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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1182251
審判番号 不服2006-3393  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-23 
確定日 2008-08-07 
事件の表示 特願2000-107073「磁気記録媒体及び磁気記憶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月19日出願公開、特開2001-291220〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成12年4月7日の出願であって、平成17年10月3日付けで手続補正がなされたが、平成18年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月23日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年10月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】基板上に、非磁性の下地層と、hcp構造中間層と、磁気記録層とを積層してなる磁気記録媒体であって、
前記下地層は、Crを主成分とし、Mo、W、Ti、Ir、Ru及びReからなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含有する合金からなり、
前記hcp構造中間層は、CoCrと、Mo、W、Ti、Ta、Ir、Ru及びReからなる群から選択された少なくとも1種類の元素のみを含む合金からなり、その膜厚が1nm?8nmであり、
前記磁気記録層は、Coを含むと共に、Crを10から18at%未満、Ptを5から12at%及びBを10から20at%含むことを特徴とする磁気記録媒体。」

2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由で引用された特開平4-221418号公報(以下「引用例1」という。)には、「磁気記録体」に関して次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(ア)「【請求項1】 非磁性体上に、Cr、Mo、Wやこれらの合金の薄膜からなる結晶配向用下地層と、この結晶配向用下地層上にCo合金の薄膜からなるCo合金層とが連続して形成されて、HCP相のC軸がほぼ面内方向に配向してなる磁性層を備えた磁気記録体において、前記Co合金層の成分に、少なくともPtとBを含んでいることを特徴とする磁気記録体。
【請求項2】 前記Co合金層の組成として、3?30at%のPtと、0.5?15at%のBを包含していることを特徴とする請求項第1項記載の磁気記録体。
【請求項3】 前記Co合金層に、Cr、Ni、Taを少なくとも1種含有していることを特徴とする請求項第1項または第2項記載の磁気記録体。」(特許請求の範囲の請求項1?3)
(イ)「【0002】
【従来の技術】上記した種類の磁気記録体は、従来、非磁性体上に、蒸着法やスパッタ法で、Cr、Mo、Wまたはこれら主成分とする合金膜を結晶配向用下地層として形成し、該下地層上にCoまたはCo合金膜を連続的に形成して、HCP相のC軸がほぼ面内方向に配向してなる磁性層を有するものとして形成され、高密度記録可能なハードディスク媒体として多用されている。現在、上記磁性層の組成としては、その特性が比較的良好なCoNiCr、CoCrTa、CoCrPt、CoNiPt、CoCrPtTa等が用いられている。ところで、従来の磁気記録体の保磁力の発生メカニズムは次の通りである。すなわち、非磁性基体上にCr等の下地層を形成すると、そのBCC(110)面が基体面と平行になるように結晶配向し、かつ下地層厚さ方向に柱状粒子が成長する。この下地層上に連続的にCo合金磁性層を形成すると、磁性層のHCP相(002)のC軸の格子間距離と下地層(110)面の格子間距離がほとんど等しいため、Co合金磁性層はC軸が基体面に平行になるようにエピタキシャル成長する。このCo合金磁性層のHCPのC軸は磁化容易軸なので、該Co合金磁性層は、面内磁化膜となる。また、Cr等の下地層は、比較的明瞭な柱状粒子構造をとるので、このCr膜上に成長したCo合金磁性膜も相互に隔離した粒子構造となる。更に、Co合金磁性膜にCrを含む媒体においては、磁性体であるCoを、磁性膜中に含まれる非磁性Crがまわりを取り囲むように偏析し、磁性層自体も相互に隔離した粒子構造を形成する。なお、更に、Co合金磁性膜中にPtを含む媒体においては、磁性層のCoのHCP(002)相とCoPtのFCT(111)相が共存した形になり、磁壁が固着化されて高保磁力を示す。このような結晶磁気異方性をもった単磁区粒子構造となる結果、高保磁力が発生する。」
