘ)に係る実施例も共に、エアパージおよび漏洩検査を行い、またガス漏れを最小限に抑えるという課題(引用例の明細書5頁8?13行、9頁10?13行を参照。)を有するものであるから、上記実施例の構成を引用発明に適用して相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 (3)相違点3ないし相違点5について 検査孔付きガス栓の技術分野において、ガス孔の端部内周面の両側部と弁体の外周面との各交差部に切欠き部をそれぞれ形成することは、例えば特開平8-54073号公報(【0022】、【0023】、図5、6を参照。)及び特開平8-54074号公報(【0020】?【0022】、図3、4を参照。)に開示されているように周知技術であり、かかる周知技術を引用発明に適用することにより、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易であり、その際に、半開時、半閉時のそれぞれにおいてガス孔の一端側で検査孔と流入孔とを連通するようにすることは引用例の上記記載事項ハ)から明らかであるから、検査孔を、半開時にはガス孔の一端部及び二つの切欠き部のうちの一方を介して流入孔と連通させると共に、半閉時にはガス孔の一端部及び他方の切欠き部を介して流入孔と連通するように配置することにより、上記相違点4及び5に係る本願発明の構成とすることは、設計的事項に過ぎない。 (4)相違点6について 検査孔付きガス栓の技術分野において、弁収納孔の周方向におけるガス孔の幅を同方向における流入孔及び流出孔の各幅より広くすることは、例えば特開平8-54073号公報(【0018】?【0021】、図1、図3、図4を参照。)及び特開平8-54074号公報(【0023】、【0024】、図5を参照。)に開示されているように周知技術であり、かかる周知技術を引用発明に適用することにより、上記相違点6に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。 なお、請求人は平成20年3月27日付けの意見書において、特開平8-54073号公報及び特開平8-54074号公報に記載のものにおいては、検査孔と流入孔とが、弁体の外周面からガス孔まで延びる連通孔を介して連通しており、ガス孔の一端部を介して連通する本願発明とは基本構成が全く異なっている旨主張しているが、当審においては上記両文献を、上記基本構成としてではなく、あくまでも、ガス孔の形状の観点から「4.(3)及び(4)」の各周知技術を認定したものである。 そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明、引用例記載の事項及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明、引用例記載の事項及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-26 |
結審通知日 | 2008-05-27 |
審決日 | 2008-06-10 |
出願番号 | 特願平9-181911 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F16K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐伯 憲一 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
米山 毅 仁木 浩 |
発明の名称 | 検査孔付きガス栓 |
代理人 | 原田 三十義 |
代理人 | 渡辺 昇 |