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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1182042
審判番号 不服2006-4478  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-09 
確定日 2008-07-31 
事件の表示 平成11年特許願第 13308号「シール構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月 2日出願公開、特開2000-213409〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成11年1月21日に出願されたものであって、平成17年8月17日付けで拒絶理由が通知され、同年10月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月15日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成18年1月13日に意見書が提出されたが、同年2月2日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、同年3月9日に同拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年10月19日に提出された手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、次のとおりのものである。

「【請求項2】 シリンダブロックとシリンダヘッドとを相互間にシリンダヘッドガスケットを介装してヘッドボルトにより締結したシール構造において、シリンダヘッド側の気筒間で冷却水路を挟んで対峙する一対のヘッドボルトボスを、下向きに相互間隔が漸減するようにテーパ形状を付してシール面に近づくに従い肉厚が厚くなるように形成したことを特徴とするシール構造。」

2.当審の判断
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用例2として引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である実願昭56-5612号(実開昭57-120731号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は引用箇所等を特に明示するために当審で付した。)

ア.「2.実用新案登録請求の範囲
(1) シリンダヘツド燃焼面側の水ジヤケツト内で、隣設するシリンダヘツドボルト用のボス間を互に連結するブラケツト状リブが延設され、該ブラケツト状リブが延設された相当位置の前記ボスの内径を大きくして肉厚を薄くした内燃機関のシリンダヘツド」(明細書第1頁第4?10行)

イ.「本考案は、内燃機関におけるシリンダヘツドに関するものである。
一般に、シリンダヘツドの材料は鋳鉄製で、燃料弁、吸排気ポートおよび冷却水ジヤケツトなどが設けられ、複雑な構造になつており、シリンダヘツドをガスケツトパツキンを介してシリダブロツクに固定するには、多数のシリンダヘツドボルトが必要で、且つ、前記各部材と干渉しない位置に設けなければならない。
一方、現今内燃機関は小型高速化の傾向にあり、ますます筒内圧力が上昇されているので、シリンダヘツドボルトの締付力も増大しているが、考案者の測定の結果、この多数のシリンダヘツドボルト中間で面圧が非常に低くなつており、ガス抜けの原因となつている。また、ボルト締付力を増すと、シリンダヘツドとシリンダブロツク間の面圧分布が不均一のまま荷重が増すので、シリンダライナの変形が大きくなり、潤滑油消費量やピストンリング摩耗を早めるトラブルの原因となる。」(明細書第1頁第17行?第2頁第15行)

ウ.「第2図は第1図のA?A断面図を示し、8はシリンダヘツドボルト、9は該ボルトのナツトを示す。かかる構造であるので、シリンダヘツドボルト8を締付けると、第2図矢印のように、締付力はボルト穴4ボス10を流れるようになつているので、面圧の均一化に資していないことがわかる。一方、燃焼面6の肉厚は冷却のため薄くし、曲げ剛性が低いため、前記のように、ボルト締付力の大半が該ボルト周辺の締付に費されている。いずれにしても、シリンダヘツドボルト8周辺のガスケツトパツキン面圧は高いが、該ボルトから離れると極端に面圧が低下し、不均一となる構造になつている。」(明細書第3頁第6?18行)

エ.「そこで本考案は従来技術を改善し、併せてガスケツトパツキンの製作を容易にした簡素なガスケツトパツキンを使用しこれによりトラブルの発生を防ごうとするものである。
これを第3図に示す実施例にしたがつて説明すれば、第3図は第1図のA?A断面の所に相当し、第1図および第2図の従来技術と同一ないし均等部分は同一符号で示す。
さて、第3図で、本実施例は、ボルト穴4のボス10間で、ガスケツトパツキンのボアグロメツト(図示せず)の上方相当位置(第1図の12はボア相当位置で、これより外側に該当する)で水ジヤケツト7内にブラケツト状リブ11を延設している。このブラケツト状リブ11は前記ボス10の高さ方向中間部で下方約45°の角度で隣接のボス10のブラケツト状リブ11と向い合い連結している。
また、ボルト穴4のボス10で前記ブラケツト状リブ11の延出した燃焼面近く(リブの上端より下つた所)の肉厚を薄くし、第3図の矢印のように、ボルト締付力の流れの主流をこのブラケツト状リブ11にのせるようにしている。
これらの結果、本考案のシリンダヘツドとシリンダブロツク間の面圧の分布は、第4図の実線で示すようにボルト穴4のボス10部周辺の面圧を下げ、均一化を図つている。なお、第4図の一点鎖線で示すものは、前記ブラケツト状リブ11のみを構成した面圧分布図で、これでは従来技術よりは改善されているが、充分ではない。」(明細書第4頁第5行?第5頁第13行)

オ.上記イ乃至エの記載(特に下線箇所)から、引用例には、「シリンダブロツクとシリンダヘツドとを相互間にガスケツトパツキンを介装してシリンダヘツドボルト8により締結したシール構造」に関するものが記載されていることがわかる。

