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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1182260 |
審判番号 | 不服2006-7503 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-20 |
確定日 | 2008-08-07 |
事件の表示 | 特願2001-232082「粘度を測定するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月13日出願公開、特開2003- 42924〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は平成13年7月31日の出願であって、平成16年8月20日付け拒絶理由通知に対して、同年11月12日付けで手続補正がなされたが、平成18年3月10日付けで拒絶査定され、これに対し、同年4月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年5月19日に明細書について手続補正がされたものである。 II.平成18年5月19日付け手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成18年5月19日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 II-1-1.特許請求の範囲についてする補正 本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので、特許請求の範囲についてする補正は、本件補正前の請求項1の「共振周波数からわずかにずらした周波数」なる事項を、「共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い固定周波数f(=fo+[0.01?0.06]KHz)」と補正するとともに、同請求項3の「粘性抵抗伝達部材を接合させたピエゾ振動素子」なる事項を「粘性抵抗伝達部材を接合させてなり、当該ピエゾ振動素子の共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い固定周波数f(=fo+[0.01?0.06]KHz)の交流の電気信号を入力信号とするピエゾ振動素子」と補正するものであって、いずれも発明特定事項を限定するものであるので、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている発明特定事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かを、請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について、以下に検討する。 II-1-2.本願補正発明 本願補正発明は、次のとおりのものである。 「【請求項3】粘性抵抗伝達部材を接合させてなり、当該ピエゾ振動素子の共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い固定周波数f(=fo+[0.01?0.06]KHz)の交流の電気信号を入力信号とするピエゾ振動素子と、試料を入れる容器と、該素子に印加する交流電気信号を発生する装置と、該素子から出力される電流信号を電圧信号に変換させて測定する装置を備えていることを特徴とする粘度測定装置。」 II-1-3.引用文献 (3-1)引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-46714号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。 (ア)段落【0001】 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は検液子を測定液中で振動させる形式の粘度計、同密度形、濃度計等の検液装置に関する。」 (イ)段落【0019】 「【0019】 【発明の実施の形態】以下本発明を図1乃至図3に基いて説明する。この検液装置は振動子1と測定液中に浸着される検液子2と振動伝達軸3とから成る振動ユニットを検出要素として有する。」 (ウ)段落【0026】 「【0026】8は検液子2を測定液9に浸着し、共振させた時の振動の変化を検出するセンサーである。このセンサー8は圧電素子から成り、機械→電気(電圧)変換機能を有し、同じく圧電素子から成る振動子1は電気(電圧)→機械変換機能を有する。この場合圧電形振動子1を上記センサーとして兼用することを妨げない。」 (エ)段落【0028】?段落【0030】 「【0028】上記ケーシング内に振動子1又は/及びセンサー8の動作に必要な回路基板10を内蔵する。この回路基板10は振動子1に近接する位置に配し、振動子1を内蔵する振動子収納室11内に内蔵する。 【0029】例えば図示のように、ケーシング4の端壁7に回路基板10を取り付け、この回路基板10と上記振動子1及びセンサー8とを可撓導体線材から成るリード12で接続する。 【0030】又上記端壁7にはコネクター13を取り付け、このコネクター13と回路基板10とを可撓ケーブル14にて接続し、又このコネクター13に外部装置をケーブルによって抜差し可に接続する。この外部装置は例えば、共振駆動装置及び演算装置、表示装置等である。」 (オ)段落【0033】?段落【0034】 「【0033】図2は上記振動ユニットの共振の振動波を示し、この共振周波数の設定によって上記検液子2と振動子1間の伝達軸3上に第1,第2ノードP1,P2を存在せしめる。 