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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1182032
審判番号 不服2005-22226  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-17 
確定日 2008-07-31 
事件の表示 特願2003- 98319「ブックカバー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月28日出願公開、特開2004-299364〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年4月1日に出願されたものであって、平成17年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月17日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月14日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年12月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は特許請求の範囲についての補正を含んでおり、本件補正によって特許請求の範囲は以下の様に補正された。
〈補正前〉
「【請求項1】
書籍を保護するブックカバーであって、
前記書籍の表紙、背表紙及び裏表紙を覆い、長辺及び短辺によって矩形をなすブックカバー本体と、
前記ブックカバー本体の前記短辺に延設され、前記表紙又は前記裏表紙の何れかの内側に折り返される折り返し部と、
前記ブックカバー本体を挟んで前記折り返し部と対向して設けられ、前記表紙又は前記裏表紙の何れかが挿入される挿入部と、
前記挿入部の一部を切り欠き、前記挿入部と前記ブックカバー本体との境界において、前記ブックカバー本体より延設されて前記書籍の中身に折り込まれるしおりと、
前記ブックカバー本体及び前記挿入部の向かい合った前記長辺の一部からそれぞれ延設され、内側に折り返されることにより書籍を保持する1対の羽根部とを備え、
前記ブックカバーを展開した状態で、前記しおりは、その周囲を前記ブックカバー本体あるいは前記挿入部に取り囲まれていることを特徴とするブックカバー。
【請求項2】
前記しおりの先端部の形状は、前記ブックカバー本体に印刷された広告の商品をかたどった形であることを特徴とする請求項1に記載のブックカバー。 」
〈補正後〉
「【請求項1】
書籍を保護するブックカバーであって、
前記書籍の表紙、背表紙及び裏表紙を覆い、長辺及び短辺によって矩形をなすブックカバー本体と、
前記ブックカバー本体の前記短辺に延設され、前記表紙又は前記裏表紙の何れかの内側に折り返される折り返し部と、
前記ブックカバー本体を挟んで前記折り返し部と対向して設けられ、前記表紙又は前記裏表紙の何れかが挿入される挿入部と、
前記挿入部の一部を切り欠き、前記挿入部と前記ブックカバー本体との境界において、前記ブックカバー本体より延設されて前記書籍の中身に折り込まれるしおりと、
前記ブックカバー本体及び前記挿入部の向かい合った前記長辺の一部からそれぞれ延設され、内側に折り返されることにより書籍を保持する1対の羽根部とを備え、
前記ブックカバーを展開した状態で、前記しおりは、その全周囲を前記ブックカバー本体及び前記挿入部に取り囲まれていることを特徴とするブックカバー。」
(下線は補正箇所を示すために当審で付した。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「しおり」の「ブックカバーを展開した状態」に関して、「その全周囲を前記ブックカバー本体及び前記挿入部に取り囲まれている」と限定し、すなわち、しおりの取り囲まれる周囲について全周囲であること、並びに取り囲むものについてブックカバー本体及び挿入部であることを限定し、補正前の請求項2を削除するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、及び同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
(a)原査定の拒絶の理由に引用された実願平05-027429号(実開平06-081757号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「ブックカバー(1)の折り込み部分(2)に切れ込みを入れてしおり(3)とする。」(【請求項1】)
イ.「なお、図1はブックカバー(1)の横の折り込み部分(2)にしおり部分(3),(3)´を設けた実施例である。」(【0006】)
ウ.【図1】から、ブックカバー(1)が、左右の折り込み部分(2)によって挟まれる本体部分を備え、該本体部分は、長辺及び短辺によって矩形をなすことが看取できる。そして、折り込み部分(2)は該本体部分の短辺に延設されるものであり、左右の折り込み部分(2)が該本体部分を挟んで対向して設けられていることが看取できる。
エ.【図1】から、しおり(3)が、右側の折り込み部分(2)の一部を切り欠き、折り込み部分(2)と該本体部分との境界において、該本体部分より延設されてなることが看取できる。

上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「長辺及び短辺によって矩形をなす本体部分と、本体部分の短辺に延設される左側の折り込み部分(2)と、本体部分を挟んで左側折り込み部分(2)と対向して設けられる右側の折り込み部分(2)と、右側の折り込み部分(2)の一部を切り欠き、右側の折り込み部分(2)本体部分との境界において、本体部分より延設されてなるしおり(3)とを備えるブックカバー(1)」

