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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1182245
審判番号 不服2006-101  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-04 
確定日 2008-08-07 
事件の表示 特願2000-165932「メモリーカード用コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月21日出願公開、特開2001-351709〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯及び本願発明

本願は平成12年6月2日の出願であって、平成16年8月26日付で拒絶理由が通知(発送日:同年8月31日)され、平成16年10月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成17年11月25日付けで拒絶査定(発送日:同年11月29日)がなされ、これに対し、平成18年1月4日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、平成18年1月30日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成18年1月30日付けの手続補正についての補正却下の決定。

[補正却下の決定の結論]
平成18年1月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容
平成18年1月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、平成16年10月29日付の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の下記の(a)に示す請求項1?6の記載を、下記の(b)に示す請求項1?5と補正するものである。

(a)補正前の請求項

「【請求項1】 MMCカード、SDカード等大きさ及び識別端子等の異なる、使用頻度の高い複数種類のカードを選択的に使用するコネクタであって、コネクタ本体は、左右側壁及び奥壁よりなり、左右側壁には使用されるメモリーカードの枚数及び側壁形状に合わせた受容部がその全長に亘って形成され、側壁の内側面にはカード識別端子が複数段配置され、奥壁にはカードの蓄積情報を取り出し、叉はカードに電子情報を書き込むための端子が適宜配置されている、メモリーカード用コネクタ。
【請求項2】 コネクタの一側壁には、ばね状の金属帯片からなる識別タブを有するカード識別端子が複数段に亘って配置されるとともに、夫々の識別端子と夫々のカードとの接触によりカードの存在を識別する識別タブが、カードを挿入しない状態ではカード識別端子の端子側と離間している、請求項1に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項3】 コネクタの一側壁には、ばね状の金属帯片からなる識別タブを有するカード識別端子が複数本の溝孔に亘って配置されるとともに、夫々の識別端子と夫々のカードとの接触によりカードの存在を識別する識別タブが、カードを挿入しない状態ではカード識別端子の端子側と離間している、請求項1に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項4】 前記カード識別端子が2段に配置されるとともに、薄いカードが挿入されると下段のみのカード識別端子の識別タブと接触し、厚いカードが挿入されると双方のカード識別端子の識別タブと接触する、請求項2に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項5】 前記カード識別端子が2段に配置されるとともに、一種のカードが上段側に挿入されると上段側のカード識別端子と接触し、他種のカードが下段側に挿入されると下段側のカード識別端子と接触する、請求項3に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項6】 使用カード毎にそれらが挿入されるだけのスロットを開口したコネクタにおいて、前記開口に前蓋を設けた、請求項4叉は5に記載のメモリーカード用コネクタ。」

(b)補正後の請求項

「【請求項1】 厚みの異なる複数種類のカードを選択的に使用するコネクタであって、コネクタ本体は、左右側壁及び奥壁よりなり、左右側壁には使用されるメモリーカードの枚数及び側壁形状に合わせた受容部がその全長に亘って形成され、側壁の内側面にはカード識別端子が複数本の溝孔に亘って複数段配置され、奥壁にはカードの蓄積情報を取り出し、叉はカードに電子情報を書き込むための端子が適宜配置され、前記受容部は、薄いカードが挿入されるとそれに対応する側壁面を有する段のみのカード識別端子の識別タブと接触し、厚いカードが挿入されると複数段のカード識別端子の識別タブと接触するように形成されている、メモリーカード用コネクタ。
【請求項2】 コネクタの一側壁には、ばね状の金属帯片からなる識別タブを有するカード識別端子が複数段に亘って配置されるとともに、夫々の識別端子と夫々のカードとの接触によりカードの存在を識別する識別タブが、カードを挿入しない状態ではカード識別端子の端子側と離間している、請求項1に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項3】 コネクタの一側壁には、ばね状の金属帯片からなる識別タブを有するカード識別端子が複数本の溝孔に亘って配置されるとともに、夫々の識別端子と夫々のカードとの接触によりカードの存在を識別する識別タブが、カードを挿入しない状態ではカード識別端子の端子側と離間している、請求項1に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項4】 前記カード識別端子が2段に配置されるとともに、一種のカードが上段側に挿入されると上段側のカード識別端子と接触し、他種のカードが下段側に挿入されると下段側のカード識別端子と接触する、請求項2に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項5】 使用カード毎にそれらが挿入されるだけのスロットを開口したコネクタにおいて、前記開口に前蓋を設けた、請求項3叉は4に記載のメモリーカード用コネクタ。」

