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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D04H
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D04H
管理番号 1182396
審判番号 不服2004-2472  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-06 
確定日 2008-08-06 
事件の表示 平成 7年特許願第217368号「水による交絡処理をした繊維で形成したフルオロポリマーシートとその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月18日出願公開、特開平 8-158231〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年8月25日(優先権主張 1994年12月8日、米国)の出願であって、平成15年11月28日付けで拒絶査定され、平成16年2月6日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、平成19年2月14日付けで審尋に対する回答書が提出され、その後、同年3月20日付けの当審からの拒絶理由通知に対して、その指定期間内の同年9月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年11月12日付けの当審からの拒絶理由通知(最後)に対して、その指定期間内の平成20年2月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.平成20年2月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成20年2月12日付けの手続補正(以下、「本件補正A」という。)を却下する。

【理由】
(1)本件補正Aの内容
本件補正Aは、平成19年9月21日付け手続補正により補正された補正前の特許請求の範囲の
「【請求項1】 フルオロポリマーがエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体である溶融吹込により形成されたフルオロポリマー繊維で作られ、
第一表面および該第一表面の反対側に第二表面を有し、
(i)該第一表面側の該繊維に6.89×10^(5)Pa(100psi)?1.38×10^(7)Pa(2,000psi)の圧力で、複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射に該第一表面を接触させることと、
(ii)該第二表面側の該繊維に6.89×10^(5)Pa(100psi)?1.38×10^(7)Pa(2,000psi)の圧力で、複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射に該第二表面を接触させることからなる方法により得られる水による交絡処理をしたフルオロポリマーシート。」を

「【請求項1】 フルオロポリマーがエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体である溶融吹込により形成されたフルオロポリマー繊維で作られ、
第一表面および該第一表面の反対側に第二表面を有し、
(i)該第一表面側の該繊維に6.89×10^(5)Pa(100psi)?1.38×10^(7)Pa(2,000psi)の圧力で、複数のヘッダーを用いて行う水噴射に該第一表面を接触させることと、
(ii)該第二表面側の該繊維に6.89×10^(5)Pa(100psi)?1.38×10^(7)Pa(2,000psi)の圧力で、複数のヘッダーを用いて行う水噴射に該第二表面を接触させることからなる方法により得られる水による交絡処理をしたフルオロポリマーシート。」と補正することを含むものである。

(2)本件補正Aについての判断
本件補正Aは、補正前の請求項1の「複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射」を「複数のヘッダーを用いて行う水噴射」とする補正事項を含むものであり、以下、この補正事項の適否について検討する。
該補正事項は、補正前の直列的に記載された発明特定事項である「多段階で」を削除する補正であるから、実質的に特許請求の範囲を拡張するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえず、また、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的とするものとも認められない。
この補正について、請求人は、平成20年2月12日付けの意見書の中で、「複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射」を「複数のヘッダーを用いて行う水噴射」とする補正は、何ら新規事項を追加するものではない旨主張しているが、前記拒絶理由に対する補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項の追加禁止)に規定する要件を満たすことのみならず、同法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とすることも求められ、新規事項の追加でないことのみが、補正を認める根拠とはならない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正Aは、特許法第17条の2第4項の規定に違反しているものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願特許請求の範囲の記載
平成20年2月12日付けの手続補正は、上記2.のとおり補正却下の決定がなされたので、本願特許請求の範囲の記載は、平成19年9月21日付け手続補正書により補正されたとおりのものと認められ、その特許請求の範囲の記載は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 フルオロポリマーがエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体である溶融吹込により形成されたフルオロポリマー繊維で作られ、
第一表面および該第一表面の反対側に第二表面を有し、
(i)該第一表面側の該繊維に6.89×10^(5)Pa(100psi)?1.38×10^(7)Pa(2,000psi)の圧力で、複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射に該第一表面を接触させることと、
(ii)該第二表面側の該繊維に6.89×10^(5)Pa(100psi)?1.38×10^(7)Pa(2,000psi)の圧力で、複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射に該第二表面を接触させることからなる方法により得られる水による交絡処理をしたフルオロポリマーシート。
【請求項2】 エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体が、40?60モル%のエチレン、および60?40モル%のクロロトリフルオロエチレンを含有する請求項1に記載のシート。
【請求項3】 エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体が、45?55モル%のエチレン、および55?45モル%のクロロトリフルオロエチレンを含有する請求項2に記載のシート。
【請求項4】 エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体が、50モル%のエチレン、および50モル%のクロロトリフルオロエチレンを含有する請求項1に記載のシート。
【請求項5】 エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体が、10,000?3,000,000の平均分子量を有する請求項2に記載のシート。
【請求項6】 シートが、0.2?10μmの直径を有する水による交絡処理をしたフルオロポリマー繊維から形成された請求項1に記載のシート。
【請求項7】 繊維が、1?9μmの直径を有する請求項6に記載のシート。
【請求項8】 繊維が、1?7μmの直径を有する請求項7に記載のシート。
【請求項9】 繊維が、3?7μmの直径を有する請求項8に記載のシート。
【請求項10】 シートが、第一表面および該第一表面の反対側に第二表面を有し、繊維の水による交絡処理が、
(i)該第一表面側の該繊維に6.89×10^(5)Pa(100psi)?1.38×10^(7)Pa(2,000psi)の圧力で、複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射に該第一表面を接触させることと、
(ii)該第二表面側の該繊維に6.89×10^(5)Pa(100psi)?1.38×10^(7)Pa(2,000psi)の圧力で、複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射に該第二表面を接触させることを含んでなる請求項1?9のいずれか1つに記載のシートの製造方法。」