【0034】実施に応じ上記振動子1と検液子2とは振動伝達軸3を介して共振するように連結し、上記第1支持手段5と第2支持手段6間に延在する振動伝達軸部に共振周波数設定用の質量体15を形成し、該質量体15の一端から延出する振動伝達軸部3aと同他端から延出する振動伝達軸部3bとを上記第1,第2支持手段5,6にて夫々支持する構成とする。」 (カ)【図2】 そして、【図2】には、振動子1と検液子2とが振動伝達軸3を介して連結され、検液子2が測定液9中に浸されている様子が図示されている。 これらの記載からして、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「圧電素子からなる振動子に振動伝達軸を介して検液子を連結させてなり、当該圧電素子は、共振駆動装置から共振周波数の電気信号が入力されて前記電気信号を機械振動に変換するとともに、前記検液子を測定液に浸着して共振させた時の振動の変化を検出し、電圧信号に変換して出力する粘度計。」 II-1-4.対比 そこで、本願補正発明を、引用発明と対比する。 圧電素子とピエゾ素子とが同義であることは周知の事項であるので、引用発明の「圧電素子からなる振動子」が本願補正発明の「ピエゾ振動素子」に相当する。また、引用発明の「粘度計」が、本願補正発明の「粘度測定装置」に相当する装置であることも明らかである。 そして、引用発明の「振動伝達軸」ならびに「検液子」は、「圧電素子からなる振動子に振動伝達軸を介して検液子を連結」されるものであって、前記「検液子」を「測定液に浸着して共振させた時の振動の変化を検出」して「粘度測定」を行うためのものであることからして、本願補正発明の「粘性抵抗伝達部材」に相当する部材であって、引用発明の前記「振動伝達軸」が「圧電素子からなる振動子に」接合していることも明らかである。 ここで、引用発明の「共振駆動装置」は、「圧電素子からなる振動子」に「共振周波数の電気信号」を入力するものであることからして、交流電気信号を発生していることは明らかであるので、本願補正発明の「該(ピエゾ振動)素子に印加する交流電気信号を発生する装置」に相当する。 また、引用発明の「(当該圧電素子は、)検液子を測定液に浸着して共振させた時の振動の変化を検出し、電圧信号に変換して出力する」ことと、本願補正発明の「該(ピエゾ振動)素子から出力される電流信号を電圧信号に変換させて測定する装置」とは、「ピエゾ振動素子の出力信号を電圧信号として測定する装置」である点で共通している。 加えて、粘度の被測定対象が容器に入れられていることは極めて一般的な事項であるし、引用発明の「測定液」も何らかの容器内に入れられていることは、図2の記載からしても明らかであるので、引用発明が本願補正発明の「試料を入れる容器」に相当する部材を有することは当然の事項である。 すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致し、 (一致点) 「粘性抵抗伝達部材を接合させてなり、交流の電気信号を入力信号とするピエゾ振動素子と、試料を入れる容器と、該素子に印加する交流電気信号を発生する装置と、該素子の出力信号を電圧信号として測定する装置を備えている粘度測定装置。」 次の点で相違する。 (相違点1)ピエゾ振動素子の入力信号が、 本願補正発明は「当該ピエゾ振動素子の共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い固定周波数f(=fo+[0.01?0.06]KHz)の交流の電気信号」であるのに対し、引用発明は「圧電素子からなる振動子(ピエゾ振動素子)の共振周波数の電気信号」である点。 (相違点2)ピエゾ振動素子の出力信号を電圧信号として測定する装置が、 本願補正発明は「ピエゾ振動素子から出力される電流信号を電圧信号に変換させて測定する装置」であるのに対し、引用発明は「圧電素子からなる振動子(ピエゾ振動素子)が、電圧信号に変換して出力する装置」である点。 II-1-5.検討・判断 そこで、上記相違点について検討する。 (5-1)相違点1について 本願の発明の詳細な説明ならびに図面には、ピエゾ振動素子の共振周波数、ならびに、入力信号をピエゾ振動素子の共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い固定周波数f(=fo+[0.01?0.06]KHz)の交流の電気信号とすることについて、以下の記載がある。(下線は当審で付加した。) (a)「【0005】 【発明の実施の形態】 本発明で用いるピエゾ振動素子(圧電振動素子)(以下、単に素子とも言う)は、一般には、圧電ブザーや、スピーカーの代用(通信機用圧電レシーバ)等に用いられているものである。この素子は交流の電気信号を入力信号として印加すると、その入力信号に応じた電流信号を出力信号として出力させることができる。 また、この電流信号は、出力抵抗によって電圧信号に変換することができる。この素子に交流信号を入力信号として印加し、その素子から出力信号を電流信号として出力させ、これを電圧信号に変換させた場合、その出力電圧は、素子に印加する電気信号の周波数によって変化し、その電気信号の周波数が、その素子に固有の共振周波数(共鳴周波数)に近づくにつれて急激に低下し、その共振周波数と一致する周波数の電気信号を印加したときに、その出力電圧は最小となる。一方、その電気信号の周波数が、その素子に固有の共振周波数から遠ざかるにつれて急激に上昇して行く。この場合、その素子の表面に加重(力)を加えると、その共振周波数は高周波数側にシフトし、そのシフト幅(シフト周波数)はその加重に対応して変化し、その加重量が大きくなるにつれてより高周波数側にシフトする。」 (b)「【0006】 図1に、素子に対する入力信号周波数(KHz)と、出力信号の電圧(mV)との関係の1例を示す。 