2.補正の適否についての判断

上記補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、補正前の特許請求の範囲の請求項1における「MMCカード、SDカード等大きさ及び識別端子等の異なる、使用頻度の高い複数種類のカード」という発明特定事項を備えておらず、本件補正の請求項1は、補正前の請求項1ないし6に記載された発明を限定的に減縮するものとは認められない。
したがって、請求項1に関する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められず、さらに、請求項の削除、誤記の訂正あるいは明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもないので、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

3.むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3本願発明について、

1.平成18年1月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成16年10月29日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲1?6にそれぞれ記載された事項により特定されるものであり、本願の請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、下記のように、上記第2の1.の(a)に記載したとおりである。

「【請求項1】 MMCカード、SDカード等大きさ及び識別端子等の異なる、使用頻度の高い複数種類のカードを選択的に使用するコネクタであって、コネクタ本体は、左右側壁及び奥壁よりなり、左右側壁には使用されるメモリーカードの枚数及び側壁形状に合わせた受容部がその全長に亘って形成され、側壁の内側面にはカード識別端子が複数段配置され、奥壁にはカードの蓄積情報を取り出し、叉はカードに電子情報を書き込むための端子が適宜配置されている、メモリーカード用コネクタ。」

2.引用文献

(1)原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5716221号明細書(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。

イ.「BACKGROUND OF THE INVENTION

IC (integrated circuit) cards, which are of about the same width and length as a typical credit card, are designed for insertion into a slot of a card-receiving host which may lie in an electronic device such as a notebook computer. PCMCIA (Personal Computer Memory Card International Association) specifies that card and host connectors each have 68 contact positions arranged in two vertically spaced rows of 34 positions each. It is highly desirable that any IC card be compatible with standard PCMCIA host connectors. Actually, PCMCIA standards currently specify three types of cards of different thicknesses ranging from 3.3 mm to 10.5 mm, all having standard card connectors. Type I and type II which have maximum thicknesses of 3.3 mm and 5 mm, respectively, are the most popular, and they have identical edges. It is common to provide host connectors with a stack of at least two hosts to receive two separate IC cards.
Although 68 contacts is often sufficient, there are some IC card designs which require more than 68 contacts. Although new card and host standards can be established to accommodate more than 68 contacts, this would require considerable added expense to create tooling for additional host and card connectors. Also, for an electronic device to interact with present 68-contact connectors as well as any larger connectors, would require additional room on the electronic device for two separate card-receiving areas. A new IC card which was backward compatible, in that it could utilize present 68 position card connectors and could fit into present hosts designed to mate with 68 position connectors, would be of value. 」(第1欄第3?35行、当審による仮訳。以下同、)
「発明の背景
標準的なクレジット・カードと幅及び長さがほぼ同じであるIC(集積回路)カードは、ノートブック型コンピュータのような電子デバイスにあるカード受入れホストのスロットに挿入される設計になっている。PCMCIA(PCメモリ・カード国際協会)は、カード及びホスト・コネクタは、それぞれ34接点が縦2列に配列された68接点位置を持つものと仕様を定めている。どのようなICカードも、標準PCMCIAホスト・コネクタと互換性を有することが非常に望ましい。実際に、PCMCIA標準規格は、現在厚さが3.3mmから10.5mmまで異なる3タイプのカードの仕様を定めており、すべて標準規格のカード・コネクタを持っている。それぞれ最大厚さが3.3mmと5mmのタイプ1とタイプ2は、最も普及しており、またそれらは同一端部を持っている。2枚の個別ICカードを受け入れるために、ホスト・コネクタに少なくとも2個のホストから成るスタックを装備するのが一般的である。
多くの場合68接点で十分であるが、68を超える接点を必要とする一部のICカード構造が存在する。68を超える接点に適合する新規カードとホストの標準規格を設定することができるが、これは、追加ホスト及びカード・コネクタのための治工具を作るために相当な追加費用を必要とするであろう。また、現在の68接点コネクタ及びどのようなより大きなコネクタと情報を交換する電子デバイスにとっても、電子デバイスの2個の個別カード受入部分に増設スペースを必要とするであろう。現在の68接点カード・コネクタを利用でき、かつ68接点コネクタと結合するように設計されている現在のホストに適合することができるという点において、下位互換性のある新規ICカードは価値があるだろう。」