(3)対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、
刊行物1記載の発明の「ブックカバー(1)」、「長辺及び短辺によって矩形をなす本体部分」、「本体部分の短辺に延設される左側の折り込み部分(2)」は、それぞれ本願補正発明の「書籍を保護するブックカバー」、「書籍の表紙、背表紙及び裏表紙を覆い、長辺及び短辺によって矩形をなすブックカバー本体」、「ブックカバー本体の短辺に延設され、表紙又は裏表紙の何れかの内側に折り返される折り返し部」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「右側の折り込み部分」は、使用時に内側に折り返され、該部分と本体部分との間に、書籍の表紙或いは裏表紙が挿入されることは明らかだから、刊行物1記載の発明の「本体部分を挟んで左側折り込み部分(2)と対向して設けられる右側の折り込み部分(2)」は、本願補正発明の「ブックカバー本体を挟んで前記折り返し部と対向して設けられ、前記表紙又は前記裏表紙の何れかが挿入される挿入部」に相当する。
そして、刊行物1記載の発明の「しおり(3)」は、使用時に書籍の中身に折り込まれるものであることは明らかだから、刊行物1記載の発明の「右側の折り込み部分(2)の一部を切り欠き、右側の折り込み部分(2)本体部分との境界において、本体部分より延設されてなるしおり(3)」は、本願補正発明の「前記挿入部の一部を切り欠き、前記挿入部と前記ブックカバー本体との境界において、前記ブックカバー本体より延設されて前記書籍の中身に折り込まれるしおり」に相当する。
よって、本願補正発明と刊行物1記載の発明とは、
「書籍を保護するブックカバーであって、
前記書籍の表紙、背表紙及び裏表紙を覆い、長辺及び短辺によって矩形をなすブックカバー本体と、
前記ブックカバー本体の前記短辺に延設され、前記表紙または前記裏表紙の何れかの内側に折り返される折り返し部と、
前記ブックカバー本体を挟んで前記折り返し部と対向して設けられ、前記表紙又は前記裏表紙の何れかが挿入される挿入部と、
前記挿入部の一部を切り欠き、前記挿入部と前記ブックカバー本体との境界において、前記ブックカバー本体より延設されて前記書籍の中身に折り込まれるしおりとを備えるブックカバー」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明のブックカバーが、「前記ブックカバー本体及び前記挿入部の向かい合った前記長辺の一部からそれぞれ延設され、内側に折り返されることにより書籍を保持する一対の羽根部」を備えるものと特定されているのに対して、刊行物1記載の発明においてはそのような特定がない点。

[相違点2]
「挿入部の一部を切り欠き、前記挿入部と前記ブックカバー本体との境界において、前記ブックカバー本体より延設されて前記書籍の中身に折り込まれるしおり」に関し、本願補正発明においては「前記ブックカバーを展開した状態で、前記しおりは、その全周囲を前記ブックカバー本体及び前記挿入部に取り囲まれている」と特定されているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのような特定がない点。

(4)判断
上記相違点1について検討する。
先ず「前記ブックカバー本体及び前記挿入部の向かい合った前記長辺」との記載は、前掲されるのはブックカバー本体の長辺のみであって、挿入部の長辺の記載はなく、よって該記載のみでは明瞭ではないため、本願明細書中【0035】の「ブックカバー本体20及び挿入部22の向かい合った長辺の一部からそれぞれ延設され」との記載、及び図4を参酌すると、該記載は、「ブックカバー本体」及び「挿入部」からなる、展開された状態にて呈する矩形状部分の長辺を指すものと解釈される。
そして、ブックカバーにおいて、使用の際に書籍から外れにくいよう構成することは自明の課題であり、かつ、該課題解決のため、書籍の表紙、背表紙及び裏表紙を覆う矩形状のブックカバー本体部分と、表紙等が挿入される挿入部分とからなる、ブックカバーが展開された状態にて呈する矩形状部分の向かい合った長辺に、該長辺の一部からそれぞれ延設される一対の羽根部を設け、使用時に該羽根部を内側に折り返して書籍が保持されるように構成することは、例えば、実願昭58-64273号(実開昭59-169973号)のマイクロフィルム、実願昭56-32882号(実開昭57-147064号)のマイクロフィルム、実願昭57-16993号(実開昭58-120066号)のマイクロフィルム等に示される様に、種々のブックカバーにおいて行われており、本願出願前に既に周知技術である。よって上記相違点1は、単なる周知技術の付加程度である。

上記相違点2について検討する。
ブックカバーにおいて、書籍の表紙等が挿入される挿入部分の一部を切り欠いてしおりとして利用する際、ブックカバーを展開した状態で、しおりの全周囲が、書籍の表紙、背表紙及び裏表紙を覆う矩形状のブックカバー本体部分と、該挿入部分とによって取り囲まれてなるものは、例えば、実願昭46-38371号(実開昭47-36518号)のマイクロフィルム、実願昭56-162218号(実開昭58-66967号)のマイクロフィルム、実願昭59-171827号(実開昭61-85471号)のマイクロフィルム、実願昭49-136771号(実開昭51-63420号)のマイクロフィルム等に示される様に、種々のブックカバーにおいて周知であり、該周知のものを採用して上記相違点2をなすことに、何ら困難性は認められない。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年12月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年5月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「書籍を保護するブックカバーであって、
前記書籍の表紙、背表紙及び裏表紙を覆い、長辺及び短辺によって矩形をなすブックカバー本体と、
前記ブックカバー本体の前記短辺に延設され、前記表紙又は前記裏表紙の何れかの内側に折り返される折り返し部と、
前記ブックカバー本体を挟んで前記折り返し部と対向して設けられ、前記表紙又は前記裏表紙の何れかが挿入される挿入部と、
前記挿入部の一部を切り欠き、前記挿入部と前記ブックカバー本体との境界において、前記ブックカバー本体より延設されて前記書籍の中身に折り込まれるしおりと、
前記ブックカバー本体及び前記挿入部の向かい合った前記長辺の一部からそれぞれ延設され、内側に折り返されることにより書籍を保持する1対の羽根部とを備え、
前記ブックカバーを展開した状態で、前記しおりは、その周囲を前記ブックカバー本体あるいは前記挿入部に取り囲まれていることを特徴とするブックカバー。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明が、「しおり」の「ブックカバーを展開した状態」に関して、「その全周囲を前記ブックカバー本体及び前記挿入部に取り囲まれている」と限定していたのを、「その周囲を前記ブックカバー本体あるいは前記挿入部に取り囲まれている」とし、しおりの取り囲まれる周囲及び取り囲むものについての限定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-28 
結審通知日 2008-06-03 
審決日 2008-06-16 
出願番号 特願2003-98319(P2003-98319)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
P 1 8・ 575- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤木 啓二  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 番場 得造
佐藤 宙子
発明の名称 ブックカバー  
代理人 三好 秀和  

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