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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1181852
審判番号 不服2006-24208  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-26 
確定日 2008-07-24 
事件の表示 特願2004-160643「光変調器モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-338678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年5月31日の出願であって、原審において、平成18年4月7日付けで拒絶理由が通知され、同年6月7日に手続補正がなされ、同年6月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月25日に手続補正がなされ、同年9月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月24日に手続補正がなされたものである。

2.平成18年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年11月24日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明
平成18年11月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】
電気信号に基づいて光の変調を行う光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された第1の抵抗と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された第2の抵抗と、からなる光変調器モジュールであって、
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との少なくとも一は、複数の抵抗素子を含み、前記複数の抵抗素子に対するワイヤの接続によって、抵抗値を選択され、
前記光変調器と前記第2の抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記第2の抵抗との間で複数本のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項2】
電気信号を受けて光を変調する光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗と、からなる光変調器モジュールであって、
前記抵抗は、複数の抵抗素子で形成され、前記複数の抵抗素子に対するワイヤの接続によって、合成抵抗値を選択し、
前記光変調器と前記抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間で複数本のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の光変調器モジュールであって、
前記複数の抵抗素子は、直列に接続され、前記ワイヤでショートすることによって、前記合成抵抗値を選択しうる光変調器モジュール。
【請求項4】
電気信号を受けて光を変調する光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗と、からなる光変調器モジュールであって、
前記抵抗は、一端を共通端子とする並列接続の複数の抵抗素子で形成され、前記複数の抵抗素子の少なくとも一が、前記電気信号を終端し、
前記光変調器と前記抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間で複数本のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項5】
電気信号に基づいて光の変調を行う光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された第1の抵抗と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された第2の抵抗と、からなる光変調器モジュールであって、
前記第1の抵抗は、複数の抵抗素子を含み、前記複数の抵抗素子に対するワイヤの接続によって、合成抵抗値を選択し、
前記光変調器と前記第2の抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記第2の抵抗との間で複数本のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光変調器モジュールであって、
前記複数の抵抗素子は、直列に接続され、前記ワイヤでショートすることによって、前記合成抵抗値を選択しうる光変調器モジュール。
【請求項7】
請求項5に記載の光変調器モジュールであって、
前記複数の抵抗素子は、一端を共通端子とする並列接続の複数の抵抗素子で形成され、他端を前記ワイヤで選択することによって、前記合成抵抗値を選択しうる光変調器モジュール。
【請求項8】
電気信号を受けて光を変調する光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗と、からなる光変調器モジュールであって、
前記光変調器と前記抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間で複数本のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。」から、

「 【請求項1】
電気信号に基づいて光の変調を行う光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された第1の抵抗と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された第2の抵抗とが1つのチップキャリア上に形成されてなる光変調器モジュールであって、
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との少なくとも一は、複数の抵抗素子を含み、前記複数の抵抗素子に対するワイヤの接続によって、抵抗値を選択され、
前記光変調器と前記第2の抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記第2の抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極が2本以上のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項2】
電気信号を受けて光を変調する光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗とが1つのチップキャリア上に形成されてなる光変調器モジュールであって、
前記抵抗は、複数の抵抗素子で形成され、前記複数の抵抗素子に対するワイヤの接続によって、合成抵抗値を選択し、
前記光変調器と前記抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極が2本以上のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の光変調器モジュールであって、
前記複数の抵抗素子は、直列に接続され、前記ワイヤでショートすることによって、前記合成抵抗値を選択しうる光変調器モジュール。
【請求項4】
電気信号を受けて光を変調する光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗とが1つのチップキャリア上に形成されてなる光変調器モジュールであって、
前記抵抗は、一端を共通端子とする並列接続の複数の抵抗素子で形成され、前記複数の抵抗素子の少なくとも一が、前記電気信号を終端し、
前記光変調器と前記抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極が2本以上のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項5】
電気信号に基づいて光の変調を行う光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された第1の抵抗と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された第2の抵抗が1つのチップキャリア上に形成されてなる光変調器モジュールであって、
前記第1の抵抗は、複数の抵抗素子を含み、前記複数の抵抗素子に対するワイヤの接続によって、合成抵抗値を選択し、
前記光変調器と前記第2の抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記第2の抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極が2本以上のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光変調器モジュールであって、
前記複数の抵抗素子は、直列に接続され、前記ワイヤでショートすることによって、前記合成抵抗値を選択しうる光変調器モジュール。
【請求項7】
請求項5に記載の光変調器モジュールであって、
前記複数の抵抗素子は、一端を共通端子とする並列接続の複数の抵抗素子で形成され、他端を前記ワイヤで選択することによって、前記合成抵抗値を選択しうる光変調器モジュール。
【請求項8】
電気信号を受けて光を変調する光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗とが1つのチップキャリア上に形成されてなる光変調器モジュールであって、
前記光変調器と前記抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極が2本以上のワイヤ接続を可能に構成されたことを特徴とする光変調器モジュール。」へと補正された。