ロ.「DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS

FIG. 1 illustrates a host stack 10 which includes a pair of card-receiving hosts 12, 14, and which is available in the prior art. The host stack 10 is part of an electronic device 16 that communicates through the host stack to IC cards. Each host includes a guideway 20, 22 with laterally-spaced (in directions L) opposite edge guides 30, 32, 34, 36, for receiving an IC card moved in a forward longitudinal direction F. As also shown in FIG. 3, each host has a host connector 40, 42 at a rear end of a corresponding guideway 20, 22. The host stack includes a mid guide wall 44, 46 located at the opposite sides and separating the upper and lower guideways.
Prior host stacks of the type shown at 10, are designed to receive standard PCMCIA (Personal Computer Memory Card International Association) type I or type II cards, which are substantially identical except that the type II card is slightly thicker (5 mm) than the type I card (3.3 mm). It is very often useful for electronic devices to interact with two IC cards at once or to store one while interacting with another, and the host stack 10 permits this. According to PCMCIA standards, each host connector 40, 42 has 68 contact positions 50 located in two rows 52, 54 of 34 contact positions each, with the contact positions being spaced apart at 1.25 mm along each row. This standard permits any type I or II card to be mated with any standard host, while permitting up to 68 mating contacts. It is noted that a contact may not lie at every contact position.
More recent advances in the design of IC cards has led to the occasional need for an IC card with more than the standard 68 contacts now prescribed in PCMCIA specifications, and which, of course, must mate to a host with more than 68 contacts. 」(第2欄第21?55行)
「好適実施例の詳細な説明
図1は、先行技術で利用できる一組のカード受入ホスト12、14を含んでいるホスト・スタック10を説明している。ホスト・スタック10は、ホスト・スタックを介してICカードと通信する電子デバイス16の一部である。各ホストは、前方縦方向Fに移動するICカードを受入れるために、横方向(L方向)に間隔をあけ向い合っているエッジ・ガイド 30、32、34、36があるガイドウェイ 20、22 を包含している。また図3に示されるとおり、各ホストは対応するガイドウェイ 20、22 の後部に、ホスト・コネクタ40、42を持っている。ホスト・スタックは、向い合った両側に配置され、上下部ガイドウェイを分離するミッド・ガイド・ウォール 44,46を含んでいる。
10に示すタイプの先行ホスト・スタックは、標準規格PCMCIA (PCメモリーカード国際協会)タイプ1又はタイプ2カードを受入れる設計になっており、タイプ2カードはタイプ1カード(厚さ3.3 mm)よりわずかに厚い(5 mm)ことを除いて両者は実質的に同一である。同時に2枚のICカードと情報をやりとりしたり、一方が情報をやりとりしている間に他方が記憶することは、多くの場合電子デバイスにとって非常に役立ち、ホスト・スタック10はこれを可能にする。PCMCIA標準規格に従って、各々のホスト・コネクタ 40、42は、各々34個の接点位置からなる2列 52、54に配置される68個の接点位置50を持っており、接点位置は各々の列に沿って1.25 mmの間隙で配置されている。この標準規格は、タイプ1又はタイプ2カードのどれでも、任意の標準規格ホストと結合されることを可能にし、その上、68個までの接点との結合を可能にしている。接点は、全ての接点位置に存在しないかもしれないことに留意しなければならない。
ICカードの意匠における更なる最近の進歩は、現在PCMCIA仕様に規定されている標準68接点を超えるICカードの時折の必要性につながっており、そしてそれはもちろん、68接点を超えるホストに結合しなければならない。」