上記ア乃至オ及び第1?4図の記載によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「シリンダブロツクとシリンダヘツドとを相互間にガスケツトパツキンを介装してシリンダヘツドボルト8により締結したシール構造において、シリンダヘツド燃焼面側の水ジヤツケツト7内で、隣接するボス10間を互いに連結するブラケツト状リブ11が延設され、ブラケツト状リブ11は下方約45°の角度で隣接のボス10のブラケツト状リブ11と向い合い連結し、ブラケツト状リブ11が延設された相当位置のボス10の内径を大きくして肉厚を薄くしているように形成したシール構造。」(以下、「引用例記載の発明」という。)

(2)対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、機能からみて、引用例記載の発明の「シリンダブロツク」、「シリンダヘツド」、「ガスケツトパツキン」、「シリンダヘツドボルト8」、「水ジャケット7」及び「ボス10」が、それぞれ本願発明の「シリンダブロック」、「シリンダヘッド」、「シリンダガスケット」、「ヘッドボルト」、「冷却水路」及び「ヘッドボルトボス」に相当する。
また、引用例記載の発明の「シリンダヘツド燃焼面側の水ジヤツケツト7内で、隣接するボス10間を互いに連結するブラケツト状リブ11が延設され、ブラケツト状リブ11は下方約45°の角度で隣接のボス10のブラケツト状リブ11と向い合い連結しているように形成した」点は、その構造及び機能からみて、「シリンダヘッド側で冷却水路を挟んで対峙する一対のヘッドボルトボスを、下向きに相互間隔が漸減するようにテーパ形状をように形成した」点という限りにおいて、本願発明の「シリンダヘッド側で冷却水路を挟んで対峙する一対のヘッドボルトボスを、下向きに相互間隔が漸減するようにテーパ形状を付してシール面に近づくに従い肉厚が厚くなるように形成した」点に相当する。

してみると、両者は、

「シリンダブロックとシリンダヘッドとを相互間にシリンダヘッドガスケットを介装してヘッドボルトにより締結したシール構造において、シリンダヘッド側で冷却水路を挟んで対峙する一対のヘッドボルトボスを、下向きに相互間隔が漸減するようにテーパ形状を付して形成したシール構造。」の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点
冷却水路を挟んで対峙する一対のヘッドボルトボスに関して、本願発明では、「気筒間」であるのに対して、引用例記載の発明では、気筒間に適用されることが明らかではない点(以下、「相違点1」という。)。
また、冷却水路を挟んで対峙する一対のヘッドボルトボスに関して、本願発明では、「シール面に近づくに従い肉厚が厚くなるように形成した」のに対して、引用例記載の発明では、「ブラケツト状リブが延設された相当位置のボスの内径を大きくして肉厚を薄くしているように形成した」点(以下、「相違点2」という。)。

(3) 判断
上記相違点について検討する。
1)相違点1について
複数の気筒を並べて配列する多気筒機関及び気筒間において冷却水路を設けた機乙間の冷却水路を挟んで対峙するように対としてヘッドボルトボスを配置することは内燃機関の技術分野において、例えば、原査定の拒絶の理由において引用例3として引用された実願昭57-201078号(実開昭59-99151号)のマイクロフィルム(以下、「周知例1」という。特に第3図及び第4図を参照されたい。)、又は、実願昭55-63039号(実開昭56-163731号)のマイクロフィルム(以下、「周知例2」という。特に第4図及び関連する記載を参照されたい。)に記載されるように周知の技術であり、当業者であれば、引用例記載の発明にこの周知の技術を適用して、気筒間の冷却水路を挟んで対峙する一対のヘッドボルトボスに対して、下向きに相互間隔が漸減するようにテーパ形状を付して形成することは、容易に想到し得ることである。

2)相違点2について
引用例には、「本考案のシリンダヘツドとシリンダブロツク間の面圧の分布は、第4図の実線で示すようにボルト穴4のボス10部周辺の面圧を下げ、均一化を図つている。なお、第4図の一点鎖線で示すものは、前記ブラケツト状リブ11のみを構成した面圧分布図で、これでは従来技術よりは改善されているが、十分ではない。」(上記2.(エ)を参照されたい。)と記載されているように、引用例においても、「下向きに相互間隔が漸減するようにテーパ形状」のみを採用すること(引用例では、「ブラケツト状リブ11のみを構成」した、すなわち、「ヘッドボルトボスの内径を大きくして肉厚を薄くしている」態様を採用しないこと)についても記載され、一定の効果があることが示唆されている。また、上記周知例1及び周知例2においても、「ヘッドボルトボスの内径を大きくして肉厚を薄くしている」態様を採用せずに、リブのみを設ける点が記載されている。これらに鑑みれば、上記相違点2については、引用例記載の発明の具体化に際して、当業者が適宜なし得る設計事項というべきものであって、引用例記載の発明に接した当業者であれば、相違点2に係る本願発明の構成である「シール面に近づくに従い肉厚が厚くなるように形成した」点についても容易に想到し得るものである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用例記載の発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-28 
結審通知日 2008-06-03 
審決日 2008-06-16 
出願番号 特願平11-13308
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 雄二  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 早野 公惠
森藤 淳志
発明の名称 シール構造  
代理人 山田 恒光  
代理人 大塚 誠一  

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