本件補正は、以下の内容からなるものである。
(ア)本件補正前の請求項1及び5に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気信号に基づいて光の変調を行う光変調器」、「一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された第1の抵抗」及び「一端が前記光変調器に接続され他端が接地された第2の抵抗」が「光変調器モジュール」にどのように形成されているかについて、「1つのチップキャリア上に形成されてなる」ことを限定する補正。
(イ)本件補正前の請求項2,4及び8に記載した発明を特定するために必要な事項である「電気信号を受けて光を変調する光変調器」、「一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路」及び「一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗」が「光変調器モジュール」にどのように形成されているかについて、「1つのチップキャリア上に形成されてなる」ことを限定する補正。
(ウ)本件補正前の請求項1,2,4,5及び8に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記ワイヤ中継用電極と前記第2の抵抗との間で複数本のワイヤ接続を可能に構成されたこと」を「前記ワイヤ中継用電極と前記第2の抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極が2本以上のワイヤ接続を可能に構成されたこと」に限定する補正。

したがって、本件補正前の請求項8についてした補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項8に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-90302号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 サブマント上に設置された,半導体レーザから出力されるレーザ光を高周波電気信号に基づき変調する半導体光変調器と、
信号源から入力される上記高周波電気信号を伝送するためのストリップラインと、
その一方の端子がアースされた,上記ストリップラインを終端させるための終端抵抗と、
上記半導体光変調器の信号入力端子と上記ストリップラインの終端との間を接続する第1のワイヤと、
上記終端抵抗の非アース側の端子と上記半導体光変調器の信号入力端子との間を接続する第2のワイヤとを備えたことを特徴とする光変調器モジュール。
・・・(中略)・・・
【請求項3】 請求項1に記載の光変調器モジュールにおいて、
上記終端抵抗は、その設置場所を変えることができる抵抗からなることを特徴とする光変調器モジュール。
【請求項4】 請求項1に記載の光変調器モジュールにおいて、
上記サブマウントに、上記第2のワイヤを中継するボンディングパッドを設置したことを特徴とする光変調器モジュール。」
(審決注:【請求項1】の「サブマント」は「サブマウント」の明らかな誤記であると認める。)

(イ)「【0027】構成3.本発明の実施の形態1における光変調器モジュール(請求項3)は、図9に示されるように、上記の構成1の光変調器モジュールにおいて、上記終端抵抗5が、その設置場所を変えることができる抵抗からなるものである。これにより、終端抵抗5の設置場所を変えて第2のワイヤの長さを変えることができ、該第2のワイヤ10のインダクタンスが最適値となるようその長さを調整して、リターンロスS11を最小とすることができる。
【0028】構成4.本発明の実施の形態1における光変調器モジュール(請求項4)は、図7に示されるように、上記の構成1の光変調器モジュールにおいて、上記サブマウントに、上記第2のワイヤを中継するボンディングパッドを設置したものである。これにより、第2のワイヤ10の、半導体光変調器1とボンディングパッド11との間を接続する部分10a,及びボンディングパッド11と終端抵抗5との間を接続する部分10bのそれぞれの長さが短くなり、該第2のワイヤ10の強度が向上する。」