ハ.「In accordance with the present invention, applicant provides a new IC card 60 (FIG. 2) which has much more than the standard 68 contact positions, which can be installed in a prior art host stack 10, and which can be manufactured at moderate cost. The new IC card 60 includes two standard card connectors 62, 64 that are vertically spaced and held together by a frame 66. The IC card 60 essentially has the dimensions of two type II PCMCIA cards, and when inserted into the host stack 10, occupies two hosts 12, 14.
In order to permit insertion of the IC card 60 into the host stack 10, the card frame 66 is provided with a slot 70, 72 (FIG. 4) on each side 74, 76 of the card, which preferably extends by at least about half the card length. As shown in FIG. 7, when the IC card 60 is inserted into the host stack 10, each slot 70, 72 receives a corresponding mid guide wall 44, 46 of the host stack. 」(第2欄第66行?第3欄第14行)
「本発明に従って、出願人は標準規格の68を大きく超える接点位置を持ち、先行技術ホスト・スタック 10に取り付けることができ、そして無理のないコストで製作することができる新規ICカード 60(図2)を提供する。新規ICカード 60は、フレーム 66によって垂直に間隔をあけ一緒に保持される2個の標準規格カード・コネクタ 62、64 を含んでいる。ICカード 60 は、2個のタイプ2のPCMCIAカード寸法が必要不可欠であり、ホスト・スタック 10に挿入された場合、2個のホスト 12、14を占有する。
ホスト・スタック 10 へのICカード 60 の挿入を可能にするために、カード・フレーム66にはカードの各側面 74、76にスロット 70、72(図4)が付いており、少なくともカード全長の約半分だけ延長することが望ましい。図7に示すとおり、ICカード 60 がホスト・スタック 10 に挿入された場合、各々のスロット 70、72は、ホスト・スタックの対応するミッド・ガイド・ウォール 44、46を受け入れる。」

ニ.「It is often convenient to construct an electronic device that includes the host stack, so it can connect certain circuitry to each host connector when a type I or type II standard card is inserted, or can connect other circuitry to the host connectors when applicant's new IC card 60 is installed, which applicant can refer to as a type IV card. Such switching can be accomplished manually as by an external push button switch. It is usually desirable if such switching is accomplished automatically. FIG. 9 shows an example where the upper and lower front end parts 91A, 93A of applicant's card have been altered to provide gaps 150, 152, 154. A pair of switches 160, 162 mounted on the host stack, sense the insertion of applicant's type IV card, to connect selected circuitry to the host connectors.
FIG. 10 shows one example of an electronic device 170 which includes the switches 160, 162 that detect keys along one edge of applicant's IC card as the upper and lower card connectors approach the host connectors 40, 42. The switches are connected to a switching apparatus 171 which includes a logic circuit 172 that operates a pair of switches to close one 174 and open the other 176 when the logic circuit 172 detects applicants type IV IC card. Upon switch 174 being closed, current from a voltage source 180 passes through switch 174 to an alternate circuit 182 instead of circuits 184 or 186 (which are energized when a type I, II or III card is inserted). Pins such as 52A and 53A of the two host connectors are connected to the circuit 182 and one of the circuits 184, 186, but only that circuit which is activated will transmit or receive signals passing along the contacts 52A, 53A. When two pins such as 52M and 52N sense an inserted card in one host, switches such as 188, 190 can be closed to energize circuits 184 and/or 186」(第4欄第15?46行)
「多くの場合、ホスト・スタックを含んでいる電子デバイスを構築するのは使い勝手が良いので、タイプ1又はタイプ2標準規格カードが挿入された場合、当該回路を各々のホスト・コネクタに接続でき、或いは出願人がタイプ4カードと呼ぶことができる出願人の新規ICカード 60 が挿入された場合、他の回路をホスト・コネクタに接続することが可能である。そのような切換えは、外部のプッシュ・ボタン・スイッチのように手動で実行できる。通常そのような切換えが自動的に実行されるならば、望ましい。図9は、隙間 150、152、154 を設けるために、出願人のカードの上下部フロント・エンド・パーツ 91A、93Aが部分的に変更された実施例を示す。ホスト・スタックに取付けた一対のスイッチ 160、162 が出願人のタイプ4カードの挿入を検出し、選択した回路をホスト・コネクタに接続する。
図10は、上下部カード・コネクタがホスト・コネクタ 40、42に接近するとき、出願人のICカードの一方の縁に沿ってキーを検出するスイッチ160、162 を含んでいる電子デバイス 170 の一実施例を示す。スイッチは、論理回路 172 が出願人のタイプ4のICカードを検出するとき、一方174を閉じて、他方176を開くための一対のスイッチを作動させる論理回路172を含んでいる切換デバイス171に接続される。スイッチ174が閉じられると、電源180からの電流がスイッチ 174を通過し、回路184か186(タイプ1、2又は3が挿入された場合通電される)の代わりに、迂回路 182に流れる。例えば2個のホスト・コネクタの52A及び53Aのピンが回路182に、また回路184と回路186の一方に接続されるが、作動した回路のみ、接点52A、53Aに沿って信号を送信、又は受信できる。例えば52Mと52Nの2本のピンが一方のホストに挿入されたカードを検出する場合、回路184及び/又は186に通電する、例えば188、190のスイッチを閉じることができる。」

