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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1182133
審判番号 不服2005-22430  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-21 
確定日 2008-07-30 
事件の表示 特願2003-405851「異方性導電シートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-166537〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成15年12月4日に出願されたもので、平成17年5月18日付け拒絶理由通知書が送付され、願書に添付した明細書又は図面についての同年6月28日付け手続補正書が提出されたものの、同年9月7日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたもので、平成17年11月21日付け審判請求書が提出されるとともに、上記明細書又は図面についての同日付け手続補正書が提出され、その後、平成19年10月1日付け審尋を送付し、期限を指定して回答を求めたが、回答書の提出はなかったものである。
なお、上記審尋は、要すれば、平成17年11月21日付け手続補正書による手続補正は、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものであること、そして、上記手続補正前の明細書における請求項1?6に係る発明は、原査定の拒絶理由のとおりに、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを報告する、特許法第162条による審査(前置審査)おける前置報告書の内容について、意見を求めるものである。

2.原査定
原査定の拒絶理由の1つは、以下のとおりのものと認める。

「この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された特開2003-121468号公報又は特開2001-291430号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

「特開2003-121468号公報」を、以下、「引用刊行物」という。

3.当審の判断

3-1.平成17年11月21日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正は、以下に詳述するように、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3-1-1.本件補正の内容
本件補正は、以下の補正事項aを有するものと認める。

補正事項a;特許請求の範囲の記載につき、以下の(CL)を(cl)と補正する。

(CL);
「【請求項1】
単結晶シリコンウェハーから異方性エッチングによって、該ウェハーの断面を板ばねの板面とする曲がり板ばね形状の部材を形成し、その表面に導電性層を設けたことを特徴とするシリコン製ばね電極。
【請求項2】
請求項1記載のシリコン製ばね電極において、
前記曲がり板ばね形状は、リング状に連続した形状であることを特徴とするシリコン製ばね電極。
【請求項3】
請求項1または2記載のシリコン製ばね電極において、
前記導電性層は、金めっき層であることを特徴とするシリコン製ばね電極。
【請求項4】
軟プラスチックシートの貫通穴に請求項1ないし3のいずれかに記載のシリコン製ばね電極を固定したことを特徴とする異方性導電シート。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のシリコン製ばね電極を金型内に配置し、該金型に軟プラスチック材料を流し込むインサート成型によって製造したことを特徴とする異方性導電シート。
【請求項6】
請求項4または5記載の異方性導電シートにおいて、
前記軟プラスチックはシリコーン樹脂であることを特徴とする異方性導電シート。」

(cl);
「【請求項1】
単結晶シリコンウェハーからディープ反応性イオンエッチングによる貫通エッチングによって、該ウェハーの断面を板ばねの板面とする曲がり板ばね形状の部材を形成するステップAと、
前記ステップAで形成した曲がり板ばね形状の部材の表面に導電性層を設けてシリコン製ばね電極を形成するステップBと、
前記ステップBで形成した複数のシリコン製ばね電極を、軟プラスチックシートの複数の貫通穴にそれぞれ挿入し、該シリコン製ばね電極が該軟プラスチックシートにより締め付けられ固定されるようにするステップCと、
を備えたことを特徴とする異方性導電シートの製造方法。」

3-1-2.本件補正の適否

1)補正事項aは、「第36条第5項に規定する請求項の削除」(以下、単に、「請求項の削除」という。)、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」(以下、「限定的減縮」という。)、「誤記の訂正」又は「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(以下、単に、「明りようでない記載の釈明」という。)のいずれかの事項を目的にしている、とする根拠は見当たらない。
これに対し、請求人は、審判請求書において、いずれの事項を目的にしているかについて実質的に明らかにしていないが、以下に、補足する。

2)補正事項aの補正前の請求項に係る発明は、シリコン製ばね電極又は異方性導電シートについての発明であるのに対し、補正後の発明は、異方性導電シートの製造方法についての発明であって、補正事項aは、請求項に係る発明の対象を変更するものであって、このように変更する補正は、請求項の削除、限定的減縮、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明のいずれかの事項を目的にしているということはできない。

3-1-3.まとめ
補正事項aは、請求項の削除、限定的減縮、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明のいずれかの事項を目的にしている、ということはできず、補正事項aを有する本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

3-2.原査定の拒絶理由について

3-2-1.本件の発明
本件補正は、先に「3-1」で述べたように却下すべきものであり、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件補正前の、願書に添付した明細書の請求項1に記載の事項により特定されるものであって、同項の記載は、以下のとおりのものと認める。

「単結晶シリコンウェハーから異方性エッチングによって、該ウェハーの断面を板ばねの板面とする曲がり板ばね形状の部材を形成し、その表面に導電性層を設けたことを特徴とするシリコン製ばね電極。」

