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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1182265 |
審判番号 | 不服2006-10790 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-05-25 |
確定日 | 2008-08-07 |
事件の表示 | 特願2005-106608「おにぎり包装用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日出願公開、特開2006-280305〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成17年4月1日の出願であって、平成17年11月14日付けの拒絶理由通知に対して、平成17年12月12日に意見書及び手続補正書が提出され、そして、平成18年1月17日付けの再度の拒絶理由通知に対して、平成18年3月17日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成18年4月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年5月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年6月23日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成18年6月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定 (1)補正の却下の決定の結論 平成18年6月23日付けの手続補正を却下する。 (2)理由 平成18年3月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である、 「略矩形状の海苔シートを表裏2枚の樹脂フィルムの間に積層して形成され、前記樹脂フィルムによりおにぎりを内包させて保持し、そのフィルム開封時に前記海苔シートを樹脂フィルム間から離脱させて前記おにぎりに貼り付ける、おにぎりを内包したおにぎり包装用シートであって、 前記表樹脂フィルムはその略矩形状の中央部を左右に分断する易切断部を有し、前記裏樹脂フィルムは前記易切断部に対応する近傍位置で左裏樹脂フィルムと右裏樹脂フィルムとに左右に分割配置され、前記左裏樹脂フィルムと前記右裏樹脂フィルムとの対向する端部同士がそれぞれ折り返し部を介して重ね合わされており、 前記樹脂フィルムをコの字状に折り曲げるとともにその両サイド側の縁端が対向して重なり合うように折り曲げることで略三角形状に形成された、前記フィルム開封時につまめるようにされたフィルム取り外し用タブを有し、前記フィルム取り外し用タブが形成された状態でおにぎりを内包したおにぎり包装用シート。」を、 「略矩形状の海苔シートを表裏2枚の樹脂フィルムの間に積層して形成され、前記樹脂フィルムによりおにぎりを内包させて保持し、そのフィルム開封時に前記海苔シートを樹脂フィルム間から離脱させて前記おにぎりに貼り付ける、おにぎりを内包したおにぎり包装用シートであって、 前記表樹脂フィルムはその略矩形状の中央部を左右に分断する易切断部を有し、前記裏樹脂フィルムは前記易切断部に対応する近傍位置で左裏樹脂フィルムと右裏樹脂フィルムとに左右に分割配置され、前記左裏樹脂フィルムと前記右裏樹脂フィルムとの対向する端部同士がそれぞれ折り返し部を介して重ね合わされており、 前記樹脂フィルムをその中央でコの字状に折り曲げるとともにその両サイド側の縁端が対向して重なり合うように折り曲げることで略三角形状に形成された、前記フィルム開封時につまめるようにされたフィルム取り外し用タブを有し、前記フィルム取り外し用タブが形成された状態でおにぎりを内包しており、 前記樹脂フィルムは、前記コの字状に折り曲げる際の前記中央の前記両サイド側の縁端に切欠き部を有するおにぎり包装用シート。」に補正することを含むものである。 (2-1)補正の適否 補正後の「前記コの字状に折り曲げる際の前記中央の前記両サイド側の縁端に切欠き部を有する」という事項は、請求項1に係る発明特定事項を限定したものではない。すなわち、補正前の請求項1には、「両サイドの縁端」という事項があるだけで、「切欠き部」という事項が、下位概念として限定されるべき発明特定事項は存在しない。 また、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一であるとも認められない。 したがって、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する、限定的減縮に該当せず、また、請求項の削除、誤記の訂正或いは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。 よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 (2-2)仮に、この補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるとしても、この補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、下記のように、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 (2-2-1)刊行物1の記載事項 原査定で引用された引用文献1である「実願平3-46010号(実開平4-129792号)のマイクロフィルム」(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (a)「おにぎりや寿司飯等の握り飯と海苔等のシート状の食材とが接触しないように、食材を内側シートと外側シートの間に介在させて食材を握り飯上に巻く包装材において、内側シートは2枚のシート材を互いに対向端側が重ね合わせて成り、各シート材の重ね合わせ部に少なくとも1回の折り返しを設けるとともに、両シート材をその折り返し部が互いに侵入し合うように重ね合わせて内側シート側から食材に蒸気等の湿気が伝わらないようにしたことを特徴とする包装材。