図1において、実線は素子に粘性抵抗加重を加えない場合の入力信号の周波数と出力の電圧との関係を示す。」(平成16年11月12日付け手続補正書による補正後の記載) (c)「【0007】 図1から分かるように、共振周波数の近傍においては、素子に粘性抵抗の加重を加えた場合の出力電圧と、素子に加重を加えない場合の出力電圧との間に大きな差異を得ることができる。例えば、共振周波数の近傍の周波数4.20KHzでは、両者の最大差異は、約400mVとなる。」 (d)「【0008】 次に、前記4.20KHzの点における出力電圧aと、その出力電圧aと粘性加重を加えない場合の出力電圧bとの差(ΔmV)を表1に示す。」 (e)【0009】の【表1】には、「粘性標準液の様々な粘度と、出力電圧ならびに出力電圧差の関係」が示されている。 (f)「【0010】 本発明に用いる素子において、その共振周波数は、通常、2.7?6.5KHz、好ましくは4.1?4.3KHzである。また、その素子に加える交流電気信号においては、その電圧は100mV?1000mV、好ましくは500?700mVである。素子の直径は、通常、20?35mm程度である。」 (g)「【0011】 本発明で入力信号として用いる電気信号の周波数fは、未加重素子の共振周波数foの近傍であれば良く、通常、その共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い周波数(f=fo+[0.01?0.06]KHz)、好ましくは0.016KHz高い周波数である。」 (h)【図1】には、「ピエゾ振動素子に対する入力信号周波数(KHz)と、出力信号の電圧(mV)との関係の1例」が図示されている。 これらの記載からすると、本願補正発明は、ピエゾ振動素子の出力電圧は、その共振周波数近傍において、素子に加重が加わらない場合と加重が加わった場合とで大きな差異が生ずるため、その出力電圧差を利用する意図の下に、ピエゾ振動素子への入力電気信号の周波数を「例えば、共振周波数の近傍の周波数4.20KHz」としたものであって、その周波数は、「未加重素子の共振周波数foの近傍であれば良く」、「通常、その共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い周波数(f=fo+[0.01?0.06]KHz)、好ましくは0.016KHz高い周波数」であるにすぎず、共振周波数foの近傍の周波数として、共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い周波数を選択することによって特異的な作用効果が得られること、ならびに、その選択についての臨界的意義や根拠を何ら見いだすことはできない。 一方、圧電振動素子と結合した探針への加重を、圧電振動素子に電気信号を印加して測定する装置において、圧電振動素子に共振周波数近傍の周波数を印加することは、例えば、特開平7-248335号公報(以下、「周知例1」という。)や特開2000-258330号公報(以下、「周知例2」という。)にも記載されているように周知の事項であって、前記周知例1、周知例2には以下の記載がある。(下線は当審で付加した。) (A)周知例1の段落【0010】 「【0010】 【作用】圧電薄膜の両側の電極に電界を加えると、…片持ち振動がカンチレバーに励起される。この時、駆動用電圧が圧電薄膜に印加された際の薄膜に流れる電流を検出すれば圧電薄膜のインピーダンスを知ることができる。圧電振動子のインピーダンスは加える交流電圧の周波数が振動子に固有の共振周波数に近づくとその前後で大きく変化する。従って、共振周波数付近の周波数を持つ交流電圧を圧電薄膜に加えカンチレバーを振動させている場合、探針と被検物の間に原子間力が作用するとカンチレバーの共振周波数がカンチレバー単独の共振周波数からずれるため、インピーダンスが大きく変化する。…」 (B)周知例1の段落【0015】、【0016】 「【0015】図2に、本発明に基づく圧電薄膜を持つAFMカンチレバーを使用し圧電薄膜を帰還回路の一部とした表面形状測定の一態様を示す。発振器(9)よりAFMカンチレバー(13)の共振周波数付近の交流駆動信号をカンチレバー上の圧電薄膜へ加える。共振周波数付近では圧電薄膜のインピーダンスは図3に示すように大きく変化する。例えば、図中(a)で示される周波数でカンチレバーを駆動するとする。圧電薄膜に流れる電流は検出抵抗(12)により電圧として高抵抗差動アンプ(14)により検出し、位相補正回路(15)により駆動信号に対して位相を合わせ、同時にゲイン可変アンプ(10)によりゲインを調整し、ロックインアンプ(11)により位相検波を行い、測定する。この際、正帰還回路の増幅率と位相を調整してAFMカンチレバーと電気回路とからなる系全体のQ値をカンチレバー単独のQ値より高めることにより、検出感度をさらに向上させることもできる。 【0016】共振しているAFMカンチレバーの探針と被検物との間に力が働くと、共振特性は図3中に示すように低周波数側へシフトする。この時、圧電薄膜のインピーダンスは(a)から(a’)へと変化し、これをロックインアンプで検出すれば、原子間力の変化、すなわ被検物の表面形状を知ることができる。」 (C)周知例1の【図3】 前記(B)に摘記した記載に関連して、カンチレバーの駆動周波数である(a)が、インピーダンスの最も低い位置から、高周波側に少しずらした位置に設定されていることが、図示されている。 (D)周知例2の段落【0008】 「【0008】ここで、プローブ901を試料902の表面に接近させ、その後、スキャナ904のX電極908とY電極909に電圧を周期的に印加し、試料902をプローブ901に対して走査した場合を考える。