3-2-2.引用刊行物の記載

1)引用刊行物には、以下の記載が認められる。

ア;「【請求項1】 複数の電極(8)が形成された試験対象のICパッケージ(4)と、このICパッケージの動作試験を行うIC試験装置のIC取付面(3)との間に介挿され、前記IC試験装置のIC取付面の各電極(2)と前記ICパッケージの各電極(8)とを導通させる電極プローバー(19、19a)において、
一端が前記IC取付面の電極(2)に当接し他端が前記ICパッケージの電極(8)に当接するとともに共有結合性結晶材料で形成された伸縮可能な複数のバネ部材(22、22a、22b、30)と、
この各バネ部材の表面を覆う導電性の金属皮膜と、
前記複数のバネ部材における各バネ部材の中途位置を互いに非接触で支持する基板(20)とを備えた電極プローバー。」
イ;「【0032】基板20に形成された各貫通孔21内にバネ部材22が貫通されている。このバネ部材22は、図3(a)に示すように長さL=100μm?200μm、厚みt=10μm?20μmを有する単結晶シリコンウエハ材料26から、図3(b)に示すように、幅W=100μm、厚みt=10μm?20μmの正弦波形状に、エッチング手法にて切出したものである。
【0033】したがって、このバネ部材22は、単結晶シリコンウエハ材料26の表面に平行する一つの面内で図中矢印A方向にのみ伸縮する。そして、このバネ部材22の先端部には、それぞれICパッケージ4の電極8及びIC取付面3の電極2と一定面積以上で接触する接触部24,25が形成されている。
【0034】この単結晶シリコンで形成されたバネ部材22の表面は、金(Au)からなる導電性金属被膜で覆われている。なお、金(Au)からなる導電性金属被膜は、単結晶シリコンに比較して十分に伸縮性を有するので、たとえ、バネ部材22が矢印A方向に大きく伸縮したとしても、導電性金属被膜がバネ部材22の表面から剥げ落ちることはない。」及び【図3】
ウ;「【0043】(第2実施形態)図4は、本発明の第2実施形態の電極プローバー19aの一部を取出して示す断面模式図である。図1に示す第1実施形態の電極プローバー19と同一部分には同一符号が付してある。したがって、重複する部分の詳細説明を省略する。
【0044】この第2実施形態の電極プローバー19aに組込まれている、ICパッケージ4の各電極8とIC取付面3の各電極2とを電気的に導通する導電性金属で被服(審決注;この「被服」の記載が、「被覆」の誤記であることは明らかである。)された各バネ部材30は、一つの面内で互いに平行するとともに、各電極8、2に当接する位置で連通する一体形成された一対の単位バネ部材30a、30bで構成されている。そして、各電極8、2に当接する部分は、各電極8、2に対して一定面積以上で接触するように平面に形成されている。したがって、この平面に形成された部分が、図1、図3に示す接触部に相当する。
【0045】また、この一対の単位バネ部材30a、30bからなる各バネ部材30が貫通する基板20の貫通孔21内に、2本の単位バネ部材30a、30bの中途位置が接着剤23で固定されている。なお、この一対の単位バネ部材30a、30bからなる各バネ部材30の製造方法は、第1実施形態の電極プローバー19の各バネ部材22と同様に、単結晶シリコンウエハ材料26からエッチング手法を用いて切出す。」及び【図4】

2)引用刊行物には、記載アによれば、電極プローバーが記載され、更に、この電極プローバーについて詳しく見ていくと、導電性の金属皮膜に覆われたバネ部材が見て取れ、該バネ部材は、その一端がIC取付面の電極に当接し、他端がICパッケージの電極に当接し、これら電極を電気的に導通させることは明らかであるから、電極といい得るものであって、「導電性の金属皮膜に覆われたバネ部材からなる電極」の発明が記載されているということができる。
そこで、この発明におけるバネ部材について詳しく見ていくと、引用刊行物には、第1実施形態とされるものについて記載されていることが明らかな記載イによれば、バネ部材22が記載され、これは、正弦波形状に単結晶シリコンウエハ材料からエッチング手法にて切出して基材(以下、「基材(22)」という。)を得、その表面を金(Au)からなる導電性金属被膜で覆ったものであることが見て取れる。そして、記載イの【図3】には、平板状の所定の厚みを有する上記単結晶シリコンウエハ材料の表面上に正弦波形が輪郭を持った線図として描かれており、基材(22)は、単結晶シリコンウエハ材料から、このような輪郭に沿ってエッチングすることにより、切出されていることが分かる。そして、基材(22)は、エッチング手法により切出すことにより現出する、上記単結晶シリコンウエハ材料の厚み方向の面を有することは明らかで、このような面を、以下、「基材厚み面」という。
次に、引用刊行物には、記載ウによれば、一体形成された、一対の単位バネ部材30a、30bで構成された環状のバネ部材30が、第2実施形態として記載されていることが認められ、記載ウに「バネ部材30の製造方法は、第1実施形態の電極プローバー19の各バネ部材22と同様に、単結晶シリコンウエハ材料26からエッチング手法を用いて切出す。」と記載されていることから、バネ部材30は、基材22と同様に、平板状の所定の厚みを有する単結晶シリコンウエハ材料の表面上に環が輪郭を持った線図として描かれたような、その輪郭に沿った形でエッチングすることにより、切出されているもので、基材厚み面を有していることは明らかである。
してみると、引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「単結晶シリコンウエハ材料からエッチングによって、基材厚み面を有する環状の基材を形成し、その表面を導電性の金属皮膜で覆った環状のバネ部材30からなる電極。」

