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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1182142
審判番号 不服2006-17527  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-10 
確定日 2008-07-30 
事件の表示 平成10年特許願第 44613号「高周波発熱性樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月24日出願公開、特開平11-228845〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成10年2月9日に特許出願され、平成17年12月12日付けで拒絶理由が通知され、平成18年2月20日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年4月11日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年6月19日に意見書が提出され、同年7月10日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年8月10日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、審判請求の日から30日以内である同年9月11日に手続補正書が提出され、同年10月26日に手続補正書(方式)が提出され、同年11月17日付けで前置報告がなされ、当審において平成20年1月28日付けで審尋がなされ、同年4月2日に回答書が提出されたものである。

第2.平成18年9月11日付け手続補正について
平成18年9月11日付け手続補正について、以下のとおり決定する。

1.補正却下の決定の結論
平成18年9月11日付け手続補正を却下する。

2.理由
2-1.補正の内容
平成18年9月11日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、同年2月20日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本件補正前明細書」という。)を、更に補正するものであって、次の補正事項を含むものである。
本件補正前明細書の特許請求の範囲の
「【請求項1】 表面抵抗率が1×10^(11)(Ω/□)以下の(a)分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリマー、(b)アイオノマーおよび(c)これらとイオン電解質を含む組成物から選ばれるポリマー、またはポリマー組成物(A)2重量%以上、及びポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる合成樹脂(但し(A)を除く)または、合成樹脂組成物(B)98重量%以下を含有することを特徴とする高周波発熱用樹脂組成物。
【請求項2】 上記合成樹脂または、合成樹脂組成物(B)の1MHzで測定した誘電正接(tanδ)が1.0×10^(-2)以下であることを特徴とする請求項1に記載の高周波発熱用樹脂組成物。
【請求項3】 上記(A)中に多価アルコールが含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波発熱用樹脂組成物。」を、
「【請求項1】 表面抵抗率が1×10^(11)(Ω/□)以下の(a)分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリマー、(b)アイオノマーおよび(c)これらとイオン電解質を含む組成物から選ばれるポリマー、またはポリマー組成物(A)2重量%以上、及びポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる合成樹脂(但し(A)を除く)または、合成樹脂組成物(B)98重量%以下を含有する樹脂組成物からなり、その高周波発熱性を利用するフィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器。
【請求項2】 上記合成樹脂または、合成樹脂組成物(B)の1MHzで測定した誘電正接(tanδ)が1.0×10^(-2)以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器。
【請求項3】 上記(A)中に多価アルコールが含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器。」とする補正。

2-2.補正の目的について
本件補正は、審判の請求の日から30日以内にされた補正であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げるいずれかの事項を目的にするものに限られる。そのうち、第2号は、「特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」(以下「請求項の限定的減縮」という。)である。
そこで、特許請求の範囲についてする上記補正の目的について以下に検討する。
上記補正は、本件補正前明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載の「高周波発熱用樹脂組成物」を、それぞれ「高周波発熱性を利用するフィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器」とする補正事項(以下、「補正事項1」という。)を含むものであるが、本件補正前明細書の特許請求の範囲の請求項1?3には、「フィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器」との事項は記載されていないし、同請求項1?3に係る発明が「フィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器」というような樹脂組成物を使用する際の形状、形態に関する事項を発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)としているものでもない。
そうであるから、補正事項1は、発明特定事項を限定するものとはいえず、請求項の限定的減縮に該当しないものである。
また、「高周波発熱性を利用するフィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器」というのは、高周波発熱性をどのように利用するのかが明らかではなく、具体的にどのような用途に用いられるフィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器を意味するものかが不明りょうであるから、補正事項1は明りょうでない記載の釈明にも該当しないものである。
さらに、補正事項1は、請求項の削除でもなく、誤記の訂正にも該当しないことも明らかである。
したがって、補正事項1を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げるいずれかの事項を目的とするものとは認められない。

2-3.独立特許要件について
上記のとおり、補正事項1は請求項の限定的減縮に該当しないものであるが、仮に、審判請求人が主張するように、補正事項1が用途の限定として請求項の限定的減縮に該当するものとしても、本件補正により補正された明細書(以下、「本件補正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明1」という。)は、以下の理由により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
本件補正明細書の請求項1の記載は、一つの請求項に対して「フィルム、シート、チューブ、パイプまたは容器」という複数の発明を含むものであるから、特許を受けようとする発明が明確でない。
したがって、本件補正後の本願は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないものである。
よって、補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることはできない。

2-4.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定または同法同条第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本件審判請求について