4.当審拒絶理由について
平成19年11月12日付けの当審からの拒絶理由通知は、次のとおりのものである。
「この出願は、明細書又は図面についての平成19年9月21日付けの手続補正書による補正が、下記の点で特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


平成19年9月21日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の「複数の水噴射」を「複数のヘッダーを用いて多段階で行う水噴射」と補正する補正事項を含むものである。
以下、該補正事項が願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて検討する。
この点について、当初明細書の段落【0021】には、「ウェブは第一の複数個のヘッダーとワイヤーメッシュスクリーンを有する第一の円筒形のローラーまたはドラムとの間に配置」、「ヘッダーは水噴射を放出し、水の噴射はオリフィスのストリップを通過する」、「オリフィスストリップは、・・・小さな開口を複数個有する。その開口は、オリフィスストリップの1インチ直線毎に約30?60個、好ましくは約40個の開口があるよう間隔をおいて設けられている。オリフィスストリップは、シートまたはウエブの幅にわたって延びる長さを有するべきであり、ストリップの幅は約1/2インチでもよい。」、「水の噴射はオリフィスストリップを通過し、・・・シートまたはウェブの第一表面に接触する。シートまたはウェブは、分速(fpm)約25?約400フィート、好ましくは分速約25?約150フィートの速度で水噴射の下を通過する」との記載、また、段落【0025】には、「1から15までの各サンプルを、2つの水による交絡処理ゾーンを有する水による交絡処理装置に通過させた。各ゾーンは、・・・ローラー、および水噴射を放出するマニホールドシステムを備えていた。各マニホールドシステムは、3個のヘッダー、および各ヘッダーの下に位置する3個のオリフィスストリップを備えていた」、「第一ゾーンはシートの第一表面(面1)を処理し、第二ゾーンはシートの第二表面(面2)を処理した」等の各記載が認められる。
すなわち、当初明細書には、「複数個のヘッダーを用いて水噴射を行う」ことは記載されていると認められるが、「複数のヘッダーを用いて多段階で水噴射を行う」ことは、どこにも記載されておらず、自明なものとも認められない。
なお、請求人は、平成19年9月21日付け意見書において、補正の根拠は、段落【0021】に基づく旨主張しているが、上述のとおり、段落【0021】には、多段階で行うとの記載はない。

したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。」

4.当審の判断
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)の段落【0021】には、「初期のシートまたはウェブは第一の複数個のヘッダーとワイヤーメッシュスクリーンを有する第一の円筒形のローラーまたはドラムとの間に配置される。・・・ヘッダーは水噴射を放出し、水の噴射はオリフィスのストリップを通過する。・・・水の噴射はオリフィスストリップを通過し、・・・シートまたはウェブの第一表面に接触する。」ことが、段落【0022】には、「シートまたはウェブを、第一表面で水と接触させた後、・・・シートまたはウェブの第一表面の裏側にあるシートまたはウェブの第二表面が第二の複数個のヘッダーおよびオフィリスストリップから放出される第二の水噴射に面する位置になるように、・・・シートまたはウェブを、第二の水噴射の下を通過させ、・・・シートまたはウェブの第二表面を水噴射と接触させ」ることが、また、段落【0025】には、「各サンプルを、2つの水による交絡処理ゾーンを有する水による交絡処理装置に通過させた。各ゾーンは、・・・水噴射を放出するマニホールドシステムを備えていた。各マニホールドシステムは、3個のヘッダー、および・・・3個のオリフィスストリップを備えていた。・・・第一ゾーンはシートの第一表面(面1)を処理し、第二ゾーンはシートの第二表面(面2)を処理した。」ことが記載され、【0026】の【表1】には、「面1と面2に、それぞれ3個のヘッダーを用いて水噴射を行う」ことが記載されていると認められるが、当初明細書のいずれにも、水噴射を「多段階で行う」ことについて、明示的に記載されておらず、自明なものとも認められない。
「多段階で」水噴射を行うことが記載されていたといえるには、水による交絡処理が行われる個々の処理工程及び処理段階が具体的に明確になり、さらに、この段階が複数であることが明確になったうえで「多段階」といえるものであるから、「複数個のヘッダーを用いる」ことだけでは「多段階」で水噴射を行うことにはならない。
よって、前記拒絶理由は妥当なものである。

5.むすび
以上のとおり、平成19年9月21日付け手続補正書による補正が願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-27 
結審通知日 2008-03-04 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願平7-217368
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (D04H)
P 1 8・ 55- WZ (D04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 野村 康秀
鴨野 研一
発明の名称 水による交絡処理をした繊維で形成したフルオロポリマーシートとその製造方法  
代理人 野河 信太郎  

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