3-2-3.対比判断

1)引用発明と本件発明とを対比すると、引用発明の「基材厚み面」、すなわち、「エッチング手法により切出すことにより現出する、単結晶シリコンウエハ材料の厚み方向の面」は、本件発明の「単結晶シリコンウェハーの断面」に対応し、また、引用発明の「基材」は、本件発明の「部材」に対応し、両者は、「単結晶シリコンウェハーからエッチングによって、該ウェハーの断面を有する部材を形成し、その表面に導電性層を設けたシリコン製ばね電極」である点で一致し、以下の相違点a及びbで相違していると認められる。

相違点a;本件発明は、異方性エッチングによって部材を形成する点。
相違点b;引用発明は、基材が、基材厚み面を有する環状のものであるのに対し、本件発明は、上記基材に対応する部材が、上記基材厚み面に対応する、単結晶シリコンウェハーの断面、を板ばねの板面とする曲がり板ばね形状のものである点。

2)そこで、まず、相違点aについて検討する。
エッチングとして、異方性エッチングは、この出願当時に周知慣用の技術であるから(本件審判に係る審判請求書に添付された甲第1号証(「マイクロマシーニングとマイクロメカトロニクス」、11?12頁、株式会社培風館、1992年6月20日、発行)、特開昭60-106165号公報、特開昭61-31386号公報及び特開昭62-296418号公報、参照)、引用発明のエッチングとして、該技術を適用することは、容易に相当し得るものであって、相違点aは、容易に為し得たものといえる。

3)次に、相違点bについて検討する。
引用発明のバネ部材30について記載された、先に「3-2-2」の「1)」で摘示した記載ウには、「各電極8、2に当接する部分は、各電極8、2に対して一定面積以上で接触するように平面に形成されている。」とあり、記載ウの【図4】を参照すると、バネ部材30において電極8、2に接触する部分に対応する、引用発明の基材厚み面を、少なくとも、比較的面積の広い平面にすることが実質的に記載されていると認められる。
そこで、検討すると、バネ部材30は、先に「3-2-2」の「2)」で述べたことから明らかなように、平板状の所定の厚みを有する単結晶シリコンウエハ材料の表面上に環が輪郭を持った線図として描かれたような、その輪郭に沿った形でエッチングされることにより切出される工程を経るものであって、比較的面積の広い平面にするとの上記記載に接した当業者は、単結晶シリコンウエハ材料の厚みを相対的に厚くし、基材厚み面の前記厚みの方向の長さを大きくすること、その結果として、引用発明の基材を、その基材厚み面を板面とする環状のものとすることは、容易に想到し得るものといえる。そして、基材厚み面を板面とする環状の基材は、単結晶シリコンウェハーの断面を板ばねの板面とする曲がり板ばね形状の部材に相当するものである。
以上のことから、相違点bも容易に為し得たものといえる。

4)してみると、引用発明において、相違点a及びbは、容易に為し得たものであって、本件発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5)これに対し、請求人は、その審判請求書においては、要するに、本件補正が認められることを前提とする主張が述べられているだけで、実質的な主張をしていないし、また、先に「1」で述べた手続の経緯からも明らかなように、本件補正前の明細書における請求項1?6に係る発明は、原査定の拒絶理由のとおりに、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを報告する、特許法第162条による審査(前置審査)おける前置報告書の内容について意見を求めた審尋に対しても、何らの回答書の提出がなかったものである。

3-2-4.まとめ
本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできず、原査定の拒絶理由は、相当である。

4.結び
原査定は、妥当である。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-27 
結審通知日 2008-03-04 
審決日 2008-03-18 
出願番号 特願2003-405851(P2003-405851)
審決分類 P 1 8・ 56- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高木 正博  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 坂本 薫昭
吉水 純子
発明の名称 異方性導電シートの製造方法  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 野口 忠夫  
代理人 野口 忠夫  

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