(ウ)「【0039】実施例1.本発明の実施の形態1,2における一実施例について説明する。図1(a) は本実施例1による光変調器モジュールにおける半導体光変調器の実装法を模式的に示した上面図であり、図において、25は光変調器集積型レーザチップであり、該光変調器集積型レーザチップ25に半導体レーザ1,及び該半導体レーザ1に光結合された半導体光変調器2が形成されており、該半導体光変調器2は、さらにレンズ(図示せず)に光結合されている。光変調器集積型レーザチップ25はサブマウント9上に載置され、該サブマウント9上の端部には第1のボンディングパッド21,及びレーザ用ボンディングパッド22が設置され、サブマウント9は導体からなるキャリア20上に配設されている。
【0040】また、該キャリア20上には上記サブマウント9の両側に、該サブマウント9に隣接してストリップライン3と終端抵抗5とが配設されている。すなわち、サブマウント9の図面右側に、該サブマウント9に沿うように、所定の厚みを有する帯状のアルミナ誘電体23が配設され、該アルミナ誘電体23の上面の中央部に所定の幅を有するストリップ導体24が配設されており、これらのキャリア20、アルミナ誘電体23、及びストリップ導体24が平行平板線路の一種であるストリップライン3を構成している。該ストリップライン3は、例えば、ストリップ導体24の幅が250μm、アルミナ誘電体23の厚みが250μm、その特性インピーダンスZ_(0) が50Ωのものが用いられる。そして、ストリップライン3は、そのストリップ導体24の終端部を、第1のワイヤ4で半導体光変調器1の信号入力端子に接続され、そのストリップ導体24の始端を信号原8に接続されている。該第1のワイヤ4は、第1のボンディングパッド21で中継されている。これは、半導体光変調器1を実装する際に、サブマウント9をサブアッセンブリしておくためである。また、第1のワイヤとして、例えばφ25μmの金線が用いられる。
【0041】また、サブマウント9の図面左側にアルミナ基板26が配設され、該アルミナ基板26上に薄膜抵抗からなる終端抵抗5が形成されている。該終端抵抗5は、その一方の端子を、半導体光変調器1の信号入力端子に第2のワイヤ10で接続され、他方の端子を、接地されたスルーホール6に接続されている。終端抵抗5の抵抗値は、上記ストリップライン3を整合線路とするため、該ストリップライン3の上記特性インピーダンスZ_(0 )に等価な50Ωとされる。また、第2のワイヤは、上記第1のワイヤと同じものが用いられる。なお、7は、半導体レーザ2に電力を供給するための給電ワイヤ、22は該給電ワイヤ7を中継するためのレーザ用ボンディングパッドである。
・・・(中略)・・・
【0054】実施例3.本発明の実施の形態1,2における他の実施例について説明する。図7は本実施例3による光変調器モジュールにおける半導体光変調器の実装法を模式的に示した上面図であり、図において、図1と同一符号は同一又は相当する部分を示しており、11はサブマウント9上の,終端抵抗5と半導体光変調器1とを結ぶ中間の部分に設置された,第2のワイヤ10を中継するための第2のボンディングパッドである。
