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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62D |
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管理番号 | 1182166 |
審判番号 | 不服2005-11954 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-23 |
確定日 | 2008-07-28 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 5051号「ラックストッパ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月27日出願公開、特開平11-198827〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は、平成10年1月13日の出願であって、当審において、平成17年7月25日付けの手続補正について、平成20年2月14日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して、同年4月16日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けの手続補正書により手続補正がなされたものである。 その特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、上記平成20年4月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりである。 「ラックアンドピニオン式の舵取装置に適用され、ラック軸と共に移動する部材に当接してラック軸の軸方向位置を規制するラックストッパにおいて、 上記ラック軸を挿通させる挿通孔を有するラックストッパ本体と、 このラックストッパ本体の内周面に一体に固定され、ラック軸を摺動させる合成樹脂製のブッシュとを備え、 上記ラックストッパ本体の内周面に当該内周面から窪む凹部が形成され、 上記ブッシュは、筒状のブッシュ本体と、このブッシュ本体に一体に形成され且つラックストッパ本体の内周面よりも径方向外方に突出して上記凹部に嵌合する抜け止め用の突起部とを有し、 ブッシュの本体および抜け止め用の突起部はラックストッパ本体を型の一部として射出成形されその成形時にラックストッパ本体に固定されてなることを特徴とするラックストッパ。」(以下「本願発明」という。) 2.引用刊行物とその記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-207790号公報(以下「引用例」という。)には、「舵取り装置におけるラック支持構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (イ)「【請求項1】 ステアリングボディの一端部に設けられラックを摺動自在に支持するラック支持用ブッシュを備え、 このブッシュを、合成樹脂材によって形成した本体部と、強化合成樹脂材または金属材による強度部材によって形成した補強部とから構成し、 かつこれらの本体部と補強部とを一体的に結合したことを特徴とする舵取り装置におけるラック支持構造。」 (ロ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はラックピニオン型の舵取り装置において、特にラックをステアリングボディ内で摺動自在に支持するためのラック支持構造に関する。」 (ハ)「【0006】12は前記金属製パイプ体7の外方端部分に装着され、その保持孔12a内に前記ラック軸6を貫通させて摺動自在に支持するラック支持用部品であるラック支持用ブッシュである。このブッシュ12は、図11、図12の(a),(b)に示すように、外周部の一部にねじ部12bを有し、前記金属製パイプ体7の外方端部分にねじ込み固定されている。 【0007】また、このブッシュ12の外方端側にはフランジ部12cが形成され、このフランジ部12cは金属製パイプ体7の端部に突き当てられるストッパとして機能するとともに、後述する蛇腹状ブーツ14の端部をパイプ体7の端部に固定する際の抜け止め機能をも有する。」 (ニ)「【0008】また、図10において、符号16は舵取リンク機構4の両端側に設けられ操舵輪側のナックルアーム側に連設されるキングピン(図示せず)に連結されたタイロッドで、これら左、右両側のタイロッド12,12間にラック5およびラック軸6がボールジョイント17等を介して連結された状態で一連に設けられている。前記蛇腹状ブーツ14,14は、上述したボディ3のラック5を支持する筒状部3aおよびこれに連設された金属製パイプ体7の外方端側で可動側であるラック5、ラック軸6と一連に連結されたタイロッド16,16との間に介在され、ステアリングボディ3の両端部分でのシール性を確保し、外部からの塵埃等の侵入を防止する。」 (ホ)「【0010】このようなラック支持用ブッシュ12として従来一般には、含油性焼結金属材等の鉄系材料やアルミニウム系材料からなる円筒状部材によって形成され、前述したねじ部12bによりパイプ体7の外方端にねじ込み固定されている。しかし、このような金属製のラック支持用ブッシュ12では、重量が大きく、加工が面倒で、またコスト面でも問題であり、近年ではこのようなラック支持用ブッシュを、加工性、軽量化、低コスト化、さらに金属同士の打音防止等を考慮し、合成樹脂材からなる成形品によって形成することが考えられている。 【0011】特に、このような合成樹脂材によるラック支持用ブッシュ12では、その保持孔12a内に貫通配置されるラック軸6を円滑に摺動動作可能に保持できるという利点があり、ラック支持用ブッシュとしての機能を発揮する。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなラック支持用ブッシュ12を、合成樹脂材のみで形成すると、前述したボディ3側の金属製パイプ体7へのねじ込み用のねじ部12bやこの金属製パイプ体7の外方端部に当接するストッパ面となるフランジ部12cの側面において強度不足となり、破損等の問題を招くおそれがある。」 (ヘ)「【0014】さらに、上述したような強度上での問題は、ブッシュ12外方端側のナット部12dの端面のように、タイロッド16,16側のソケットとの当接部であるストッパ部分においても同様に生じるので、このような機械的強度が要求される部分での強度アップに対しての何らかの対策を講じることが必要である。 【0015】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ラック支持用ブッシュの一部を軽量化、低コスト化のために合成樹脂材により形成するとともに、強度が要求される部分を金属材または強化合成樹脂材等の強度部材で形成し、強度を向上させ、破損等の不具合を解消するとともに、ラック軸の摺動自在な保持機能や打音防止機能も得られる舵取り装置におけるラック支持構造を得ることを目的としている。」 (ト)「【0017】また、本発明に係る舵取り装置におけるラック支持構造は、ステアリングボディの一端部に設けられラックを摺動自在に支持するラック支持用ブッシュを、強化合成樹脂材または鉄系等の金属材からなる強度部材によって形成した本体部と、ラック軸を摺動自在に支持する保持孔の内壁部分を合成樹脂材によって形成した摺動保持部とから構成し、かつこれらを一体的に組合わせて形成したものである。 【0018】 【作用】本発明によれば、ラック支持用ブッシュのほとんどを合成樹脂材製の本体部によって構成するとともに、この本体部に強度を要求される部分を強化合成樹脂材または鉄系等の金属材からなる強度部材によって形成した補強部を接着、嵌め込み、かしめ、インサート成形で一体的に結合することにより形成される。」 (チ)「【0021】本発明によれば、ラックピニオン型舵取り装置におけるステアリングボディの一端側(金属製パイプ体7の外方端)に装着されラック軸6を摺動自在に支持するラック支持用ブッシュ20を、合成樹脂材によって形成した本体部21と、機械的強度が要求される部分、たとえば金属製パイプ体7とのねじ込み固定用のねじ部20b、金属製パイプ体7の端部に当接するフランジ部20c側面、タイロッド16側が当接する外方端の六角形ナット部20dでの端面部分を強化合成樹脂材または鉄系等の金属材からなる強度部材によって形成した補強部22a,22b,23とで構成し、かつこれらを嵌め込みおよびかしめ等によって一体的に結合することにより形成したところを特徴としている。なお、図中20aはラック支持用ブッシュ20内に形成されるラック軸6を保持する保持孔である。」 (リ)「【0031】図6は合成樹脂材製の本体部21に対し、補強部22a,22bとなる鍔付き筒状体22、リング状キャップである補強部23をインサート成形によって一体に形成した場合を示している。この場合、筒状体22や補強部23と本体部21との回り止めおよび接着面積を増やすために、図2に示したセレーション結合、キー結合、嵌合用溝部結合を適宜採用することは自由である。」 (ヌ)図6には、鍔付き筒状体22は、ラック軸6を挿通する鍔付き筒状体22の内周面から径方向内方に突出する鍔部が形成され、ラック軸6を摺動保持する保持孔20aを有する合成樹脂製の本体部21は全体として筒状に形成され、これと一体に該鍔部に嵌合する凹部を有しているラック支持構造が記載されている。 上記記載事項から、引用例には、次の発明が開示されていると認められる。 「ラックアンドピニオン型の舵取装置に適用され、外方端側にタイロッド16,16側のソケットとの当接部であるストッパ部分を有するラック支持用ブッシュ12において、 上記ラック軸6を挿通させる孔を有する鍔付き筒状体22と、 この鍔付き筒状体22の内周面に一部が一体に固定され、ラック軸を摺動させる合成樹脂製の本体部21とを備え、 上記鍔付き筒状体22の内周面に当該内周面よりも径方向内方に突出する鍔部が形成され、 上記本体部21は筒状に形成され、これと一体に形成され且つ鍔付き筒状体22の上記鍔部に嵌合する凹部とを有し、 上記本体部21および凹部は、インサート成形によって鍔付き筒状体22と一体に結合することにより形成されてなるラック支持用ブッシュ。」