1.本願発明
上記のとおり、平成18年9月11日付け手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、本件補正前明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 表面抵抗率が1×10^(11)(Ω/□)以下(a)分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリマー、(b)アイオノマーおよび(c)これらとイオン電解質を含む組成物から選ばれるポリマー、またはポリマー組成物(A)2重量%以上、及びポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる合成樹脂(但し(A)を除く)または、合成樹脂組成物(B)98重量%以下を含有することを特徴とする高周波発熱用樹脂組成物。」

2.原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由とされた、平成18年4月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2(以下、それぞれ「理由イ」、「理由ロ」という。)及び平成17年12月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由2(以下、「理由ハ」という。)は以下のとおりである。
理由イ:
「平成18年2月20日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

・請求項1?3
・備考
本願明細書の【請求項1】は「・・・を特徴とする高周波発熱用樹脂組成物。」と補正され、「特別な用途を有する樹脂組成物」が示された。
しかしながら、当初明細書に記載の本発明において記載されていた樹脂組成物は、用途限定がされていなかった。そして、当初明細書中に開示されていた用途は「フィルム、シート、チューブ、パイプ、容器」のみであり、高周波発熱は用途としてではなく単なる性質としてのみ開示されており、上記の「高周波発熱用」なる用途については、願書に最初に添付した明細書に記載されておらず、かつ、同明細書の記載から自明に導き出し得る事項とも認められない。
よって、当該補正は、特許法第17条の2第3頁に規定する要件を満たしていない。」

理由ロ:
「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1?3
・備考
「高周波発熱」とは一般的に性質を示す表現であり、用途を示す表現とは認められず、「高周波発熱用」なる用途は、結局如何なる用途を示すのか、その実態が不明である。
よって、請求項1?3に係る発明は明確でない。」

理由ハ:
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願日前の下記の出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1?3
・先願2
・備考
本願各請求項に係る発明と、先願2の各請求項に係る発明とを対比すると、
本願 先願2
請求項1 請求項1
請求項2 請求項3
請求項3 請求項4
に係る発明が同一である。」

4.当審の判断
上記の理由のうち、理由ロ及びハについて検討する。
(1)理由ロについて(特許法第36条第6項第2号違反について)
本願発明1は「高周波発熱用樹脂組成物」を発明特定事項とするものであるが、一般に「高周波発熱」というのは、高周波によって熱を生ずる性質を示すものと認められる。
これに関し、本件補正前明細書においては、段落【0015】において、「その用途に応じてフィルム、シート、チューブ、パイプ、あるいは容器等の成型品の形状に成形して使用される。」と記載されているものの、高周波発熱を利用する用途の具体的な記載は認められないし、高周波発熱用の意味する用途が当業者に自明のものとも認められない。
したがって、「高周波発熱用樹脂組成物」とは、その高周波発熱用との記載が示す用途が不明確であるから、本件補正前明細書の特許請求の範囲の記載は特許を受けようとする発明が明確でない。
したがって、本願は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。

(2)理由ハについて(特許法第39条第1項違反について)
本願の出願の日前の出願である特願平10-126456号(以下、「先願」という。)の請求項1に係る発明(以下、「先願発明1」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
(A)表面抵抗率が1×10^(11)(Ω/□)以下に調整された(a)分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリマー、(b)アイオノマーおよび(c)これらとイオン電解質を含む組成物から選ばれるイオン導電性ポリマーまたはイオン導電性ポリマー組成物2重量%以上と、(B)ポリオレフィン系樹脂98重量%以下から成る高周波融着用樹脂組成物。」
なお、先願に係る特願平10-126456号は、特願平9-281898号を優先権主張の基礎とするものであって、その出願日である平成9年10月15日を優先日とするものであるが、その特願平9-281898号の願書に最初に添付した明細書には上記先願発明1が記載されている。
したがって、特願平10-126456号の出願日は、先願発明1についての特許法第39条第1項の規定の適用に際しては、平成9年10月15日とみなされる。