【0055】本実施例3においては、サブマウント9上に第2のワイヤ10を中継する第2のボンディングパッド11が設置されているから、該第2のワイヤ10の、半導体光変調器1と第2のボンディングパッド11との間を接続する部分10a,及び第2のボンディングパッド11と終端抵抗5との間を接続する部分10bのそれぞれの長さが短くなり、該第2のワイヤ10の強度が向上する。
・・・(中略)・・・
【0058】実施例5.本発明の実施の形態1,2における他の実施例について説明する。図9は本実施例5による光変調器モジュールにおける半導体光変調器の実装法を模式的に示した上面図であり、図において、図7と同一符号は同一又は相当する部分を示しており、図7と異なる点は、終端抵抗5が、その設置場所を変えることができる抵抗からなる点である。すなわち、終端抵抗5は、例えば、チップ抵抗からなり、アルミナ基板26上に固定されている。該アルミナ基板26は、キャリアに固定する前は自由に移動可能であり、光変調器モジュールを組立てる際にハンダ付け等でキャリア20の所定の位置に固定するようになっている。終端抵抗5は、その一方の端子を、第2のワイヤ10で第2のボンディングパッド11を経由して半導体光変調器1に接続し、その他方の端子を、第3のワイヤ26で接地する(図示せず)ようになっている。このように、終端抵抗5の他方の端子を,図7のようにスルーホールで接地するのではなく、第3のワイヤ26で接地するようにしたのは、アルミナ基板26を自由に移動可能とするためである。
【0059】これにより、例えば、光変調器モジュールを組立後、検査工程で光変調器モジュールのリターンロスS11が大きいため不良となった場合に、アルミナ基板26を移動させて、リターンロスS11が最小となるよう第2のワイヤ10の長さを調整し、該光変調器モジュールを良品化することができる。また、例えば、光変調器モジュールを組立てる際に、予め半導体光変調器1の容量Cを測定してランク付けし、終端抵抗5を、第2のワイヤ10の長さが各ランクの容量Cに応じた最適な長さとなるよう設置することにより、量産における光変調器モジュールのリターンロスS11を低減することができる。
【0060】以上のように本実施例5においては、終端抵抗5が、その設置場所を変えることができる抵抗からなるから、該第2のワイヤ10のインダクタンスが最適値となるようその長さを調整して、リターンロスS11を最小とすることができる。」
(審決注:【0040】の「信号原8」は「信号源8」の明らかな誤記であると認める。また、【0058】の「第3のワイヤ26で接地する(図示せず)」は図9の記載及び本願出願前の平成14年1月23日に「特許法第17条の2の規定による補正の掲載」として発行された引用例の「補4」と称される頁内の【0058】の記載からみて、「第3のワイヤ27で接地する」の明らかな誤記であると認める。)