(以下「引用発明」という。) 3.本願発明と引用発明の対比 本願発明と、上記引用発明とを対比すると、引用発明における「ラックアンドピニオン型」、「ラック支持用ブッシュ12」、「鍔付き筒状体22」、「合成樹脂製の本体部21」は、それぞれ本願発明における「ラックアンドピニオン式」、「ラックストッパ」、「ラックストッパ本体」、「合成樹脂製のブッシュ」に相当する。 そして、引用発明における「外方端側にタイロッド16,16側のソケットとの当接部であるストッパ部分を有する」ことは、本願発明における「ラック軸と共に移動する部材に当接してラック軸の軸方向位置を規制する」ことにほかならず、引用発明における「鍔部」及び「凹部」が、本願発明の「凹部」及び「突起部」と同様に、抜け止めの機能を果たすことは技術常識から明らかだから、引用発明の「鍔部」と本願発明の「凹部」は、ラックストッパ本体(鍔付き筒状体22)と合成樹脂製のブッシュ(合成樹脂製の本体部21)との抜け止め用の一方の嵌合部である限りにおいて共通しており、また、引用発明の「凹部」と本願発明の「突起部」とは、同様に、ラックストッパ本体(鍔付き筒状体22)と合成樹脂製のブッシュ(合成樹脂製の本体部21)との抜け止め用の他方の嵌合部である限りにおいて共通している。 そうすると、本願発明と引用発明との一致点と相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「ラックアンドピニオン式の舵取装置に適用され、ラック軸と共に移動する部材に当接してラック軸の軸方向位置を規制するラックストッパにおいて、 上記ラック軸を挿通させる挿通孔を有するラックストッパ本体と、 このラックストッパ本体の内周面に一体に固定され、ラック軸を摺動させる合成樹脂製のブッシュとを備え、 上記ラックストッパ本体の内周面に抜け止め用の一方の嵌合部が形成され、 上記ブッシュは、筒状のブッシュ本体と、このブッシュ本体に一体に形成され、上記抜け止め用の一方の嵌合部に嵌合する抜け止め用の他方の嵌合部とを有し、 ブッシュの本体および抜け止め用の他方の嵌合部はその成形時にラックストッパ本体に固定されてなるラックストッパ。」 <相違点> (A)本願発明では、抜け止め用の一方の嵌合部が「内周面から窪む凹部」であり、抜け止め用の他方の嵌合部が「ラックストッパ本体の内周面よりも径方向外方に突出」する「突起部」であるのに対して、引用発明では、抜け止め用の一方の嵌合部が「内周面よりも径方向内方に突出する鍔部」であり、抜け止め用の他方の嵌合部が「凹部」である点。 (B)本願発明は、「ラックストッパ本体を型の一部として射出成形され」て一体に結合されるのに対して、引用発明は「インサート成形によって」一体に結合されるものの、鍔付き筒状体22を型の一部として射出成形しているかどうかは不明である点。 4.当審の判断 上記各相違点について、以下に検討する。 (1)相違点Aについて 引用発明における鍔部も、突起部と言えるものであり、突起部と凹部を嵌合して抜け止め部とする場合、何れを突起部とし、何れを凹部とするかは、特段の事情がない限り周囲の部材の配置等により当業者が適宜決定しうる設計的事項であるから、引用発明における鍔部と凹部をそれぞれ反対に本体部21、(鍔付き)筒状体22に設けて抜け止め嵌合部とし、上記相違点Aに係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点Bについて 円筒状のブッシュ本体を型の一部としてブッシュ本体の内周面に合成樹脂製の摺動面を射出成形して一体に結合することは周知の技術であり(例えば特開平4-284230号公報、特公昭56-21934号公報等参照)、当該周知技術を引用発明に適用することに格別の困難性もないから、上記相違点Bに係る本願発明の構成は当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明が奏する作用効果も、上記引用発明及び上記周知の技術から予測される程度以上のものでもない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-30 |
結審通知日 | 2008-06-03 |
審決日 | 2008-06-16 |
出願番号 | 特願平10-5051 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B62D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西本 浩司 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
柴沼 雅樹 佐藤 正浩 |
発明の名称 | ラックストッパ及びその製造方法 |
代理人 | 川崎 実夫 |
代理人 | 稲岡 耕作 |