(ウ)「【0005】
【作用】今回、発明者らは、CoPt合金磁性相にBを添加すると、その保磁力が増大し、極めて高い保磁力が発現されることを見出した。この保磁力の増大は、Ptが添加されているCo合金磁性層にのみ認められ、Ptを包含していないCo合金磁性層では、Bを添加しても保磁力の増大は認められなかった。また、X線解析の結果、Bを添加した場合は、CoPtのFCT相の形成が促進されており、このFCT相の混入により保磁力が増大しているものと考えられる。また、従来このタイプの磁性層において、保磁力を増大させる効果を有することが知られていたCr、Ni、Taの元素について検討した結果、本発明のCo-Pt-B系においても従来通り保磁力の増大に有効であることが分かった。Cr、Ni、Taの元素の作用については、従来と同様と考えられる。(略)」
(エ)「【0007】まず、磁性膜として、Co-20at%Pt、Co-18at%Cr-12at%Pt、Co-20at%Ni-6at%Pt、Co-12at%Cr-2at%Ta-10at%Ptに、それぞれBをその添加量Xを変えて、その各種組成割合のCo-20at%Pt-Xat%B、Co-18at%Cr-12at%Pt-Xat%B、Co-20at%Ni-6at%Pt-Xat%B、Co-12at%Cr-2at%Ta-10at%Pt-Xat%B磁性膜を、非磁性基体上に形成したCr結晶配向用下地層上に連続してスパッタ法により形成し、得られた磁気記録体の面内保磁力すなわち磁気記録体の膜面に平行方向の保磁力および磁性層の飽和磁化を測定した。(略)
【0008】図1のグラフから分かるように、磁性膜の組成により保磁力の絶対値と最大値をとるX量は異なるが、0.5at%から15at%のBを添加すると、無添加のものに比べて保磁力が300?600Oe増加した。また、図2のグラフから分かるように、B添加量を増しても、飽和磁化は緩やかにしか減少せず、磁気特性はほとんど劣化しなかった。」(実施例の項、図1、図2)
(オ)「【0010】更に、Co-Cr-Pt-B系合金磁性層において、Crの量を18at%、Bの量を3at%と一定にし、Pt量を変化させたときの保磁力を測定した。その結果を図4のグラフに示した。下地層と磁性層の厚さは、上記実験の場合と同様である。この図4のグラフから分かるように、高保磁力が得られるPt組成は、3?30at%である。(略)」
(カ)「【0012】以上総合すると、本発明に係るB添加の効果は、Cr下地層を有する磁気記録体にのみ有効であり、また、Pt組成が3?30at%の場合にB添加が有効であり、Bの添加量としては、0.5?15at%が有効である。更にまた、Cr、Ni、Taの単独あるいは複数の元素を添加した場合には、Co-Pt-B系磁性層より、更に高い保磁力が得られる。
【0013】なお、上記実施例においては、磁性層組成として、Co-20at%Pt、Co-18at%Cr-12at%Pt、Co-20at%Ni-6at%Pt、Co-12at%Cr-2at%Ta-10at%Ptに、それぞれBを添加したものについて説明したが、本発明における磁性層組成は、これに限られるものでなく、Ptを3at%以上30at%以下含有するCo基合金であるならどのようなものであってもよい。また、下地層としてCr層を用いたが、その上に連続して形成される磁性層のC軸の結晶配向をほぼ膜面方向に制御するCr、Mo、Wやこれらの合金およびこれらの合金を主成分とする合金を用いてもよい。」

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1には、特に上記2(ア)(下線部参照)に摘示した記載事項によれば、
「非磁性体上に、Cr、Mo、Wやこれらの合金の薄膜からなる結晶配向用下地層と、この結晶配向用下地層上にCo合金の薄膜からなるCo合金層とが連続して形成されて、HCP相のC軸がほぼ面内方向に配向してなる磁性層を備えた磁気記録体において、前記Co合金層の成分に、少なくともPtとBを含んでいる磁気記録体であって、
前記Co合金層の組成として、3?30at%のPtと、0.5?15at%のBを包含し、
前記Co合金層に、Crを含有している、磁気記録体。」
の発明が記載されている。