そこで、本願発明1と先願発明1とを対比する。
先願発明1の「(A)表面抵抗率が1×10^(11)(Ω/□)以下に調整された(a)分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリマー、(b)アイオノマーおよび(c)これらとイオン電解質を含む組成物から選ばれるイオン導電性ポリマーまたはイオン導電性ポリマー組成物2重量%以上」は、本願発明1の「表面抵抗率が1×10^(11)(Ω/□)以下(a)分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリマー、(b)アイオノマーおよび(c)これらとイオン電解質を含む組成物から選ばれるポリマー、またはポリマー組成物(A)2重量%以上」に相当することは明らかである。また、先願発明1の「(B)ポリオレフィン系樹脂98重量%以下」は、本願発明1の「ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる合成樹脂(但し(A)を除く)または、合成樹脂組成物(B)98重量%以下」に相当することも明らかである。
そうすると、本願発明1と先願発明1は、「表面抵抗率が1×10^(11)(Ω/□)以下に調整された(a)分子中にポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリマー、(b)アイオノマーおよび(c)これらとイオン電解質を含む組成物から選ばれるイオン導電性ポリマーまたはイオン導電性ポリマー組成物2重量%以上と、ポリオレフィン系樹脂98重量%以下を含む樹脂組成物」である点で一致し、本願発明1では樹脂組成物が「高周波発熱用」であるのに対し、先願発明1では「高周波融着用」である点でのみ、一応相違するものと認められる。
そこで、先願発明の「高周波融着用」とは、どのような用途を示すものか、その意味について検討する。
高周波融着用とは技術用語として確立した用語とは認められないので、その意味について先願の明細書の記載(特許第3916760号公報参照)を参酌する。
先願の明細書には、「【従来の技術】合成樹脂からなるフィルム、成型品を熱接合する手段として、ヒートシール、インパルスシールに代表される外部加熱方法、また、超音波接合、高周波接合に代表される内部加熱方法がある。このうち高周波接合は内部発熱を利用した接着方法であり、外部加熱方法に比べ、フィルム、成型品の外層部の熱劣化が少ない、温度の上昇が速い、温度の均一性が高い、等の長所を有している。・・・この要望をかなえるため、従来より種々の工夫がなされてきた。例えば、特開平7-276581号公報には、-OH、-CN、-Cl、-CONH-、または-CO-等の極性基を有する合成樹脂が高周波融着性を有することを示唆する記載がある。しかしながら、極性基を有する合成樹脂であっても極性基の種類や、合成樹脂全体に占める極性基の比率等の条件によっては必ずしも良好な高周波融着性を示さないものがある。」(段落【0002】)、「またポリオレフィン系樹脂にカーボンブラックや金属粉等の導電性材料を配合するという方法も考えられる。しかしながらこの方法を用いた場合、その成型品の透明性が著しく損われるという問題、さらには発熱のコントロールが難しく、発熱が行き過ぎるとポリオレフィン系樹脂が熱劣化を起こしてしまうという問題がある。」(段落【0003】)、「【課題を解決するための手段】本発明者らは、高周波を照射することによって発熱する合成樹脂について鋭意研究を重ねた結果、上記性能を有する合成樹脂に求められる要件として、合成樹脂の表面抵抗率が挙げられることをまず見いだした。すなわち、表面抵抗率と高周波発熱性とは密接な関連性があり、合成樹脂の表面抵抗率が低下するにしたがって高周波発熱性が良好となることを見いだしたのである。本発明者らはさらに研究を重ねた。この結果、特定の表面抵抗率を有するイオン導電性ポリマー、または、特定の表面抵抗率を有するイオン導電性ポリマー組成物を必須成分として含む組成物が高周波融着性を有することを見いだし本発明に到った。また、ポリオレフィン特定量と特定の表面抵抗率を有するイオン導電性ポリマー、または、特定の表面抵抗率を有するイオン導電性ポリマー組成物特定量から成る組成物がポリオレフィンの特性を維持したまま優れた高周波融着性を示すことを見いだし本発明に到った。」(段落【0005】)、「本発明の高周波融着性樹脂組成物は、通常の混練ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機等を用いて溶融混練することによって調製できる。本発明の高周波融着性樹脂組成物の用途例を挙げるならば、高周波融着性を有さないフィルム、シートにシーラント層として積層して高周波融着性を有する積層体とする用途、該組成物を成型して高周波融着性を有する成形体とする用途等が挙げられ、これら用途に応じて、フィルム、シート、チューブ、パイプ等の形状に成形されて使用される。」(段落【0023】)等の記載がある。
これらの記載を総合的に勘案すると、先願発明1における「高周波融着」とは、高周波を照射することによる発熱する性質を利用した接着(接合)を意味すると解されるから、「高周波融着」とは、「高周波発熱」という性質を利用するものといえる。
そうであるから、本願発明1の「高周波発熱用」というのは、先願発明1の「高周波融着用」を上位概念として表現したものにすぎないものといえるから、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。
したがって、本願発明1は先願発明1と同一である。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願は、その明細書の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明1は、先願発明1と同一であるので、平成10年改正前特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-09 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-09 
出願番号 特願平10-44613
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C08L)
P 1 8・ 575- Z (C08L)
P 1 8・ 4- Z (C08L)
P 1 8・ 572- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辰己 雅夫  
特許庁審判長 一色 由美子
特許庁審判官 山本 昌広
宮坂 初男
発明の名称 高周波発熱性樹脂組成物  
代理人 中嶋 重光  
代理人 山口 和  

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