(エ)図9から、半導体光変調器1、ストリップライン3、第1のワイヤ4、第1のボンディングパッド21、終端抵抗5が1つのキャリア20上に形成されていること、及び、第2のボンディングパッド11と半導体光変調器1との間を1本の第2のワイヤ10で接続していることが見て取れる。

(オ)上記(ウ)の【0058】の「終端抵抗5が、その設置場所を変えることができる抵抗からなる点である。すなわち、終端抵抗5は、例えば、チップ抵抗からなり、アルミナ基板26上に固定されている。該アルミナ基板26は、キャリアに固定する前は自由に移動可能であり、光変調器モジュールを組立てる際にハンダ付け等でキャリア20の所定の位置に固定するようになっている。」との記載からみて、同【0059】の「第2のワイヤ10の長さを調整し」または「第2のワイヤ10の長さが各ランクの容量Cに応じた最適な長さとなるよう」との記載において想定されている「第2のワイヤ10」が、第2のボンディングパッド11と終端抵抗5との間を接続する部分(対応する図面である図9における第2のワイヤ10のうち、第2のボンディングパッド11から左方向に伸びている部分)であることは明らかである。

上記各記載事項からみて、引用例には、
「サブマウント上に設置された、半導体レーザから出力されるレーザ光を高周波電気信号に基づき変調する半導体光変調器と、
信号源から入力される上記高周波電気信号を伝送するためのストリップラインと、
その一方の端子がアースされた、上記ストリップラインを終端させるための終端抵抗と、
上記半導体光変調器の信号入力端子と上記ストリップラインの終端との間を接続する第1のワイヤと、
上記終端抵抗の非アース側の端子と上記半導体光変調器の信号入力端子との間を接続する第2のワイヤとを備えた光変調器モジュールであって、
半導体光変調器、ストリップライン、第1のワイヤ、第1のボンディングパッド、終端抵抗が1つのキャリア上に形成されており、
ストリップラインは、そのストリップ導体の終端部が、第1のワイヤで半導体光変調器の信号入力端子に接続され、そのストリップ導体の始端が信号源に接続されており、該第1のワイヤは、第1のボンディングパッドで中継されており、
上記終端抵抗は、その設置場所を変えることができる抵抗からなっており、これにより、光変調器モジュールを組立てる際に、予め半導体光変調器の容量Cを測定してランク付けし、終端抵抗を、第2のワイヤのうち、第2のボンディングパッドと終端抵抗との間を接続する部分の長さが、各ランクの容量Cに応じた最適な長さとなるよう設置することにより、該第2のワイヤのインダクタンスが最適値となるようその長さを調整して、量産における光変調器モジュールのリターンロスを低減することができ、
サブマウント上に第2のワイヤを中継する第2のボンディングパッドが設置されており、
第2のボンディングパッドと半導体光変調器との間を1本の第2のワイヤで接続しており、
終端抵抗は、その一方の端子を、第2のワイヤで第2のボンディングパッドを経由して半導体光変調器に接続し、その他方の端子を、第3のワイヤで接地するようになっている、
光変調器モジュール。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを以下に対比する。

(ア)引用発明の「半導体光変調器」、「終端抵抗」、「1つのキャリア」及び「光変調器モジュール」は、それぞれ、本願補正発明の「光変調器」、「抵抗」、「1つのチップキャリア」及び「光変調器モジュール」に相当する。

(イ)引用発明の「半導体光変調器」は、「半導体レーザから出力されるレーザ光を高周波電気信号に基づき変調する」ものであるから、本願補正発明の「電気信号を受けて光を変調する光変調器」に相当する。

(ウ)引用発明においては、「信号源から入力される上記高周波電気信号を伝送するためのストリップラインと、・・・上記半導体光変調器の信号入力端子と上記ストリップラインの終端との間を接続する第1のワイヤ」を備えており、「ストリップラインは、そのストリップ導体の終端部が、第1のワイヤで半導体光変調器の信号入力端子に接続され、そのストリップ導体の始端が信号源に接続されており、該第1のワイヤは、第1のボンディングパッド21で中継されて」いるから、引用発明が本願補正発明の「一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路」を備えていることは明らかである。

(エ)引用発明の「終端抵抗」は、「その一方の端子を、第2のワイヤで第2のボンディングパッドを経由して半導体光変調器に接続し、その他方の端子を、第3のワイヤで接地するようになっている」から、本願補正発明の「一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗」に相当する。

(オ)引用発明においては、「半導体光変調器、ストリップライン、第1のワイヤ、第1のボンディングパッド、終端抵抗が1つのキャリア上に形成されて」いるから、結局、引用発明の光変調器モジュールは、本願補正発明の「電気信号を受けて光を変調する光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗とが1つのチップキャリア上に形成されてなる」との事項を備えていることになる。

(カ)引用発明の「第2のボンディングパッド」は、「第2のワイヤを中継する」ものであって、「終端抵抗は、その一方の端子を、第2のワイヤで第2のボンディングパッドを経由して半導体光変調器に接続し」ているから、引用発明の「第2のボンディングパッド」は本願補正発明の「ワイヤ中継用電極」に相当し、引用発明は本願補正発明の「前記光変調器と前記抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け」との事項を備えていることになる。

(キ)引用発明においては、「第2のボンディングパッドと半導体光変調器との間を1本の第2のワイヤで接続して」いるから、引用発明は本願補正発明の「このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し」との事項を備えていることになる。

(ク)引用発明の「終端抵抗は、その一方の端子を、第2のワイヤで第2のボンディングパッドを経由して半導体光変調器に接続し」ている点と、本願補正発明の「前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し」ている点とは、「前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間をワイヤで接続し」ている点で一致する。