引用例1に記載された発明の「磁性層」「磁気記録体」は、それぞれ本願発明の「磁気記録層」「磁気記録媒体」に相当している。
引用例1に記載された発明の「非磁性体」は、「非磁性基体」(上記(エ)参照)が具体例であるから、本願発明の「基板」に相当している。
引用例1に記載された発明の「結晶配向用下地層」は、本願発明の「下地層」に相当し、「Cr、Mo、Wやこれらの合金の薄膜からなる」ので、「非磁性」であることが明らかである。また、引用例1に記載された発明の「Cr、Mo、Wやこれらの合金の薄膜からなる結晶配向用下地層」は、Cr下地層、Crを主成分としてMoやWを含有する合金下地層をその例として含むことが明らかであるから、本願発明の「Crを主成分とし、Mo、W、Ti、Ir、Ru及びReからなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含有する合金」のうち、「Crを主成分とし、Mo、Wから選択された少なくとも1種類の元素を含有する合金」において共通している。
引用例1に記載された発明の「磁性層」は、「Co合金層」の組成として、「3?30at%のPtと、0.5?15at%のB」を含有し、かつCrを含有しているので、本願発明の「磁気記録層」と、Coを含むと共に、Cr、Pt及びBを含む層であることで共通している。

そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明は、
「基板上に、非磁性の下地層と、磁気記録層とを積層してなる磁気記録媒体であって、
前記下地層は、Crを主成分とし、Mo、Wから選択された少なくとも1種類の元素を含有する合金からなり、
前記磁気記録層は、Coを含むと共に、Cr、Pt及びBを含む、磁気記録媒体。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。

(相違点1) 「磁気記録層」について、本願発明は、「Crを10から18at%未満、Ptを5から12at%及びBを10から20at%含む」と特定しているのに対し、引用例1に記載された発明は、そのように特定しておらず、「3?30at%のPtと、0.5?15at%のBと、Crを含有」するものである点。
(相違点2) 本願発明は、「hcp構造中間層」を備え、「hcp構造中間層は、CoCrと、Mo、W、Ti、Ta、Ir、Ru及びReからなる群から選択された少なくとも1種類の元素のみを含む合金からなり、その膜厚が1nm?8nm」と特定しているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのように特定していない点。