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1) (b)「ここで、重ね合わせ部Aの構造について説明する。 内側シート材14a,14bの重ね合わせ部Aは、内側シート材14a,14bの内側縁部を重ねるとともに、この重ね合わせ部Aを裏面方向に摘んで摘み部15を形成し(図4参照)、この摘み部15を一方の内側シート14a方向に倒すようにする(図5参照)。 内側シート14と外側シート12との周縁部は熱シールされているが、内シート14の重ね合わせ部Aはシールしないようにする。また、この非シール部分の外側シート12端部にカットテープ18が設けられている。この非シール部分の幅はなるべく狭い方が良い。」(段落【0007】) (c)「まず第6図に示すように、内側シート14の領域B部分に冷凍おにぎり20を載せ、包装材10の他側のC部分を折り返して、B部分とC部分とで冷凍おにぎり20を挟み込む。続いて、図7に示すように、B部分とC部分との重なった耳部22a,22bを折り返して外側シート12上にラベル24a,24b等の接着片を用いて貼り付けて固定することによっておにぎり包装体26(包装飯)を得る(図8)。」(段落【0008】) (d)「おにぎり包装体26内の冷凍おにぎり20を解凍し、あるいは加熱したおにぎり20を取り出すには、上記のようにカットテープ18を引くと、外側シート12は中央から真直ぐに裂け、カットテープ18と略同幅の外側シート12部分を切り除くことができ、外側シート12を2分割することができる。この場合にラベル24a,24bが上記切除部位上に貼着されていないことから、フィルム状の舌片であつても途中で切断されることなく切除できる。 上記のように外側シート12を2分割したら、包装材10のコーナー部D,Eを両外方に引くと、外側シート12、内側シート14が上記のように事実上2分割されていることから、海苔16を残したまま引き抜くことができ、海苔16が巻装されたおにぎり20を取り出すことができる。」(段落【0010】) (e)外側シート12に設けられたカットテープ18に対応する位置に内側シート材14a,14bの重ね合わせ部Aを設けること(図5) (2-2-2)刊行物1に記載された発明 上記摘示(b)の「外側シート12端部にカットテープ18が設けられている」こと、摘示(c)の「内側シート14の領域B部分に冷凍おにぎり20を載せ、包装材10の他側のC部分を折り返して、B部分とC部分とで冷凍おにぎり20を挟み込む」こと、及び摘示(d)の「包装材10のコーナー部D,Eも両外方に引くと、外側シート12、内側シート14が上記のように事実上2分割されている」こと、並びに「図1」乃至「図3」によると、シートは略矩形状になっていることを考慮し、摘示(a)をみると、刊行物1には、 「おにぎりや寿司飯等の握り飯と海苔等のシート状の食材とが接触しないように、食材を略矩形状の内側シートと外側シートの間に介在させて食材を握り飯上に巻く包装材において、外側シート端部にはカットテープが設けられ、内側シートは2枚のシート材を互いに対向端側が重ね合わせて成り、各シート材の重ね合わせ部に少なくとも1回の折り返しを設けるとともに、両シート材をその折り返し部が互いに侵入し合うように重ね合わせて内側シート側から食材に蒸気等の湿気が伝わらないようにし、内側シートの領域B部分におにぎりを載せ、包装材の他側のC部分を折り返して、B部分とC部分とでおにぎりを挟み込み、包装材のコーナー部D,Eを有することを特徴とする包装材」(以下、「引用発明」という。)という発明が記載されていると認定することができる。 (2-2-3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 刊行物1には、「カットテープ18を引くと、外側シート12は中央から真直ぐに裂け、カットテープ18と略同幅の外側シート12部分を切り除くことができ、外側シート12を2分割することができる。・・・外側シート12を2分割したら、包装材10のコーナー部D,Eを両外方に引くと、外側シート12、内側シート14が上記のように事実上2分割されていることから、海苔16を残したまま引き抜くことができ、海苔16が巻装されたおにぎり20を取り出すことができる。」(摘示(d))とあるから、同刊行物記載の包装材10は、シート開封時に海苔を外側シート及び内側シート間から離脱させておにぎりに貼り付けるものであり、また、図5からみて、同包装材の内側シート14は、外側シートに設けられたカットテープ18に対応する近傍位置で内側シート材14a,14bとに左右に分割配置させるようにしたものである(摘示(e))。 そして、引用発明の「外側シート」、「内側シート」、「カットテープ」及び「包装材」は、本願補正発明の「表樹脂フィルム」、「裏樹脂フィルム」、「易切断部」、及び「おにぎり包装用シート」に相当し、引用発明において、「内側シートは2枚のシート材を互いに対向端側が重ね合わせて」なるものであるから、2枚のシート材は、本願補正発明の「左裏樹脂フィルムと右裏樹脂フィルム」に相当するものであり、引用発明の「内側シートの領域B部分におにぎりを載せ、包装材の他側のC部分を折り返して、B部分とC部分とでおにぎりを挟み込」むことは、本願補正発明の「フィルムをその中央でコの字状に折り曲げる」ことに相当するから、両者は、 「略矩形状の海苔シートを表裏2枚の樹脂フィルムの間に積層して形成され、前記樹脂フィルムによりおにぎりを内包させて保持し、そのフィルム開封時に前記海苔シートを樹脂フィルム間から離脱させて前記おにぎりに貼り付ける、おにぎりを内包したおにぎり包装用シートであって、 前記表樹脂フィルムはその略矩形状の中央部を左右に分断する易切断部を有し、前記裏樹脂フィルムは前記易切断部に対応する近傍位置で左裏樹脂フィルムと右裏樹脂フィルムとに左右に分割配置され、前記左裏樹脂フィルムと前記右裏樹脂フィルムとの対向する端部同士がそれぞれ折り返し部を介して重ね合わされており、 前記樹脂フィルムをその中央でコの字状に折り曲げるとともに、前記フィルム開封時につまめる部位を有し、前記フィルム取り外し用部位が形成された状態でおにぎりを内包している、おにぎり包装用シート」で一致し、次の点で相違する。 (イ)フィルム開封時につまめる部位が、本願補正発明では、「その両サイド側の縁端が対向して重なり合うように折り曲げることで略三角形状に形成された、フィルム取り外し用タブ」であるのに対し、引用発明では、「包装材のコーナー部」である点 (ロ)樹脂フィルムには、本願補正発明では、「コの字状に折り曲げる際の前記中央の前記両サイド側の縁端に切欠き部を有する」のに対し、引用発明では、そうでない点 (2-2-4)相違点についての判断 (2-2-4-1)相違点(イ)について 包装おにぎりにおいて、その包装を解くために、略三角形状の摘み部(タブ)を設けることは、周知に属する技術である。(必要ならば、「特開2000-342201号公報」の「突出耳部13」、「特開2000-279114号公報」の「突出した部分」を参照のこと。)そうすると、引用発明に係る「包装材のコーナー部」に代えて、「略三角形状に形成されたフィルム取り外し用タブ」とすること、しかも、それを両サイド側の縁端が対向して重なり合うように折り曲げることで形成することは、上記周知技術から当業者が容易になし得るものである。 (2-2-4-2)相違点(ロ)について 本願出願前に頒布された「特開2004-290045号公報」(以下、「刊行物2」という。)には、 「海苔フィルムNは、所定形状、例えば縦240mm、横150mm程度の矩形状であって、その縦折りした場合の中央の両縁端部に一辺が約10mmの三角形状などの切欠き部Mを設けている(図2参照)。これによって、海苔フィルムNをその中央でコの字状に折り曲げて上端面と下端面を形成させる際の折り曲げ操作を容易にすると共に、コの字状の折り曲げ部に余分な折り込み部が形成されて見栄えが悪くなるのを防止している。」(段落【0022】)が記載されているから、引用発明に係る樹脂フィルムに、「切欠き部」を設けることは、当業者にとって格別困難なことではない。 (2-2-4-3)本願補正発明の効果について 本願補正発明に係る効果は、本願明細書によると、 「この折り返し部によって水分を含むおにぎりからの蒸発分が海苔シートに移行するのを効果的に防止することができる。こうして、海苔シートの食感や風味を維持することのできるおにぎり包装用シートを提供することができる。」(段落【0007】、「発明の効果」の項)であるところ、この効果は、刊行物1に「内側シート側から食材に蒸気等の湿気が伝わらないようにしたこと」(摘示(a))と明示されているから、格別なものではない。 (2-2-5)まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1及び2に記載された発明、並びに周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではない。 3.本願発明について (1)本願発明 平成18年6月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成18年3月17日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、下記のとおりである。 「略矩形状の海苔シートを表裏2枚の樹脂フィルムの間に積層して形成され、前記樹脂フィルムによりおにぎりを内包させて保持し、そのフィルム開封時に前記海苔シートを樹脂フィルム間から離脱させて前記おにぎりに貼り付ける、おにぎりを内包したおにぎり包装用シートであって、 前記表樹脂フィルムはその略矩形状の中央部を左右に分断する易切断部を有し、前記裏樹脂フィルムは前記易切断部に対応する近傍位置で左裏樹脂フィルムと右裏樹脂フィルムとに左右に分割配置され、前記左裏樹脂フィルムと前記右裏樹脂フィルムとの対向する端部同士がそれぞれ折り返し部を介して重ね合わされており、 前記樹脂フィルムをコの字状に折り曲げるとともにその両サイド側の縁端が対向して重なり合うように折り曲げることで略三角形状に形成された、前記フィルム開封時につまめるようにされたフィルム取り外し用タブを有し、前記フィルム取り外し用タブが形成された状態でおにぎりを内包したおにぎり包装用シート。」 (2)原査定の理由及び刊行物の記載事項 拒絶査定における拒絶理由(平成17年11月14日付けの「理由2」)の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、該拒絶理由で引用された上記刊行物1である「実願平3-46010号(実開平4-129792号)のマイクロフィルム」の記載事項及び記載された発明は上記の「(2-2-1)及び(2-2-2)」に記載されたとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、本件補正発明において「前記樹脂フィルムは、前記コの字状に折り曲げる際の前記中央の前記両サイド側の縁端に切欠き部を有する」という事項がないものに実質的に相当するから、本願発明と引用発明との相違点は、上記「(2-2-3)」における相違点(イ)だけである。そうすると、本願発明は、上記「(2-2-4-1)」において示した理由と同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないので、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-04 |
結審通知日 | 2008-06-10 |
審決日 | 2008-06-23 |
出願番号 | 特願2005-106608(P2005-106608) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A23L)
P 1 8・ 572- Z (A23L) P 1 8・ 575- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中島 庸子 |
特許庁審判長 |
原 健司 |
特許庁審判官 |
坂崎 恵美子 唐木 以知良 |
発明の名称 | おにぎり包装用シート |
代理人 | 松尾 憲一郎 |