(ケ)引用発明においては、「上記終端抵抗は、その設置場所を変えることができる抵抗からなっており、これにより、光変調器モジュールを組立てる際に、予め半導体光変調器の容量Cを測定してランク付けし、終端抵抗を、第2のワイヤのうち、第2のボンディングパッドと終端抵抗との間を接続する部分の長さが、各ランクの容量Cに応じた最適な長さとなるよう設置することにより、該第2のワイヤのインダクタンスが最適値となるようその長さを調整して、量産における光変調器モジュールのリターンロスを低減することができ」るところ、第2のワイヤのうち、第2のボンディングパッドと終端抵抗との間を接続する部分の長さを調整している技術的意義は、当該部分のインダクタンスを調整することにあることが明らかである。

他方、本願補正発明において、「前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極が2本以上のワイヤ接続を可能に構成されたこと」の技術的意義に関し、本願の明細書には以下の記載がある。
「【0030】
従って、本実施例によれば、電界吸収型光変調器1の容量が減少した場合でも、ワイヤボンディングにより終端抵抗に接続するインダクタンスを変え、帯域内偏差を抑圧できる。すなわち、幅広い光変調器の容量に対応可能なチップキャリヤ部とすることができ、安定した特性の光変調器モジュールを提供することができる。」

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間で接続されるワイヤのインダクタンスを調整可能に構成された点で一致するということができる。


してみれば、本願補正発明と引用発明とは、
「電気信号を受けて光を変調する光変調器と、一端が前記電気信号の入力に接続され他端が前記光変調器に接続された高周波線路と、一端が前記光変調器に接続され他端が接地された抵抗とが1つのチップキャリア上に形成されてなる光変調器モジュールであって、
前記光変調器と前記抵抗との間にワイヤ中継用電極を設け、このワイヤ中継用電極と前記光変調器との間を1本のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間をワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間で接続されるワイヤのインダクタンスを調整可能に構成された光変調器モジュール。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間で接続されるワイヤのインダクタンスを調整可能とする構成が、本願補正発明では、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間を2本以上のワイヤで接続し、前記ワイヤ中継用電極が2本以上のワイヤ接続を可能とする構成であるのに対し、引用発明では、第2のワイヤのうち、第2のボンディングパッドと終端抵抗との間を接続する部分の長さが、各ランクの容量Cに応じた最適な長さとなるよう設置する構成である点。

(4)判断
上記[相違点]について検討する。
ワイヤのインダクタンスを調整するために、電極間に接続されるワイヤの本数を変えること、その際に実際に2本以上のワイヤを当該電極間に接続すること、及び、該電極が2本以上のワイヤ接続を可能に構成されていることは、いずれも本願出願前に周知の技術である(たとえば、特開平6-6150号公報の【0021】、【0028】?【0030】、図2の記載、特開平6-164309号公報の【0034】?【0036】、【0043】、【0052】、図1の記載を参照。)。

してみれば、引用発明において、前記ワイヤ中継用電極と前記抵抗との間で接続されるワイヤのインダクタンスを調整可能に構成するために、「第2のワイヤのうち、第2のボンディングパッドと終端抵抗との間を接続する部分の長さが、各ランクの容量Cに応じた最適な長さとなるよう設置する」構成に代えて上記周知技術を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるから、結局、上記[相違点]は当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
上記のとおり本件補正は却下されたので、本願の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年8月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される、上記2.(1)で本件補正前の請求項8として記載したとおりのものである。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明において、その発明特定事項についての上記2.(1)の(イ)及び(ウ)の限定を除いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が上記2.(4)のとおり、引用例に記載した発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載した発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-21 
結審通知日 2008-05-27 
審決日 2008-06-09 
出願番号 特願2004-160643(P2004-160643)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 吉野 公夫
山村 浩
発明の名称 光変調器モジュール  
代理人 ポレール特許業務法人  

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