まず、プローブ901と音叉型水晶振動子1001を無負荷状態で励振手段によって振動させ、その共振特性を測定する。これは、プローブ901の振動変化を音叉型水晶振動子1001によって電圧信号変化に変換することで行う。プローブ901を音叉型水晶振動子1001の固有振動数近傍(近傍であって固有振動数に一致させるものではない)で振動させながら、試料902に接近させていくと、せん断力(シアフォース)によってプローブ901の振動状態が変化する。その変化は、例えば振幅量変化であり、あるいは位相の変化である。これらの変化量をある一定の値に設定すれば、プローブ901と試料902の距離は一義的に決められる。」 これらの記載事項を勘案すると、前記周知事項である「圧電振動素子に共振周波数近傍の周波数を印加すること」は、共振周波数近傍における圧電薄膜のインピーダンスの大きな変化を利用することを意図するものと認められ、圧電振動素子への付加加重を検出する際、圧電振動素子に印加する周波数を共振周波数近傍の周波数において選択することは、インピーダンスの大きな変化を利用し得る、すなわち、出力電圧の大きな変化を利用し得るよう、当業者が通常行っている事項にすぎない。 してみると、引用発明において、圧電素子に印加する周波数を、周知の「共振周波数近傍の周波数」とするとともに、その具体的な周波数として、圧電素子の出力電圧の大きな変化を利用できるような周波数を選択すること、すなわち、使用する圧電素子の特性、被測定物の性状、感度等々を勘案し、測定に際して最も効果が得られるような周波数だけ共振周波数からずらして「共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い固定周波数」と設定することは、当業者が格別の困難なく、実験的に決定し得る事項にすぎない。 (5-2)相違点2について ピエゾ素子(圧電素子)から出力される電流信号を電圧信号に変換し、ピエゾ素子の出力信号を測定することは周知の事項(必要ならば、前掲の特開平7-248335号公報の【図2】参照)であり、引用発明の「圧電素子からなる振動子(ピエゾ振動素子)が、電圧信号に変換して出力する装置」に代えて、「ピエゾ振動素子から出力される電流信号を電圧信号に変換させて測定する装置」とすることは、単なる設計変更にすぎない。 そして、本願の出願当初の明細書ならびに図面を参酌しても、本願補正発明が、引用発明ならびに周知事項から当業者が予想し得る域を超える格別な作用効果を奏するものであるとも認められない。 II-1-6.まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明ならびに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正のうち特許請求の範囲についてする補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものである。 II-2.本件補正についての結び 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであるので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について III-1.本願発明 平成18年5月19日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成16年11月12日付け手続補正書によって補正された、明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであるところ、請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項3】 粘性抵抗伝達部材を接合させたピエゾ振動素子と、試料を入れる容器と、該素子に印加する交流電気信号を発生する装置と、該素子から出力される電流信号を電圧信号に変換させて測定する装置を備えていることを特徴とする粘度測定装置。」 III-2.引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献、及び、その記載事項は、前記「II.〔理由〕II-1-3.」に記載したとおりである。 III-3.対比・判断 本願発明は、上記「II.〔理由〕II-1-2.」で検討した本願補正発明から、「(ピエゾ振動素子の)入力信号である交流の電気信号」に関する限定的事項である、「当該ピエゾ振動素子の共振周波数foよりも0.01?0.06KHz高い固定周波数f(=fo+[0.01?0.06]KHz)」との事項を削除したものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、「II.〔理由〕II-1-5.」で検討したとおり、引用発明ならびに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用発明ならびに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 III-4.むすび 以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-04 |
結審通知日 | 2008-06-10 |
審決日 | 2008-06-23 |
出願番号 | 特願2001-232082(P2001-232082) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野田 洋平 |
特許庁審判長 |
村田 尚英 |
特許庁審判官 |
高橋 泰史 田邉 英治 |
発明の名称 | 粘度を測定するための方法及び装置 |
代理人 | 西澤 利夫 |