図9から、スイッチ160、162はホスト・スタック側壁の内側面に配置されている。

上記記載事項イないしニ及び図1ないし10からみて、引用文献には次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されている。
「大きさ、及び、ICカードの識別を行うスイッチの可動接点あるいはピン、の異なる、複数種類のICカードを選択的に使用するホスト・スタックであって、ホスト・スタック本体は、左右側壁及び奥壁よりなり、左右側壁には使用されるICカードの枚数及び側面の形状に合わせたガイドウェイがその全長に亘って形成され、側壁の内側面にはICカードの識別を行うスイッチの可動接点が複数段配置され、奥壁にはカードの情報をやりとりしたり、情報を記憶するための接点位置が適宜配置されている、ICカード用ホスト・スタック。」

3.対比

本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、
引用文献記載の発明において、ピン52M、ピン52Nにより、ICカードのタイプ(タイプ1?3)を識別するとともに、スイッチの可動接点でICカードのタイプ(タイプ4)を識別しているから、引用文献記載の発明における「ICカードの識別を行うスイッチの可動接点あるいはピン」は本願発明における「識別端子」に相当する。
引用文献記載の発明における「ICカード」は「カード」及び「メモリーカード」に相当し、同様に「ホスト・スタック」は「コネクタ」に、「側面の形状」は「側壁形状」に、「ガイドウェイ」は「受容部」に、「ICカードの識別を行うスイッチの可動接点」は「カード識別端子」に、「情報をやりとりしたり、情報を記憶するための接点位置」は「蓄積情報を取り出し、叉はカードに電子情報を書き込むための端子」に、それぞれ相当する。
よって、両発明は、
「大きさ及び識別端子の異なる、複数種類のカードを選択的に使用するコネクタであって、コネクタ本体は、左右側壁及び奥壁よりなり、左右側壁には使用されるメモリーカードの枚数及び側壁形状に合わせた受容部がその全長に亘って形成され、側壁の内側面にはカード識別端子が複数段配置され、奥壁にはカードの蓄積情報を取り出し、叉はカードに電子情報を書き込むための端子が適宜配置されている、メモリーカード用コネクタ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点

複数種類のカードに関して、本願発明においては、「MMCカード、SDカード等大きさ及び識別端子等の異なる、使用頻度の高い」と限定されているのに対し、
引用文献記載の発明においては、「大きさ及び識別端子の異なる」と限定されている点。

4.判断

相違点に関して

使用対象となるカードとして、使用頻度の高いものを選ぶことは、通常行なわれることであり、MMCカードもSDカードも、この出願前においてICカードとして使用頻度の高いものであるから、引用文献記載の発明において、複数種類のICカードに関して「MMCカード、SDカード等大きさ及び識別端子等の異なる、使用頻度の高い」との限定を行うことは当業者が容易に想到し得ることである。

しかも、本願発明は引用文献記載の発明から当業者が予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも言えない。

5.むすび

したがって、本願発明は、引用文献記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-04 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2008-06-23 
出願番号 特願2000-165932(P2000-165932)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 孝明  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 清水 富夫
長崎 洋一
発明の名称 メモリーカード用コネクタ  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 岩佐 義幸  
代理人 来間 清志  
代理人 徳永 博  
代理人 杉村 興作  
代理人 冨田 和幸  

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