(2)相違点についての判断
(相違点1について)
引用例1において、磁気記録層のCo合金層中のCrの含有量については、任意であり、具体例として0at%と18at%の例(上記(エ)の「Co-20at%Pt-Xat%B、Co-18at%Cr-12at%Pt-Xat%B」(ここで、Xは0.5at%から15at%程度。)参照)が記載され、Crを添加するとCo-Pt-B系磁性層より更に高い保磁力が得られる効果を奏すること(上記(ウ)(カ)参照)が記載されている。してみれば、「Co-20at%Pt-Xat%B」「Co-18at%Cr-12at%Pt-Xat%B」の例示に基いて、0?18at%の間のCrを含有させることは当業者が適宜なし得ることであって、本願発明のように18%に近い18%未満程度のCrを含有させることは、当業者が必要に応じ適宜なし得ることである。また、本願発明の「10から18at%未満」という範囲に格別臨界的意義があるものでもない。
次にBの含有量について以下検討する。
引用例1に記載された発明は、Bを「0.5at%?15at%」を含有するもので、Bを添加することにより保磁力が増加する作用効果(上記(エ)参照)を有しており、引用例1には、具体例として、Bが0.5?15at%の範囲で含有されるCo-Cr-Pt-B層が面内保磁力や飽和磁化の値と共に示されている(上記(エ)図1、図2参照)。そうすると、本願発明の「10から20at%」の範囲は、引用例1に記載された発明と「10から15at%」において重複するのであるから、本願発明のBの含有量は当業者が適宜選択し得る程度のものにすぎない。
次にPtの含有量について以下検討する。
引用例1に記載された発明は、「3?30at%」を含有するもので、Ptを添加することにより高保磁力が得られる(上記(オ)参照)作用効果を有し、具体例として、12at%(上記(エ)の「Co-18at%Cr-12at%Pt-Xat%B」参照)が示されている。そうすると、本願発明のPtの範囲「5から12at%」は、引用例1に記載された発明の範囲「3?30at%」内であり、かつ具体例である12at%を含む範囲であるから、本願発明のPtの含有量は当業者が適宜選択し得る程度のものにすぎない。
以上より、引用例1に記載された発明において、その磁気記録層のCo合金層の組成を相違点1のように選定することは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
引用例1に記載された発明は、下地層に直接磁性層を積層して、hcp相のc軸がほぼ面内方向に配向してなる磁性層を備えるものであるが、hcp相のc軸がほぼ面内方向に配向してなる磁性層の配向性を良好にするために、下地層と磁性層の間に、CoCrと、Mo、Ta、Ti、W等の元素を含む合金で1?100nm程度のhcp構造中間層を設けることは、周知の事項である。例えば、原審の拒絶査定において例示された特開平10-233014号公報(請求項1?2、段落8、12?14)には、hcp構造中間層として、Co-M系合金(MはCr、Ti、W、Mo等の元素から選ばれる1種又は2種以上の元素)、膜厚1?100nm(特に2?50nm)が例示されている。また、同じく拒絶査定において例示された特開平10-233016号公報(請求項1?4、段落12、23?25)には、hcp構造中間層として、CoCrを主成分とし、Mo、Ta、Ti、Wからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含み、5?20nm程度の層が例示されている。また、特開平8-329444号公報(請求項1?4、段落10?14、段落24?25)には、hcp構造中間層として、Co-M系合金(MはCr、Ti、W、Mo等の元素から選ばれる1種又は2種以上の元素)、膜厚1?100nm(特に5?50nm)が例示されている。
してみれば、引用例1に記載された発明において、その下地層と磁性層の間に、上記磁性層の配向性をより向上させるために、CoCrと、Mo、Ta、Ti、W等の元素を含む合金で1?100nm程度のhcp構造中間層を設けることは、上記周知の事項に基づき当業者が適宜なしうることであり、その際、膜厚は、上に形成される磁性層の配向性を向上するに足りる程度の厚さに当業者が適宜選定しうるものであり、本願発明の「1nm?8nm」の数値範囲に格別臨界的意義があるわけではないから、上記相違点2は、当業者が容易に想到しうることである。

そして、相違点1及び2を総合的に検討しても、本願発明の効果は、引用例1に記載された発明及び周知の事項から当業者であれば予測される範囲内であるので、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものである。

なお、請求人は、請求の理由で、(ア)磁気記録層のCr含有量が18at%未満である点で臨界的意義がある旨、(イ)特定の組成の下地層及びhcp構造中間層を設けることにより積層体として相乗的な作用効果がある旨を、主張している。
しかしながら、引用例1には、「18at%未満」に極めて近い18at%の具体例が記載され、かつ引用例1に記載された発明は18at%未満のものを特段除外するものでない。一方本願発明において、18at%を除外する「18at%未満」の臨界的意義について、明細書及び図面に根拠が記載されていない。請求人は追加の実験データを示してその臨界的意義を主張しているが、当初から明細書に記載されているものではなく、上記(ア)の主張は採用できない。
また、hcp構造中間層は、その組成も膜厚も、上記のとおり周知の事項であって、Co合金磁性層におけるhcp構造のc軸の面内配向性を向上するために適宜採用される事項であるから、周知として例示した文献に本願発明の磁気記録層の特定の組成のCoCrPtBが記載されていなくても、周知のhcp構造中間層を引用例1に記載された発明に採用することは、十分動機付けがあるといえる。
請求人は、下地層及びhcp構造中間層をそれぞれ特定の組成のものに選択した意義、及び積層体としての相乗的な作用効果を、請求の理由において追加の実験データを示して主張しているが、当初から明細書に記載されているものではないから、上記(イ)の主張は採用できない。また、下地層、hcp構造中間層、磁性層のそれぞれ組成の組み合わせは、引用例1及び周知の事項から当業者が必要に応じ適宜なし得る程度のものであり、その作用効果が格別であるともいえない。

4 むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-04 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2008-06-24 
出願番号 特願2000-107073(P2000-107073)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 慎  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 溝本 安展
横尾 俊一
発明の名称 磁気記録媒体及び磁気記憶装置  
代理人 伊東 忠彦  
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